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奥歯が全部ないと、入れ歯が動いて噛めなくなる理由
上と下で、噛み合う歯が1本も残っていない状態です
この状態とは、上下の顎に歯が残っているのに、上下で噛み合う場所が1組もなくなった状態を指します。歯の本数が少ないことが問題なのではなく、残り方が食い違っていることが問題の本体です。名古屋でこの状態と言われて調べている方へ、先にお伝えします。この状態が難しいのは、入れ歯が傾いて動くからです。しかも上下の入れ歯が互いを押し合います。この記事では、その仕組みと設計の考え方を整理します。
この記事でわかること
- この状態が、歯の本数の問題ではない理由が分かります
- 入れ歯がシーソーのように動いてしまう仕組みが分かります
- 支えを1本足すと、動きがどれだけ変わるのかが分かります
- 相談の前に、ご自身で整理しておけることが決まります
「奥歯が全部ない」と、どうなるのか
奥歯を全部失うと、噛む仕事は前歯に移ります。前歯はもともと食べ物を噛み切るための歯で、すりつぶす作りにはなっていません。そこに毎日の力がかかり続けると、前歯のほうも傷んでいきます。
さらに上下のどちらかで前歯まで失うと、上下で噛み合う場所が1組も無くなります。ここまで来ると、入れ歯を入れても安定しにくくなります。この記事で扱うのは、その状態です。
歯はあるのに、噛み合う場所がない
歯科では「すれ違い咬合」と呼ばれる状態です。上下のあごに歯は残っているのに、噛み合う位置そのものが失われている、という意味の呼び名です。名前を知らなくても差し支えありません。
具体的には、たとえば上は奥歯だけが残り、下は前歯だけが残っている。上下それぞれに歯はあるのに、上の歯の真下に下の歯がなく、下の歯の真上に上の歯がありません。どこで噛めばよいのか、体のほうが分からなくなります。
奥歯が全部ないという状態は、この食い違いを生みやすい形の一つです。上下ともに奥歯を失い、前歯だけで噛んでいる状態はまだ噛み合う場所が残っていますが、そこから片方の前歯を失うと、噛み合う場所がなくなります。
言い換えると、この状態は突然できるものではありません。奥歯から順に噛み合う場所が減っていき、最後に残っていた一組が失われた時点で成立します。ですから、噛める場所が少しずつ減っている段階では、まだ別の設計が選べます。
どんな残り方をしているかで、動き方が変わります
残っている歯の位置は、人によってちがいます。上の奥歯と下の前歯が残っている方もいれば、右と左で残り方が入れ違っている方もいます。両方が混ざっている場合もあります。
どの残り方かによって、入れ歯がどちら向きに動くのかが変わります。前後に傾く動きになるのか、左右に傾く動きになるのか。ここを見ずに入れ歯を作ると、どこを直せばよいのかが分からなくなります。
ですからご相談のときは、まず残っている歯の位置を上下一組として見ます。本数を数えるより先に、位置関係を見るということです。
頻度は高くありません
65歳以上の方を対象にした調査では、上下で噛み合う場所がない方が1割台、そのうちこの記事で扱う残り方にあたる方は数%だったと報告されています。ちなみに上下の奥歯で噛み合う場所が保たれているAが38.3%、噛み合う場所が減りはじめている方は、半数近くにのぼります。
つまり、噛み合う場所が1組もなくなった状態は、多数派ではありません。何軒か回っても話が進まなかったという経験をお持ちの方がいらっしゃいますが、それは珍しい状態だからでもあります。ご自身の手入れの問題として受け止める必要はありません。
この数え方は、歯が何本あるかではなく、上下で噛み合っている場所がいくつ残っているかで分けています。本数ではなく、噛める場所の数と位置で見るということです。歯がまだ何本も残っているのに難しいと言われるのは、この見方をしているからです。
歯の本数という軸から整理したい方には、別の記事があります。
入れ歯がシーソーのように動いてしまう仕組み
留め具をかけた歯が、シーソーの支点になります
この状態の難しさは、入れ歯が沈むことではなく、回ることにあります。
入れ歯は、残っている歯に留め具をかけて支えています。その留め具をかけた歯どうしを結んだ線が、シーソーの支点にあたります。噛み合う場所がない状態では、この支点を中心にした傾きが、使い始めてすぐに出てくると報告されています。
