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「つらくなったら手を挙げて止める」の約束

名古屋で歯科の恐怖への対処を考える方へ|まず「止められる」を決める

口の中に器具が入っていると、つらくなっても声が出せません。名古屋で歯科の恐怖への対処を探している方に、最初にお伝えしたいのはこの一点です。処置中に痛みを伝えられないことに恐怖を感じたと答えた患者は66%だったという報告があります。手を挙げたら止まる、という取り決めは、その恐怖に直接あてた対処です。特別なお願いではなく、歯科医師の6割以上が実際に指示している標準的な段取りです。この記事では、この約束で何ができて、何ができないのかを整理します。

この記事でわかること

  • 処置中に痛みを伝えられないことへの恐怖は66%が経験したと報告されています
  • 手の合図を有用と答えた患者は71.3%、実際に指示している歯科医師は63.3%でした
  • 合図の道具を使った研究では、伝わっている実感が有意に上がったと報告されています
  • 合図は痛みをなくすものではなく、進み方を変えるための取り決めです

歯科での怖さは、痛みそのものだけではありません。伝えられない状態に置かれること自体が、こわさの内訳に入っています。この点は調査でも数値になっています。

「伝えられない」ことが怖さの中身でした

インドの北チェンナイで行われた質問紙調査があります(Vignesh R, Sukanya T ら、2016年、Journal of Indian Association of Public Health Dentistry)。外来患者150人と歯科医師150人の計300人に尋ねたものです。

患者側の回答では、器具が口の中にある状態での意思疎通に不快を感じた方が76.7%でした。処置中に痛みを伝えられないことに恐怖を感じた方は66%です。手による合図がこの困難を解決しうると考えた方は71.3%でした。

歯科医師側では、意思疎通の手段として手の合図を最も好むと答えた方が54%でした。言葉が30%、患者の発声が16%です。そして63.3%が、実際に「止めるときは手を挙げてください」と患者に指示していたと報告されています。

合図の必要性は、幅広く支持されていました

別の横断研究もあります(Kumar SS, Reddy HB, Panneerselvam E ら、2023年、Journal of Community Medicine and Public Health Reports)。260人を組み入れ、回答に不備のあった6人を除いた254人を解析しています。平均年齢は27.5歳、女性が62.6%でした。

手による合図の必要性を認めた方は97.2%でした。読み書きができる群では95%、そうでない群ではほぼ全員が支持しています。覚えやすいかという問いにも、9割半を超える方が肯定していました。

こうした数字は、合図が特別な配慮ではなく、標準的な段取りとして受け入れられていることを示しています。「自分だけ特別扱いをお願いする」と感じる必要はありません。なおこの研究では、処置中の意思疎通の必要性を認識していた方が、男性で88.3%、女性で77.5%でした。どちらも高い割合です。

最初に決めるのは、たった二つです

一つ目は、どの動作を合図にするかです。手を挙げる、指を1本立てる、握ったものを離す。どれでも構いません。二つ目は、その合図が何を意味するかです。

「痛い」なのか「苦しい」なのか「一度休みたい」なのかを分けておくと、こちらの動きが変わります。分けるのが面倒なら、すべて「止めてほしい」の一つにまとめても構いません。数を増やすほど、いざというときに思い出せなくなります。

まだ口の中を見せる段階に進みたくない方は、話すだけの回から始めることもできます。

ご自身の怖さの強さを点数で見ておきたい場合は、質問票を使う方法もあります。

手を挙げる合図は、どこまで確かめられているのか

ここからは報告されている数値を並べます。効果を大きく見せるためではなく、期待の大きさを先に合わせておくためです。

伝える手段ごとの比較

手段 報告されている状況 利点 注意点・限界
手を挙げる 歯科医師の63.3%が指示。患者の71.3%が有用と回答 器具が口にあっても使える。準備がいらない 見えない位置だと気づかれない。意味を決めていないと伝わらない
声を出す 歯科医師の16%が好む 追加の取り決めが不要 口が開いた状態では出しにくい
事前の言葉での取り決め 患者側の行動として観察されている 不意打ちを減らせる 守られなければ逆効果になる
何も決めない 66%が痛みを伝えられないことに恐怖を感じたと報告

