症例
名古屋「入れ歯はどうしても嫌だ」80代女性のオールオン4で固定式の歯を再建した症例
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治療前

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治療後

患者背景と症例概要
名古屋でオールオン4治療を検討されている方の中には、「入れ歯はどうしても受け入れられない」「もう何年も歯のない状態のまま放置してきた」「他院では入れ歯しか提案されなかった」など、入れ歯以外の選択肢を切実に探していらっしゃる方が少なくありません。今回ご紹介する症例も、まさにそうしたお悩みを抱えてご来院された患者様です。
患者様は82歳の女性です。上顎には数年前に他院で埋入されたインプラントが2本残っており、それ以外の部位は古いブリッジと残存歯数本で構成されていました。残っている歯は4本のみで、上顎の咀嚼機能は大きく低下した状態でした。長年にわたり「入れ歯だけはどうしても使いたくない」というお気持ちが強く、入れ歯の使用経験は一度もないまま、歯が抜けていく状況を受け入れざるを得なかったとのことでした。

主訴は明確で、「入れ歯以外の方法で、もう一度しっかり噛める歯を取り戻したい」という一点でした。当院ではまず、患者様のご希望を尊重しつつ、現実的に取り得るすべての選択肢を提示することからスタートしました。
ご高齢ではありますが、外科処置に対応可能な全身状態であることを事前に確認したうえで、治療計画の立案を進めました。下顎については天然歯がすべて健全に残存し、咬合の支持として十分機能している点も、本症例の治療計画上、重要な前提条件となりました。
オールオン4と総入れ歯の違いについては、
のページでも詳しく解説しています。あわせてご覧いただくと、ご自身に合った治療法のイメージがつかみやすくなるかと思います。
症例まとめ
・患者:82歳 女性
・主訴:入れ歯を使いたくない、固定式で噛める歯を取り戻したい
・部位:上顎全顎
・既往:上顎に既存インプラント2本、残存歯4本、根尖性歯周炎あり
・対合歯:下顎は全て天然歯(健全)
・最終治療方針:既存インプラント1本+追加インプラント3本によるオールオン4
・使用インプラント:ストローマン BLX
・上部構造:メタルフレーム入りジルコニア
・治療期間:約9ヶ月
・費用:3,200,000円(自由診療)
ご自身に近い症例をお探しの方は、
もあわせてご参照ください。
初診時の診断
初診時には、口腔内診査、パノラマX線撮影、歯科用コーンビームCT撮影、咬合診査、歯周組織検査を行いました。オールオン4治療では、残存歯と既存インプラントの状態、骨量、咬合関係、軟組織の状態を総合的に評価する必要があり、診査診断の精度がそのまま長期予後を左右するため、この段階に十分な時間をかけています。
既存インプラントの評価

上顎には他院で埋入された既存インプラントが2本残存していました。CT上で詳細に評価したところ、1本は周囲骨が良好に維持され、機能的に活用可能であると判断できました。もう1本は周囲骨の吸収が進行しており感染所見も認められたため、温存するリスクが高いと判断し、抜去の方針を採用しました。
また、活用可能と判断した既存インプラントも、元々は単独のインプラントクラウン用に埋入された経緯があり、オールオン4で必要とされる埋入深度・角度と比較すると、相対的に浅い位置に存在していました。この点は後の補綴設計に直接影響する重要な要素であり、診断段階で明確に把握しておく必要がありました。
CT所見と骨条件
追加埋入を予定する部位の骨条件は、CT計測の結果、骨高径は約9mm、骨幅は全体的に7mm以上が確保されていました。上顎洞や鼻腔底など解剖学的構造との安全距離も十分に得られており、骨造成を行わずに必要な長さ・直径のインプラントを埋入できる条件が整っていました。骨条件に恵まれた症例であったことが、本症例の治療計画を比較的シンプルに進められた大きな要因です。
骨量が不足する症例ではより慎重な計画が必要になります。
のページでは、骨量が不足する場合の対応について解説していますので、骨が少ないと指摘された方はあわせてご覧ください。
歯周病状態と残存歯の評価
残存歯4本のうち複数歯に大きな根尖性歯周炎の所見を認めました。根尖性歯周炎は歯の根の先に慢性的な感染巣が形成されている状態で、放置すると周囲骨が広範に吸収していきます。本症例ではこの病変が拡大しており、抜歯と同時にインプラントを埋入する即時埋入を選択した場合、感染源が完全には除去しきれないリスクがありました。歯周組織検査でも、残存歯周囲のプロービング深さが複数部位で増加しており、歯周組織にも炎症を伴っていることが確認されました。
咬合状態
下顎は天然歯が半分ほど欠損しており、咬合支持としては理想的ではないな状態でしたが、費用の関係から、今回は上顎から進めていく方針としました。ただ、咬合平面は均一でした。一方で、上顎が機能的に弱体化している影響で咬合平面に乱れがあり、最終補綴に向けては咬合平面の再構築と垂直的高径の再評価が必要であると判断しました。
治療計画と設計思想
治療選択肢の比較
患者様には、私の判断として現実的に取り得る3つの選択肢をご提示しました。
①総義歯(総入れ歯)
残存歯を抜去し、上顎を総義歯で対応する方法です。費用と侵襲が最も少なく、保険適用も可能な治療法ですが、患者様はこれまで一貫して入れ歯を拒否されており、「入れ歯では生活の質が回復しない」という確固たるお気持ちを持っておられました。また既存のインプラント2本を活用しないという観点でも、本症例には適合しないと判断しました。

