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上下とも歯が少ない場合の治療の考え方|名古屋 All-on-4
残っている歯の「数」ではなく「状態と位置」で治療方針は変わる

上下とも歯が少ない場合、「もう全部抜いてインプラントにするしかない」と考える方は少なくありません。しかし、実際の治療方針は、残っている歯の本数だけでは決まりません。
判断を分けるのは、以下の3つの要素です。
- 位置:左右対称に残っているか、片側に偏っているか
- 歯周状態:歯を支える骨がどれだけ残っているか
- 虫歯の程度:修復可能な範囲か、歯の構造が失われすぎていないか
たとえば、上下とも残存歯が4〜5本しかなくても、左右の犬歯や小臼歯が健全に残っていれば、それを活かした補綴設計が可能な場合があります。逆に、7〜8本残っていても、歯周病で骨の支えが失われていたり、位置が治療設計に不向きであれば、全顎的な治療に切り替えた方が長期的に安定するケースもあります。
名古屋で多数歯欠損にお悩みの方にとって、最初に必要なのは「抜く・残す」の二択ではなく、口全体を診たうえで歯1本ごとの予後を見極める診断です。
(→ 歯がほとんどない方は何から相談すればいい?)では、最初の相談で何を確認すべきかを整理しています。
「残す」か「抜く」かは、どう判断されるのか
上下とも歯が少ない方の治療計画を立てるとき、歯科医師はまず残存歯を1本ずつ評価します。この評価には、国際的にも共有されている枠組みがあります。
評価の4つの軸
- 歯周的な評価 歯を支える骨(歯槽骨)がどれだけ残っているかを確認します。骨の吸収が歯根の半分を超えていても、適切な歯周治療と管理を行えば維持可能なケースがあることが、14年間の縦断研究で報告されています。「骨が減っている=即抜歯」ではありません。
- 修復的な評価 虫歯で歯の構造がどれだけ失われているかを見ます。被せ物を支えるための健全な歯質(フェルールと呼ばれる部分)が1.5〜2mm以上残っていれば、修復の対象になりえます。逆に、歯根だけしか残っていない場合は、修復しても長期安定が見込めないことがあります。
- 歯内療法的な評価 過去に神経の治療(根管治療)を受けた歯の状態や、歯根の破折(ヒビ)の有無を確認します。垂直方向の歯根破折がある場合は、保存は困難です。
- 戦略的な位置の評価 この軸が、多数歯欠損の治療ではとくに重要です。残存歯が左右対称に分布しているか、補綴設計の支えとして機能する位置にあるかを判断します。
位置が治療方針を大きく左右する
前歯部の犬歯や小臼歯が左右に残っている場合、それらを支台歯(支えとなる歯)として活用し、欠損部をインプラントやブリッジで補う「部分的な補綴設計」が可能です。
一方で、残存歯が片側の奥歯だけに偏っている場合、噛み合わせの安定を確保するのが難しくなり、全顎的な設計(All-on-4やフルマウスインプラントなど)が選択肢に入ってきます。
多数歯欠損で治療法を比較したい方は(→ 多数歯欠損の治療法を比較|入れ歯・多数本インプラント・All-on-4)で、各治療法の違いを整理しています。
「残せる歯」と「残すべき歯」は違う
ここが見落とされやすいポイントです。歯周的に治療すれば維持できる歯でも、その位置が補綴設計にとって不利であれば、「残すこと自体がかえって全体の予後を下げる」場合があります。
たとえば、上顎に1本だけ孤立した臼歯が残っている場合、その歯を残すと補綴設計が複雑になり、全体のバランスが崩れることがあります。逆に、犬歯が左右に残っていれば、それがアンカーとなって固定式補綴の選択肢が広がります。
この「残す価値があるか」の判断は、口の中を部分的に見るだけでは不可能です。上下の噛み合わせ、残存骨の量と形態、顔貌との調和を含めた「口全体の設計」の中で決まります。
口全体を再設計するという視点については(→ 歯が少ない方に必要な”口全体の再設計”とは)で詳しく解説しています。
「全部抜いたほうが楽」とも「残せるだけ残す」とも限らない
上下とも歯が少ない状態の治療には、よくある2つの誤解があります。
誤解1:「少ないなら全部抜いてAll-on-4にすればいい」
