症例
名古屋 右上奥歯の重度虫歯に対してインプラントで修復した症例 62歳男性
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治療前

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治療後

患者背景と症例概要
今回は、名古屋市栄在住の62歳男性で、他院にて右上奥歯の重度虫歯により抜歯が必要と説明された後、「本当にこの歯は抜かないといけないのか」「もし抜くなら一番良い方法で治したい」という思いからご相談いただいた症例です。前医では十分な説明がないままインプラント治療を勧められたことで、かえって不安が強くなり、お問い合わせをいただきました。インプラント治療は、単に歯を入れる治療ではありません。抜歯が妥当かどうか、抜歯後の骨の状態、噛み合わせ、清掃性、将来のむし歯や歯周病のリスクまで含めて総合的に判断する必要があります。特に奥歯では、強い咬合力がかかるため、治療法の選択を誤ると数年後に再治療が必要になることもあります。
インプラントの基本的な仕組みや治療の流れは、インプラントとは何か|治療の流れ の解説も併せてご覧ください。
このページでは、右上奥歯の重度虫歯に対して、抜歯後に骨造成を行い、治癒を待ってからストローマンBLXインプラントを1本埋入した症例をご紹介します。名古屋で「抜歯と言われたが本当に抜歯なのか確認したい」「ブリッジとインプラントのどちらが自分に合うのか知りたい」「説明をきちんと受けたうえで納得して治療したい」と考えている方にとって、参考になる内容です。
症例まとめ
患者:名古屋市栄在住 62歳男性
主訴:右上奥歯を抜かないといけないのか知りたい。抜くなら最善の方法で治したい
初診時所見:右上奥歯は重度虫歯により見えている歯質がほとんど消失
治療方針:抜歯後に骨造成を行い、治癒後にインプラント1本埋入
使用インプラント:ストローマン BLX
治療期間:約6か月
費用:66万円(税込)
初診時の診断
初診時のCTおよび口腔内診査では、問題となっていた右上奥歯は虫歯により歯冠部の大半が失われていました。一方で、歯根自体はまだ残存しており、根尖部周囲に明らかな根尖性歯周炎を示す所見は認めませんでした。つまり、急性炎症が強く出ている状態ではなく、画像上は周囲骨の破壊も大きくありませんでした。
しかし、臨床的には見えている歯質がほとんどなく、長期的に安定して修復物を維持できるだけの健全歯質を確保することが難しい状態でした。このようなケースでは、一時的に被せ物や土台で対応できたとしても、将来的な破折や再治療のリスクが高くなります。そのため、単に「根が残っているから保存できる」と判断するのではなく、残存歯質量と予後の見通しを含めて評価することが重要です。
骨の条件については、抜歯後にインプラント治療を行う前提で評価したところ、骨幅・骨高ともに良好で、インプラント前提としては理想的な状態でした。上顎臼歯部では骨の高さや上顎洞との距離が問題になることがありますが、本症例では埋入計画に支障をきたすような骨量不足は認めませんでした。
骨が足りない場合の考え方については、
→ 骨が足りないと言われた場合のインプラント治療
も参考になります。
咬合状態についても、問題歯以外の歯は残存しており、全体として咬み合わせは安定していました。咬合崩壊が起きている症例では治療の難易度が大きく上がりますが、本症例では局所的な1歯欠損として比較的設計しやすい条件が揃っていました。
歯周状態に関しては重度歯周病の所見は目立たず、むしろこの患者様では歯周病リスクよりもカリエスリスクの方が高いと判断しました。口腔衛生指導によりブラッシング状況は改善しましたが、清掃性にはやや注意が必要であり、将来的な二次カリエスの観点を含めた補綴設計が重要なケースでした。
治療計画と設計思想
治療選択肢の比較
この症例で患者様にご説明した主な選択肢は、ブリッジ、部分入れ歯、インプラントの3つです。さらに、あえて治療しない場合に何が起こるかについても説明しました。
まずブリッジは、固定式で違和感が少なく、比較的短期間で治療しやすい方法です。患者様も取り外し式を希望されなかったため、固定式という意味では候補になりました。ただし、ブリッジでは失った歯の両隣の歯を削る必要があります。今回の患者様は歯周病リスクよりカリエスリスクが高い傾向があり、今後の清掃状態によっては支台歯に二次カリエスが起こる懸念がありました。特に奥歯のブリッジは連結部の清掃が難しく、支台歯の寿命に影響することがあります。
このため、今回は「固定式であること」だけではなく、将来どの歯を守れるかという視点で比較する必要がありました。ブリッジとインプラントの違いは、