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます

道具を渡した研究では、伝わる実感が上がりました

ノルウェーの2施設で行われた対照介入研究があります(Rotevatn EØ, Paz ES, Løkeland LS ら、2026年、Acta Odontologica Scandinavica)。121人が対象で、介入群60人、対照群61人です。年齢の中央値は16歳、範囲は6歳から25歳でした。

介入群は、握ることで術者に知らせる手持ちの道具を使いました。その結果、「歯科医師が自分の気持ちを理解してくれた」「止めたいときに気づいてくれた」「声を上げやすかった」の3つの評価が有意に高くなりました。回帰係数は2.10から2.54、p値は0.05未満です。

注目したいのは、この効果がもともと意思疎通に自信が低かった参加者でより大きかったという点です。言い出しにくいと感じている方ほど、取り決めや道具の意味が大きいと読める結果です。

ただしこの研究の対象は6歳から25歳です。中高年の方にそのまま当てはまるとは言えません。また、この研究で測られたのは意思疎通の実感であって、不安の得点や治療を最後まで受けられた割合ではありません。数値の守備範囲は限られています。

それでも取り上げたのは、合図に関して比較群を置いた研究がほとんどないからです。実感が上がったという控えめな結果を、控えめなまま受け取るのが正しい読み方だと考えています。

ただし、誰にでも同じように効くわけではありません

8つの標本を対象にした総説があります(Baron RS, Logan H、1993年、Motivation and Emotion)。ここで報告されているのは、コントロールの低さがストレス反応を高めるのは、コントロールを強く望むと答えた患者に限られていたという知見です。

情報を渡す介入なども、コントロールを強く望み、かつ当初の実感が低かった層で主に効果を示していました。裏を返すと、そもそも任せたいと考えている方には、差が出にくい可能性があります。細かく決めるより、黙って任せられるほうが落ち着くという方も実際にいらっしゃいます。どちらが正しいという話ではありません。

この知見は、合図を押し付けないほうがよい理由になります。全員に同じ手順を渡すより、必要と感じる方に確実に渡すほうが理にかなっています。

ですので、合図を使うかどうかはご自身で選んでいただいて構いません。使わないと決めても、こちらの進め方は変わりません。同席していただく形のほうが落ち着く方もいます。

音やにおいが引き金になる方は、合図より環境の調整が主題になります。

この約束でできることと、できないこと

ここは正直に書いておくべき部分です。約束を大きく見せて期待だけ膨らませると、うまくいかなかった日に次の予約が取れなくなります。

すぐに止められる局面と、区切りまで待つ局面があります

歯を削っている最中でも、器具を口から出して手を止めることはできます。ただし、削りかけの形のまま長く置けない場合や、詰め物の材料が固まりかけている場合には、ごく短い区切りまで進めさせていただくことがあります。

ですから「合図を出した瞬間にすべてが止まる」とはお約束できません。お伝えできるのは、合図に気づいたらそこで手を止め、あと何秒必要かをその場で申し上げる、というところまでです。

この点を先に共有しておくと、待たされたときに「約束が守られなかった」とはなりません。守れない約束をしないことが、結果として信頼につながると考えています。実際、歯科医師への信頼の低さは、不安の高さと関連が報告されています。11,172人のデータでは、信頼から不安への標準化係数がマイナス0.31でした。

合図は、痛みをなくす道具ではありません

合図は、進み方を変えるための取り決めです。痛みそのものへの対処は別に必要になります。

処置中の意識の持ち方を薬で変える方法は、一般的な選択肢として存在しますが、適応の判断には医科的な評価が要ります。

口を開けていること自体や、器具が触れることがつらい方は、合図だけでは足りません。

合図は万能の対処ではなく、いくつかある手段の一つだとお考えください。組み合わせて使っていただいて構いません。

なお、中断の約束そのものを無作為化比較試験で検証した研究は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。歯科不安に対する認知行動療法が効果量マイナス0.65と報告されているのに比べると、根拠の水準は異なります。断定はできません。