シーソーを思い浮かべると分かりやすいと思います。軸の片側にだけ力がかかれば、反対側は浮きます。この状態では、噛む力が軸の片側に偏ってかかるため、入れ歯の反対側が持ち上がります。軸から遠い場所で噛むほど、浮き上がる力は大きくなります。
使っている方は、こんな感じ方をされます
この動きは、お口の中では次のような感じ方になって出てきます。噛むと片側が浮いてくる。奥のほうがパカパカして、そこに食べ物が入る。前のほうだけで噛んでいる気がする。しばらく使うと、いつも同じ場所が痛くなる。だんだん外れやすくなってきた。
「入れ歯が合わない」という一言の中身は、多くの場合この動きのことです。ご自分の使い方が悪いのではなく、支える場所がないことから来ています。
上下の入れ歯が、互いを押し合います
厄介なのはここからです。上の入れ歯が回れば、その動きは下の入れ歯を押します。押された下の入れ歯も回り、今度は上を押し返します。この押し合いは、使い始めて短い期間のうちにはっきり出てくると報告されています。
片方だけを作り直しても止まらないのは、このためです。上の入れ歯が合わないと感じて上だけを作り直しても、下からの押し返しは変わりません。上下を一組として設計する必要があります。作り直すたびに合わなくなるという経験は、この構造から説明がつきます。
放っておくと、次のようなことが起きてきます。留め具がゆるんで入れ歯が外れる、歯ぐきの土手が痩せていく、留め具をかけた歯がぐらついて抜けてしまう、入れ歯そのものが割れる。どれも、動きが止まっていないことから来ています。
支えを1本足すと、動き方が変わります
では、この傾きを抑えるために何ができるのか。入れ歯だけで支える場合と、奥のほうに支えを1本足した場合を、コンピュータ上で比べた報告があります。
結果はかなりはっきりしていて、支えを足したほうは入れ歯の沈み込みが大きく減り、歯ぐきにかかる力も分散したと報告されています。支えを置く位置によっても差が出ていて、より奥に置いたほうが傾きを抑えやすいという結果でした。
ただし、これはコンピュータ上で計算した結果です。実際のお口の中で同じようになるとはかぎりません。次の章で、その点を正直にお伝えします。
いまお使いの入れ歯で、確かめられること
受診の前に、ご自身で見ておけることがあります。入れ歯を入れた状態で、前歯のあたりで軽く噛んでみてください。そのとき奥のほうが浮いてくるようなら、支点を中心に傾いているということです。逆に奥で噛んで前が浮く場合も同じです。
もう一つ、入れ歯の内側を見てください。同じ場所だけ当たりが強くなって、つるつるに光っていることがあります。そこが力の集まっている場所です。留め具をかけている歯のまわりの歯ぐきが下がってきていないかも、あわせて見ておかれるとよいと思います。
こうした気づきは、そのままお伝えいただければ十分です。どこが浮くか、どこが痛むかは、診察室で再現できないことも多いため、こちらにとって手がかりになります。
支えを足すかどうかを含め、残った歯とインプラントを組み合わせる考え方は、別の記事に整理しています。
取り外しではなく固定式を中心に考えたい方は、次の記事もご覧ください。
名古屋でご相談を受ける前に、正直にお伝えしておくこと
インプラントで解決できると断定はできません
先ほどの数値を見ると、インプラントを足せば済む話に見えるかもしれません。ここは正直にお伝えします。
歯科の側の報告でも、インプラントを少ない本数使えば入れ歯の動きを大きく抑えられるとされています。ただし同じ報告が、この状態に対してインプラントを組み合わせた入れ歯が本当によいのかを確かめた研究は、まだ無いとも書いています。
あわせて、インプラントがご自身の歯と噛み合う場合には、インプラント側が長くもたないことがあるため、使い方に慎重さが要るとも指摘されています。
計算上はよさそうに見えることと、実際に長く確かめられたこととの間に、まだ開きがあるということです。ですからこの方法をご提案するときは、その開きも一緒にお伝えしています。
同じ報告は、噛み合う場所が無くなる一歩手前の段階で、歯ぐきの土手が痩せきらないうちに固定式の治療をしておくことを勧めています。裏を返すと、すでに噛み合う場所が無くなっている場合には、その勧めがそのままは当てはまりません。いまどの段階にいるかで、選べる方法が変わります。
調整と修理を織り込む必要があります
この状態では、入れ歯が合わなくなったり壊れたりすることが起きやすいと報告されています。ですから、作って終わりにはなりません。
