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前の歯医者に不満を言えない・気まずい・クレーマーと思われたくない
歯医者に不満を言えないとき、止めているのは3つの別々の気持ちです
「前の先生には、言えなくて」
「前の先生には、言えなくて」。名古屋・伏見の当院で他院の治療についてご相談をお受けするとき、いちばん多く聞く言葉です。
先にお伝えしておきます。この記事は、言えないという気持ちそのものを整理するための記事です。相談のかたちをどう選ぶか、動く前に何に注意するかは(→ 他院で治療した歯の相談の仕方|言いづらい方へ【完全ガイド】)にまとめていますので、そちらをご覧ください。ここでは、なぜ言葉が出てこないのかという一点にしぼってご説明します。
お話を伺っていると、「言えない」とひとことで表現されるお気持ちは、実際には性質の違う3つに分かれています。
中身:治してもらった相手に対して「気になるところがある」と口にすること自体への抵抗。
中身:他院に行ったことが、前の医院に伝わってしまうのではないかという不安。
中身:伝えた結果、扱いが変わったり、面倒な患者だと見られたりするのではという心配。
この3つは、ほどき方がそれぞれ違います。ひとまとめに「気にしすぎですよ」と片づけてしまうと、どれも解けません。この記事では、②を第2章で、③を第3章で扱います。まず①からご説明します。
不満を言葉にしにくいのは、歯科の側の事情も関係しています
歯科医師に聞き取りをした調査では、多くの歯科医師が「説明して同意をもらうこと」と「一緒に決めること」を混同していたと報告されています。説明はするけれど、一緒に決める対話にはなっていない、ということです。
いちばんの理由として挙げられていたのは、時間の制約でした。加えて、訴訟への不安から「決められたとおりに進める」ことが守りの手段になっている、とも指摘されています。
つまり、話しにくい空気は、患者さん側の遠慮だけが作っているものではありません。言葉が出てこないのは、あなたの性格の問題ではない、ということです。
すでに何かが入っている歯ほど、歯科医師の意見は割れます
もうひとつ知っておいていただきたいことがあります。歯科医師の判断は、思われているほど一致しません。
複数の歯科医師が同じ患者さんの歯を別々に診た研究では、意見がもっとも割れたのが、すでに詰め物や被せ物が入っている歯でした。「治療したほうがよい」と誰かが判断した歯のうち、全員の意見が一致したのは2割ほどにとどまります。
これは、今かかっている先生の判断が誤っているという話ではありません。別の歯科医師に見てもらうと違う説明が出てくるのは、むしろ普通のことだ、という話です。ですから「違う意見を聞きたい」と思うこと自体は、前の先生への不満表明とイコールではありません。
言い出せないまま時間が過ぎている方は、少なくありません
日本で行われた大規模な調査では、「もっと早くから歯の検診や治療をしておけばよかった」と答えた方が4人に3人にのぼりました。受診を先延ばしにするほうだと答えた方も、半数を超えています。
言えないまま時間だけが過ぎるというのは、多くの方が通る道です。そのうえで、歯の側の変化は待ってくれない、というのが難しいところです。
「転院したら前の医院に知られる?」実際に伝わること・伝わらないこと
気まずさの正体
先ほどの②、気まずさの正体です。ここは気持ちの問題ではなく仕組みの問題なので、事実を並べればほどけます。
他院を受診したことが、前の医院に通知される仕組みはありません
保険診療の記録(レセプト)は、受診した医療機関がそれぞれ審査支払機関や保険者へ提出するものです。歯科医院どうしがお互いの記録を見合う仕組みではありません。あなたが別の医院を受診したことが、前の医院へ自動的に知らされることはないとお考えください。
マイナ保険証で共有されるのは「新しい医院があなたの情報を見る」方向です
マイナンバーカードを健康保険証として使う場合、受付の顔認証付きリーダーや窓口で「診療情報や薬剤情報の提供に同意しますか」という確認があります。ここで同意すると、受診した医院が過去の受診歴や薬剤情報を閲覧できます。