「言ってくれれば止めます」だけでは足りないという指摘があります

歯科不安のある成人10人に面接した質的研究があります(Höglund M, Wårdh I, Shahnavaz S, Berterö C、2024年、Acta Odontologica Scandinavica)。この研究では、不安の強い方は自分から不安を伝えるのが難しく、多くは回避的なやり方で不安を隠していると報告されています。

出ている合図として挙げられていたのは、発汗、息を止めること、顔面蒼白、沈黙、あるいは逆に過剰に話すことでした。著者らは、患者に伝える責任を負わせるのではなく、臨床家の側に察知する力が求められると論じています。

ですので、合図を渡して終わりにはしません。こちらからも「今、大丈夫ですか」と区切りごとに確認します。合図を出しそびれた日があっても、それはご自身の落ち度ではありません。気づけなかったこちらの側の課題として扱います。

相談の前に、ご自身で整理しておけること

  • ☑ やりやすい合図の形。手を挙げる、指を立てる、握ったものを離すなど、動かしやすい方をお選びください
  • ☑ 合図の意味を分けるかどうか。痛い・苦しい・休みたいを分けるか、一つにまとめるかを決めます
  • ☑ 過去に止まらなかった経験。あれば教えてください。責める材料にはしません
  • ☑ 止めたあとの希望。その日は終わりにしたいのか、少し休んで続けたいのかで進め方が変わります
  • ☑ 言葉にしたくないこと。伏せたままで構いません。合図だけ決めれば足ります

書き出してお持ちいただく必要はありません。当日、口頭で伝えていただければこちらで整理します。

私が中断を治療計画に織り込んでおく理由

ここからは私自身の考え方をお話しします。中断を「起きてしまったこと」ではなく、あらかじめ計画に入れておく対象として扱っているという話です。

止まっても崩れない形にしてから始めます

私は米国インディアナ大学大学院で補綴学を3年間学びました。そこで印象に残っているのは、個々の歯の治し方より、治療の順序をどう決めるかに授業時間の大半が割かれていたことです。

順序を決められるということは、どこで止まっても致命的にならない区切りを作れるということです。今日はここまでで一区切り、と決めてから始めれば、途中で止めても次回に持ち越せます。1回の長さをどう取るかは、この設計と直結します。

逆に、思いついた順に処置を足していく進め方では、止まった時点の状態が中途半端になりやすくなります。中断しにくい形を先に作ってしまっているからです。私が順序を先に決めるのは、この事態を避けるためでもあります。

具体的には、1回の中に「ここで終われる点」を複数用意しておきます。予定の半分で止まっても、その手前が完結した状態になっているようにします。時間が余れば次の区切りまで進めます。余らなければそこで終わります。どちらでも困らない組み方にしておく、というだけのことです。この組み方なら、止まったことを誰かの落ち度として扱う必要がなくなります。

ゴールを先に共有しておくと、止めやすくなります

米国で驚いたのは、お口全体の治療では完成形の模型を先に作り、ゴールを患者と共有して合意してから最初の1本に着手する文化でした。ゴールを決めずに走り出さない、という考え方が徹底されていました。

これは中断のしやすさにも関わります。全体のどこにいるかが分かっていれば、今日止めることの意味も分かります。分からないまま進んでいると、止めることが「台無しにすること」に感じられてしまいます。

先ほど触れた質的研究でも、患者側は治療前に詳しい情報を求め、処置についての取り決めを結び、不意打ちを避けようとしていたと報告されています。合図を渡すことと、地図を渡すことは、同じ目的の別の面だと私は考えています。

道のり全体のどこに山があるかを先に共有しておくのも、同じ目的です。

見通しのない状態を長く続けないことが、私の考える設計の役割です。

仮歯の期間に、止めどころを実際に確かめます

指導医から教わったことの一つに、仮歯は仮の歯ではなく完成形のテスト走行だ、という考え方があります。噛み合わせの高さ、発音、見た目をそこで検証してから、最終の歯に置き換えます。

