治療する箇所が多く費用がかさむとき、優先順位をつけて進める方法

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費用で治療を諦めないために|治療箇所が多く、費用がかさむときの進め方

治療が必要な歯が多いと言われて、止まってしまう方へ

検査のあとに「セラミックのインレーが3本、クラウンが6本必要です」と言われて、その場で言葉が出なくなる方は少なくありません。1本あたりの金額に本数を掛けた瞬間、話が自分のこととして考えられなくなるからです。そのまま「また考えます」と言って、次の予約を取らずに帰る。名古屋の当院でも、決して珍しい光景ではありません。

ここでお伝えしたいのは、「全部を一度にやる」以外の進め方があるということです。そして、その進め方を組み立てるのは患者さんではなく、本来は歯科医師の側の仕事です。ご予算に限りがあると分かった時点で、私たちは提案の出し方を変えます。

ただし「何もしない」は、いちばん高くつきます

先に一つだけ。「今は全部は無理だから、しばらく様子を見よう」という選択は、費用の面でもっとも不利になりやすい選択です。

スペインの調査(Matloob ら, Odontology, 2026年, 137症例)では、詰め物をした歯の43.8%がその後に根管治療(歯の神経の治療)へ進み、35.04%が抜歯に至っています。しかも50〜65歳では、詰め物から根管治療までの期間が18〜33歳より短いという結果でした。年齢が上がるほど、先送りした1年の重みは増します。

インレーで済んだはずの歯がクラウンになり、クラウンで済んだはずの歯が抜歯とインプラントになる。動かないでいる間に、いちばん安く済む選択肢から順に消えていきます。

本数が多いときほど、順番の設計で総額が変わります

意外に思われるかもしれませんが、治療の本数が多い方ほど、順番の決め方で最終的な総額が変わります。1本だけの治療なら、いつやってもかかる費用はだいたい同じです。ところが本数が増えると、どの歯を先に確定させるかによって、後の歯の設計が変わります。噛み合わせの基準になる歯を先に決めてしまうと、あとで「本当はこの高さにしたかった」と分かっても戻せません。やり直しは、最初から作るより高くつきます。

逆に言えば、順番さえ間違えなければ、分けて進めても最終的な仕上がりは変わりません。ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

「全部やる」でも「何もしない」でもない、三つ目を出します

私たちがご提案するのは、必要な治療に優先順位をつけて、上から順に区切って進める方法です。今日いくら払えるかではなく、「今やらないと、後で選べなくなるもの」から並べ直します。

この記事では、その優先順位を私たちがどうつけているのかを、実際の考え方のまま書きます。金額の実額は扱いません。順番の決め方だけです。まず何を調べるのかについては(→ 歯がボロボロの方が最初に受けるべき検査とは)にまとめています。

優先順位のつけ方|私たちが実際に見ている4つの物差し

「優先度の高いものから」と言うのは簡単ですが、では何をもって高いと判断しているのか。実際に私たちが見ているのは、次の4つです。上にあるものほど優先度が高くなります。

① 痛み・感染・破折のリスクがあるもの【最優先】

対象:痛みが出ている歯、神経に達している虫歯、根の先に膿がある歯、割れかけている歯

なぜ先か:待っても良くなりません。進行が止まらないので、待つほど処置が大きくなります

費用の観点:ここを後回しにすると、先に入れた被せ物ごとやり直しになります。損失がいちばん大きい部分です

分けられるか:分けられません。ここは一気に進めます

② 放置すると、選べる治療が減るもの

対象:まだ残せる可能性がある歯のうち、進行が速いもの。歯周病で支えが減ってきている歯

なぜ先か:今なら被せ物で残せる歯が、半年後には抜歯とインプラントになることがあります。金額の桁が変わります

費用の観点:「早くやったほうが安い」が成立する、数少ない領域です

分けられるか:分けられます。進行の速い順に、2〜3本ずつが目安です

③ 噛み合わせの基準になるもの【設計上の前提】

対象:奥歯の高さを決める歯、左右のバランスを支えている歯

なぜ先か:ここが決まらないと、他の歯の形も高さも決められません。優先度というより順番の問題です

費用の観点:豪華にするという意味ではありません。基準を決めるという意味です。仮歯で確かめてから最終に進みます

分けられるか:基準を決める工程は分けられません。最終の被せ物に置き換える工程は分けられます

④ 見た目の改善【後回しにできることが多い】

対象:前歯の色や形、銀歯を白くしたいというご希望

なぜ後か:噛む機能が保たれているなら、待っても状態は悪くなりません

費用の観点:ご予算に合わせて時期をずらせる、いちばん現実的な部分です

分けられるか:分けられます。ただし前歯は色をそろえる必要があるため、同じ並びの歯はまとめて進めます

分けてよい工程と、分けてはいけない工程

4つを通して見ると、境目がはっきりします。痛みと感染を止める工程、虫歯や歯周病の進行を止める工程は、分けません。ここを分けると、先に入れた被せ物が土台ごとだめになり、結局やり直しになります。

