ブログ

若い方の治療で考えること

若い方の治療で、最初に考えること

若い方の治療で、最初に考えること

若い方の治療で私が最初に考えるのは、「今どう治すか」ではありません。「これから何十年のあいだに、何回やり直すことになるか」です。20代・30代の方は、治した歯と付き合う年数が40代・50代の方より20年、30年と長くなります。同じ処置をしても、その年数のあいだに作り替えが何周発生するかが変わってきます。この記事では、若い方の治療を考えるときに私が実際に見ていることを、順番にご説明します。

もうひとつ、先にお伝えしておきたいことがあります。若い方のお口が悪くなっているとき、その原因は「治療の失敗が積み重なったから」ではなく、「治療そのものが届いていなかったから」であることが多い、ということです。

重度の歯科恐怖症がある方61名を調べたドイツの研究(Lenk ら、Scientific Reports 2025)では、対象者の年齢中央値は31歳、むし歯のある歯は中央値13本でした。それに対して、詰めてある歯の本数は中央値0本です。13本のむし歯に対して充填が0本という状態は、削りすぎでも治療のやりすぎでもありません。治療が一度も行われてこなかった、ということです。

日本の統計も同じ方向を向いています。令和6年歯科疾患実態調査では、毎日歯をみがく人は97.2%、1日2回以上みがく人は80.0%。それでも15〜29歳の22.3%に未処置のむし歯があり、15〜24歳では24.7%に4mm以上の歯周ポケットが見られます。過去1年間に歯科検診を受けた人は63.8%にとどまります。みがき方の問題というより、受診の間隔と、飲食の内容・回数のほうが効いていると考えるほうが数字には合っています。原因そのものについては(→ 歯がボロボロになる5つの原因と、ここからできること)で扱っています。

見た目の悩みを口にしにくいのも、この年代の特徴です。同じ研究では、生活満足度の低下が「自分自身への満足」「友人関係」「経済状況」といった領域に及んでいました。口腔関連QOLの低下は効果量 Cohen’s d=2.41 で、心理統計としてはきわめて大きい部類です。就職や転職の面接で気になる、人前で口を手で覆ってしまう。こうした悩みは気のせいではなく、測定できる現象として報告されています。受診そのものへの抵抗については(→ 歯がボロボロで恥ずかしい方へ|名古屋の受診できない心理と突破口)で詳しく扱っています。

1本ずつ治す場合と、全体をまとめて考える場合の違い

1本ずつ治していくやり方は、そのときいちばん痛い歯、いちばん目立つ歯から順に消していく進め方です。理にかなって見えますが、噛む力の流れ、欠けている場所、噛み合わせの高さは、1本ではなくお口全体で決まります。全体をまとめて考えるというのは、どこをどれだけ削るかを決める前に、「どの歯を軸として残すか」「噛む高さをどこで支えるか」「どの順番で手をつけるか」を先に決めることです。まず順番を決めて、材料ややり方はその後で選びます。

なお、80歳で20本以上の歯が残っている方の割合は61.5%(前回調査51.6%)まで改善しました。高齢の世代のお口は良くなっている一方で、15〜24歳の歯周ポケット保有率は初めて20%を超えています。世代間で数字が逆転しているこの状況を、私は「若い方が取り残されている」というより「若い方ほど早く動ける」と受け取っています。

若い方の治療で選べる5つの道と、それぞれの持ち時間

若い方が選べる道は、大きく5つあります

若い方の治療で選べる道は、大きく5つあります。それぞれ、どれくらいもつと報告されているか、良い点、気をつけたいことを並べます。数字はどれも「そう報告されています」という程度のもので、ご自身のお口がどれに当てはまるかは、検査をしてみないと分かりません。

歯を残して修復を積み重ねる(1本ずつ治していく)

報告されている経過:詰め物から根管治療へ進んだ症例43.8%、詰め物から抜歯へ直行した症例35.04%(Matloob & Sheth、Odontology 2026、n=137)

良い点:1回あたりの費用と時間が小さい/保険内で完結しやすい/その日の困りごとが早く消える

気をつけたいこと:治療が次の治療を呼びやすい。間接修復後に歯の神経が死ぬ割合は5.02%、根の先の病巣は3.63%との報告(Almotairy ら、BMC Oral Health 2023、37研究11,615歯/確実性は低いと評価)

