症例
名古屋 奥歯の入れ歯に限界を感じていた方へ|上顎臼歯欠損に対してインプラント2本で奥歯の噛み合わせを回復した症例
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治療前

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治療後

患者背景と症例概要
奥歯を失ったまま長期間過ごしている方の中には、「入れ歯を作っても、また支える歯が悪くなり、結局作り直しになる」という経験を繰り返している方が少なくありません。特に部分入れ歯は、欠損部そのものだけでなく、残っている歯と粘膜に負担を分散して機能する装置であるため、設計や清掃性、残存歯の条件によっては、長期的に負担が蓄積していくことがあります。奥歯でしっかり噛めない状態が続くと、食事のしにくさだけでなく、反対側への偏った咀嚼、残存歯への過剰負担、将来的な欠損拡大にもつながります。
今回ご紹介するのは、名古屋市・名古屋駅付近にお住まいの67歳女性の患者様です。患者様は上顎奥歯の欠損を約10年間そのままにせざるを得ず、その間、部分入れ歯を使い続けてこられました。しかし、部分入れ歯を支える周囲の歯に負担がかかり、隣在歯が悪くなっては抜歯し、そのたびに入れ歯を作り替えるという経過を繰り返しておられました。欠損範囲が徐々に広がるにつれて装置も大きくなり、違和感も増加し、「もうこれ以上、入れ歯を作り替える治療は繰り返したくない」「奥歯でしっかり噛めるようになりたい」という思いから、インプラント治療を希望され当院へ来院されました。
今回の主訴は見た目の改善よりも、日常生活で困らないレベルまで奥歯の咀嚼機能を回復したい、という非常に明確なものでした。インプラント治療では、単に失った本数分だけ機械的に補うのではなく、どこまで回復させれば機能的に十分かを見極めることが重要です。奥歯の欠損を放置した場合のリスクについては、
→ インプラントを入れないまま放置するとどうなるか
でも詳しく解説しています。
症例まとめ
67歳女性/名古屋市・名古屋駅付近在住
主訴:奥歯でしっかり噛めるようになりたい
欠損部位:上顎第1小臼歯〜第2大臼歯の4歯欠損
治療法:インプラント2本+3歯分のインプラントブリッジ
補綴範囲:第1小臼歯〜第1大臼歯まで
治療回数:5回
治療期間:約6か月
初診時の診断
初診時には、口腔内診査、レントゲン、CT撮影、咬合診査を行い、欠損部の骨条件と全体の噛み合わせを総合的に評価しました。欠損部は上顎臼歯部で、第1小臼歯から第2大臼歯までの4歯欠損でしたが、画像診断上、補綴設計をどこまで行うかを慎重に検討する必要がある症例でした。CT所見では、欠損部全体の骨幅は概ね6mm以上を確保できており、骨高も10mm以上認められました。さらに、骨質は比較的密度の高いType 1相当と考えられ、初期固定を得やすい条件が整っていました。骨造成を前提としなければならないほどの著しい水平的・垂直的骨欠損はなく、追加処置なしで埋入可能と判断しました。上の顎で骨量が少ない場合の考え方については、
→ 名古屋で骨が少ない場合のインプラント治療
でも詳しく解説しています。
一方で、この患者様は糖尿病の既往がありました。そのため、外科処置そのものの難易度だけでなく、創傷治癒や感染リスクにも配慮した治療計画が必要でした。ただし、口腔内の清掃状態は比較的良好で、残存歯の歯周状態も安定しており、重度の歯周炎や活動性の炎症所見は認めませんでした。インプラント治療において歯周状態の安定は非常に重要であり、天然歯周囲の炎症が強い場合には長期予後に不利となることがあります。
噛み合わせの面では、欠損部以外の噛み合わせは概ね良好で、咬頭嵌合位も安定していました。顎関節症状も認めず、咬合支持の再建先として十分に機能回復を目指せる条件がありました。つまりこの症例は、「骨条件」「歯周条件」「咬合条件」の3点が比較的良好であり、局所的なインプラント補綴によって機能回復を狙いやすい症例だったといえます。インプラント治療前の診査内容については、
→ インプラント治療前に行う検査とは
も参考になります。
治療計画と設計思想
本症例で最も重要だったのは、「何本インプラントを入れるか」ではなく、「どこまで歯を入れれば患者様にとって機能的・生物学的に合理的か」を見極めることでした。欠損は第1小臼歯から第2大臼歯までの4歯に及んでいましたが、最終的には第1大臼歯までの3歯補綴とし、第2大臼歯までの回復は行いませんでした。臼歯部補綴では、第二大臼歯(親知らずを除いた一番奥の歯)まで常に再建すべきとは限らず、対合関係、咀嚼機能、清掃性、患者様の希望、長期予後を踏まえて判断する必要があります。
