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残った歯を守る「連結」の考え方
連結とは何をする処置で、何のために行うのか
ぐらついた歯をつなぐ処置、いわゆる連結は、歯を抜けにくくする治療ではありません。研究で示されているのは、つないだ歯の生存率が上がるという結果ではなく、力を分けて噛める状態を作れるという役割のほうです。名古屋で歯の連結を含む補綴をご検討の方に、まずこの前提をお伝えします。目的を取り違えると、期待が外れます。この記事では、連結で何が変わり、何が変わらないのかを数値で整理します。そのうえで、どこまでつなぐかという範囲の決め方まで順にご説明します。
この記事でわかること
- 連結が「歯を抜けにくくする処置」ではないことが分かります
- つないだ歯とつないでいない歯を10年追った結果が分かります
- 連結装置そのものが壊れる頻度と、その前提が分かります
- 相談の前に、ご自身で整理しておけることが決まります
隣り合う歯を、ひとつの単位にする処置です
連結とは、隣り合う複数の歯をつないで、力を受けるときにひとつの単位として働くようにする処置です。接着材料でつなぐ方法もあれば、被せ物どうしをつないで作る方法もあります。入れ歯の支えになる歯を、内側と外側の二重構造でつなぐ方法もあります。呼び名は違っても、力の受け方を変えるという点では同じ考え方です。
つなぐ目的は、1本にかかる力を隣に逃がすことです。歯は骨に埋まっていますが、支えている骨が減ると、同じ力でも大きく動くようになります。動きが大きいほど、その歯にかかる負担も増えます。1本では受けきれない力でも、3本で受ければ1本あたりの負担は減ります。歯が動く量も減るため、噛んだときのぐらつきが軽くなります。手をつないだ人が転びにくくなるのと似ています。ただし、隣の人が転べば一緒に引っ張られる点も同じです。つなぐことには、この両面があります。
つなげば歯が残る、という因果は示されていません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。Dommischら(2022年、Journal of Clinical Periodontology)は、1,515件の文献から5研究を選び、連結の効果をまとめました。統合された72名・連結した歯311本の喪失率は8.4%、つないでいない歯は10.1%です。
差はわずかで、つないだほうがわずかに低い程度でした。著者は、進行した歯周炎の患者において、連結が動揺した歯の生存を改善するとは言えないと結論づけています。エビデンスの質も低いと評価されました。採用できた研究が5件しかなく、そのうち連結を扱ったものは2件だけだったためです。
つまり連結は、ぐらついている歯を固定して残すための装置ではありません。当院で実際にご提案するのは、抜けた歯の場所を補って、そこでまた噛めるようにするときです。
たとえば、いちばんよく噛む奥歯(前から6番目の歯)を、支えている骨ごと失ってしまった場合。その手前の歯と、さらに奥の歯が残っていれば、その2本をつないで、間の抜けた部分を補います。単独では負担が大きすぎる場所でも、前後2本で受ければ噛む力を支えられます。
「歯が揺れているから、つないで固定しておきましょう」という使い方ではない、ということです。歯を失う流れそのものを止める手順は、連結ではなく、炎症を抑える側の処置にあります。連結は、その代わりにはなりません。歯を失い続けている状態を止める順序は、別の記事にまとめました。
順番としては、そちらが先です。
では、何のためにつなぐのか
それでも連結が行われるのには理由があります。ひとつは、噛んだときに歯が動くと、その上に乗る被せ物や入れ歯が安定しないためです。もうひとつは、支えの数を確保するためです。
入れ歯を支える歯が少ないほど、1本あたりの負担は増えます。支えが2本のところを、つないで実質的に3本分の働きにする、という組み立て方ができます。残っている歯の位置が偏っている場合ほど、この工夫が要ります。支えの配分をどう決めるかは、入れ歯の設計そのものの話になります。
連結は、その配分を成り立たせるための手段のひとつです。
数値で見る、つないだ歯とつないでいない歯
10年追いかけた研究が示したこと
