金属の土台を外す作業は、なぜ時間とリスクを伴うのでしょうか

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土台(メタルコア)の除去はなぜ難しい

ぴったり作られているから、外れにくいのです

「まず土台を外さないといけません」と言われたら

名古屋 メタルコア「根の治療をやり直すには、まず土台を外さないといけません」。そう説明されて、戸惑われた方も多いと思います。土台を外すだけなのに、なぜ時間もリスクもかかるのか。理由は、その土台が根の形をそのまま写して作られているからです。ぴったり入っているものほど、外しにくい。この記事では、何が起きているのかと、外すことのリスク、そして外さずに済ませる道があるのかをご説明します。

まず、土台とは何かからお話しします。

神経を取った歯は、内側が空洞になります。この空洞に芯を立てて、その上に被せ物をのせます。この芯が土台です。金属で作られたものをメタルコアと呼びます。

作り方には2通りあります。ひとつは、根の中の形を型取りして、その形どおりに金属を鋳造する方法。もうひとつは、あらかじめできている既製の棒を差し込む方法です。日本で長く使われてきたのは前者です。

ここに、外しにくさの理由があります。型取りして作った土台は、根の内側の壁と全面で接しています。接着材だけで留まっているのではなく、根の壁との摩擦で保持されているのです。ネジのようにひねって外せる構造ではありませんし、引っ張っただけでは動きません。

ですから外すときは、まず接着材の層に細かいひびを入れて、摩擦を解いてやる必要があります。ここに超音波の器具を使います。振動で接着材を壊し、緩んだところで引き抜くという手順です。

身近なものでたとえると、こういうことです。円錐形の栓を、同じ形の穴にぴったり差し込んだ状態を想像してください。まっすぐ引き抜こうとしても、側面がぴったり接しているので動きません。ゆるめるには、まず接している面のあいだに隙間を作る必要があります。土台を外す作業は、この隙間を作る作業です。

そして、この栓は根の中に埋まっているので、横から手をかけることができません。上から見えている部分は、被せ物を外したあとのわずかな面積だけです。ここが、外しにくさをさらに大きくしています。

土台の長さも関係します。抜いた歯81本を使った実験では、長さ5ミリの土台と7ミリ以上の土台とで、外しやすさに明らかな差がありました。ただし、7ミリと9ミリのあいだには差が出ていません。ある長さを超えると、それ以上は変わらないということのようです。

接着材の種類でも変わります。抜いた歯30本を使った実験では、超音波で外すのにかかった時間が、材料によって大きく違いました。ある材料では平均約60秒、別の材料では約169秒、もっとも外しにくい材料では約285秒です。5倍近い開きがあります。しかも、いちばん外しにくい材料では10本中2本が最後まで外れず、そのうち1本には縦のひびが入っていました。

なぜ日本で型取りして作る土台が多いのかにも、背景があります。この方法は、根の形が複雑でも確実に合う土台を作れるという利点があり、長く標準的な方法として使われてきました。当時の材料と技術のなかでは、理にかなった選択でした。ですから、いま外しにくいからといって、前の治療が不適切だったということにはなりません。私が原因の分析だけをお話しするのは、この理由からです。

近年は、しなやかな素材の土台も増えています。こちらは接着で留めるため、外すときは削り取ることになります。方向を誤ると健康な歯を削ってしまうので、簡単というわけでもありません。どちらにも、外すときの難しさがあります。