歯を残す前提で全体を組み立てる(接着中心の低侵襲再建)

報告されている経過:年間失敗率はセラミック0.04%、レジンナノセラミック0.13%、ダイレクトコンポジット0.64%(Clinical Oral Investigations 2025、10研究)。根管治療をした歯の生存率は7.5年で95%、20年で79.1%(Moraschini ら、JFB 2023)

良い点:エナメル質を残せる/やり直しの選択肢が後に残る/部分的な補修がしやすい

気をつけたいこと:いちばん多い不具合は詰め物・被せ物の欠け。年間の不具合率はセラミック0.2〜1.1%に対し、従来型の間接コンポジットレジンは1.6〜15.1%。噛み合わせの管理と定期的な確認が前提になります

部分的にインプラントを併用する

報告されている経過:インプラント体は平均13.4年で生存94.6%・成功89.7%(Moraschini 2023)。フルアーチではインプラント体99.4%に対し、被せ物の部分は5年80%・10年60%(Acar ら、BMC Oral Health 2026、n=24・平均58歳)

良い点:隣の歯を削らずに欠けた場所を補える/固定式で噛む力を得やすい

気をつけたいこと:インプラント周囲炎は患者単位で21%、20年で累積22%との報告(Galarraga-Vinueza ら、J Periodontol 2025)。歯周病にかかったことがあるとオッズ比2.2〜10.45。20代で入れれば、被せ物の作り替えを複数回見込む必要があります

入れ歯を含めて組み立てる(取り外し式を組み合わせる)

報告されている経過:若い方に限定した学術的な生存率のデータは、今回の調査では確認できませんでした。民間の費用比較メディアの集計では、部分入れ歯の寿命の目安は5〜7年

良い点:削る量が少なく、後から戻せる/欠けた場所が増えても作り替えで対応できる/後から他の方法へ移りやすい

気をつけたいこと:合わせる調整が要る/バネをかける歯に負担がかかる/長期のデータが乏しく、目安の年数は参考値にとどまります

親知らずを移す(自家歯牙移植)

報告されている経過:生存率は1〜4年で96.31%、4〜8年で88.23%、8年超で84.80%(Wong ら、Restorative Dentistry & Endodontics 2026、46研究、平均年齢10〜39歳)

良い点:天然の歯根膜が残る/隣の歯を削らない/後から矯正で動かせる

気をつけたいこと:うまくいかなかった例の約半数は歯根の吸収(抜去259歯中128歯)。親知らずが健全に残っていること、移す先の骨が足りていることが条件になります

この5つは、どれか1つを選ぶというより、組み合わせて使います。前の歯は接着で、奥の欠けた場所は移植で、当面の噛む力は取り外し式で支えておく。そういう組み方ができるのが若い方の治療の特徴です。5つのうち下の2つは、親知らずと歯質が残っているうちにしか選べません。40代・50代になってから同じ相談を受けても、そのときには選択肢から外れていることが多いです。

若い方の治療で、できないこと・急がないほうがいいこと

正直にお伝えしておきます

正直にお伝えしておきます。「一度で終わる治療」はありません。先ほどのフルアーチの研究では、何も不具合が起きずに経過した割合は1年で61.8%、3年で26.5%、5年で14.7%でした。欠けや摩耗は73.5%に起きていて、歯ぎしりと関連が見られています(p=0.049)。歯ぎしり・食いしばりの世界的な有病率は22.22%、睡眠時の検査で診断すると43%という報告もあります。噛む力の管理を組み込まないまま新しい歯を並べても、同じ場所が同じように壊れます。

治療しすぎないための配慮も要ります。平均年齢20.6歳の大学生504名を口腔内スキャナーで調べた研究では、何らかの歯のすり減りの所見(BEWE≥2)が68.1%に見られました。ただしそのうち82.9%は低リスクです。「所見がある」ことと「今すぐ削って治す必要がある」ことは別です。当院の口腔内スキャナーは、まず数値で記録して1年後と比べる、という使い方ができます。進んでいないなら、触らないという判断が成り立ちます。

