症例
下の総入れ歯が安定しない方へ|下顎インプラントオーバーデンチャーの症例
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治療前

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治療後

患者背景と症例概要
下顎の総入れ歯が安定せず、食事中に動く、会話の際に外れそうになる、硬いものが噛みにくいというお悩みで来院された症例です。総入れ歯は歯を失った方にとって重要な治療方法ですが、特に下顎では舌の動きや顎堤の吸収、唾液の状態、噛み合わせの影響を受けやすく、上顎に比べて安定しにくいことがあります。
患者様はこれまで総入れ歯を使用されていましたが、入れ歯安定剤を使っても十分に安定せず、人前で話すときに外れないか不安を感じておられました。また、食事の際にも入れ歯が浮くような感覚があり、噛むことに対して慎重になっている状態でした。
今回のように、下顎総入れ歯の安定に悩まれている方では、すべてを固定式のインプラントにする方法だけでなく、インプラントを支えとして入れ歯を安定させる「インプラントオーバーデンチャー」という選択肢があります。
→ インプラントオーバーデンチャーとは
本症例では、下顎にインプラントを4本埋入し、そのインプラントを利用して入れ歯の安定性を高める計画としました。固定式のAll-on-4と比較し、清掃性、取り外しのしやすさ、費用面、将来的なメンテナンス性を総合的に考え、インプラントオーバーデンチャーが適していると判断しました。

症例まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年代・性別 | 60代・男性 |
| 主訴 | 下顎総入れ歯が安定しない |
| 治療内容 | 下顎インプラント4本埋入+オーバーデンチャー製作 |
| 使用インプラント | Straumann |
| GBR | なし |
| 治療期間 | 約5か月 |
| 費用 | 165万円(税込) |
| 治療目的 | 入れ歯の安定性、咀嚼機能、会話時の安心感の改善 |
初診時の診断
初診時には、現在使用されている入れ歯の適合状態、噛み合わせ、粘膜の状態、顎堤の形態を確認しました。下顎の総入れ歯は、上顎と比べて吸着が得られにくく、舌や口腔周囲筋の影響を受けやすいため、わずかな適合不良でも動きやすくなります。
CT検査では、インプラント埋入予定部位の骨幅、骨高、下顎管との距離、骨の形態を確認しました。本症例では、骨造成を行わずにインプラントを埋入できると判断し、GBRは行わない計画としました。
診断情報
| 診断項目 | 内容 |
|---|---|
| CT所見 | 【幅、高さ、必要な場所に十分骨があった】 |
| 骨幅 | 【全体的に8ミリあり、理想的】 |
| 骨高 | 【高さも全体として10ミリ以上あり、骨造成は必要なかった 】 |
| 下顎管との距離 | 【3ミリ】 |
| 咬合状態 | 【上顎の片側臼歯部は欠損していたが、将来行うとのこと】 |
| 歯周状態 | 【良好】 |
| 顎堤の状態 | 【角化歯肉は十分あり、清掃性に問題なし】 |
骨の量が少ない場合は、骨造成が必要になることもありますが、すべての症例で必要になるわけではありません。
→ 名古屋で骨が少ない場合のインプラント治療
また、インプラント治療では「骨があるか」だけでなく、最終的な入れ歯や被せ物がどの位置で機能するかを確認することが重要です。骨の位置だけを基準にインプラントを入れると、清掃しにくい、噛みにくい、修理しにくい設計になることがあります。
→ インプラント治療でCT診断が重要な理由
治療計画と設計思想
今回検討した主な選択肢は、①インプラントオーバーデンチャー、②固定式インプラント補綴、③通常の総入れ歯の再製作、④現在の入れ歯を調整しながら使用する方法です。
まず、固定式インプラント補綴は、取り外し式の入れ歯ではなく、インプラントに固定された歯を装着する方法です。見た目や噛み心地の面で大きな利点がありますが、清掃性、必要なインプラント本数、骨の条件、費用、修理時の対応などを慎重に考える必要があります。特に高齢の方や、将来的な清掃のしやすさを重視する場合には、固定式が常に最適とは限りません。
