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多数本とオールオン4の選び分け|名古屋で適応を整理する
本数で選ぶのではなく「骨・咬合・希望」で選ぶ治療

名古屋でオールオン4を検討されている方からよく頂く質問の一つが、「私は4本のオールオン4と、6〜8本の多数本インプラントの、どちらが向いていますか」というものです。
この問いに対する答えは、本数の多さで決めるものではありません。
ご自身の顎の骨の状態、噛み合わせの強さ、ご年齢、全身疾患の有無、そして治療に対する希望のすべてを統合して、最も「長く安定して機能する設計」を選ぶ。これがオールオン4と多数本インプラントを選び分ける本質的な考え方です。
簡単に整理すると、次のように見ていただけます。
- 骨が痩せていて手術回数を最小限にしたい方は、オールオン4が向きやすい
- 顎の骨が比較的残っており、若く咬合力が強い方は、多数本(6〜8本)が向きやすい
- 全身疾患のリスクや費用面の制約がある方も、オールオン4の選択肢が現実的になりやすい
- 過去にインプラントトラブルの経験がある方は、設計に余裕のある多数本が安心しやすい
名古屋市中区の栄・伏見エリアは、ビジネス街と住宅街が交わる地域柄、50〜70代の働き盛りからご引退世代まで幅広い患者様が来院されます。同じ「歯がほとんどない」「総入れ歯から固定式の歯に変えたい」といった状況であっても、骨の量や咬合のクセは一人ずつ異なり、適応判断は一律にはできません。本記事では、その判断軸を整理してお伝えします。
「4本」と「多数本」は何が違うのか
オールオン4は、片顎4本のインプラントで12本前後の歯(上部構造)を支える治療法です。1998年にポルトガルのMaló(マロ)博士が発表し、2024年で誕生から25年を迎え、世界で100以上の臨床研究に裏づけられています。
一方、多数本インプラント(オールオン6・オールオン8、またはフルマウスインプラント)は、片顎に6〜10本前後のインプラントを埋め込み、より分散した支柱で咬む力を受け止めます。
両者を分けるポイントは「本数」だけに見えますが、実際には設計思想がまったく異なります。
オールオン4の設計思想
- 後方の2本を斜めに傾斜させて埋入し、骨の残っている部位を最大限に活用する
- 骨造成(骨を増やす手術)を回避できることが多い
- 4本で全体を支えるため、1本あたりにかかる負担は大きくなる
- 手術当日に固定式の仮歯(プロビジョナル)が入りやすい
- 治療期間が短く、患者様の身体的負担が少ない
多数本インプラントの設計思想
- インプラントを左右・前後にバランスよく配置する
- 1本にかかる負担を分散させる
- カンチレバー(後方への張り出し部分)を最小化できる
- 1本失敗しても再治療の選択肢が広い
- 骨が十分にある場合に予後が安定しやすい
2025年にClinical Oral Implants Researchで報告された5年無作為化比較試験では、4本群と6本群のインプラント生存率は100%対99.3%と、ほぼ同じでした。一方で、技術的合併症(仮歯の破折・スクリュー緩み等)は4本群16.6%に対して6本群0%と差が出ています。
つまり、「どちらが優れているか」ではなく「どちらがあなたに合うか」という視点が、世界の研究データから導かれる結論です。
なお、両者の本質的な違いを項目別に整理した解説もあります。 (→ All-on-4と通常のフルマウスインプラントはどう違う?)
