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DSD(デジタルスマイルデザイン)とは

模型には、顔が写っていません

被せ物や入れ歯を実際に作っているのは、歯科医師ではなく歯科技工士です。ところが技工士に渡るのは、多くの場合、歯型の模型だけです。模型には顔が写っていません。そのため口の中だけを見れば整っていても、顔から見ると噛む面が傾いて見えることがあります。DSDは、この顔の情報を設計に取り込むための仕組みです。名古屋でDSDを行う歯科医院をお探しの方に、まずこの一点からお伝えします。

この記事でわかること

  • 技工士に渡るのは模型だけで、顔の向きや唇の位置は模型に写っていない
  • 顔の情報がないまま作ると、噛む面の傾きや歯の出すぎといったずれが起きる
  • DSDは機械の名前ではなく、顔の情報を設計に入れるための手順である
  • 最終の被せ物を作るときだけでなく、いまのずれを確かめる診断のときにも使える

歯を削るのは歯科医師、被せ物を作るのは歯科技工士です

意外に思われるかもしれませんが、被せ物や入れ歯そのものを作っているのは、担当の歯科医師ではありません。歯科技工士という国家資格を持つ専門職が作っています。歯科医師が歯を削って型を採り、その型から起こした模型を技工士に渡します。技工士はその模型の上で被せ物の形を作り、できあがったものを歯科医師が口の中に入れます。この分業は、日本の歯科ではごく当たり前の形です。

模型に写っていないものがあります

問題は、技工士の手元に届く情報の中身です。多くの場合、渡されるのは歯型の模型と、色や形についての短い指示書だけです。顔の真ん中がどこを通っているか。左右の瞳を結ぶ線がどう傾いているか。笑ったときに唇がどこまで上がるか。これらは模型の上には写っていません。技工士は顔を見ないまま、模型という限られた情報だけで形を決めることになります。

念のため申し添えます。これは技工士の技術の問題ではありません。渡している情報が足りていないという、分業の構造の問題です。

顔の情報がないと、こんなずれが起きます

顔の情報が入らないまま作ると、口の中だけを見れば整っているのに、顔から見るとおかしいという状態が起こります。よくあるのは三つです。上下の歯が噛み合う面が左右に傾いていること。歯が前に出すぎていること。そして歯並びの真ん中と顔の真ん中がずれていることです。

その傾きが、どのくらいから気づかれるのかを調べた調査があります。一般の方120名に、噛み合う面の傾きを変えた画像を見てもらった調査です。傾きが2度以上ある画像は、はっきり魅力に欠けると評価されたと報告されています(Silvaら、2019年、J Esthet Restor Dent)。2度という角度は、口の中だけを見ていては管理できません。傾きを比べるための基準が、模型の上にないからです。

DSDは、機械の名前ではありません

DSDという言葉は、2012年にCoachmanとCalamitaという二人が、Quintessence Dental Technologyという雑誌で提唱しました。もとの論文はDSDを、診断の目を広げ、話し合いをしやすくするための考え方の道具だと説明しています。特定の機械や商品を指す言葉ではありません。顔の写真の上に基準線を引き、そこから歯の設計を起こし、模型と仮歯へ落とし込むまでの段取りの名前です。ですから、同じ機材を置いている医院どうしでも、中身は違うことがあります。

その手前にある検査の工程については、別の記事にまとめてあります。

どんな資料がそろうと全体の設計ができるのかを、あわせてご覧ください。

顔の情報を、どこで、どうやって設計に入れるのか

撮る、線を引く、設計する、口の中へ移す

流れは大きく四つの段階に分かれます。はじめに、決まった条件で顔の写真と動画を撮ります。正面から、横から、笑ったところ、話しているところ。撮る距離や高さをそろえるのは、あとから画面の上で長さを測るためです。条件がばらつくと、基準になる画像そのものがゆがみます。

次に、その写真の上に顔の基準線を引きます。顔の真ん中を通る線、左右の瞳を結ぶ線、笑ったときの唇の輪郭。この三つが、歯を置くための土台になります。模型には写っていなかった情報が、ここで初めて設計の土俵に乗ります。