→ All-on-4とインプラントオーバーデンチャーの違い
次に、通常の総入れ歯を新しく作り直す方法も選択肢になります。顎堤の形や粘膜の状態が良好であれば、入れ歯の設計や噛み合わせを見直すことで改善することもあります。しかし、本症例では下顎総入れ歯の不安定さが大きく、患者様の日常生活にも支障が出ていたため、入れ歯だけで安定性を十分に得ることは難しい可能性がありました。
→ 総入れ歯が合わない原因と治療方法
現在の入れ歯を調整しながら使う方法もありますが、入れ歯の動きが大きい場合、調整だけでは根本的な改善につながりにくいことがあります。特に下顎では、噛むたびに入れ歯が浮く、前後左右に動く、粘膜に痛みが出るといった問題が起こりやすくなります。
そこで本症例では、下顎にStraumannインプラントを4本埋入し、それを支えにして入れ歯を安定させるインプラントオーバーデンチャーを選択しました。オーバーデンチャーは取り外しが可能でありながら、通常の総入れ歯よりも安定性を得やすい治療方法です。清掃しやすく、修理や調整にも対応しやすいため、長期的に管理しやすいという利点があります。
→ インプラントのメリットとデメリット
設計上で重視したのは、単にインプラントを入れることではなく、「どの位置で入れ歯を支えるか」「噛んだときにどこへ力がかかるか」「患者様自身が清掃しやすいか」という点です。インプラントの位置が不適切だと、入れ歯の安定性が得られにくいだけでなく、アタッチメント部分に過度な負担がかかることがあります。
本症例では、4本のインプラントを用いることで、2本支持と比較して支えの分散を図り、入れ歯の回転や沈み込みを抑えやすい設計を目指しました。咬合接触は、特定の部位に力が集中しないように調整し、咀嚼時の安定性とメンテナンス性の両立を考慮しました。
→ インプラントの噛み合わせで注意すべきこと
使用したインプラントはStraumannです。インプラント治療では、メーカーの長期的な信頼性、パーツ供給、メンテナンス時の対応性も重要です。将来的にアタッチメント交換や修理が必要になった際、部品が安定して供給されるメーカーを選ぶことは、長期管理の面で大きな意味があります。
→ インプラントメーカーの選び方
手術と治療経過
手術では、下顎にStraumannインプラントを4本埋入しました。事前の診査により、骨造成を行わずに埋入可能と判断したため、GBRは行っていません。インプラント埋入位置は、最終的なオーバーデンチャーの安定性、清掃性、アタッチメントの維持力を考慮して決定しました。
手術概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 埋入部位 | 下顎両側犬歯部、第一大臼歯部 |
| 埋入本数 | 4本 |
| 使用インプラント | Straumann |
| GBR | なし |
| 埋入トルク | 35Ncm |
| 手術時間 | 約75分 |
| 静脈内鎮静 | なし |
| 術後腫脹 | 4日後まで継続 |
| 術後疼痛 | 2日後まで継続 |
インプラント手術後は、骨とインプラントが結合する期間を設けます。この期間は骨の状態、埋入条件、全身状態、噛み合わせの条件によって異なります。治癒期間中は、仮の入れ歯や既存義歯の調整を行い、インプラント部位に過度な負担がかからないように管理します。
→ インプラント治療の流れ
術後は、腫れや痛みの有無、創部の治癒状態、義歯による圧迫の有無を確認しました。オーバーデンチャー症例では、インプラントを入れて終わりではなく、その後の義歯設計と調整が非常に重要です。インプラントの位置が良くても、入れ歯の床縁、咬合、アタッチメントの維持力が適切でなければ、快適な使用感にはつながりません。
治癒後、インプラントの安定を確認したうえで、オーバーデンチャーの製作へ進みました。最終義歯では、噛み合わせ、人工歯の位置、清掃性、着脱のしやすさを確認しながら調整を行いました。