どちらの治療にも「向かないケース」がある
オールオン4と多数本インプラントは、どちらも長期データを持つ確立された治療です。しかし、それぞれ「向かないケース」があります。
オールオン4が向きにくいケースの目安
- ブラキシズム(強い歯ぎしり・食いしばり)が顕著な方
- 残存骨が極端に薄く、傾斜埋入も難しい方
- 1本の失敗時のリカバリーリスクを最小限にしたい方
- 上顎で骨高径が4mm未満の重度骨吸収(この場合は頬骨インプラントや骨造成併用が選択肢になります)
多数本インプラントが向きにくいケースの目安
- 上顎洞や下歯槽神経に余裕がなく、6〜8本の理想的な埋入位置が確保できない方
- 全身疾患により長時間・複数回の手術が困難な方
- 骨造成(サイナスリフトやGBRなど)を希望されない方
- 治療期間を最短にしたい方
- 経済的に追加本数の費用負担が現実的でない方
医療広告ガイドラインの観点からお伝えしておきたいのは、「絶対に成功する治療」「100%安全な治療」は存在しないということです。
例えば、全インプラントの20年メタアナリシス(2024年・Springer Nature掲載)では、長期生存率は92%(95%CI: 82〜97%)。10〜20年スパンで何らかのトラブル(インプラント脱落、補綴物交換、骨吸収進行)が起こる可能性はゼロではありません。
また、喫煙者はインプラント失敗リスクが約2.59倍(2024年メタアナリシス)、コントロール不良の糖尿病(HbA1c 8%超)では辺縁骨吸収のリスクが高まることも報告されています。これらは、4本でも多数本でも共通するリスクです。「本数を増やせば安全」「少なければ危険」と単純化できるものではありません。
オールオン4が向くケースを、より具体的な患者像で確認したい方は次の記事もご参照ください。 (→ 多数本インプラントよりAll-on-4が向くケースとは)
診断・設計から見た「選び分けの軸」
ここからは、補綴主導の歯科医療を米国補綴学の文脈で学んだ立場から、適応判断の臨床視点をお伝えします。
私が米国の補綴専門教育の中で繰り返し叩き込まれた診断哲学は、「Restoratively Driven(補綴主導)」という考え方です。これは、最終的な歯の理想的な形・噛み合わせから逆算して、インプラントの本数や角度、位置を決めていくアプローチです。
日本の歯科医療の現場では、CT画像で「骨があるところに本数を入れる」という外科主導の考え方がいまだに残っているように感じます。一方で米国補綴の文化では、「最終ゴールから逆算する」ことが診断の出発点に置かれます。この視点の差は、オールオン4と多数本インプラントの選び分けにそのまま直結します。
補綴主導の診断で重視している5つの視点
- 咬合力の評価:歯ぎしり・食いしばりの強度、対合歯の状態
- 骨質と骨量の3次元評価:CT断層像での骨密度・高さ・幅の精査
- 顎位(上下の顎の位置関係)の安定性:旧義歯使用歴、顎関節の状態
- 将来の歯肉退縮・骨吸収のシミュレーション:10年・20年後を見越した設計余裕
- 患者様のライフスタイルと希望:清掃管理能力、メンテナンス来院の現実性
例えば、CT診断で骨高径が十分にあり、咬合力も標準的な50代の患者様であれば、6〜8本の多数本設計を提案することが多くなります。理由は、長期にわたって1本あたりの負担を抑えられ、20年後の予後に余裕が出るからです。
逆に、80歳近い高齢の方で全身疾患を抱え、骨も痩せている場合、オールオン4の方が侵襲が小さく、当日に仮歯が入り、術後の生活への影響が最小化されるため、結果として「長期に安定する治療」となるケースが多いと感じています。
これは私自身が日常診療で実感している傾向であり、「本数を増やすほど良い」という単純な発想ではないことを、毎月の臨床ケースから繰り返し学ばされている部分です。
また、再治療症例(他院で入れたインプラントの不調を治す症例)を経験する中で、共通しているのは「補綴設計の余裕不足」です。咬合の強さに対して支柱が少なく、カンチレバー(後方への張り出し)が長すぎる症例では、5〜10年で機械的トラブルが頻発します。
カンチレバーが15mmを超えると機械的合併症が有意に増加するというメタアナリシス(2024年)もあり、設計段階での「予防的な余裕」が長期安定の鍵になります。これは多数本インプラントの方が確保しやすい一方、オールオン4でも傾斜埋入によって前後方向に十分なスパンを取れば実現可能です。