1.インプラント2本による回復という選択肢
今回の第一選択肢は、インプラント2本を埋入し、3歯分のブリッジ形態で上部構造を設計する方法でした。4歯欠損すべてを個別に補うのではなく、機能的に重要な範囲を絞って回復することで、外科的侵襲、費用、清掃性、補綴の安定性のバランスを取ることができます。特にこの患者様は、一番奥の歯まで完全に歯列を延長することよりも1つ手前までで、日常生活で十分な咀嚼能率を確保することが優先されました。この3歯分の欠損に対しても、3本インプラントを入れた場合と2本だけでいい場合どちらも考慮しました。
2.部分入れ歯の再製作という選択肢
もちろん、部分入れ歯をきちんと再設計して作り直す選択肢も検討しました。一般的に、遊離端欠損(後ろに支える歯がない状態)に対する部分入れ歯では、大連結子、小連結子、レスト、クラスプなどを一体的に設計し、強固な支持・維持・把持を確保することが重要です。しかし、患者様がこれまで使用していた保険の部分入れ歯は、保険診療の制約上、レジン主体の構造であり、理想的な剛性や支持を十分に確保しにくい設計でした。部分入れ歯は適切に作れば有効な治療法ですが、粘膜面をある程度広く覆う必要があり、違和感の問題を完全に避けることはできません。さらに、患者様はすでに10年間にわたり「支えの歯が悪くなり、また作り替える」というサイクルを経験されており、心理的にもこれ以上入れ歯治療を続けたくないという思いが強くありました。入れ歯とインプラントの比較は、
→ インプラントと部分入れ歯の違い
で詳しく解説しています。
3.放置するリスク
欠損をそのままにすると、対合歯の挺出、隣在歯の傾斜、咀嚼側の偏り、残存歯への過負担などが進み、治療介入のタイミングが遅れるほど、後からの再建が難しくなることがあります。特に部分入れ歯が不安定なまま長期間経過すると、残存歯の喪失が連鎖しやすくなります。
最終的な治療方針
以上を踏まえ、本症例ではインプラント2本を用いて第1小臼歯から第1大臼歯までの3歯分を回復する方針としました。すべてを埋めることではなく、「必要十分な機能回復」を目指した設計です。
設計思想
当院が重視したのは、単にインプラントを埋めることではなく、長期的に壊れにくく、清掃しやすく、咬合が安定しやすい補綴設計にすることでした。まず咬合接触は、過度な側方力を避けながら、咬頭嵌合位で安定した支持を得られるように設計します。インプラントは歯根膜を持たないため、天然歯と同じような力の受け方をさせると過負荷につながることがあります。そのため、接触点の位置や強さ、側方運動時の干渉の有無を細かく調整することが重要です。噛み合わせが長持ちに与える影響については、
→ インプラントと噛み合わせの重要性
も参考になります。
上部構造は、強度と長期安定性を重視して選択します。また固定方式についても、将来的なメンテナンス性やトラブル対応を見据えて決定する必要があります。さらに、本症例では糖尿病の既往があるため、外科処置の成功だけでなく、術後の清掃性と炎症管理を重視しました。つまりこの症例の設計思想は、「足りないところを全部埋める」ではなく、「患者様が長く使い続けられる現実的で安定した補綴を作る」ことにありました。インプラントの構造そのものについては、
→ インプラントの構造
で詳しく説明しています。
手術と治療経過
手術は局所麻酔下で行いました。埋入本数は2本、使用したインプラントはストローマン社のものです。術前CTで骨幅約6mm、骨高10mm以上が確認でき、骨質も比較的密度の高いType 1相当と判断されたため、追加のGBR(骨造成)は行わずに埋入しました。初期固定は良好で、埋入トルクは35Ncmを得ることができました。手術時間は約55分で、比較的スムーズに終了しています。
術後経過は概ね良好でした。腫れはほとんど認められず、患者様も日常生活に大きな支障はなかったとのことでした。一方、痛みは術後3日程度続き、鎮痛薬を計6錠服用されました。これは術後反応として大きく逸脱したものではなく、想定範囲内の経過です。特に上顎臼歯部では、骨質や術式によって術後反応に差が出ますが、本症例では強い腫脹や感染徴候は認めませんでした。術後の痛みや腫れについては、
→ インプラント術後の痛み
→ インプラント術後の腫れ
も参考になります。