②インプラントブリッジ(欠損部位のみに複数本のインプラント)
歯のない部位にインプラントを追加し、ブリッジで補綴する方法です。一見シンプルですが、残存歯を温存する前提では、各欠損部に対して必要なインプラント本数が増加し、結果として埋入本数が6本以上必要になるケースが多くなります。費用負担が大きいうえ、すでに埋入されている2本のインプラント位置・深度との整合性を取ることが難しく、補綴設計上の制約が多くなる方法でした。
③オールオン4
4本のインプラント(既存活用を含む)で上顎全体の固定式補綴を支える方法です。本症例では既存インプラントを活用できる可能性があり、追加埋入本数を最小限に抑えられること、そして根尖性歯周炎を伴う残存歯を一括で抜去・治癒させたうえで補綴に進められる点が大きな利点でした。

各治療法のメリットや注意点については、
のページでも詳しく整理しています。
患者様との十分な相談の結果、ご希望と臨床条件の双方を最もよく満たすオールオン4を最終的に選択しました。「既存のインプラントを可能な限り活用したい」という患者様のご意向も、この決定における重要な要素でした。
設計思想
今回の症例で私が最も時間をかけたのは、既存インプラントの位置をどう設計に組み込むかという点でした。新規症例として4本を最適位置に埋入できれば理想ですが、すでに存在するインプラントは「動かせない条件」として与えられており、その制約の中で最大限の長期安定を得るための設計が必要でした。
埋入位置と前後的配置
オールオン4では、前後的に4本のインプラントを適切に分散させ、補綴のサポート範囲を最大化することが基本です。本症例では既存インプラント1本がやや前方寄りに位置していたため、追加3本の位置を計画する際、既存インプラントから離しすぎず、かつ後方支持も確保できるバランス点を慎重に検討しました。具体的には、追加した最後方インプラントについては傾斜埋入を行い、A-P spread(前後拡がり)を可能な限り確保しました。

カンチレバー設計
オールオン4では最後方インプラントよりも後方に張り出す「カンチレバー」部分の長さが、補綴物の耐久性を大きく左右します。カンチレバーが長すぎると、咬合力によって最後方インプラントへ過大な負荷が集中します。本症例では既存インプラント位置による制約があるため、後方カンチレバーを通常のオールオン4よりも控えめに設定し、機械的安全率を優先する設計としました。
咬合接触の設計
対合が天然歯であるという条件は、補綴物にとっては相対的に厳しい条件となります。天然歯は歯根膜による衝撃吸収機構を持ちますが、インプラント側にはそれが存在しないためです。咬頭嵌合位において、最後方部の咬合接触はやや弱めに設定し、咬合力の集中を回避する設計としました。側方運動時には、犬歯誘導に近い接触様式を再現し、臼歯部に側方力が及ばないようにしています。
既存インプラントへの配慮
既存インプラントはオールオン4で求められる埋入深度よりも浅い位置にあったため、その上にスクリュー固定の補綴物を載せる際に、補綴スペースが他のインプラントと不均等になります。この不均等性は、特定のインプラントに応力が集中する原因となるため、追加埋入3本の位置を既存インプラントに近づけ、力学的に既存インプラント周囲を補強する設計を採用しました。
上部構造素材:メタルフレーム入りジルコニア
最終補綴物の素材選択も慎重に検討しました。ジルコニア単独でも強度は十分得られますが、本症例では既存インプラント位置の制約により応力分布が不均一になる可能性があったため、内部にメタルフレームを介在させた構造を選択しました。万一の補綴物破折リスクを抑え、長期安定を目指す判断です。