参考になる報告があります。少ない歯を支えに使う入れ歯をおよそ4年追いかけた調査では、入れ歯そのものが使えなくなった方は少数だった一方で、3人に2人は途中で何らかの調整や修理を経験していました。この状態に限った調査ではありませんが、少ない歯で支える設計では、手直しが当たり前に起きるということです。
調整の回数が多いこと自体は、設計の失敗を意味しません。この状態では、動きを見ながら少しずつ噛む面を整えていく工程が要ります。ですから、通う回数はあらかじめ多めに見込んでおいたほうが、途中で息切れしにくくなります。
短い期間で仕上げたい事情がある方に向けた整理は、別の記事にあります。
支えに使う歯の見通しも要ります
留め具をかける歯には、ふだんより大きな力がかかります。入れ歯の動きが、その歯に重い負担をかけることが分かっています。ですから、いま痛みも何もない歯でも、支えとして使うなら別の目で見直します。
歯を失い続けている原因が歯周病にある場合は、支えを作る前にその流れを止める手順が先に来ます。
長く間隔が空いていた方については、年数によって何が変わるかを別の記事にまとめています。
経緯をうかがうことはありますが、責めるためではありません。
相談の前に、ご自身で整理しておけること
- ☑ 上下のどこに歯が残っているか。上は右の奥、下は前、といった大まかな位置で構いません。
- ☑ 入れ歯がどちらの方向に外れるか。前が浮く、後ろが落ちる、片側だけ動く、のどれに近いかです。
- ☑ どこで噛もうとしているか。噛む場所を探してしまう感覚があるかどうかです。
- ☑ これまで何回作り直したか。回数と、そのたびに何が改善しなかったかが手がかりになります。
- ☑ 取り外し式に抵抗があるかどうか。抵抗の有無で、支えの置き方が変わります。
私が治療の順番として決めていること
壊れた場所は結果で、原因は力の流れにあります
私は米国インディアナ大学大学院で補綴学を3年間専攻し、MSDとCertificate in Prosthodonticsを取得しました。帰国してからの長い経過を見ていて、繰り返し確かめてきたことがあります。
全体の設計をせずに部分的な修理を重ねたお口は、数年後にまた別の場所が壊れやすい、ということです。壊れた場所は結果であって、原因は噛み合わせ全体の力の流れにあることが多い。この状態は、その連鎖が行き着いた形の一つだと私は考えています。奥歯を失った側に力が集中し、そこがさらに崩れ、噛む場所が別の位置へ移っていく。その繰り返しの結果として、上下がすれ違います。
ですから、いまある入れ歯を合わせ直すことから始めません。まず、どこにどう力が流れているかを読みます。
この読み方をしていると、患者さんが「悪くしてしまった」と感じている場所が、実は原因ではないことがよくあります。壊れた歯は力を受け止めきれなかった側であって、力を送り出していたのは別の場所です。ですから私は、壊れた場所の話から入らないようにしています。
決める順番を、先に固定します
具体的には、次の順で決めます。
- 傾きの支点がどこにできるかを特定する。留め具をかける歯を結んだ線が、どの向きに走るかを見ます。
- その軸に対して、力がどちら側に偏るかを読む。偏る側が浮き上がる側です。
- 偏りを打ち消す支えを、どこに置けるかを探す。骨と歯ぐきの条件を見て、置ける場所を絞ります。
- 上下を一組として、同時に設計する。片方だけ先に完成させることはしません。
- 仮の状態で動きを確かめてから、最終へ移す。紙の上の設計だけで決めません。
4番目が要点です。この状態では、上下が互いを押し合います。片方を先に仕上げると、もう片方を作るときに、先に作ったほうを基準にせざるを得なくなります。それでは偏りが固定されてしまいます。
1番目を先頭に置いているのにも理由があります。傾きの支点は、留め具をかける歯を決めた瞬間に決まります。つまり、どの歯に留め具をかけるかという選択が、そのまま軸の位置の選択になっています。ここを後回しにして人工歯の位置から決めると、あとから軸を動かせなくなります。留め具の位置は見た目にも関わるため、希望をうかがってから決めます。
留め具をかけた歯どうしをつないで力を分け合う考え方も、この軸の話と地続きです。
つなぐことで軸を長くできる場面と、つないだせいで巻き添えになる場面の両方があります。
自分の手で作ってきたから分かること
私は、通常は歯科技工士に委ねられる製作の工程まで自分の手で行ってきました。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになります。