埋入後は治癒期間を十分に確保し、その後補綴処置へ移行しました。治療期間は全体で約6か月、通院回数は5回です。インプラント治療は「手術をしたらすぐ終わり」ではなく、骨との結合、軟組織の治癒、上部構造装着後の咬合調整まで含めて1つの治療です。今回の症例では、手術単独ではなく、補綴完成後にどれだけ安定して噛めるかを最終評価の基準としました。
最終的には、第1小臼歯から第1大臼歯までの3歯分の咬合支持を回復し、患者様は「奥歯で物が噛みやすくなった」と実感されました。見た目を主目的にした症例ではありませんでしたが、臼歯部での支持が回復したことで食事のしやすさが改善し、部分入れ歯特有の着脱や異物感から解放されたことも大きなメリットでした。
長期管理と歯科医師の解説
インプラント治療は、上に歯が入った時点で終わりではありません。特に本症例のように、長年の部分入れ歯使用歴があり、残存歯にも過去の負担が蓄積している患者様では、インプラント部位だけでなく口腔全体を継続的に管理することが重要です。定期メンテナンスでは、インプラント周囲の清掃状態、歯肉の炎症、咬合接触、上部構造の緩みや破損の有無、残存歯の歯周状態などを確認していきます。インプラントの寿命は、埋入時の成功だけでなく、治療後の管理に大きく左右されます。
→ インプラントの寿命
もぜひご覧ください。
よくあるご質問
Q1. 奥歯が4本なくても、3本分の補綴で大丈夫なのですか?
症例によります。常に最後方臼歯まで補綴すべきとは限らず、対合歯の状態、咬合支持、機能要求をみて判断します。本症例では第1大臼歯までの回復で機能的に十分と判断しました。
Q2. 糖尿病があってもインプラントはできますか?
血糖コントロールの状態によります。すべての糖尿病患者様が適応外というわけではありませんが、感染や治癒遅延のリスクを踏まえた慎重な管理が必要です。
Q3. 部分入れ歯のほうが簡単ではありませんか?
簡便さという点では入れ歯に利点がありますが、違和感、支台歯への負担、咀嚼能率、装着感などは症例により大きく異なります。本症例では、患者様の過去の経過からインプラントの方が合理的と判断しました。
Q4. インプラント2本で3本分の歯を支えて問題ないのですか?
埋入位置、骨条件、咬合設計、補綴形態が適切であれば可能です。ただし、すべての症例で同じ設計ができるわけではなく、力のかかり方を十分に計算する必要があります。
歯科医師の解説
この症例の本質は、「インプラントを何本入れたか」ではなく、「これ以上欠損を広げないために、どの治療が最も持続可能か」を考えた点にあります。部分入れ歯は優れた治療法ですが、患者様の経験や欠損様式によっては、支台歯への負担や違和感が大きな問題になります。一方、インプラントも万能ではなく、骨条件、全身状態、清掃能力、咬合設計が整って初めて長期安定が期待できます。
本症例では、骨幅6mm以上、骨高10mm以上、Type 1相当の骨質、安定した咬合、良好な歯周状態という条件がそろっており、過度な追加処置を行わず、必要十分な範囲の機能回復を行うことができました。Eden Dental Officeでは、欠損した本数だけを見るのではなく、その方の今後10年、20年を見据えた設計主導の治療を大切にしています。
治療のリスク・副作用・費用・期間
治療期間
約6か月(治癒期間・補綴治療を含む)
治療回数
5回
費用
インプラント2本+3歯分インプラントブリッジ 150万円(税込)
※自由診療です。費用は症例条件や使用材料により異なる場合があります。
リスク・副作用
・術後に痛みや腫れが生じることがあります
・全身状態や骨条件により治癒に時間を要することがあります
・清掃不良や咬合負荷により、インプラント周囲炎や補綴トラブルが起こることがあります
・長期安定のためには定期的なメンテナンスが重要です
名古屋でインプラント治療を検討されている方へ
インプラント治療では
・骨の状態
・噛み合わせ
・補綴設計
などを総合的に診断することが重要です。
当院のインプラント治療の考え方や治療の流れについては、以下のページで詳しく解説しています。
→ 名古屋でインプラント治療を検討されている方へ
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implntology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
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