固定方式と清掃性
上部構造はスクリュー固定としました。万一のメンテナンス時、インプラント周囲炎発生時、補綴物の修理が必要となった際に、容易に取り外せる設計は長期管理上の生命線です。清掃性についても、ブリッジ底面と歯肉との間に清掃用器具がアクセスできる形態を確保し、患者様ご自身でも歯間ブラシやデンタルフロスでケアできるよう設計しました。
手術と治療経過
即時義歯による感染源除去フェーズ
本症例の最大の特徴は、いきなりインプラント埋入を行わず、まず即時義歯フェーズを設けた点にあります。残存歯に大きな根尖性歯周炎の病変があり、抜歯と同時埋入を選択した場合、感染源が術野に残存するリスクが無視できませんでした。
具体的には、残存歯と状態不良であった既存インプラント1本を抜去し、即時義歯を装着しました。即時義歯は治療途中の咀嚼・審美機能を一時的に補うだけでなく、デジタルスマイルシミュレーションを併用することで、最終補綴の形態・配列・咬合関係を事前に検証する重要なツールとして活用しました。

このフェーズに約3ヶ月をかけ、抜歯窩の骨と軟組織の治癒を待ちました。3ヶ月後に再度CT撮影を行い、骨の治癒状況を確認したうえで、追加3本のインプラントの最終的な埋入位置・サイズ・角度を確定しました。
手術概要
・埋入本数:追加3本(既存活用1本と合わせて合計4本)
・インプラント体:ストローマン BLX
・GBR(骨造成):なし
・手術時間:約90分
ストローマン BLXは、初期固定の獲得に優れた設計を有しており、難症例でも信頼性の高い結果が報告されているインプラントです。本症例ではすでに即時義歯期間で抜歯窩の治癒が完了しており、確実な初期固定を獲得するために BLX を選択しました。
骨造成は不要でしたが、これは即時義歯期間中の徹底した感染源除去と治癒期間の確保によって、追加埋入部位の骨条件が安定したことが大きな要因です。骨の高さ約9mm、幅約7mm以上が確保されていたため、必要なサイズのインプラントを安全に埋入することが可能でした。
術後経過
術後の腫脹は軽度で、術後数日程度で日常生活に支障のないレベルまで改善しました。疼痛は処方した鎮痛薬で十分にコントロール可能な範囲に収まっており、創傷治癒は概ね順調に推移し、感染や創開などの合併症は認められませんでした。
埋入後は治癒期間として約3ヶ月を設け、その間は再装着した即時義歯にて咀嚼機能を維持していただきました。

治療期間
初診から最終補綴装着までの総治療期間は約9ヶ月です。内訳は概ね、抜歯と即時義歯製作および治癒期間に約3ヶ月、インプラント埋入と治癒期間に約3ヶ月、最終補綴の設計・製作・装着・調整に約3ヶ月という構成です。
術後評価
最終補綴装着後の評価では、咬合接触は設計通りで、咬頭嵌合位は均等、側方運動時の臼歯部干渉は除去されていることを確認しました。インプラント周囲骨はCT上で安定し、補綴物の適合精度にも問題は認められませんでした。デジタルスマイルシミュレーションで計画した審美ラインも再現でき、上下の調和の取れた補綴形態となりました。

