食事のたびに、特定の歯だけがズキンと痛む。硬いものを噛んだときだけ響く。噛んだ瞬間ではなく、離した瞬間に鋭く走る。
同じ「噛むと痛い」という言葉でも、その中身はまったく異なります。そして原因が違えば、必要な処置も、その歯の将来も変わります。
まずお伝えしたい結論は三点です。
- 「噛むと痛い」は病名ではありません。 被せ物のわずかな高さ、歯の内部のひび、根の先の炎症、歯ぐきの中の膿、金属の下で進んだ虫歯、歯以外に原因がある痛み、そして歯の根の破折。少なくとも七つの原因が、同じ症状を作ります。
- そのうち複数は、削らず抜かずに解決します。 最も多いのは、治療した歯が他の歯より0.1mmほど高い、というだけのケースです。数分の調整で改善することも珍しくありません。
- 一方で、最も深刻な歯根破折だけが、抜歯という取り消せない結論に直結します。 だからこそ、その診断は最後に、慎重に置かれるべきものです。
歯の根が縦に割れる状態を「歯根破折」と呼びます。日本の歯科医院での抜歯理由を調べた研究(2015年・日本)では、抜かれた歯の約31.7%が歯根破折によるもので、そのうち93.6%が神経を取る治療を受けた歯だったと報告されています。決して珍しい病態ではありません。
しかし、それは裏を返せば、「噛むと痛い」と訴えて来院した方の全員が破折しているわけではない、ということでもあります。破折は、他の原因を一つずつ外していった先に、最後まで残るものです。最初から破折と決めてかかると、調整だけで治る歯まで抜かれてしまいます。
名古屋の当院にも、他院で説明を受けたあと、その場では決めきれずに栄や伏見のオフィスから昼休みにお越しになる方がいらっしゃいます。多くの方が口にされるのは「痛みの理由が、まだ腑に落ちていない」という感覚です。
その感覚は、正しいものです。検査を足すこと、数週間待つこと、別の医師に意見を求めること。これらはすべて、やり直しがききます。 抜歯だけが、後戻りできません。
何もしていなくてもズキズキと脈打つように痛む場合は、原因の探し方が変わります。→ 歯がズキズキ痛む時のセカンドオピニオン|原因の見極め で整理しています。