三つ目が設計です。基準線に合わせて、歯の位置、長さ、幅、傾きを画面の上で決めていきます。何度でも直せますし、直す前と後を並べて比べられます。

四つ目が、決めた形を口の中へ移す段階です。設計のデータから試作の歯や仮歯を作り、実際に口の中に入れて確かめます。DSDは、画像ができた時点では終わりません。

診断のときにも使えます

DSDは最終の被せ物を作るときだけの道具だと思われがちですが、そうではありません。診断の段階でも使えます。ここは、あまり語られていない点です。

いまの歯並びを顔の基準線の上に重ねると、噛む面が何度傾いているか、真ん中がどちらへずれているかが、目に見える形になります。治す前の状態を顔から見て確かめる、という使い方です。ここを飛ばすと、何をどこまで直すのかがはっきりしないまま治療が始まってしまいます。私はむしろ、この診断での使い方のほうが大事だと考えています。

たとえば、噛む面が傾いていることに、患者さんご自身は気づいていないことがあります。画像の上に線が引かれて初めて、なるほどと納得されることも少なくありません。

設計どおりに作れているかを比べた実験があります

決めた形を口の中へ移すとき、どのくらいずれるのかを測った実験があります。設計データから機械で削り出した試作の歯と、シリコンの型を押し当てて作った試作の歯を、もとの設計と重ね合わせて比べたものです。ずれは削り出しが平均0.011ミリ、型を使う方法が0.047ミリだったと報告されています(Cattoniら、2019年、BMC Oral Health)。

どちらも髪の毛よりはるかに細い差です。ただ、削り出しのほうがずれは4分の1ほどに収まっていました。デジタルにする値打ちは、設計そのものが上手になることではありません。顔の情報を最初から取り込めること、何度でも作り直して比べられること、そして決めたことを口の中へ移すときのずれが小さいことの三つです。

工程 DSDで行うこと 報告されている利点 注意点
写真と動画を撮る 顔と歯の関係を、条件をそろえて記録する 笑ったときや話すときの動きまで残せる 撮り方がばらつくと基準の画像がゆがむ
顔の基準線を引く 真ん中の線や瞳を結ぶ線を基準に歯を置く 模型では扱えない2度の傾きを扱える 左右非対称の顔ではどの線を優先するか迷う
画面の上で設計する 歯の形、位置、比率を画面で決める 何度でも直せて、複製も共有もできる 出来ばえは手作業と差がなく、腕に左右される
模型と仮歯へ移す 設計データから試作の歯や仮歯を作る 設計とのずれが小さい 材料や口の中の条件までは再現しきれない
顔の立体データと重ねる 顔の形と歯並びを重ね合わせる 顔全体の中での位置を確かめられる 重ね合わせのずれにまだ幅がある
説明して話し合う 完成予想を見ながらゴールを共有する 理解と信頼が良くなったと報告がある 見せた画像への期待が現実を上回りうる

DSDはその考え方を画面の上で扱いやすくした手順であって、考え方そのものではありません。

分かっていること、まだ分かっていないこと|名古屋でDSDを相談する前に

患者さんの満足と理解には、差が報告されています

150名を二つに分けて比べた試験があります。DSDを使ったほうが、満足度の点数は高くなりました。治療の3か月後に良好と判定された割合も、92パーセントと78パーセントで開きがありました(Luniyalら、2024年、J Pharm Bioallied Sci)。

同じ患者さんに、ふつうの説明のあとで完成予想を見せた研究もあります。手順の分かりやすさや、期間と費用と限界の理解が良くなったと報告されています(Ishaq、2026年、Cureus)。

設計そのものの出来は、デジタルにしても変わりません

手で作る石膏の模型と、ソフトの上で作る完成形を、経験10年以上の評価者が採点した研究があります。総合の点数に差はありませんでした(Chisnoiuら、2023年、J Pers Med)。左右のそろい方を比べた研究でも差は出ていません(Hristozovaら、2024年、Dent J)。設計の善し悪しは、道具ではなく人の腕で決まります。

長い年月を追ったデータは、まだありません

複数の研究をまとめた調査が、同じ限界を挙げています。笑顔の予想図が治療の持ちにどう影響するかは、まだ十分に調べられていないという指摘です(Sainiら、2025年、DIGITAL HEALTH)。DSDで治した歯が長く安定するかのデータも限られている、という指摘もあります(Alharkan、2023年、Saudi Dent J)。

今回調べた範囲では、比べた研究が見つからなかった項目もあります。5年以上こわれずに残っている割合、噛む力、費用に見合うかどうか、治療期間が短くなるかどうかの四つです。ないものを、あるようには書けません。