そもそも根の治療をやり直すことになった経緯や、どんなときに適応になるのかは(→ 再根管治療とは|定義と適応)にまとめています。

外す方法と、それぞれのリスクを比べる

外す方法にはいくつか種類があります

外す方法にはいくつか種類があります。それぞれ、得意なことと苦手なことが違います。

超音波で緩める

どんなやり方か:振動を当てて接着材を壊し、摩擦を解く

報告されている数字:報告によって成功率90パーセント前後、平均110秒前後

注意点:注水しないと熱が出る。長時間当てるとひびが入ることがある

専用の器具で引き抜く

どんなやり方か:土台をつかんで、まっすぐ引き上げる

報告されている数字:専門医の記録では1,600本すべてで除去でき、平均約3分

注意点:力の向きがずれると、根に負担がかかる

周りを削って取り出す

どんなやり方か:土台の周囲を細いドリルで削って外す

報告されている数字:削られる根の量が超音波の約6倍という比較がある

注意点:歯質を大きく失う。曲がった根では穴があく危険が上がる

外さずに進める

どんなやり方か:土台を残したまま、外科的な処置などを検討する

報告されている数字:―

注意点:根の中の問題には届かない場合がある

数字を見ると、超音波と専用器具の成績がよく見えます。ただし、ここには注意が要ります。

1,600本すべてで外せたという記録は、この分野を専門とする1人の歯科医師が、自分の診療を振り返って書いたものです。難しい症例が最初から別の医院に回っていた可能性を除けません。ですから、これがそのまま一般的な数字だとは言えません。

もうひとつ、比べるときに気をつけたいことがあります。抜いた歯を使った実験は、実際の口の中とは条件が違います。ある研究では、歯の周りの組織を模した状態で試したところ、超音波で緩む効果そのものが消えてしまいました。歯が固定された台に埋まっているのと、生きた組織に支えられているのとでは、振動の伝わり方が変わるためです。ですから、実験室の数字は目安として読む必要があります。

削る量については、はっきりした差が出ています。器具の破片を取り出す実験ではありますが、周りを削って取り出す方法では根の内側が4.50立方ミリ広がったのに対し、超音波では0.75立方ミリでした。6倍の差です。削られた根は戻りませんから、この差は将来の選択肢に効いてきます。

削る量そのものの考え方は(→ セラミックのやり直しで歯はどれだけ削る?)にまとめています。

外すことのリスクと、受診前に整理していただきたいこと

ここは正直にお伝えします

ここは正直にお伝えします。土台を外す作業には、避けられないリスクがあります。

ひとつ目は、熱です。超音波の器具は振動で熱を出します。抜いた歯を使った実験では、水をかけずに当てた場合、根の表面の温度が15秒で約9.5度、30秒で約17.5度、45秒で約25.4度、60秒で約32.2度上がりました。歯の周りの組織は、10度ほどの上昇が続くと傷むとされています。

ただし、水をかけながら行えば話が変わります。4分間当て続けた実験でも、注水した場合の上昇は最大でも約6度にとどまりました。ですから当院では、注水を欠かさず、こまめに休ませながら進めます。

なお、この実験は抜いた歯で行われています。実際の口の中では、歯の周りに血液が流れていて熱を運び去りますので、この数字ほどには上がらないと考えられます。

ふたつ目は、ひびです。抜いた歯60本を使った実験では、超音波で土台を外した群に、根の治療だけをした群より多くの細かいひびが見つかりました。このひびが実際に割れにつながるかどうかは分かっていませんが、負担がかかっていることは確かです。

三つ目は、穴があくことです。細いドリルで周りを削る方法では、曲がった根で壁を突き抜けてしまう危険があります。抜いた歯を使った実験では、別の種類の土台を外す作業でも、10本中1本から2本に穴があいたという報告があります。

四つ目は、外せない場合があることです。実験では、接着材の種類によって10本中2本が外れませんでした。臨床でどのくらいの割合で外せないのかを、調べた研究は見当たりません。

もうひとつ、時間の話をしておきます。土台を外す作業だけで、1回の来院がほぼ埋まることがあります。根の治療そのものは、その次からです。ですから「根の治療をやり直す」と言っても、実際には土台を外す回、根の中をきれいにする回、詰め直す回、被せ物を作る回と、工程が積み上がります。初回のご説明で、この全体像をお伝えするようにしています。

ひとつ、安心していただきたいこともあります。土台が外れないことと、その歯を失うことは、同じではありません。外れなかった場合でも、根の先の側から処置する方法や、その状態で経過をみる方法が残ります。外す作業に入る前に、外れなかったときの次の手までご説明するのは、この理由からです。

受診の前に、次のことを整理していただけると診断が早く進みます。分かる範囲で構いません。

  • その歯の土台は金属だと言われましたか。いつごろ入れましたか
  • その歯は何度治療していますか
  • いま症状はありますか。噛むと痛む、腫れる、歯ぐきにおできができる、のいずれかがありますか
  • 被せ物はどのくらいの期間入っていますか
  • 以前のレントゲンや紹介状はお持ちですか

