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歯がほとんどない場合の治療設計

装置より先に、残す歯が決まります

右下の奥に2本、上の前歯に3本。たとえばこういう残り方をしているとき、相談は「総入れ歯にするか、インプラントにするか」から始まりがちです。ただ、その前に決めることがあります。この5本を残すのか、抜くのかです。ここが決まらないと装置の話は進みません。この記事では、残す歯をどう決めるかをご説明します。

この記事でわかること

  • 残す歯を決める五つの条件が分かります
  • 1本残ることで、装置の使い心地がどう変わるかが分かります
  • 残り方のパターン別に、どの設計になるかが分かります
  • 相談の前に、ご自身で整理しておけることが決まります

この記事が想定している状態

上下を合わせて数本しか残っていない。噛み合っている場所はほとんどない。食事は軟らかいものが中心で、前歯で噛み切ろうとして、その前歯も揺れてきた。そういう段階です。

何本以下という線引きはありません。上下が当たる場所が残っていなければ、本数にかかわらずこの記事の話になります。

冒頭の例に戻ります。右下の奥に2本、上の前歯に3本。この方の口では、上下が噛み合っている場所はゼロです。下の奥の2本には噛み合う相手がなく、上の前歯3本にも相手がいません。歯は5本あるのに、噛める場所はありません。

順序が逆になると、作り直しになります

この状態でご相談に来られる方は、すでにどこかで説明を受けていることが多いと思います。総入れ歯にしましょう、インプラントにしましょう、と。

その前に決まるのが、残す歯です。5本を支えとして使えるなら、その歯に留める設計ができます。使えないなら、歯ぐきと骨だけで支える設計になります。装置としてまったく別物です。

順序が逆になると、途中で計画を作り直すことになります。総入れ歯を前提に進めていたのに、残せる歯があると分かってやり直す。あるいは残す前提で外してみたら、支えに使えなかった。どちらも実際に起きます。

なお、歯がなくなってから何年経っているかで、判断の材料は変わります。

残す歯と、抜く歯をどう見分けるか

見ているのは、この五つです

見ている条件 残す側に働く 抜く側に働く
歯ぐきから上に残っている歯質の高さ 全周にわたって高さがある 2mmを下回る。片側しか残っていない
根の状態 根の先に炎症がない。処置ができる形 根が割れている。処置が届かない
歯を支える骨の量 根の長さの半分以上が骨に埋まっている 骨がほとんど残っていない
揺れの大きさ 指で押しても動かない、わずかに動く程度 縦方向にも沈む
口の中での位置 左右や前後に散らばっている 一か所に固まっている

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます

一行目を補足します。被せ物を作るとき、歯ぐきから上に残っている歯質が2mmを下回ると成績が落ちるという報告があります。

冒頭の例で言えば、上の前歯3本は、正面から見れば歯として見えています。ところが裏側が虫歯で溶けていて、実際に残っているのは表側の壁だけ、ということがあります。この場合、見た目には歯があるのに、支えには使えません。ここが「何本残っているか」では判断できない理由です。

五つは、どれかひとつで決まるものではありません。歯質の高さが足りなくても、位置として貴重な場所にあるなら、歯ぐきの側を下げて高さを出す方法を検討します。

歯周病で失い続けてきた方の場合は、残す判断の前に進行を止める手順が要ります。

弱い歯どうしをつないで、まとめて支えにする考え方もあります。

1本残ると、使い心地がここまで変わります

「たった1本残しても意味がないのでは」と言われることがあります。変わるのは、主に三つです。

ひとつは、沈み込みです。歯ぐきは押せば沈みますが、歯の根は骨に固定されています。総入れ歯が合わないとおっしゃる方の多くは、噛むたびに装置が沈んで歯ぐきが当たることで困っておられます。支えが1本あるだけで、この動きがかなり減ります。

もうひとつは、噛んだ感覚です。歯の根の周りには、噛む力を感じ取る仕組みがあります。総入れ歯ではこれが働きません。感覚があると力の加減が自然にできますが、ないと入れすぎたり、怖くて噛めなかったりします。食べられるものの幅が変わります。

三つめは骨です。歯の根が骨の中にあるだけで、その周りの骨は保たれます。抜けば、その場所は少しずつ痩せていきます。

残り方のパターンで、設計はこう分かれます

四つに分かれます

残り方 主な設計の方向 論点になること
数本が左右に散らばっている 部分入れ歯。支えを足す併用も選べる どの歯に何をさせるか。バネの位置
数本が片側だけに固まっている 装置が回転しやすく、設計が難しくなる 反対側の支えをどう作るか
片方の顎だけ歯がない その顎の再建と、反対の顎との関係 残った側の歯にかかる力
残せる歯がない 総入れ歯、または固定式 骨の量。取り外し式を受け入れられるか

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます

冒頭の例は、二行目に近い形です。下の奥2本は右側だけですから、左で噛もうとすると装置は右を軸に回ります。上の前歯3本も前に寄っています。支えが前と右に偏っていて、左と後ろには何もない。この状態では、残す本数を増やしても安定しません。左後方に支えを作れるかどうかが論点になります。