当たる予想と、外れる予想があります

完成予想と実際の結果を照らし合わせた試験があります。よく当たったのは、口角の高さ、笑ったときの口の幅、鼻の下のくぼみの高さでした(Adelら、2024年、Sci Rep)。外れたのは、笑ったときの歯並びの弧、奥歯の見え方、下の前歯の見える量です。

顔の立体データと歯のデータを重ねる正確さにも、まだ幅があります。報告されているずれは0.07ミリから2.86ミリまで開いており、研究者たちも当てにしにくいとしています(Goら、2026年、Eur J Orthod)。

決まった比率に当てはめる設計ではありません

見た目の歯科では、長いあいだ黄金比が語られてきました。しかし自然な歯並びを調べた調査は、自然な笑顔に黄金比が見られるしるしはなかったと結論しています(Dashti、2022年)。決まった比率に当てはめることが目的ではありません。

完成予想を先に見せることには、弊害もあります。絵の見栄えに引っ張られて治療をすすめすぎること、完成予想がそのまま結果になると思い込むことです(Alharkan、2023年)。

相談の前に、ご自身で整理しておけること

  • ☑ いま困っているのは、噛むことか見た目か。両方でも構いませんが、順番を決めておくと話が進みます
  • ☑ どこまで変えたいか、変えたくないか。残したい歯や触ってほしくない部分を先に伝えてください
  • ☑ 顔の情報をどう使っているか。写真や基準線を設計に入れているかを聞いてみてください
  • ☑ 説明に「まだ分かっていないこと」が入っていたか。限界に触れない説明は、判断の材料として足りません

他院の説明を持ち帰って考えたい場合は、必要な資料を先に確かめておくと話が早くなります。

関連記事▶ セカンドオピニオンに必要な書類とは(レントゲン・口腔内写真・見積書)(近日公開)

私が顔の情報をどう扱っているか

ゴールを決めずに走り出さない

米国の大学院で、被せ物や入れ歯で歯を補う分野を学んでいたとき、いちばん驚いたのは診断の文化でした。お口全体を治す患者さんでは、まずろうで完成形の模型を作ります。それを患者さんと一緒に見て、どこまで戻すかを決めます。最初の一本に手をつけるのは、そのあとです。

そこで決めるのは、仕上がりの見た目だけではありません。どの歯を残すか、どこは触らずに置くか、どこで止めるか。やることと同じくらい、やらないことを決める場でした。ゴールを決めずに走り出さない。この順番が、当たり前のこととして徹底されていました。手で触れる形が目の前にあると、この線引きが具体的になります。

このやり方は、顔の情報を扱ううえでも役に立ちます。完成形の模型を口の中に入れて、患者さんの顔と一緒に見るからです。正面から見て真ん中がそろっているか。笑ったときに歯が出すぎていないか。模型を机の上で眺めているだけでは分からないことが、顔の上に戻したとたんに見えてきます。

作る側に顔の情報が届いていないことを、内側から知っています

もう一つ、お話ししておきたいことがあります。ふつうは歯科技工士に任せる製作の工程まで、私は自分の手で行ってきました。設計から仕上げまでを一人で通した入れ歯は、100床近くになります。

自分で作ってみると、模型の上に何が写っていないかがよく分かります。目の前にあるのは、歯型と歯ぐきの形だけです。その人の顔がどちらを向いているか、笑ったときに唇がどこまで上がるか、噛む力に癖があるかどうかは、模型のどこにも書かれていません。作る側は、その足りない部分を経験で補いながら形を決めています。私自身、顔を見ないまま形を決めることの心細さを、作る側として味わいました。

入れ歯は、噛む力を歯ではなく歯ぐきで受けます。ですから設計の狙いが少しずれると、痛みや外れやすさという形ではっきり返ってきます。それを自分で作り直す立場に立つと、設計の段階でどこまで決められて、どこから先は口の中で調整するしかないのかを、区別せざるをえません。

もう一つ分かったのは、経験で補える範囲には限りがあるということです。その人の顔の真ん中がどこにあるかは、推測で当てられるものではありません。模型に写っていない情報は、写真や基準線という形で外から渡すほかありません。

ですから私は、大事なのは、いかに顔の情報をこちらで把握して設計に入れるかだと考えています。顔の写真と基準線を技工士と共有するのは、そのためです。渡す情報を増やせば、作る側が経験で補う部分を減らせます。