All-on-4は、上下とも歯がほとんどない方にとって有力な選択肢のひとつです。名古屋でもAll-on-4を検討される方が増えています。しかし、残存歯の状態を評価せずに「全部抜いてオールオンフォーにしましょう」という判断は、必ずしも最善ではありません。
2025年に発表された歯科補綴学の論文では、残存歯が少数でも分布が有利であれば保存する合理性があると述べられています。一方で、予後不良の歯を無理に残すと、その周囲の骨吸収が進行し、将来のインプラント埋入に不利になることもあります。
どんな時に抜歯してオールオン4を選択するかの判断基準は(→ どんな時に歯を抜いてオールオン4にするか)で詳しく整理しています。
誤解2:「歯は1本でも多く残すべき」
天然歯の保存は歯科治療の原則ですが、「残すこと」自体が目的になると、全体の治療設計を損なう場合があります。
2024年のPeriodontology 2000誌に掲載された論文では、歯の予後を「secure(安定)」「doubtful(疑わしい)」「hopeless(保存不可能)」の3段階で評価する枠組みが紹介されています。ポケット深さ8mm以上というだけで自動的にhopelessと判断するのは過剰治療につながりうるとも指摘されており、安易な抜歯も安易な保存も、どちらも避けるべきとされています。
上下同時治療の注意点
上下とも歯が少ない場合、両方の顎を同時に治療することは技術的に可能です。ただし、噛み合わせをゼロから構築する必要があるため、治療の難易度は上がります。仮歯の段階で慎重に噛み合わせを検証し、最終補綴に移行するプロセスが不可欠です。
名古屋で多数歯欠損を短期間で治療したいとお考えの方は(→ 名古屋で多数歯欠損を短期間で治したい方へ)もあわせてご確認ください。治療期間の現実的な見通しを整理しています。
固定式が向かない場合もある
歯がほとんどない方でも、骨の状態や全身疾患、清掃性の問題によっては、取り外し式の補綴(インプラントオーバーデンチャーなど)が適している場合があります。固定式が向いているかどうかの判断については(→ 歯がほとんどない方に固定式の歯は向いている?)で整理しています。
「補綴主導の診断」がなぜ上下少数歯に不可欠なのか
私が米国での補綴トレーニングの中で繰り返し指導されたのは、「最終的にどんな歯並びを作るのかを先に決め、そこから逆算してインプラントの位置や残存歯の処置を決める」という考え方でした。
日本では「まず悪い歯を治療してから、欠損部をどうするか考える」という順番になりがちです。しかし、上下とも歯が少ない状態では、この順序だと全体の整合性が取れなくなります。補綴設計が先にあり、そこに向かって外科処置や歯周治療を組み立てる。この「補綴主導(prosthetically driven)」のアプローチが、名古屋でも広がりつつあります。
長期経過を追う中で見えてきたこと
日常の臨床で上下とも歯が少ない患者さんを多く診ていると、ある傾向に気づきます。予後不良の歯を残して部分的な補綴を繰り返してきた方は、数年後に残した歯が次々と喪失し、結果的にフルアーチの治療が必要になるケースが少なくありません。
こうした再治療の症例を数多く経験する中で感じるのは、初期段階で「口全体を見通した設計」があれば、結果が大きく違っていただろうということです。
残存歯が少ない段階で来院された方に対して、私が診断で重視しているのは以下の3点です。
- 残存歯1本ごとの予後評価:歯周ポケット検査、レントゲン、CTによる骨の三次元的な評価を行い、保存・抜歯・経過観察の判断を下します
- 噛み合わせの崩壊度:対合する歯との関係が失われている場合、単に欠損を埋めるだけでは機能回復になりません。噛み合わせが崩れている方の治療設計については(→ 多数歯欠損で噛み合わせが崩れているときの治療)で詳しく解説しています
- 顔貌と審美の再設計:歯を失うと顔の下半分の高さ(咬合高径)が低くなり、老けた印象になることがあります。見た目の回復がどこまで可能かは(→ 歯がほとんどない方の見た目の回復はどこまで可能?)で整理しています
残すか抜くかの最終判断
