ブログ
「全体で治しましょう」と言われたら|どこまで治すかの決め方
「全体で」と言われて、戸惑うのは自然です

1本のつもりで相談に行ったのに、「全体で考えましょう」と言われる。ここで一度立ち止まる方は、とても多いです。話が急に大きくなった、と感じるからだと思います。
そう感じるのは当然です。説明が足りていないことも多いと思います。この記事では、なぜ全体という話になるのか、そして「どこまで治すのか」がどう決まるのかをご説明します。費用や治療法の話は、そのあとで構いません。
先にお伝えしておくと、「全体で」と言われたからといって、必ずしも手遅れという意味ではありません。むしろ、1本ずつ場当たりに直してきた結果として全体に負担が回っている、という状態のほうが多いです。悪くなり方が早いのではなく、これまでの積み重ねが見えてきた、という段階です。
全体で提案されるのは、こういうときです
1本ずつ順番に治していけばよい場合と、全体を見ないと決められない場合があります。分かれ目は、だいたい次のどれかです。
- 噛み合わせの高さが、全体的に低くなっている
- 失った歯が複数あり、残った歯に負担が集中している
- 過去の被せ物が同じ時期に入っていて、寿命も同じ時期に来ている
- 歯ぐきの状態が、部分的ではなく全体に及んでいる
- 歯ぎしりや食いしばりで、上下の歯がすり減っている
この状態で1本だけ直すと、直したところに、また力が集中します。合っていない高さに合わせて1本を作ることになるからです。数年後にその歯が割れて、また1本。この繰り返しになりやすい。全体で、という提案の背景にあるのは、たいていこの理屈です。
歯が全体的に悪くなっていく流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「全体で見る」と「全部を今やる」は、別のことです
ここがいちばん誤解されやすいところです。全体を見ることと、全体を今すぐ治すことは違います。全体を見たうえで、今やるのは3本、というプランも当然あります。
大事なのは、順番と範囲を先に決めておくことです。決めないまま1本ずつ進めると、あとから戻れなくなる場面が出てきます。
範囲を決める、5つの材料

範囲は、なんとなくで決まるものではありません。次の5つを見て判断します。
① 噛み合わせの高さ
何を見るか:上下の歯を閉じたときの高さ、顔の下1/3のバランス、前歯の重なり方
なぜ範囲に関わるか:高さを変える場合、上下の広い範囲を同時に作る必要があります。1本だけ高さを変える、ということはできません。1本を高くすれば、そこだけが当たります
範囲への影響:大きい。高さを変えるなら全体、変えないなら部分で収まります
② 残っている歯の状態と本数
何を見るか:残せる歯/条件つきで残せる歯/残せない歯の3つに仕分けます
なぜ範囲に関わるか:「条件つき」の歯を土台に使うかどうかで設計が変わります。使えば範囲は小さくなりますが、その歯がダメになったときにやり直しが必要になります
範囲への影響:中から大。条件つきの歯が多いほど、判断が難しくなります
③ 歯を失っている場所
何を見るか:奥歯が残っているか。前歯だけで噛んでいないか
なぜ範囲に関わるか:奥歯がないと、前歯に力が集中します。前歯は本来、噛みつぶす役ではありません。押されて前に出てきたり、すき間があいたりします。この場合、前歯だけを直しても同じことが起きます
範囲への影響:大きい。奥歯が両側に残っていれば、範囲はかなり絞れます
④ 歯ぐきの状態
何を見るか:歯周ポケットの深さ、骨の高さ、歯の揺れ
なぜ範囲に関わるか:歯ぐきが落ち着かないうちに本歯を入れると、あとから歯ぐきが下がって境目が合わなくなります
範囲への影響:範囲というより順番に効きます。ここが悪いと、本歯の前にやることが増えます
⑤ 力の問題(歯ぎしり・食いしばり)
何を見るか:歯のすり減り方、あごの骨の隆起、朝のあごのだるさ、被せ物が外れた履歴
なぜ範囲に関わるか:力が強い方は、同じ設計でも壊れ方が違います。力を何本かに分散させる必要があり、その分だけ範囲が広がることがあります
範囲への影響:中くらい。ただし見落とすと、作り直しの原因になります
この5つのうち、①と③が大きく効きます。逆に言えば、噛み合わせの高さを変える必要がなく、奥歯が両側に残っているなら、範囲はかなり小さくできます。
「全体で」と言われたときは、まずこの2つを聞いてみてください。「高さは変えますか」「奥歯は足りていますか」。ここが分かると、話の大きさが見えてきます。
初診で何をするかは、以下の記事で詳しく解説しています。
一度に全部やらない方法もあります