仮歯で確かめる工程を省きません

長い年月を追ったデータがまだないという事実から、私が引き出している答えは「使わない」ではありません。仮歯で確かめる工程を省かない、です。もとの論文の手順も、最後は口の中で試して確かめるところで終わっています。

仮歯の期間に見ているのは、見た目だけではありません。硬いものを噛めるか。話しにくい音がないか。歯ブラシと歯間ブラシが届くか。唇を閉じたときに窮屈さがないか。これらは画面の上では確かめられません。合わなければ、そこで設計に戻ります。仮歯を作り替えるのは失敗ではなく、試したうえでの手直しです。

仮歯は、顔の情報が設計に正しく入ったかどうかを確かめる場でもあります。鏡の前で笑っていただき、正面から見て気になるところがないかを一緒に見ます。そこで気づいた点を、最終の被せ物の設計に戻していきます。

設計の中身を文字にして渡してもらえるかどうかも、あわせて確かめてください。画像と書面は役割が違い、両方そろって初めて判断の材料になります。顔の情報をどこまで集め、どこまで渡せているか。私が設計のたびに確かめているのは、この一点です。

まとめ|DSD 歯科は、顔の情報を設計に入れる仕組みです

ここまでを整理します。被せ物や入れ歯を作る技工士に渡っているのは、多くの場合、歯型の模型だけです。模型には顔が写っていないため、口の中では整っていても、顔から見るとずれることがあります。DSDは、その顔の情報を設計に取り込み、患者さんの望む見た目に近づけるための手立てです。最終の被せ物を作るときだけでなく、いまのずれを確かめる診断の段階でも使えます。名古屋でDSDを行う歯科医院を探すときに確かめたいのは、機材があるかどうかではありません。顔の情報をどう設計に入れているか、そして限界の説明があるかどうかです。

治療計画書とDSDを合わせて見渡したい方は、まとめ役の記事もあわせてご覧ください。

いま受けている説明に迷いがある方は、進め方だけ先に知っておくのも一つの手です。

名古屋で相談先を探している段階でも、まずは無料相談で構いません。

DSDが自分の前歯に向くかどうかは、顔と歯の写真を見れば分かります。

よくあるご質問

Q1. 技工士さんに、顔の情報は伝わるのですか。

何もしなければ、ほとんど伝わりません。渡るのは歯型の模型と短い指示書だけ、というのが一般的だからです。ですから私は、決まった条件で撮った顔の写真と、そこに引いた基準線を、模型と一緒に共有するようにしています。顔の真ん中の位置や、笑ったときに唇がどこまで上がるかが分かれば、作る側は判断できる材料が増えます。これは技工士の技術の問題ではなく、渡す情報の量の問題です。

Q2. シミュレーションで見た通りの歯になりますか。

そのままになるとはお約束できません。予想が当たりやすいところと、当たりにくいところが分かれているためです。口角の高さや笑ったときの口の幅は比較的よく当たります。一方で、笑ったときの歯並びの弧や奥歯の見え方は外れやすいと報告されています(Adelら、2024年)。動きや奥行きが関わるものほど、外れやすいとお考えください。ですから私は、画像でお見せできる範囲と、仮歯で確かめないと分からない範囲を、最初に分けてお話しします。

Q3. DSDは保険で受けられますか。

日本の公的医療保険は、削る、詰める、被せるといった処置ごとに値段が決まる仕組みです。そのため、顔全体を見て口の中をどう設計するかを考える工程そのものには、項目が用意されていません。DSDが自費の治療で行われるのは、技術の優劣というより制度の作りによるものです。保険の治療が劣っているという意味ではありません。

Q4. 作り物のような歯になるのが不安です。

その心配は珍しいものではありません。少人数に詳しく聞き取った研究ですが、参加者全員が、整えすぎた仕上がりよりも自然に見える口元を選んだと報告されています(Tallaricoら、2025年)。どこまで整えるかは、数値ではなく言葉で決めます。カウンセリングルームは完全個室、診療室は半個室です。Eden Dental Officeは名古屋市中区栄、地下鉄「伏見駅」6番出口から徒歩2分にあり、完全予約制です。他院の説明について第三者の意見が欲しい場合は、セカンドオピニオン外来(5,500円税込)もございます。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえで、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明し、書面でお渡ししたうえで進めます。治療の内容によっては、外科的な処置や装置の作り替え、治療後の継続的な管理が必要になることがあります。

同じハブに属する記事です。この記事で詳しく触れなかった論点は、それぞれの記事にまとめています。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

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