→ インプラントとブリッジの比較|削る治療と削らない治療
でも詳しく説明しています。
次に部分入れ歯は、隣在歯を大きく削らずに補綴できる方法です。ただし、装着感や異物感が出やすく、咀嚼時の安定性も固定式より劣ることがあります。患者様自身が取り外し式を希望されていなかったこと、また1歯欠損でほかの歯がしっかり残っていたことを考えると、第一選択にはなりませんでした。
インプラントは、欠損部に単独で人工歯根を埋入するため、両隣の天然歯を削らずに固定性の回復が可能です。清掃性や設計次第では、周囲歯への負担を抑えつつ、機能的にも自然に近い回復が期待できます。一方で、外科処置が必要であり、治療期間も一定程度かかります。術後管理が必要で、メンテナンスを怠るとインプラント周囲炎のリスクもあります。
さらに、何もせず放置した場合のリスクについてもお話ししました。上顎の奥歯を失ったままにすると、隣の歯、特に後方の歯が欠損部へ傾斜しやすくなります。また、対合歯が挺出して咬み合わせの高さが乱れることもあります。1本の欠損でも、長期的には口腔全体の治療を複雑にする可能性があるため、何らかの形で欠損補綴を行うことが望ましいと説明しました。
最終的にインプラントを選択した理由
本症例では、患者様が固定性の治療を希望されていたことに加え、歯周病リスクよりもカリエスリスクの方が高いという点が重要でした。ブリッジは固定式ではありますが、支台歯を削ること、そして二次カリエスが起こった場合に周囲の天然歯まで再治療が必要になることがあります。今回の患者様では、将来的な支台歯のリスクを考えると、天然歯をこれ以上巻き込まないインプラントの方が合理的と判断しました。
抜歯即時埋入ではなく待時埋入を選んだ理由
抜歯と同時にインプラントを入れる抜歯即時埋入も検討しましたが、今回の症例では抜歯窩の形態と最終的に理想とするインプラントポジションが十分に一致しませんでした。無理に即時埋入を行うと、埋入方向や初期固定、周囲骨の厚みの点で不利になる可能性があります。そのため、まず抜歯を行い、同時に骨造成をして抜歯窩の治癒を待ち、3か月後に骨の回復を確認してからインプラントを埋入する計画としました。
骨が少ない場合の骨造成について はこちら
設計思想
当院では、インプラント治療を「埋めること」ではなく、「長期に安定して機能するように設計すること」が重要だと考えています。本症例では1本の臼歯部インプラントであるため、周囲歯との調和、清掃性、咬合力のコントロールが設計の中心になります。
咬合接触については、強すぎる点接触を避け、周囲の天然歯とのバランスをみながら過大な側方力がかからないように調整することが重要です。上顎臼歯部は咀嚼時の負担が大きいため、単に噛めればよいのではなく、長期的にネジの緩みや上部構造の破損、周囲骨への過負荷が起きにくい設計を目指します。
上部構造は、見た目だけでなく強度、適合性、清掃性も考慮して選択します。さらに、固定方式や連結部の形態も、将来のメンテナンス性に関わります。今回のようにカリエスリスクが高い患者様では、天然歯を守るという観点が非常に重要であり、その意味でも単独で完結できるインプラントは設計上の利点が大きいと考えました。
インプラント治療で重要な「設計」の考え方は、
→ 長持ちするインプラント治療に必要な設計とは
のページでも解説しています。
手術と治療経過
治療は、まず保存困難と判断した右上奥歯を抜歯するところから開始しました。抜歯時には、将来のインプラント埋入を見据えて周囲組織への侵襲をできるだけ抑えながら処置を行いました。そのうえで、抜歯窩の治癒後に十分な骨量を確保するため、抜歯と同時に骨造成を行いました。
抜歯即時埋入は行わず、まずは抜歯部位の骨が安定して再生するのを待つ方針とし、約3か月の治癒期間を設けました。この待機期間を設けたことで、埋入時にはより無理のないポジションでインプラントを計画でき、結果として骨造成を追加せずにインプラント埋入を行うことができました。

埋入時には、ストローマンBLXを1本使用しました。今回の症例では、抜歯後に骨造成を先行していたため、埋入時のGBRは不要でした。手術時間は約40分で、局所麻酔下で安全に終了しています。また、オペを安全に行うためのガイドも使用いたしました。当院では、全患者様に使用しています。
詳しくはこちら サージカルガイドって?
術後経過は良好で、腫れや痛みは当日のみ軽度に認めたものの、翌日からはほとんど気にならないレベルまで落ち着きました。上顎臼歯部のインプラント手術では術後症状を心配される方が多いですが、適切な診断と無理のない術式を選ぶことで、術後反応を比較的軽く抑えられるケースもあります。
術後の痛みや腫れについては、
→ インプラント手術後の腫れはどのくらい続く?