被せ物を外さずに根の治療ができるかどうかは(→ 被せ物を外さずに根の治療はできる?)にまとめています。土台を外したあと、どんな被せ物を選ぶかは(→ 根管治療後の被せ物の選び方)をご覧ください。

名古屋の診療室で、外すかどうかをどう決めているか

米国の補綴教育で学んだ、残す量の考え方

私は米国Indiana大学大学院で補綴学を3年間学び、MSD(補綴学の修士)とCertificate in Prosthodonticsを取得しました。補綴というのは、被せ物や入れ歯で歯の形と働きを回復させる分野です。

土台は、まさに補綴の領域です。作る側を専門にしてきた立場から申し上げると、外す判断でいちばん大切なのは「外したあとに何が残るか」です。

土台を外すこと自体が目的ではありません。目的は、その歯を残すことです。ですから、外したあとに被せ物を支えられるだけの歯が残らないなら、外す意味がありません。この見極めを、外す前に済ませておきます。

私が確認している順番は、次の4つです。

  1. 外す必要があるか:根の中の問題が、土台を外さないと解決できないものか。外さずに対応できるなら、そちらを検討します
  2. 外せそうか:立体的なレントゲンで、土台の長さ、太さ、根の壁の厚み、曲がり具合を確認します
  3. 外したあとに残るか:被せ物を支える帯が、外したあとに確保できるか。ここが読めなければ、着手の前にその不確実性をお伝えします
  4. やめる基準を決めておく:どこまで試して外れなければ別の方法に切り替えるか、時間の上限を先に決めておきます

この順番のうち、患者さんに関わっていただきたいのは3番目と4番目です。外したあとに歯が残らないかもしれない、という見込みを共有したうえで進めるのか。どこまで試して切り上げるのか。ここはご本人の希望が入るところです。歯を残すことを優先するのか、確実性を優先するのかで、答えが変わります。

4番目を最初に決めておくのが、私のやり方です。外れないまま長く当て続けると、熱もひびのリスクも積み上がります。「今日はここまで」と決めてから始めるほうが、結果的に歯を守れます。

立体的なレントゲンについても触れておきます。ふつうのレントゲンは平面なので、土台の周りの壁がどれだけ残っているかが分かりません。米国の学会も、根の治療のやり直しでは範囲を絞った立体的な撮影を第一に挙げています。ただし、金属の土台があると画像に乱れが出て、壁の厚みを測る精度は落ちます。撮れば全部分かる、というものではありません。

もうひとつ、代わりの道もお伝えします。土台を外さずに、根の先の側から外科的に処置する方法です。24か月の時点で、外科の成績は78パーセント、根の中からのやり直しは80パーセントという報告があります。土台が入っている歯では、外科のほうが理にかなう場合もあります。この分かれ道は(→ 再根管治療か歯根端切除か抜歯か)で詳しく扱っています。

外したあとに何が残るかを、私は数字で見るようにしています。被せ物を支えるには、歯ぐきの近くに輪っかのように自分の歯が残っている必要があります。この輪っかの高さが1.5から2ミリ、厚みが1ミリ以上あると、割れにくくなることが分かっています。外す前に、この輪っかが残りそうかを見積もり、残らない見込みなら、外すこと自体を考え直します。

正直に申し上げると、この見積もりは外してみないと確定しません。土台の下でむし歯が進んでいることもありますし、思ったより歯が薄いこともあります。ですから当院では、着手の前に「この可能性があります」とお伝えし、その場合にどうするかまで決めてから始めます。始めてから相談すると、選べる幅が狭くなるからです。

技工の工程まで自分の手で行ってきたことも、この判断に効いています。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになりました。土台がどうやって根の中に留まっているのかを作る側から知っていると、どこに振動を当てれば効率よく緩むかを、ある程度は見通せます。やみくもに時間をかけずに済むということです。

治療の成績を左右する条件は、ほかにもあります(→ 再根管治療の成功率を上げる臨床条件)。根の先に膿がたまっているとご説明を受けた方は(→ 根の先の膿(根尖病変)と再治療)をご覧ください。

まとめ|名古屋でメタルコアの除去にご不安がある方へ + よくあるご質問

まとめ|難しいのは、根の形をそのまま写して作られているから

メタルコアの除去が難しいのは、根の形をそのまま写して作られていて、根の壁と全面で接しているからです。外すには、接着材の層を壊して摩擦を解く必要があり、材料によっては5倍近い時間差が出ます。