期間と通院回数は状態によって大きく変わるので、この場では回数を書けません。検査・診断のうえで、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。はっきりお伝えできる料金は、無料相談が無料、セカンドオピニオン外来が5,500円(税込)です。費用そのものへの不安で足が止まっているなら(→ お金がなくて歯医者に行けないと感じている方へ)が参考になります。

向いていない進め方もあります。原因を抑えられていない段階で、被せ物や入れ歯だけを先に作ってしまうやり方です。歯周病にかかったことがあると、インプラント周囲炎のオッズ比は2.2〜10.45に上がります。歯を失った原因を治さないまま歯を足しても、同じことが起こります。また、20代でグラつきがある場合、原因がむし歯ではなくグレードC大臼歯・切歯型歯周炎(かつて侵襲性歯周炎と呼ばれた病気)のことがあります。この病気は家族に出やすく、大人の歯で診断された例の90%は、乳歯の時点ですでに骨が下がっていたと報告されています。早く見つかれば、歯石取りと根面の清掃に飲み薬の抗菌薬を併用した治療で、4年にわたりポケットの改善が保たれたという報告があります。

なお、20代で入れた被せ物や詰め物が40代・50代でまとめて寿命を迎える、という話は別の記事で扱っています(→ 若い頃の治療が40代・50代で一斉に劣化したら)。この記事は、その手前で選択肢を減らさないための考え方に絞ります。

ご自身の状況を整理するための5つの確認ポイント

  • 同じ歯を何回治しているか。 私が初診で数えるのは「むし歯が何本か」ではなく「その歯が何周目か」です。健全な歯から抜歯までの段階のどこにいるかで、次に取る手が変わります。
  • 親知らずが健全に残っているか。 残っていれば、失った歯の場所によっては移植という選択肢が生まれます。年齢と親知らずの有無で決まるので、40代・50代では成り立ちにくい選択肢です。
  • ご家族・ご兄弟に若くして歯を失った方がいるか。 当てはまる場合は、お口全体のレントゲンと歯周組織の詳しい検査を先に行う理由になります。
  • 1日の飲み方。 何を、どのタイミングで、どれくらいの時間をかけて飲むか。炭酸飲料、酸っぱい果物、エナジードリンクをちびちび飲む習慣は、糖よりも酸にさらされる時間が問題になります。起きたときに口が酸っぱい、胸やけがあるという方は、胃からの逆流も確認します。
  • 治療を途中でやめた経験があるか。 中断は珍しいことではなく、戻るタイミングの取り方があります(→ 治療を中断してしまった方が戻りやすいタイミング)。妊娠・出産をきっかけにお口の状態が変わった方は(→ 妊娠・出産で歯が悪くなった方の治療再開)もあわせてご覧ください。

私が若い方の治療で、順序にこだわる理由

米国の補綴教育で学んだ、長期を見る視点

私は米国Indiana大学大学院で補綴学を3年間専攻し、MSDとCertificate in Prosthodonticsを取得しました。日本と米国の両方で治療計画を立ててきて、いちばん大きな違いを感じたのは、技術ではなく教育の時間の使い方です。米国の治療計画の授業は、個々の歯をどう治すかよりも、「治療の順序をどう決めるか」に大半の時間が割かれていました。同じ症例を前にして議論されるのは、材料の選択ではなく、どこから触ってどこを最後に残すか、という話です。

もうひとつ驚いたのが、診断の進め方でした。お口全体の治療では、完成した形の模型(ワックスアップ)を先に作ります。歯の形と並び、噛み合わせの高さを蝋で立体的に再現して、それを患者さんにお見せして「これがゴールです」と合意してから、はじめて歯を削り始めます。ゴールを決めずに削り始めると、途中で方針が変わったときに戻せません。若い方ほど、この「戻せる状態を長く保つ」ことが効いてきます。

削らないことと、何もしないことは違います

私は入れ歯を「最後の手段」とは考えていません。若い方の治療でも、取り外し式は「今は元に戻せない処置を避けて、数年後の選択肢を残しておく」ための、とても有効な手として使えます。今は噛む力を取り外し式で支えておいて、骨や歯ぐきの状態が整ってから固定式に移る。そういう順序が組めます。