Sonnenscheinら(2024年、Clinical Oral Investigations)は、歯周病の定期管理を受けている24名を10年追跡しました。連結した奥歯58本と、つないでいない奥歯58本を比べています。
10年間の変化はこうでした。歯ぐきの内側の付着レベルは、連結した歯が0.38mm改善、つないでいない歯が0.20mm悪化です。歯周ポケットの深さは、連結した歯が0.17mm浅くなり、つないでいない歯は0.10mm深くなりました。いずれも有意な差ではありません。
一方、歯の喪失には差が出ました。連結した歯は58本中10本、つないでいない歯は58本中2本です。ただし、この研究では連結した歯のほうが開始時点で状態が悪く、連結前には96.6%が病的な動揺を示していました。つないでいない歯で動揺があったのは25.9%です。ですから、つないだせいで失われた、とは読めません。
報告されている数値を並べます
以下は研究ごとに対象も期間も違います。大小で優劣は決められません。何が起きやすいと報告されているか、という読み方をしてください。
| つなぎ方 | 報告されている数値 | 利点 | 注意点・リスク・限界 |
|---|---|---|---|
| 接着材料で動揺歯をつなぐ | 歯の喪失 8.4%、つながない歯は10.1%(Dommischら2022年) | 歯をほとんど削らずに行える。ぐらつきの不快感が減る | 生存率の改善は示されていない。破折・脱離が25.6〜75.3% |
| 二重冠で支台歯をつなぐ入れ歯 | 支台歯の生存 10年83.8%/20年66.3%(Yoshinoら2020年) | 20年を超えて機能したという報告がある | 支台歯が少ないほど喪失リスクが上がる |
| 歯とインプラントを固い連結でつなぐ | 装置の生存94.5%、合併症のない生存76.5%(O’Sullivanら2016年) | インプラントの本数を増やさずに済む | 歯が沈み込む現象が73件。ゆるい連結で多い |
| 歯とインプラントを併用した固定装置 | 10年生存89.6%、インプラントのみは90.7%(Waldeckerら2025年) | 両者の差は有意ではなかった | 失敗の内訳に支台歯の喪失が5件 |
| 支えを5つ以上に増やす設計 | 合併症が減少(Molinero-Mourelleら2022年) | 力を分散できる | 清掃と管理の対象が増える |
※スマートフォンでは表を横にスクロールできます
装置そのものが、かなりの頻度で壊れます
同じSonnenscheinらの研究で、連結装置32個のうち10年後まで無傷だったのは10個でした。残る22個、つまり68.8%が破折して修理を要しています。その大半は装着から3年以内に起きました。動揺の程度や噛み合う歯の数から、壊れる時期を予測することはできなかったとも報告されています。
Dommischらのレビューでも、破折や脱離の頻度は追跡期間により25.6〜75.3%と幅がありました。Liuら(2016年、British Dental Journal)の4年の観察では、装置が壊れた歯で動揺が再発しています。壊れたまま気づかずに使い続けると、つないだ意味がなくなるということです。
これは設計の失敗ではなく、前提です。連結装置は、噛む力を受け止める場所に置かれます。そこに力が集まる以上、いつかは壊れます。歯そのものより装置のほうが先に壊れる設計であれば、むしろ想定どおりとも言えます。壊れたら直す前提で使う装置だと理解していただくほうが、後で困りません。
支えを増やすという方向もあります。Molinero-Mourelleら(2022年)は、支台が5つ以上のときに合併症が減ったと報告しています。ここで数えるのは天然の歯だけではありません。インプラントも支えの数として合計されます。取り外し式の入れ歯にインプラントを足して支点にする設計もあります。
残っている本数から全体を組み立てたい方は、別の記事が近いはずです。
名古屋で歯の連結をご相談いただく前に、正直にお伝えしていること
つないでも、良くなるわけではありません
Sonnenscheinらの10年のデータは、連結した歯と、つないでいない歯で、歯周の状態に有意な差がなかったことを示しています。著者の結論は、定期管理が行われていれば連結によって歯周状態が悪化することはない、というものでした。