術後評価では、入れ歯の動きが抑えられ、食事や会話の際の不安が軽減されました。特に下顎総入れ歯では、インプラントによる支持が加わることで、日常生活での安心感につながりやすい傾向があります。
→ インプラント手術後の腫れと痛みについて
長期管理と歯科医師の解説
インプラントオーバーデンチャーは、固定式のインプラント治療と比較して清掃しやすい一方で、メンテナンスが不要になる治療ではありません。インプラント周囲の粘膜、アタッチメント部分、義歯の内面、噛み合わせは定期的に確認する必要があります。
特にオーバーデンチャーでは、アタッチメントの摩耗、維持力の低下、義歯床の適合変化、人工歯の摩耗が起こることがあります。これらは使用期間とともに生じる可能性があるため、定期的な調整や部品交換を前提に長期管理を行います。
→ インプラントを長持ちさせるメンテナンス
また、インプラント周囲炎の予防も重要です。インプラントは虫歯にはなりませんが、周囲の清掃状態が悪いと炎症が起こることがあります。特に義歯を使用する場合、義歯の内面やアタッチメント周囲に汚れが残りやすいため、医院でのメンテナンスとご自宅での清掃の両方が必要です。
→ インプラント周囲炎とは
FAQ
Q. インプラントオーバーデンチャーは固定式ですか?
A. 固定式ではなく、患者様ご自身で取り外しができる入れ歯です。ただし、通常の総入れ歯と異なり、インプラントを支えにするため安定性を得やすい方法です。
Q. 4本入れる意味はありますか?
A. 症例によりますが、4本で支えることで、入れ歯の沈み込みや回転を抑えやすくなる場合があります。ただし、骨の状態や噛み合わせによって適応は異なります。
Q. GBRなしでできるのは良いことですか?
A. 骨造成が不要であれば、治療の負担を抑えられる場合があります。ただし、GBRが必要かどうかはCT診断と補綴設計をもとに判断します。
Q. 普通の総入れ歯と何が違いますか?
A. 通常の総入れ歯は粘膜で支えますが、インプラントオーバーデンチャーはインプラントを補助的な支えとして使います。そのため、動きにくさや噛みやすさの改善が期待できます。
Q. 治療後も通院は必要ですか?
A. 必要です。インプラント周囲の清掃状態、義歯の適合、アタッチメントの摩耗、噛み合わせを定期的に確認します。
歯科医師の視点では、今回の症例で重要なのは「インプラントを何本入れたか」だけではありません。最終的にどのような入れ歯を作り、どの位置で支え、どのように噛ませ、どう管理していくかが長期的な安定に関わります。
インプラントオーバーデンチャーは、固定式インプラント治療と総入れ歯の中間的な選択肢として非常に有効な場合があります。特に、下顎総入れ歯が安定しない方、固定式までは希望されない方、清掃性や将来の管理を重視したい方にとって、検討する価値のある治療方法です。
治療のリスク・副作用・費用・期間
治療期間は約【 】か月です。インプラント治療およびインプラントオーバーデンチャーは自由診療となります。費用は【 】円(税込)です。
リスク・副作用として、術後に腫れ、痛み、出血、内出血が生じることがあります。また、骨の状態によっては骨造成が必要になる場合があります。本症例ではGBRは行っていません。治療後も、インプラント周囲炎、アタッチメントの摩耗、義歯の破損、噛み合わせの変化などが起こる可能性があるため、定期的なメンテナンスが重要です。
名古屋でインプラント治療を検討されている方へ
インプラント治療では、骨の状態、噛み合わせ、補綴設計、清掃性、将来的なメンテナンスまで含めて診断することが重要です。
当院の他のインプラント治療については、以下のページでまとめて解説しています。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implntology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
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