一方、最終的な被せ物や入れ歯に置き換える工程は、分けて構いません。費用の都合で時期をずらしてよいのは、基本的にこの部分だけです。この線引きさえ守れば、ご予算に限りがあることは、治療の質を落とす理由になりません。

逆に言えば、「予算がないので神経の治療は省いて、被せ物だけ先に入れましょう」という提案が出てきたら、それは費用の面でも危ない提案です。いちばん費用のかかった部分が、いちばん早く壊れます。

優先順位は、一度決めたら固定ではありません

区切って進めるということは、期間が延びるということです。延びている間も、他の歯は動いています。ですので当院では、区切りごとに検査をして、順番を組み替えます。最初に立てた計画を最後まで押し通すことはしません。

どの歯を残し、どの歯を手放すかという判断は、費用の設計と直結します。その考え方は(→ 名古屋で歯がボロボロ|残せる歯と抜く歯の考え方)で詳しく整理しています。

実際のご提案パターン|「インレー3本・クラウン6本」をどう分けるか

ここからは、実際にどう区切るのかを具体的に書きます。仮に「セラミックインレー3本、クラウン6本」と診断された方を例にします。お口の状態によって変わりますので、考え方の例としてお読みください。

パターンA|奥歯のインレー・クラウンが中心の場合

前歯に問題がなく、奥歯だけという場合です。いちばん分けやすいパターンになります。

まず、進行の速い歯、しみている歯、詰め物のふちが欠けている歯から2〜3本ずつ。左右のどちらかを先に仕上げて、そちらで噛めるようにしてから反対側に移ります。両側を同時に外さないので、治療中も食事に困りません。1回の区切りを2〜3本にすると、1回あたりのご負担が読みやすくなります。

注意点は、期間が延びることです。全部で半年から1年かかることもあります。その間も他の歯は進行しますので、区切りごとに検査を挟みます。

パターンB|前歯のクラウンが複数ある場合

前歯は事情が違います。色と形をそろえる必要があるため、上の前歯4本、6本といった単位は、原則として同時に進めます。1本ずつ作ると、色が合いません。

ではどこで分けるか。前歯のまとまりと、奥歯のまとまりを分けます。多くの場合、奥歯を先に、前歯を後にします。奥歯で噛み合わせの高さが決まらないと、前歯の形は決められないからです。見た目を早く直したいお気持ちはよく分かりますが、順番を逆にすると、前歯をやり直すことになります。

パターンC|お口全体に及んでいる場合

残っている歯が少なく、噛み合わせ全体を作り直す必要がある場合です。この場合は、先に全体の設計だけを決めます。設計は分けられません。

そのうえで、仮歯の状態で噛み合わせを確かめます。仮歯は費用を下げるための手段ではありませんが、設計を確かめる工程としては欠かせません。ここで高さ、発音、見た目を確認し、確認が済んだ区画から順に、最終の被せ物へ置き換えていきます。置き換える順番と時期を、ご予算に合わせて組みます。

治療する範囲そのものを絞るという選択もあります。10年間の比較試験(Walter MH ら, 2018年, 152名)では、奥歯を無理に補わず小臼歯までで噛み合わせを完結させる方法が、部分入れ歯と比べて明確に劣る結果にはなりませんでした。著者らは、患者さんのご希望をより重視すべきだと結論しています。すべての歯を元どおりにすることだけが正解ではない、ということです。

どのパターンでも変えないこと

区切り方は変わりますが、変えないことが一つあります。最初にゴールを決めることです。最終的にどこで噛むか、どういう形にするかを先に決めてから、今日の1本を決めます。ゴールを決めずに目の前の歯から順に確定させていくと、あとで選べたはずの方法が、気づかないうちに減っていきます。

まとめて考えるというのは、豪華な治療をするという意味ではありません。ゴールから逆算して今日の1本を決める、という手順のことです。ご予算に限りがあるときほど、この逆算が効きます。

費用で止まらないために、当院がしていること

私はIndiana大学大学院(米国)で補綴学を3年間専攻し、MSDとCertificate in Prosthodonticsを取得しました。帰国後は、補綴設計・噛み合わせ・治療計画について、歯科医師向けのセミナーや講演を続けています。ここでは、当院が実際にとっている対応を書きます。

ご予算を、先にお聞きします

初診の段階で、無理のない範囲をお聞きしています。値切るためでも、高いほうへ誘導するためでもありません。分けてよい工程と、分けてはいけない工程を切り分けるためです。ご予算が分からないまま計画を立てると、途中で止まる計画になります。通えない計画、払えない計画は、良い計画ではありません。

お聞きするのは総額の上限ではなく、毎月どのくらいなら無理がないか、です。この形でお聞きすると、区切り方をかなり具体的に設計できます。「3か月に1区画」「半年で左側を仕上げる」といった単位まで落とせます。