範囲が広いと言われても、それを一度にやる必要があるとは限りません。
分けてよい工程と、分けてはいけない工程
分けてよいもの
- 上あごと下あご(上を先に、下はあとで)
- 左右(片側ずつ噛めるようにしていく)
- 見た目の優先度(前歯を先に、奥歯はあとで)
分けてはいけないもの
- 噛み合わせの高さを変える場合の、上下の噛む面
- 1つのブリッジやオールオンでつながっている範囲
- 歯ぐきの治療と、その部分の本歯(順番を飛ばせません)
分けてはいけないところを分けると、あとで全部やり直しになります。ここだけは、費用の都合でも曲げないほうが結果的に安く済みます。
順番の考え方
- 痛み・腫れ・においを止める(ここは急ぎます)
- 抜くか残すかを決める
- 仮歯で、形と高さを決める
- 歯ぐきを整える
- 本歯に置き換える
- メンテナンスに入る
費用や時間の都合で分けたい場合、3の仮歯の段階で一度止まることができます。仮歯でも噛めますし、見た目も整います。ここで数ヶ月あける方は珍しくありません。
費用の分け方については、以下の記事で詳しく解説しています。
途中で止めるときに、正直にお伝えしていること
仮歯の期間が長くなるほど、外れる・欠けるといったことは起きやすくなります。止まること自体は問題ありませんが、止まっている間も定期的に見せていただく必要があります。放っておくと、仮歯の下でむし歯が進むことがあるためです。
「今やらないと手遅れですか」と聞かれたら
急ぐものと、急がないものがあります。痛み、腫れ、におい、ぐらつきは急ぎます。見た目の不満と、噛みにくさは、多くの場合は急ぎません。
急がないものを急がせる説明には、注意してください。逆に、急ぐものを「様子を見ましょう」で先延ばしにするのも困ります。どちらなのかは、その日のうちに教えてもらえるはずです。
診療室では、範囲をどう決めているか|名古屋の臨床から
当院で全体のご相談をいただいたとき、初回にしていることをそのまま書きます。
初回に取る記録
- レントゲン(全体が1枚に写るもの)とCT
- 口腔内スキャナで、上下の歯型をデジタルで記録
- 歯周検査(歯ぐきのポケットを1本ずつ)
- 口の中と、笑ったときの顔の写真
- あごの動きと、噛んだときの当たり方
その日に削ることはしません。記録を取り、判断材料をそろえるところまでが初回です。
その記録を、何に使うか
まず、歯を1本ずつ「残せる」「条件つきで残せる」「残せない」の3つに仕分けます。この仕分け表をお見せするところから説明が始まります。「条件つき」の歯については、その条件(歯ぐきの治療が効けば、根の治療がうまくいけば、など)も書き添えます。
次に、噛み合わせの高さを変える必要があるかを判断します。ここが決まると、範囲がほぼ決まります。
最後に、分けられる工程を洗い出します。上下で分けられるか、左右で分けられるか、どこで止まれるか。
プランは、必ず2つ以上お出しします
理想のプランと、範囲を絞ったプラン。それぞれの費用と、それぞれで諦めることになる点を並べて書きます。良いところだけを並べた説明は、あとで必ず食い違いが出ます。
他院で1つしかプランが出てこなかった場合は、「範囲を絞ったらどうなりますか」と聞いてみてください。聞きにくければ、当院でお聞きいただいても構いません。他院で立てた計画をお持ちいただいて、範囲の妥当性だけを見る、という使い方をされる方もいます。
期間の見通しについては、以下の記事にまとめています。
名古屋・伏見駅から徒歩2分の当院は完全予約制・完全個室で、無料相談とZoom相談をご用意しています。治療を受けることを前提にしないセカンドオピニオン外来(5,500円・税込)もあります。
まとめ|どこまで治すかを決める前に|よくあるご質問
要点は3つです。
第一に、「全体で見る」と「全部を今やる」は別のことです。全体を見たうえで、今やるのは数本、というプランは普通にあります。
第二に、範囲を決めるのは主に2つ。噛み合わせの高さを変えるかどうかと、奥歯が両側に残っているかどうかです。この2つを聞けば、話の大きさが見えてきます。
第三に、分けてよい工程と、分けてはいけない工程があります。上下や左右は分けられます。高さを変える範囲と、つながっている補綴物は分けられません。
名古屋・伏見駅から徒歩2分の当院は完全予約制・完全個室で、無料相談とZoom相談をご用意しています。治療を受けることを前提にしないセカンドオピニオン外来(5,500円・税込)もあります。
治療中の見た目や食事が気になる方は、以下の記事をご覧ください。
入れたあとの違和感については、以下の記事にまとめています。
持病やお薬がある方は、以下の記事もご参照ください。
よくあるご質問
Q1.「全体で治療しましょう」と言われました。そんなに悪いのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。1本ずつでは決められない、という意味であることが多いです。ただ、そう言われた理由は説明されるべきです。「なぜ1本では決められないのですか」と聞いてみてください。
Q2. 範囲を狭くしてもらうことはできますか。
できる場合が多いです。ただし、噛み合わせの高さを変える必要がある場合と、つながっている補綴物の途中では、狭められません。狭めた場合に何を諦めることになるのかは、必ず確認してください。
Q3. どのくらいの期間がかかりますか。
範囲と、歯ぐきの状態によります。歯ぐきの治療や、根の治療が必要な歯が多いほど長くなります。本数だけでは決まりません。初回の記録がそろった段階で、おおよその期間はお出しできます。
Q4. 他院で立てた計画を見てもらうことはできますか。
できます。セカンドオピニオン外来(5,500円・税込)でお受けしています。転院を前提としたものではありません。範囲が妥当かどうかだけを見て、そのまま今の医院で進めていただいて構いません。
Q5. 全部やると決めてから、途中で止めることはできますか。
仮歯の段階までいけば、そこで止まれます。ただし止まっている間も定期的に見せていただく必要があります。仮歯は本歯より外れやすく、下でむし歯が進むことがあるためです。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン
インプラントをはじめ、審美補綴や義歯などの外科的治療に関するご相談を承っております。その他の治療内容についてもお気軽にお問い合わせ下さい。



