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総入れ歯とオールオン4、唇の膨らみはどう違う?|名古屋で判断するポイント
「唇の下の膨らみ」は、歯ではなく"歯ぐきの下の土台"の問題

当院は、「入れ歯を入れても、鼻の下がこけたまま戻らない」「オールオン4なら若い頃の顔に戻ると思っていたのに、期待と違った」というご相談も寄せられます。
結論からお伝えすると、唇の下の膨らみ(リップサポート)は、歯そのもので作られているのではありません。 歯を支える顎の骨(歯槽堤・しそうてい)と、その上の歯ぐきの厚みによって作られています。
- 歯を失うと、骨は毎年少しずつ痩せていく
- 10年経つと、上あごの前側の骨は最大で25〜50%が消失する
- 骨が痩せた分、上唇は内側に陥没し、鼻の下が伸びて見える
この「痩せた分の穴埋め」を、歯(人工歯)だけでは行えません。 総入れ歯では歯ぐきピンク色のフランジ(つば状の部分)で、オールオン4ではピンク色の補綴物部分で補います。
そしてここに、名古屋でオールオン4(オールオンフォー)をご検討される方がよく悩まれる問題があります。 「唇の膨らみを作れば、清掃しにくくなる」「清掃性を優先すると、唇がこけて見える」というジレンマです。 この記事では、この相反する課題にどう向き合うかを整理します。
テーマの構造解説:世界標準「Pollini分類」で考える、ご自身の状態
2017年にPollini先生らがインターナショナルジャーナル誌で発表したLip-Tooth-Ridge分類(LTR分類/リップ・トゥース・リッジ分類)は、現在、世界の補綴専門医教育で広く使われている枠組みです。 「唇と、歯と、顎の土手(リッジ)」の3つの位置関係から、患者様の状態を4つに分類します。
Class I:骨の吸収なし
- 歯を失ってから間もない、または骨の吸収が軽い状態
- 歯を作るだけで自然な見た目に戻せる
- 総入れ歯なら比較的薄い設計で済み、オールオン4でもフランジ(唇側の膨らみ部分)を最小限にできる
Class II:垂直的な吸収(高さが足りない)
- 顎の土手の「高さ」が低くなっている
- 歯の長さで補う必要があり、補綴物に縦方向の厚み(ピンク部分)が必要
- オールオン4では、骨を平らに削って人工の歯ぐきで高さを作る設計になる
Class III:水平的な吸収(厚みが足りない)
- 顎の土手の「唇側の厚み」が痩せている
- 唇の下に膨らみがなく、上唇が内側に陥没する
- リップサポートのためにフランジが必須となる
- 固定式のオールオン4だけでは、唇の膨らみを十分に再現できないケースが多い
Class IV:高さも厚みも失われている(複合型)
- 最も重度の吸収パターン
- 長年総入れ歯を使われている方や、重度の歯周病で多数歯を失われた方に多い
- 骨移植、もしくは可撤式(取り外し式)のインプラントオーバーデンチャーが第一選択になることがある
- 固定式オールオン4では、見た目と清掃性の両立が最も難しいケース
ご自身がどのClassに近いかによって、総入れ歯とオールオン4でできること・できないことが変わります。
総入れ歯が合わない全体像は、こちらでも整理しています。 → (→ 総入れ歯が合わない原因とは|名古屋で見直したい治療の選択肢)
総入れ歯とオールオン4の、それぞれの"できること・できないこと"
総入れ歯でできること
- 唇側フランジ(つば状のピンク部分)を最大限厚く作れる ─ Class III・IVの方でも、唇の膨らみを比較的自由に再現できる
- 取り外して清掃できるため、骨・歯ぐきの清潔を保ちやすい
- 骨の吸収が進行しても、新しい入れ歯に作り直せる
総入れ歯でできないこと・限界
- 固定されないため、話すたび・食べるたびに動く
- 広い範囲を覆うため、味・温度を感じにくい
- 粘膜で噛む力を受けるため、噛む力は天然歯の20〜30%程度
- 長期的に、覆っている部分の骨吸収がさらに進行する
オールオン4でできること
- 固定式のため動かない ─ しっかり噛めて、話せる
- 骨に噛む力が伝わるため、骨吸収の進行を抑えられる
- 違和感が少なく、「自分の歯」に近い感覚で使える
- 味・温度の感覚が総入れ歯より回復しやすい
オールオン4でできないこと・限界
ここが、本記事で最もお伝えしたいポイントです。
限界1:唇側フランジを厚く作れない