大事なのは向きです。情報は「あなた → 今かかろうとしている医院」へ流れるだけで、前の医院に何かが届くわけではありません。また、同意しないという選択もできます。同意していない情報が提供されることはありません。
・あなたが他院を受診したという事実
・他院で何を相談し、どんな説明を受けたか
・他院でどんな治療を受けたか
・あなたご自身が、前の医院にレントゲンや資料を請求したとき
・あなたご自身が、前の医院に紹介状を依頼したとき
つまり前の医院に伝わるかどうかは、あなたが決められます。資料を取り寄せずに相談だけ受けることもできますし、資料をお願いする場合も、理由を細かくご説明いただく義務はありません。
ひとつだけ、気に留めておくとよいこと
ご家族の健康保険の扶養に入っている場合、保険者から世帯宛に届く医療費のお知らせに、受診した医療機関の名前が記載されることがあります。前の歯科医院に伝わるという話ではありませんが、ご家族には受診先が見える場合がある、という点だけ知っておかれるとよいと思います。
また、当院を含め医療機関には守秘義務があります。伺った内容を前の医院へお伝えすることはありません。「前の先生には知らせないでほしい」とご希望があれば、最初にそうおっしゃっていただければ結構です。
「クレーマーだと思われたくない」という遠慮が、診断から情報を消してしまう
3つ目の理由
3つ目です。当院でも、ひととおり伺ったあとで「実は、ずっと言えていなかったんですが」と話が続くことが少なくありません。私がこの遠慮を気にするのは、感情の問題としてではなく、診断の材料が減ってしまうからです。
まず、前の治療を批判することはありません
当院では、前に治療を受けた医院や担当医を批判することはしません。方針としてそうしている、というより、それが職業上の規範だからです。米国の歯科医師の職業倫理でも、同僚の治療を不当に評価することは戒められています。私は米国で補綴の専門教育を受けており、その規範のもとで診療しています。
ですから、あなたが不満を口にされたとしても、その言葉が前の先生への評価として扱われることはありません。私が伺っているのは、評価ではなく経過です。
黙っておられると、3つの情報が消えます
入れた直後から気になっていたのか、しばらく経ってから変わったのか。ここで原因の見当が大きく変わります。レントゲンには写りません。
冷たいもののときだけか、噛んだときか、朝だけか。検査で再現できない症状ほど、この情報が診断を分けます。
前の医院でどう説明され、何を選ばれたか。同じ判断を繰り返さないために必要です。資料だけでは分かりません。
この3つは、いずれも患者さんしか持っていない情報です。写真もレントゲンも、撮った瞬間の形しか写しません。そこに至るまでの時間の流れは、お話を伺う以外に知る方法がありません。
「クレーマーだと思われたくない」という遠慮でこの3つが伏せられると、私の手元には形の情報しか残らず、結果として原因の見立てが浅くなります。遠慮の代償を受け取るのは、前の先生ではなく、あなたの歯です。
不満という言葉を使わずに伝える方法|「評価」ではなく「経過」を話す
「遠慮せずにどうぞ」と言われても、言葉は出てこないものです
とはいえ、「では遠慮せずにどうぞ」と申し上げても、言葉は出てこないものだと思います。ここでは、不満という形にしなくても必要な情報が伝わる話し方をご紹介します。
評価の言葉は、使わなくて構いません
「下手だった」「失敗されたと思う」といった評価の言葉は、口にするのに勇気が要りますし、実は診断にほとんど使えません。代わりに、次のような事実だけをお話しいただければ十分です。
× 「前の治療がうまくいかなかったんです」
○ 「3年前に入れて、去年の秋から噛むと違和感があります」
× 「説明が足りなかったと思います」
○ 「保険か自費かの違いは聞きましたが、素材の違いまでは分かっていません」
どちらも、誰かを責める言葉は一つも入っていません。それでいて、先ほどの「いつから」「どんな場面で」「何と説明されたか」は伝わっています。