初診で私が確認するのは、痛い歯だけではありません。噛み合わせの高さがどれだけ失われているか、前に出したときに奥歯が離れるか、清掃の道具が届かない場所はどこか、そして「どの歯が軸として使えるか」です。ここを見ないまま抜くか残すかを決めると、後になって計画全体がうまくいかなくなります。残せる歯と抜く歯の判断については(→ 名古屋で歯がボロボロ|残せる歯と抜く歯の考え方)にまとめています。最初の検査で何を撮り、何を測るかについては(→ 歯がボロボロの方が最初に受けるべき検査とは)をご覧ください。

そしてもうひとつ、必ず伺うようにしているのが「これまで通えなくなった理由」です。責めない診療は、私の好みでそうしているのではなく、研究がすすめている方針です(→ 歯医者 責められるが怖い方へ|名古屋の叱らない歯科の選び方)。歯を残すのか、抜くのか、待つのか。この3つを全体の設計図の上に並べて、ご一緒に決めていきます。

まとめ|若い方の治療で考えること|よくあるご質問

まとめ|この記事の要点

この記事の要点を整理します。第一に、若い方のお口が悪くなっているとき、それは治療の失敗が積み重なった結果ではなく、治療が届いてこなかった結果であることが多いということ。年齢中央値31歳の研究で、むし歯13本に対して充填0本という数字がそれを示しています。第二に、若さは選択肢の多さとして働くということ。接着中心の低侵襲な再建、親知らずの移植、歯を残したまま全体を組み直す方法は、どれも歯質と親知らずが残っているうちにしか選べません。第三に、残りの年数が長いぶん、どの治療を選んでも作り替えの周回数が増えるという見方を、最初の1本を決める前に持っておくということです。

まずは今の状態を数字と画像で確認するところから始めれば十分です。名古屋・伏見駅から徒歩2分の当院は完全予約制・完全個室で、無料相談とZoom相談をご用意しています。何年ぶりでも、本数がいくつでも、驚いたり責めたりすることはありません。

よくあるご質問

Q1. まだ20代ですが、もう手遅れではないでしょうか。

手遅れかどうかは、検査をしないままでは判断できません。むしろ数字の上では逆のことが言えます。歯周治療を受けて定期的に管理されている方が5〜10年で失う歯は2〜5%にとどまるという報告があり、根管治療をした歯の生存率も20年で79.1%と報告されています。抜いてインプラントに置き換えた場合の成績(平均13.4年で生存94.6%)と比べても同等で、著者らは「まず長期に維持できる歯を救う努力をすべき」と結論しています。

Q2. 若いうちに治すと、何がどう違うのですか。

選べる手の数が違います。エナメル質が残っていれば接着中心の低侵襲な再建が成り立ちますし、親知らずが健全なら移植という選択肢があります。どちらも、歯質と親知らずを失った後では選べません。逆に言えば、急いで大きく削ってしまうと、その後の数十年で使えたはずの手が減ります。

Q3. 初回は何をしますか。いきなり削られませんか。

初回にするのは、お話をうかがうことと、記録を取ることです。レントゲン・CT・口腔内スキャナーで現状を記録し、歯周組織の検査を行って、そのうえで全体の組み立てをご相談します。その日にいきなり削る、ということはしません。久しぶりの受診をどう再開するかは(→ 歯医者 何年も行ってない方へ|名古屋の久しぶり受診・再開ガイド)にまとめています。

Q4. 全部を一度に治さないといけませんか。仕事をしながら通えますか。

一度にまとめて治すかどうかは、診断の範囲と、実際に手をつける範囲を分けて考えます。診断は全体で行いますが、手をつけるのは、痛みや機能の困りごと、見た目の優先度、ご都合に合わせて段階的に進められます。回数と期間は状態によって大きく異なるので、検査のうえで具体的なスケジュールと見積りを治療前にお示しします。まずは無料相談だけ、あるいはZoom相談だけでも構いません。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえで、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。

関連する内容は以下のページでご説明しています。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン

インプラントをはじめ、審美補綴や義歯などの外科的治療に関するご相談を承っております。その他の治療内容についてもお気軽にお問い合わせ下さい。