その経験から言えるのは、入れ歯の傾きは、模型を手に持って動かしてみると指先で分かる、ということです。図面の上では成立していても、実際に指で押すと片側が浮く。浮いたときに、どこが最初に離れるかを見れば、支えを足すべき場所が見えてきます。
この状態の設計で私がいちばん時間をかけるのは、この確認です。画面の上で完結させず、手で押して確かめる工程を残しています。噛み合わせ全体が崩れている場合の進め方は、別の記事で詳しく扱っています。
片方の顎だけが崩れている場合の考え方も、別にまとめています。
まとめ|名古屋で奥歯が全部ない方が、次に決めること
この状態は、歯が少ないことではなく、上下の残り方が食い違っていることから起きる状態です。難しさの中心は、入れ歯が支点を軸に傾きし、上下が互いを押し合うところにあります。ですから設計の目標は、噛める場所を作ることに加えて、動きを抑えることになります。
支えを足せば動きが抑えられるという方向は、計算のうえでは示されています。ただし、この状態を対象にした臨床の裏づけはまだない、と報告自体が述べています。その開きを含めて説明を受けたうえで選ぶのが、いまの現実的な進め方だと思います。
多数歯欠損の治療選択を、全体から見渡してから決めたい方には、まとめ役の記事があります。
この記事はこの状態という一点に絞っていますので、選択肢の全体から入りたい方はそちらが入口です。
入れ歯を主軸に考える場合の設計は、別の記事にあります。
まずは無料相談で構いません。
よくあるご質問
Q1. 何軒か回りましたが、どこでも難しいと言われました。
この状態は、65歳以上1,477名を対象にした調査で4.4%と報告されている状態です。多く出会う形ではありません。難しいと言われたのは、状態の性質によるものだと考えていただいて差し支えありません。ご自身の手入れの問題として受け止める必要はありません。当院ではまず検査で、傾きの支点がどこにできているかを確認するところから始めます。
Q2. 残っている歯は、抜いて総入れ歯にしたほうが早いですか。
そう決めつける必要はありません。残っている歯は、支えとして使えれば入れ歯の動きを抑える働きをしますし、支えにしなくても顎の骨を保つ働きがあります。一方で、その歯に力が集中して負担が大きくなる面もあります。どちらに転ぶかは、歯の位置と本数、骨の状態によります。1本ずつ見てから判断できますので、先に決めておく必要はありません。
Q3. インプラントを入れれば安定しますか。
方向としては、支えを足すと動きを抑えるように働きます。コンピュータ上で比べた報告では、支えを1本足したほうが入れ歯の沈み込みが大きく減ったとされています。ただしこれは計算上の結果です。この状態を対象にした臨床の裏づけはないと報告自体が述べていますので、断定はできません。CTで骨の状態を確認し、費用と期間を治療前にまとめてお示しします。
Q4. 入れ歯が合わないのは、自分の使い方が悪いからでしょうか。
違います。この状態では、入れ歯の傾きが構造として早期に現れると報告されています。使い方の問題ではなく、力のかかり方の問題です。他院で作られた入れ歯について、設計の考え方だけを確かめたいという相談もいただきます。当院にはセカンドオピニオン外来(5,500円税込)があり、お持ちの入れ歯や資料をもとに整理することもできます。
名古屋市中区栄、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分がEden Dental Officeです。カウンセリングルームは完全個室、診療室は半個室で、完全予約制です。CTと口腔内スキャナーを備え、Zoomでの相談にも対応しています。
※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえで、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明し、書面でお渡ししたうえで進めます。設計によっては外科的な処置や装置の作り替え、治療後の継続的な管理が必要になることがあります。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン
インプラントをはじめ、審美補綴や義歯などの外科的治療に関するご相談を承っております。その他の治療内容についてもお気軽にお問い合わせ下さい。