もご覧ください。
その後、治癒を待って補綴治療へ進み、最終的に上部構造を装着しました。抜歯、骨造成、治癒期間、インプラント埋入、補綴まで含めた総治療期間は約6か月です。治療期間の目安については、
→ インプラント治療期間はどのくらいかかる?
のページでも詳しく説明しています。
治療完了後は、見た目だけでなく咀嚼機能も安定し、患者様にも非常に満足していただいています。もともと患者様は、前医で十分な説明がないままインプラントを勧められたことに不安を感じていました。しかし当院では、抜歯の必要性、他の治療法との違い、インプラントを選ぶ理由、リスクやデメリットまで丁寧にご説明したことで、納得したうえで治療を受けていただくことができました。
長期管理と歯科医師の解説
インプラント治療は、人工歯を入れたら終わりではありません。長期的に安定させるには、治療後のメンテナンスが非常に重要です。本症例では、治療完了後に3か月ごとの定期メンテナンスをご案内し、咬合状態、清掃状態、歯肉の炎症の有無を継続的に確認しています。さらに、年1回のデンタルX線撮影を行い、インプラント周囲骨の吸収がないか、周辺組織が安定しているかをチェックしています。
インプラント治療後の管理については、
→ インプラントのメンテナンスはなぜ必要?
も参考になります。
今回の患者様は、歯周病よりもカリエスのリスクが相対的に高いタイプでした。そのため、インプラント部位だけでなく、残っている天然歯を今後どう守るかがとても大切です。インプラントが長持ちしても、周囲の天然歯が虫歯で悪くなれば、口腔全体の機能は維持できません。当院では、補綴治療と同じくらい、その後の予防管理を重視しています。
よくあるご質問
Q1. 抜歯と言われた歯でも本当に保存できないのでしょうか?
歯根が残っていても、見えている歯質がほとんどない場合は、長期的に安定して使うのが難しいことがあります。保存できるかどうかは、根の状態だけでなく、残存歯質量や修復後の予後まで含めて判断する必要があります。
Q2. ブリッジよりインプラントの方が良いのですか?
すべての方にインプラントが適しているわけではありません。ただし、今回のようにカリエスリスクが高く、隣の歯を守ることが大切なケースでは、ブリッジよりインプラントが有利になることがあります。
Q3. インプラントはどれくらい痛いですか?
本症例では、術当日に軽い痛みや違和感があったものの、翌日以降は大きな症状はありませんでした。実際の痛みや腫れは術式や骨の状態によって個人差があります。
Q4. 奥歯1本でも治療した方がいいですか?
はい、奥歯1本の欠損でも放置すると、隣の歯の傾斜や対合歯の挺出により咬み合わせが崩れることがあります。早めに補綴方法を検討することが、将来的な口腔全体の安定につながります。
Q5. インプラントが失敗することはありますか?
ゼロとは言えません。初期固定不良、感染、咬合負担、清掃不良などが影響することがあります。だからこそ、術前診断、適切な設計、術後メンテナンスが重要です。
詳しくは、
→ インプラントで失敗しないために知っておきたいこと
をご覧ください。
歯科医師コメント
この症例で重要だったのは、「インプラントができるかどうか」よりも、「その患者様にとって何が最も合理的か」を見極めることでした。前医で十分な説明がないまま治療を勧められると、患者様はインプラントそのものに不信感を抱いてしまうことがあります。しかし実際には、治療法の良し悪しは、診断と設計の質によって大きく変わります。
今回の患者様では、固定性補綴を希望されていたこと、歯周病リスクよりカリエスリスクが高かったこと、隣在歯を削らずに守りたかったことから、インプラントが適した選択肢でした。当院では、単に欠損を埋めるのではなく、10年先、20年先まで見据えて、残せる歯を守りながら治療法を選ぶことを大切にしています。
治療のリスク・副作用・費用・期間
治療期間
約6か月(抜歯、骨造成、治癒期間、インプラント埋入、補綴治療を含む)
費用
66万円(税込)
※インプラント治療は自由診療です。費用は使用材料や治療内容により異なります。
費用の考え方については、
→ 名古屋のインプラント費用相場と内訳
もご確認ください。
リスク・副作用
・術後に腫れや痛みが出ることがあります
・骨や軟組織の状態により追加処置が必要になる場合があります
・清掃不良や咬合負担によりインプラント周囲炎などのリスクがあります
・治療後も定期的なメンテナンスが重要です
名古屋でインプラント治療を検討されている方へ
インプラント治療では、
・骨の状態
・噛み合わせ
・補綴設計
などを総合的に診断することが重要です。
当院のインプラント治療の考え方や治療の流れについては、以下のページで詳しく解説しています。
→ 名古屋でインプラント治療を検討されている方へ
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implntology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン
インプラントをはじめ、審美補綴や義歯などの外科的治療に関するご相談を承っております。その他の治療内容についてもお気軽にお問い合わせ下さい。