その日に決めていただく必要はありません

まず無料相談で構いません。他院で提示された治療計画について意見を聞きたいという場合は、セカンドオピニオン外来(5,500円税込)もご利用いただけます。どちらも、その場で治療を始める必要はありません。順番と見通しだけ持ち帰っていただいて構いませんし、「今はやらない」と決めていただいても構いません。

検査・診断のうえで、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明し、治療前に見積りをお渡しします。

お支払いの分け方について

制度の線引きは、正確にお伝えしておきます。高額療養費制度は保険診療の自己負担が対象で、自由診療には使えません。「保険外だから高額療養費が使える」というのは誤解です。一方で医療費控除は使えます。国税庁の解説では、金やポーセレンを使った治療は対象に含まれ、通院のための公共交通機関の実費も対象とされています。デンタルローンを利用した場合は、信販会社が立替払いをした年の医療費控除の対象になり、金利・手数料相当分は対象外です。

デンタルローンや院内での分割もご相談いただけます。ただし、支払いを分ける話と、治療を分ける話は別のものです。まず治療の順番を決めて、そのうえで支払い方法を考える。この順番でご案内しています。

通える現実に合わせます

平日の夜、土曜など、通える時間帯に合わせて区切りを設計します。当院は完全個室・完全予約制で、他の方と顔を合わせにくい設計にしています。何年も歯科に行っていないという方の再開の段取りは(→ 歯医者 何年も行ってない方へ|名古屋の久しぶり受診・再開ガイド)にまとめました。

途中で通院が止まってしまった場合でも、痛みと感染を止める工程、進行を止める工程まで進んでいれば、次に再開するときの出発点は前に進んでいます。止まる可能性も織り込んで区切り方を決めるのが、私たちの仕事だと考えています。

まとめ|費用で治療を諦めないために|よくあるご質問

費用が理由で治療を諦める必要はありません。ただしそのためには、「全部やる」か「何もしない」かの二択から出る必要があります。

この記事の結論は一つです。優先順位をつけて、区切って進める。分けてよいのは最終的な被せ物や入れ歯の工程だけで、痛み・感染を止める工程と、虫歯や歯周病の進行を止める工程は分けない。この線引きさえ守れば、ご予算に限りがあっても、仕上がりの質は落ちません。

次の一歩は、見積りを取ることではありません。ご自身のお口で、この線引きがどこに来るのかを確かめることです。そのためには検査が要り、検査の前に相談があります。名古屋・伏見で迷っておられるなら、まず無料相談からで構いません。

あわせて読みたい

(→ 歯がボロボロで恥ずかしい方へ|名古屋の受診できない心理と突破口)…お口の状態を見られることに抵抗がある方へ。

(→ 歯医者 責められるが怖い方へ|名古屋の叱らない歯科の選び方)…「費用のことを正直に言ったら呆れられそう」という不安がある方へ。

よくあるご質問

Q1.「全部やらないと意味がない」と言われました。本当ですか。

工程によります。痛みと感染を止める工程、進行を止める工程については、その通りです。ここを部分的にやっても、残した部分から再発します。一方、最終的な被せ物に置き換える工程は分けられます。もし「全部やらないと意味がない」が最終の被せ物まで含めた話であれば、なぜそうなのかを聞いてみてください。噛み合わせの設計上の理由があるなら、説明できるはずです。

Q2. 予算を伝えると、かえって高いほうを勧められませんか。

ご心配はもっともだと思います。当院がご予算をお聞きするのは、分けてよい工程を判断するためで、削る場所を探すためではありません。ご不安であれば、予算はお伝えいただかずに「必要な治療をすべて挙げて、優先順位をつけてください」とお願いする形でも構いません。優先順位をつけられない計画は、そもそも設計されていない可能性があります。

Q3. 分けて進めると、結局は高くつきませんか。

仮歯を挟む回数が増えるぶん、総額が上がることはあります。仮歯は費用を下げる手段ではありません。ただし、順番を誤ってやり直しになる場合の費用とは、桁が違います。分けることで増える費用より、作り直しの費用のほうがはるかに大きい、というのが実感です。

Q4. 治療の途中で通えなくなったら、無駄になりますか。

どの段階で止まるかによります。痛み・感染を止める工程と、進行を止める工程まで進んでいれば、そこで止まっても、次に再開するときの出発点は前に進んでいます。逆に、最終的な被せ物を入れた直後に管理が途切れると、そこから傷みやすくなります。ですので、通える現実に合わせて仕上げの区切り方を決めます。

Q5. 治療の途中で、順番を変えてもらうことはできますか。

できます。むしろ当院からお願いすることもあります。区切りごとに検査をして、進行の速さが想定と違えば順番を組み替えます。ご事情が変わってペースを落としたいという場合も、遠慮なくおっしゃってください。設計を守ったまま、時期だけずらす方法があります。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。

検査・診断のうえで、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明し、治療前に見積りをお渡しします。ご不明な点は、その場でお尋ねください。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

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