オールオン4は清掃性を確保するため、歯の裏側(インプラントと歯ぐきの境目)に清掃ブラシやウォーターピック(水流式洗浄器)が通る隙間が必要です。 この隙間を確保すると、総入れ歯のような「唇の下まで覆う厚いフランジ」は作れません。 世界的な臨床指針では、フランジは作るとしても2〜3mm以下、かつ唇側のみにすることが推奨されています。 厚いフランジを作ると、食べかすが溜まり、インプラント周囲炎(インプラント周囲の骨が失われる炎症)のリスクが上がります。
限界2:Class III・IVの重度吸収では唇がこけやすい
顎の骨が大きく痩せている方では、固定式のオールオン4だけで「若い頃の唇の膨らみ」を完全に再現するのは困難です。 この場合、以下のいずれかの選択になります。
- 骨移植(ボーングラフト)で失われた骨を補い、ClassをI・IIに戻してからオールオン4
- ザイゴマインプラント(頬骨インプラント・通常より長いインプラント)を使う
- 可撤式のインプラントオーバーデンチャー(取り外せるインプラント入れ歯)に方針転換
限界3:一度決めた設計は後から変えにくい
総入れ歯は作り直せますが、オールオン4は埋入されたインプラントの位置が前提になります。 「もう少し唇が膨らんでほしかった」「清掃が思ったより難しい」という後からの修正は、極めて困難です。
この点について、2024年のBurbank Dental Implants(米国)の臨床レポートは明確に述べています。 「材料(ジルコニアやPFM)が唇の支えを作るのではない。初回の手術段階での外科・補綴計画が全てを決める」一度骨の形を作り違えると、後から取り戻すのは難しいのです。
見逃しやすい誤解
2018年のBidra先生らの研究(米国補綴学雑誌)では、興味深いデータが報告されています。 「総入れ歯からフランジを外しても、写真上の見た目の変化は統計的にはわずか(4mm以下)」というものです。 これは裏を返すと、「フランジを作らなくても何とかなる方」と「フランジがないと顔貌が崩れる方」がいるということ。 個人差が極めて大きく、ご自身がどちらのタイプかは、診断しなければ分かりません。
総入れ歯とオールオン4のより根本的な違いは、こちらの記事で整理しています。 → (→ 総入れ歯とAll-on-4は何が一番違う?)
米国補綴教育で学んだ「診断なしに材料の話をしない」という原則
米国プロソドンティスト教育で徹底される順序
米国の補綴専門医(プロソドンティスト)教育では、患者様の唇と顎の関係を診るとき、必ずPollini分類で評価してから治療の選択肢を話し合うことが教えられます。
日本の臨床現場では、「オールオン4にすれば全部解決する」という説明が先行し、その後で「実は骨が足りませんでした」と判明することがあります。 しかし米国補綴学の原則は逆で、まず分類で立ち位置を明らかにし、その結果として適する治療が決まるという順序です。
- 笑顔時・安静時の唇と歯の位置を記録
- CT撮影で顎の骨の高さ・厚みを数値化
- Pollini分類(Class I〜IV)で評価
- 審美的リスク(高リップライン/低リップライン)を評価
- その結果から、固定式か可撤式か、骨移植が必要かを判断
この順序を踏まないと、「オールオン4にしたのに唇がこけたまま」という結果になりかねません。
診断時に特に重視しているポイント
長年の診療で強く感じるのは、「総入れ歯が合わない」と言われる方の多くが、実は”入れ歯の設計”ではなく”骨の吸収量”の問題を抱えているということです。
- 30年来の総入れ歯ユーザーの方 → ほぼ全員がPollini Class III・IVに該当
- 入れ歯を作り直しても、既に失われた骨の膨らみは戻らない
- この段階の方がオールオン4を希望される場合、骨の追加処置や可撤式の選択が必要になることが多い
診断でこれを見極めずに、固定式オールオン4の選択だけを進めてしまうと、先ほどの「ダブルガム(二重歯ぐき)」現象や、「唇がこけたまま」という結果につながります。
補綴主導(プロステティカリー・ドリブン)という考え方
名古屋市中区栄・伏見エリアでご相談いただく方にも、同じ原則でお話しています。 「どんな治療法があるか」ではなく、「あなたの唇と顎の状態に合う治療はどれか」から始める考え方です。
この順序を守ることが、長期的な安定と見た目の満足度を両立する唯一の道だと考えています。
清掃性と見た目の両立について、より詳しい技術的背景はこちらも参考になります。 → (→ 総入れ歯が合わない方はインプラントオーバーデンチャーも選択肢になる?)