外す作業には、熱、ひび、穴あき、そして外せない可能性という4つのリスクがあります。どれも避けられませんが、注水しながら、時間の上限を決めて進めることで抑えられます。

そして、外すこと自体が目的ではありません。外したあとに被せ物を支えられる歯が残るかどうかを、先に見極めます。ご自身で整理していただけるのは、土台の種類、治療の回数、いまの症状、この3つです。名古屋・伏見の当院では無料相談を行っており、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。検査と診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。Zoomでのご相談も承っています。

費用と回数についても一言だけ。土台を外す工程が加わると、通院の回数はその分だけ増えます。ただ、外さずに進めて根の中の問題が残れば、いずれもう一度やり直すことになります。どちらが結果的に少ない負担で済むかを、検査と診断のうえで見積もり、治療の前にご説明します。

根の治療のやり直し全体を先に見渡したい方は、ハブとなる記事から入っていただくと、ご自身の状況を位置づけやすくなります(→ 根管治療のやり直し(再根管治療)【完全ガイド】)。

最後に、判断のよりどころをもう一度だけ。土台を外すのは、その歯を残すためです。外すこと自体が目的ではありません。外したあとに支えが残らない見込みなら、別の道を考えたほうがよい場合もあります。目的が決まれば、手段は自然に決まります。

もうひとつ、患者さんに知っておいていただきたいことがあります。土台を外す作業は、外から見て何が起きているか分かりにくい工程です。音と振動が続くだけで、進んでいるのか止まっているのかが伝わりません。ですから当院では、途中で経過をお伝えしながら進めます。「あと何分くらい」「いまここまで緩んでいます」と共有するだけで、受けていただく側の負担はずいぶん変わります。

診療室でお伝えしているのは、迷っている段階でこそ相談していただきたい、ということです。方針が決まってから来られると、すでに削られていたり、外されていたりして、選べる幅が狭くなっていることがあります。歯は減る方向にしか動きません。まだ何もしていない段階でご相談いただければ、選択肢はいちばん多く残っています。

名古屋・伏見の当院は完全予約制で、完全個室でご説明しています。CTと口腔内スキャナーで現状を記録し、画像をお見せしながらお話ししますので、ご自身の目で確かめたうえで判断していただけます。地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分です。

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よくあるご質問

Q1. 土台を外すとき、痛みはありますか。

神経を取った歯ですので、その歯自体の痛みは通常ありません。ただ、振動と音がかなりありますし、時間もかかります。歯の周りの組織に刺激が伝わって、鈍い感じがすることはあります。あらかじめ、どのくらいの時間がかかりそうかをお伝えし、途中でお休みを入れながら進めます。つらいときは手を上げていただければ、いつでも止められます。

Q2. 外している途中で歯が割れることはありますか。

可能性はゼロではありません。抜いた歯を使った実験では、超音波で外した群に細かいひびが多く見つかっています。接着材の種類によっては、外れないまま縦のひびが入った例もありました。当院では、注水しながら、時間の上限を決めて進めることでリスクを抑えています。それでも、着手の前にこの可能性はお伝えするようにしています。

Q3. どうしても外れなかったら、どうなりますか。

無理に続けません。熱もひびのリスクも、時間とともに積み上がるからです。外せないと判断した場合は、根の先の側から外科的に処置する方法や、その歯をどう扱うかを含めて、あらためてご相談します。臨床でどのくらいの割合で外せないのかを分母を決めて調べた研究は見当たりませんので、確率としてお示しすることはできません。ただ、外れない場合に次の手があることは、先にお伝えしています。

Q4. 外さずに済ませることはできませんか。

場合によっては可能です。根の中の問題が土台の先のほうにあり、外科的に対応できる位置なら、外さずに進める選択肢があります。24か月の時点で、外科の成績は78パーセント、根の中からのやり直しは80パーセントという報告があり、大きな差はありません。ただし、土台を外す群と外さない群を無作為に分けて比べた試験はありませんので、どちらが優れているとは申し上げられません。その歯の条件から、どちらが理にかなうかを一緒に検討します。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。土台や被せ物を外した際に、むし歯や歯の割れが見つかり、治療計画が変更になる可能性があります。自由診療の場合は保険適用外となります。

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監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

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