この期間には、もう一つの役割があります。何分あたりで合図を出したくなるか、どの姿勢がつらいかを、実際に確かめられることです。仮歯の調整は短い処置が中心ですので、試すには適した時期です。

確かめた結果は、そのまま計画に反映します。20分が限界だと分かれば、以降の処置はその中に収まるよう組み直します。逆に思ったより耐えられたのなら、まとめて進める選択肢も出てきます。どちらであっても、実際に試した結果をもとに決められるのがこの時期の利点です。

帰国後は、補綴の設計や治療計画について歯科医師向けの講演を続けてきました。そこで議論になるのも、処置の巧拙より順序の決め方です。中断への備えは気配りの話に見えて、実際には計画の話だと私は考えています。私は通常なら歯科技工士に委ねられる製作の工程まで自分の手で行ってきました。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになります。どの工程が途中で止められて、どの工程が区切りまで進む必要があるのかを、作る側の視点から説明できます。

名古屋で歯科の恐怖への対処を始めるための整理

名古屋で歯科の恐怖への対処を探している方に、お伝えしたいことは3つです。伝えられないこと自体が怖さの内訳であり、66%が経験したと報告されています。手の合図は患者の71.3%が有用と答え、歯科医師の63.3%が実際に指示していました。ただし合図は痛みをなくすものではなく、進み方を変えるための取り決めです。

最初にしていただくのは、やりやすい合図の形を一つ決めるところまでで足ります。当院は完全予約制で、カウンセリングルームは完全個室、診療室は半個室です。名古屋市中区栄、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分です。無料相談は無料です。

過呼吸やパニックの既往がある方は、主治医との連携を前提に進め方を考えます。

長く通えていなかった経緯から整理したい方は、まず全体像をご覧ください。

よくあるご質問

Q1. 何度も止めてしまったら、迷惑ではありませんか。

回数の上限は設けていません。止まることを前提に1回の内容を組んでいますので、予定は組み直せます。むしろ、我慢して座り続けた結果その日を最後に来られなくなるほうが、こちらとしては困ります。止める判断は、治療を続けるための判断だとお考えください。理由の説明も要りません。手を下ろしたあとに「やっぱり続けます」と言っていただいても構いません。

Q2. 手を挙げても、気づいてもらえるでしょうか。

気づける位置を先に決めておきます。腕を上げにくい方は、指を1本立てる、握ったタオルを離すなど、動かしやすい形に変えられます。ノルウェーの121人の研究でも、握って知らせる道具を使った群で「止めたいときに気づいてくれた」という評価が有意に上がったと報告されています。形は、続けやすいものを選んでいただくのが一番です。始める前に一度、実際に合図を出す練習をしていただくこともあります。

Q3. 前の歯科で、手を挙げても止めてもらえませんでした。

そのご経験を、こちらから評価することはありません。歯科医師への信頼の低さは、不安・痛み・回避のいずれとも関連が報告されています。オーストラリアの596人の調査では、歯科を避けている群の信頼の得点が有意に低いという結果でした。信頼は約束が守られて初めて積み上がるものですので、初回は短い処置から確かめていただいて構いません。合図が本当に通じるかどうかを試す回、という位置づけでも差し支えありません。

Q4. 止めたら、治療が中途半端になりませんか。

そうならないように区切りを設計します。今日はここまで、という到達点を始める前に共有しておけば、途中で止めてもその手前の状態で持ち越せます。ただし、削った形をそのままにできない局面や、材料が固まりかけている局面では、ごく短い区切りまで進めさせていただくことがあります。その場合は、あと何秒かを口頭でお伝えします。何も言わずに続けることはありません。終わったあとに、どこがつらかったかを伺い、次回の区切り方に反映します。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。

検査・診断のうえで、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。ご説明の前に治療を進めることはありません。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

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