「唇の膨らみ」の悩みは、治療法選びの前に"診断"から
名古屋でのオールオン4(オールオンフォー)や総入れ歯でお悩みの方にお伝えしたい3点:
- 唇の膨らみは、歯そのものではなく顎の骨と歯ぐきが作っている
- Pollini Class III・IVの方は、固定式オールオン4だけでは唇の再現が難しいことがある
- オールオン4は清掃性のため、総入れ歯のような厚いフランジは作れないという構造的な限界がある
「オールオン4は素晴らしい治療」であることは事実です。 しかし、あらゆる方にとってのベストではありません。 大切なのは、ご自身がPollini分類のどこに位置しているかを知り、その上で総入れ歯・オールオン4・オーバーデンチャー・骨移植を組み合わせた選択肢から、ご自身に合う方法を選ぶことです。
名古屋で歯をほとんど失われた方、長年の総入れ歯で唇がこけてきた方こそ、治療法選びの前に、まず診断から始められることをお勧めします。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 長年総入れ歯を使っていますが、今からオールオン4に変えて「若い頃の唇」に戻せますか? A1. 骨の吸収の程度によります。Pollini Class I・IIの段階であれば、オールオン4で見た目の改善が期待できます。しかし10年以上総入れ歯をお使いの方の多くはClass III・IVに該当し、固定式オールオン4だけでは唇の膨らみを完全に再現しにくいことがあります。この場合、骨移植や可撤式オーバーデンチャーを組み合わせる選択肢があります。
Q2. オールオン4で唇の膨らみを作るために、フランジを厚くしてもらうことはできませんか? A2. 一般的には推奨されません。厚いフランジは食べかすが溜まり、インプラント周囲炎(インプラント周囲の骨が失われる炎症)のリスクが上がります。世界的な臨床指針では、フランジは2〜3mm以下にすることが推奨されています。もし厚いフランジが必要なほど骨吸収が進んでいる場合は、そもそも固定式オールオン4より可撤式オーバーデンチャーの方が向いていることがあります。
Q3. 総入れ歯とオールオン4で、どちらの方が唇の膨らみを出しやすいですか? A3. 「唇の膨らみだけ」で言えば、総入れ歯の方が自由に厚く設計できるのが事実です。ただし、総入れ歯は動きやすく、食べにくさ・違和感があります。オールオン4は見た目の膨らみに若干の制約はありますが、固定される・噛めるという大きな利点があります。どちらを優先するかは、患者様の生活様式と骨の状態で決まります。
Q4. 骨移植で骨を増やせば、どんな状態でもオールオン4は可能ですか? A4. 理論的には多くの場合で可能ですが、全身の健康状態・治療期間・費用・侵襲度を考慮する必要があります。骨移植は治癒期間が4〜6か月追加されるため、治療全体が長期化します。また、80代以上のご高齢の方では、侵襲の少ない可撤式オーバーデンチャーの方が現実的な選択肢になることも多くあります。
Q5. 名古屋でPollini分類を使った診断をしてくれる歯科医院は多いですか? A5. まだ一般的ではありませんが、補綴主導の診断を重視する医院では、Pollini分類やそれに類する枠組みで診断されています。名古屋市中区栄・伏見エリアでご相談される際は、「唇・歯・顎の土手の関係を診てくれるか」「CT診断で骨の吸収状態を数値化してくれるか」をご確認ください。これができる医院であれば、名古屋でのオールオン4の選択も、総入れ歯の作り直しも、根拠をもって判断できます。
唇の膨らみの問題は、総入れ歯の不具合の一側面にすぎません。 噛みにくさ、動きやすさ、見た目、発音など、総入れ歯が合わない理由は複合的です。 全体像を整理してから選択肢を比較されたい方は、こちらをご覧ください。 → (→ 総入れ歯が合わない原因とは|名古屋で見直したい治療の選択肢)
オールオン4全体の判断軸を知りたい方は、こちらが参考になります。 → (→ 名古屋でオールオン4を検討されている方へ)
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implntology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン
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