詳しい設計は、記事を分けています

左右に散らばっている場合、取り外し式を軸に組み立てる考え方はこちらです。

その入れ歯を、インプラントで支える設計もあります。

片側だけに残っている状態は、すれ違い咬合と呼ばれます。

片方の顎だけ歯がない場合は、扱う課題が変わります。

固定式を中心に考えたい場合の整理は、こちらにあります。

噛み合わせの高さそのものが崩れている場合は、そこから組み直します。

相談の前に、ご自身で整理しておけること

  • ☑ いま何本残っているか。正確でなくて構いません。上下それぞれ、どのあたりに残っているかが分かれば十分です
  • ☑ 揺れている歯があるか。舌で押して動くものがあれば、その場所を覚えておいてください
  • ☑ 何が食べにくいか。硬いものなのか、前歯で噛み切るものなのか。目標を決める材料になります
  • ☑ 取り外すことをどう思うか。避けたいのか、構わないのか。選択肢の並べ方が変わります
  • ☑ 夜間の食いしばりの心当たり。朝の顎のだるさ、歯の内側の骨の隆起。残す歯の設計に直接関わります

私が、残す歯をどう決めているか

抜く判断は、使ってもらってから決めます

抜いてしまえば戻せません。ですから、検査の数値だけで決めきらないようにしています。

まず残っている歯の処置をして、仮の装置で噛める状態を作ります。その状態で数週間過ごしていただきます。噛むたびに痛む歯、揺れが増していく歯があれば、そこで判断がつきます。逆に、心配していた歯が問題なく働くこともあります。

すぐに最終の形にしたい方には、遠回りに感じられると思います。それでも、抜いてから「残せたかもしれない」と思う事態は避けたいと考えています。

本数より、支えの散らばりを見ます

同じ3本でも、左右と前で三角形になるように残っていれば装置は安定します。片側に3本並んでいるだけなら、反対側は沈み、噛むたびに回転します。ぐらつくテーブルの脚と同じで、離れて置かれていれば安定し、寄せて置けば傾きます。

ですから、残す歯を選ぶときには「この歯を残すと三角形ができるか」を見ています。支えが足りない側には、インプラントで足すという選択肢もあります。足す場所も、三角形を作れる位置から考えます。

インプラントの本数を先に決めないのは、このためです。どこに支えが欲しいかが先で、本数は結果として決まります。

装置がどうなるかまで見て決めます

私は通常であれば歯科技工士に委ねられる製作の工程まで、自分の手で行ってきました。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになります。

作る側に立って分かったのは、残す歯の位置が装置の厚みを決めるということです。支えに使う歯の場所によっては、装置の一部を厚くせざるをえません。厚みは舌に当たりますから、話しにくさや違和感につながります。

残す歯を決める段階でそこまで見ておくと、「入れたけれど使えない」という結果を避けられます。歯の側だけを見て決めると、できあがった装置が使いにくくなることがあります。

残したあと、その歯を守る設計にします

歯が少ないほど、残った歯に力が集まります。夜間の食いしばりがあれば、なおさらです。残す歯を決めるときには、その歯にどれだけの力が来るかまで見積もり、必要なら力を逃がす装置を併せて使います。

残す判断は、抜かずに置いておくという意味ではありません。残したうえで守る設計をする、という意味です。

期間をできるだけ短くしたい場合の考え方は、別に一本あります。

まとめ|名古屋で歯がほとんどない状態から治療を決めるために

歯が数本しか残っていないとき、最初に決まるのは装置の種類ではなく、残す歯です。判断に使うのは、歯ぐきから上の歯質の高さ、根の状態、支えている骨の量、揺れ、そして口の中での位置。この五つです。

1本残るだけで、装置の沈み込みが減り、噛んだ感覚が残り、その場所の骨が保たれます。一方で、条件の悪い歯を無理に残せば、そこから崩れます。

残す歯が決まれば、設計は四つのどれかに絞れます。そこまで整理してから、装置の話に入ります。

治療の選択肢を全体で見ておきたい方は、まとめ役の記事をご覧ください。

名古屋で歯がほとんどない状態からの治療を検討されている方は、まず無料相談で構いません。いまお使いの装置があれば、お持ちいただけると話が早く進みます。

よくあるご質問

Q1. 残っている歯は、全部抜いたほうが早いのでしょうか。

早いのは事実です。抜けば条件がそろい、設計は単純になります。ただ、残せる歯を抜くと骨も噛んだ感覚も一緒に失いますし、あとから戻せません。どの条件がどうだから抜く、という説明であれば納得できると思いますので、根拠をお聞きになってよいと思います。

Q2. 揺れている歯は、必ず抜くことになりますか。

必ずではありません。揺れの原因が歯ぐきの炎症なら、処置で落ち着くことがあります。骨がほとんど残っていない場合や、縦方向にも沈む場合は難しくなります。仮の装置で噛める状態にしてから数週間見て、そのうえで判断することもあります。

Q3. 医院によって説明が違って、判断がつきません。

違いが出るのは、多くの場合、残っている歯をどう評価したかの差です。どの歯を残す前提の計画なのかを聞くと、話が比べられるようになります。お手元にレントゲンやCTがあればお持ちください。同じ画像を見ながらご説明できます。

Q4. 何年も歯科に行っていません。この状態で相談しても怒られませんか。

怒ることはありません。経緯をうかがうのは、これまでを評価するためではなく、これから何をどの順番で行うかを決めるためです。その日に治療を決めていただく必要もありません。当院のカウンセリングルームは完全個室、診療室は半個室です。所在地は名古屋市中区栄、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分です。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。無料相談は無料、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。当院は名古屋市中区栄、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分にあります。完全予約制で、Zoomでのご相談にも対応しています。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

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