Eden Dental Officeでは、残存歯の保存・抜歯の判断を一度の診察で確定させることはしません。まずCTとレントゲンで骨の状態を評価し、歯周検査で歯1本ごとの予後を分類します。そのうえで、最終的な補綴デザインと照合し、「この歯を残すことが全体の設計にプラスか、マイナスか」を判断します。
この判断プロセスの詳細は(→ 残っている歯が数本だけの場合、残すか抜くかの判断)で掘り下げています。
流れ作業のように「抜歯→インプラント」と進むのではなく、時間をかけて診断し、患者さんと共有しながら設計を進めること。それが、名古屋・栄のEden Dental Officeが大切にしている治療の姿勢です。
「自分の場合、どうなるのか」を整理するために
上下とも歯が少ない場合の治療は、残存歯の本数だけでは方針が決まりません。歯の位置、歯周状態、虫歯の程度、そして噛み合わせや審美性を含めた「口全体の設計」の中で、残すか抜くかが決まります。
この記事でお伝えしたかったのは、以下の3点です。
- 歯が少なくても、位置と状態が良ければ活かせる可能性がある
- 予後不良の歯を無理に残すと、全体の治療設計を損なうことがある
- 「補綴主導」の診断で、最終ゴールから逆算して判断することが重要
愛知県中区・伏見エリアで歯がほとんどない状態にお悩みの方は、まず現在の口の状態を正確に評価してもらうことが第一歩です。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 上下とも歯が3〜4本しかありません。全部抜いたほうがいいですか? 本数だけでは判断できません。残存歯の位置が左右対称で、歯周状態も安定していれば、保存して部分的に補綴する選択肢もあります。逆に、残存歯の予後が不良であれば、フルアーチ治療(All-on-4など)に切り替えた方が長期的に安定する場合もあります。精密な検査を受けたうえで判断することが大切です。
Q2. 上下同時にAll-on-4で治療することは可能ですか? 技術的には可能で、名古屋でも上下同時のオールオンフォー治療を行っている医院はあります。ただし、噛み合わせをゼロから構築する必要があるため、仮歯で十分な検証期間を設けることが推奨されています。上下同時だからといって品質を犠牲にしない設計が求められます。
Q3. 歯周病で歯がグラグラですが、治療すれば残せますか? 歯周病の進行度と骨の残存量によります。ポケットが深くても、骨の形態や歯の位置が有利であれば、歯周治療後に安定するケースは少なくありません。ただし、垂直的な歯根破折や、骨吸収が著しい場合は保存が困難です。名古屋で歯周病による多数歯欠損にお悩みの方は、まずCTによる精密検査を受けることをお勧めします。
Q4. 入れ歯とインプラント、どちらを先に検討すべきですか? どちらが先ということではなく、口全体の状態を評価したうえで、固定式(インプラント)と可撤式(入れ歯・オーバーデンチャー)のそれぞれのメリット・デメリットを理解して選ぶことが大切です。骨の状態、清掃性、費用、ライフスタイルなどを総合的に考慮します。
Q5. 費用はどのくらいかかりますか? 上下とも歯が少ない場合の治療費は、選択する治療法と使用する素材によって大きく異なります。部分的なインプラント、All-on-4、インプラントオーバーデンチャーなど、選択肢ごとに費用構造が違います。まずは精密検査を受け、ご自身に合った治療計画とその費用を確認されることをお勧めします。
歯がほとんどない状態の治療選択肢を体系的に比較したい方は、以下のページで入れ歯・インプラント・All-on-4の違いを整理しています。
→ 名古屋で歯がほとんどない方の治療法|入れ歯・インプラント・All-on-4を比較
名古屋でオールオン4を含むフルアーチ治療を検討されている方は、こちらもご参照ください。
→ 名古屋でオールオン4治療を検討されている方へ
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implntology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
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