長期管理と歯科医師の解説
定期メンテナンス
オールオン4治療は装着後の長期管理が不可欠です。当院では装着後3〜4ヶ月ごとの定期メンテナンスを推奨しており、本症例の患者様も継続的に通院されています。メンテナンスでは、インプラント周囲組織のプロービング、X線による骨レベルの確認、咬合接触の再評価、補綴物のスクリュー緩みの確認、専門的なクリーニングを実施します。
特に対合が全て天然歯である症例では、年単位で咬合関係が変化する可能性があり、年に1度の咬合再評価は欠かせません。インプラント周囲組織の炎症についても早期発見が極めて重要です。
よくあるご質問
質問1:高齢でもオールオン4は可能ですか
80代でもオールオン4を行うことは可能性があります。重要なのは年齢そのものではなく、全身状態、骨条件、口腔衛生管理能力、そしてご本人の治療への理解と意欲です。本症例では全身状態が良好で、十分な骨条件が確保されており、何より患者様ご自身の強いご希望がありました。
質問2:既存のインプラントを活用できるのですか
状態が良好で、適切な位置にあれば活用できる場合があります。ただし元々の埋入目的や深度がオールオン4の要件と一致しないことが多く、状態評価と慎重な設計が必要です。本症例でも既存2本のうち1本のみを活用し、もう1本は抜去しました。
質問3:根尖性歯周炎があってもインプラントを入れられますか
病変が大きい場合は、抜歯と同時埋入のリスクが高くなります。本症例のように即時義歯フェーズを挟み、感染源を徹底的に除去してから埋入する段階的アプローチを取ることで、より安全に治療を進められる可能性があります。
質問4:費用は分割払いに対応していますか
当院ではデンタルローンや分割支払いに対応しています。詳細はカウンセリング時にご相談ください。なお自由診療であるため医療費控除の対象となりますので、領収書の保管をおすすめします。
質問5:下の歯が天然歯でも問題ありませんか
問題が生じないよう設計面で対応可能です。ただし上下の力学的バランスが特殊になるため、咬合設計とナイトガード対応など、補綴設計面で配慮が必要となります。本症例でも対合天然歯への配慮として、咬合接触の細かな調整を行っています。
歯科医師からのコメント
今回の症例で私が最も重要だと考えたのは、「動かせない既存条件」をいかに設計に組み込むかという点でした。すでに埋入されているインプラントの位置・深度は変更不可能であり、これを前提に追加埋入と補綴を設計する作業は、新規症例とは異なる難しさがあります。
また、入れ歯を一度も受け入れてこられなかった患者様に対し、最終補綴に至るまでの間「即時義歯を一時的に使用していただく」という妥協をお願いしなければなりませんでした。これは患者様にとって大きな心理的ハードルでしたが、感染源の除去と治癒期間の確保はオールオン4の長期予後を支える基盤であり、この工程を省略することはできません。患者様にも丁寧にご説明し、即時義歯期間中も並走しながら治療を進めました。
設計上の注意点として、対合が全て天然歯であること、既存インプラント位置の制約、根尖性歯周炎による組織条件の変化など、複数の要因が同時に存在する症例では、それぞれを単独で対処するのではなく、すべてを同時に成立させる設計が求められます。Eden Dental Office では、こうした統合的判断こそが補綴専門医の役割であると考えています。
長期予後については、定期的なメンテナンスと咬合管理、必要に応じたナイトガード装着の継続が前提となります。患者様にも繰り返しご説明し、現在も継続的にメンテナンスを続けていただいています。
治療のリスク・副作用・費用・期間
治療期間:約9ヶ月(抜歯後の治癒期間、インプラント治癒期間を含む)
費用:3,200,000円
オールオン4治療は自由診療であり、費用は使用する材料、必要なインプラント本数、上部構造の素材、追加処置の有無により変動します。
主なリスク・副作用:
・術後に腫れや疼痛が生じる可能性があります
・創部の感染、出血の可能性があります
・術前の骨条件によっては骨造成が必要になる場合があります
・インプラント周囲炎を発症する可能性があるため、定期的なメンテナンスが不可欠です
・上部構造の破折、スクリュー緩み、咬合変化に伴う調整・修理が必要になる場合があります
・全身状態や服薬状況により治療計画の変更が必要となることがあります
名古屋でオールオン4治療を検討されている方へ
オールオン4治療では、
・骨の状態
・噛み合わせ
・補綴設計
・インプラントの埋入位置
などを総合的に診断することが重要です。
当院では骨量不足症例や重度歯周病症例、多数歯欠損症例など、さまざまなオールオン4治療を行っています。
ご自身に近い症例を探したい方は以下の症例一覧も参考にしてください。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン
インプラントをはじめ、審美補綴や義歯などの外科的治療に関するご相談を承っております。その他の治療内容についてもお気軽にお問い合わせ下さい。