「本数の少なさが安全性を損なわないのか」を構造の観点から整理した記事もあります。 (→ なぜAll-on-4は少ない本数で支えられるのか)
設計思想そのものを掘り下げた解説はこちらです。 (→ 歯を1本ずつ入れる治療とAll-on-4の設計の違い)
「自分はどちら?」を整理するための視点
ここまで、名古屋でオールオン4と多数本インプラントを比較される方に向けて、両者の選び分けの軸をお伝えしました。最後に、ご自身の状況を整理するためのチェックポイントを示します。
オールオン4が向きやすい方
- 60代後半〜80代で、長時間の手術を避けたい
- 骨が痩せており、骨造成手術を希望しない
- 治療期間を短くしたい・最短当日に固定式の仮歯を希望
- 全身疾患が複数あり、低侵襲な選択を優先したい
- 費用を片顎の枠に収めたい
多数本(6〜8本)インプラントが向きやすい方
- 40〜50代で、骨が比較的良好に残っている
- 歯ぎしり・食いしばりが強い
- 1本失敗時のリスク分散を最優先したい
- 20年以上の超長期予後を重視したい
- 費用よりも設計の余裕を優先したい
どちらが「優れている」のではなく、どちらが「あなたの口腔・全身状態・人生設計に合うか」が問われています。判断に迷われている方は、CT撮影による3次元診断と、咬合・全身状態を含む総合カウンセリングを通して、複数の選択肢を比較しながら整理されることをお勧めします。
身体的な負担の差を、より具体的にイメージしたい方はこちらもご参考にしてください。 (→ All-on-4と通常インプラントの身体的負担の違い)
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 名古屋でオールオン4と多数本インプラントの両方を提案してくれる医院は多いのでしょうか?
医院ごとに「得意な治療」「採用している治療」が異なるため、最初から複数の選択肢を比較提示する医院は限られます。栄・伏見・愛知県中区などの専門性の高い医院では、CT診断のうえで複数案を提示することが一般的です。ご不安があれば、複数案を比較できる医院でセカンドオピニオンを受けるのも一つの方法です。
Q2. 4本のオールオン4で本当に大丈夫なのか不安です。
ご不安はもっともです。Maló博士の18年追跡研究では、下顎オールオン4の10年補綴物生存率は98.8%と報告されています。2025年の5年無作為化比較試験でも、4本と6本のインプラント生存率に統計的な差は確認されませんでした。ただし、適応症例を正しく選べていることが大前提です。
Q3. 後から多数本に変更することはできますか?
技術的には不可能ではありませんが、現実的には大がかりな再治療になります。最初の設計段階で長期予後を見越して選択することが重要です。
Q4. 費用が大きく違うと聞きました。差額分の価値はありますか?
一般に多数本インプラントはオールオン4より20〜40%程度高くなることが多いです。差額分の価値があるかどうかは、骨条件・咬合・年齢・希望によって変わります。費用のみで判断するのではなく、長期予後の視点を含めて検討してください。費用構造そのものを整理した解説はこちらです。 (→ All-on-4と通常インプラントの費用の考え方)
Q5. 高齢になっても再治療の選択肢はありますか?
多くのケースで再治療は可能ですが、年齢を重ねるほど身体的負担は大きくなります。最初の選択時に「将来のメンテナンスのしやすさ」も含めて設計を考える視点が重要です。
名古屋で歯を全部治したい・歯がボロボロで悩んでいる・総入れ歯から固定式の歯へ変えたいとお考えの方は、まずはご自身の状況に合った治療法を整理することからお勧めしています。比較ができる視点を持つことで、納得して治療に進むことができます。
オールオン4と通常のフルマウスインプラントの違い全体を、一つの流れで理解されたい方は、こちらの全体マップをご覧ください。 (→ All-on-4と通常のフルマウスインプラントの違いを比較したい方へ)
オールオン治療全体の考え方や、栄・伏見・愛知県中区での診療姿勢については、こちらに詳しくまとめております。 (→ 名古屋でオールオン4を検討されている方へ)
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implntology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン
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