声に出すのが難しければ、書いて渡す方法もあります
問診票の余白や、ご自宅で書いてこられたメモをそのままお渡しいただいても構いません。診察室で口に出すより、紙のほうが書きやすいという方は実際に多くいらっしゃいます。
また、「前の先生の批判はしたくないので、そこは触れないでください」と最初に線を引いていただいて結構です。こちらもその前提でお話しします。
言えなかった、という事実そのものも情報です
当院では、「気になっていたが言えなかった期間」も問診の項目として扱っています。半年言えずにいたのか、3年言えずにいたのかで、症状の経過も、次の治療で優先すべきことも変わってくるからです。
ですから、「言えていませんでした」というひとことは、遠慮ではなく、診断に役立つ情報としてお聞きしています。
まとめ|歯医者に不満を言えないとお感じの方へ + よくあるご質問
まとめ|この記事の要点
最後に、この記事の要点を整理します。
1 「言えない」は、不満・気まずさ・クレーマー扱いへの不安の3つに分かれる
2 他院を受診したことが前の医院に自動で伝わる仕組みはない
3 伝わるのは資料や紹介状を依頼したときだけで、依頼するかは自分で決められる
4 黙っていると「いつから・どんな場面で・何と説明されたか」が診断から消える
5 評価の言葉は不要で、事実と経過だけ話せば十分
気持ちが整理できたら、次は相談のかたちを選ぶ段階です。予約前に確認しておきたいことや、相談の進め方は次の記事にまとめています。
- 相談のかたちの選び方と、動く前の注意点を知りたい方へ(→ 他院で治療した歯の相談の仕方|言いづらい方へ【完全ガイド】)
- 相談したあと、元の医院とどう付き合うかを知りたい方へ(→ セカンドオピニオン後の元の医院との関係)
- 相談当日に何が話せるのかを知りたい方へ(→ セカンドオピニオン当日の流れ)
- やり直し治療の全体像を知りたい方へ(→ 名古屋で他院治療のやり直し・再治療をお考えの方へ)
よくあるご質問
Q1. 他院に相談したことが、今の歯医者に知られてしまいませんか。
保険診療の記録は医院どうしで共有される仕組みではないため、受診したことが自動的に伝わることはありません。伝わるとすれば、あなたご自身が前の医院に資料や紹介状を依頼した場合です。依頼するかどうかはご自身で決められます。
Q2. マイナ保険証を使うと、前の医院での治療内容が全部見られてしまうのですか。
受付で情報提供に同意された場合に、受診先の医院が過去の受診歴や薬剤情報を閲覧できる仕組みです。同意しない選択もできます。なお情報が流れるのは新しい医院に向けてであり、前の医院に何かが届くものではありません。
Q3. 前の先生の批判をしたくありません。それでも相談できますか。
できます。当院では前の医院や担当医を批判することはありません。伺いたいのは評価ではなく、いつからどんな症状があるかという経過です。「その話には触れないでください」と最初におっしゃっていただいて構いません。
Q4. 不満をうまく言葉にできないのですが、どう伝えればよいですか。
評価の言葉は不要です。「いつ入れたか」「いつから気になるか」「どんなときに感じるか」の3つを、事実としてお話しいただければ十分です。口に出しにくければ、メモに書いてお渡しいただいても構いません。
Q5. 何年も言えないまま過ぎてしまいました。今さら相談してもよいのでしょうか。
問題ありません。言えなかった期間の長さも、経過を知るうえで意味のある情報として伺っています。ただし歯の状態そのものは時間とともに変わりますので、気になった時点でご相談いただくほうが、選べる方法は多くなります。
※お口の状態には個人差があり、同じ症状でも原因や適した方法は異なります。ここでご説明した内容は一般的な考え方であり、実際の診断・治療方針は診査のうえで決まります。
関連する内容は以下のページでご説明しています。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
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