悪くはしない。ただし良くもしない。これが現時点で言えることです。ここで前提になっているのは、定期管理を続けている患者さんのデータだという点です。この研究では年に1回以上通院した方だけが対象になっています。つないだあと通わなくなった場合にどうなるかは、この数字からは分かりません。ですから私は、連結をご提案するとき、何が良くなって何が良くならないのかを先に分けてお伝えします。ぐらつきによる噛みにくさは軽くなる可能性があります。その上に被せ物や入れ歯を作るときの土台としても働きます。ただ、歯の寿命が延びるとは申し上げられません。ここを曖昧にしたまま進めると、数年後に「つないだのに」という気持ちが残ります。
つなぐほど、清掃は難しくなります
連結した歯は、歯と歯の間を糸で清掃できなくなります。装置の下を通すための道具に切り替える必要があります。実際、連結の時期を比べた無作為化試験では、連結した歯でプラークの数値が上がり、清掃の強化が必要だったと報告されています。つなぐという判断には、毎日の手入れを一段増やすという意味が含まれます。
範囲を広げるほど、この負担は増えます。さらに、つないだ範囲の中の1本にトラブルが起きると、装置全体を外さなければならないことがあります。1本の問題が、全体の作り直しにつながるということです。10年追った研究で連結した歯が失われた理由を見ると、歯の神経の治療に関わる問題や歯根の破折が上位で、歯周由来は1本だけでした。つないだ範囲の中で何が起きているかは、外から見えにくいという事情もあります。
向かないケース、順番が先のケース
歯周病の炎症が続いている最中は、連結の判断を急ぎません。土台の状態が動いている間に固めても、設計が合わなくなるためです。治療で動揺が減れば、必要な範囲そのものが変わります。
噛み合わせ全体が崩れている場合も、連結だけでは足りません。つないだ範囲に力が集まり続ける状況は変わらないためです。力の流れそのものを組み直す必要があります。
上下で噛み合う相手がいない場所では、つないでも力を受ける相手がいません。
欠損を長く放置されていた場合は、隣の歯や噛み合う歯が動いていることがあります。年数によって何が変わるかは別にまとめました。
年数をうかがうのは、責めるためではありません。
相談の前に、ご自身で整理しておけること
- ☑ どの歯が、どんなときに動くか。噛んだときか、指で押したときかで、力の向きの見当がつきます
- ☑ 清掃にどれだけ手をかけられるか。連結の範囲は、続けられる清掃の量とあわせて決めます
- ☑ 今いちばん困っていること。噛みにくさか、見た目か、痛みかで、優先する処置が変わります
- ☑ 通える頻度。破折の修理と定期管理に通える範囲を先に共有いただくと、無理のない設計にできます
私が連結の範囲を、どこで切るか
つなぐ前に、順番があります
連結の時期を比べた無作為化試験に、印象に残っている結果があります。歯周治療の前につないだ群と、7か月後につないだ群を比べたところ、12か月後の成績に有意な差はありませんでした。そして後からつなぐ群のうち2名は、歯周治療で動揺が減ったため、連結そのものが不要になっています。
私はこの結果を、日常の判断に使っています。研究としては小規模で、12か月という短い観察ですが、方向は参考になります。ぐらついているからすぐつなぐ、とはしません。炎症が落ち着いたあとに、もう一度動きを測ります。減っていれば、つながずに済むこともあります。急いで固めるほど、あとで外しにくくなります。つながないという判断は、何もしないことではありません。今の状態なら支えられる、と確かめたうえでの選択です。
噛み合わせ全体の設計が動いている段階では、なおさら急ぎません。片方の顎だけが崩れている場合は、崩れていない側が基準を持っています。
基準が決まるまで、連結の範囲は決められません。
範囲を決めるのは、本数ではなく力の流れです
私は米国インディアナ大学大学院で補綴学を3年間学びました。日本と米国で強く違うと感じたのは、治療計画の組み立て方です。米国では、個々の歯をどう治すかより、全体の力がどこへ流れるかを先に描きます。連結の範囲も、その図の上で決まります。
具体的には、噛んだときに力が集まる場所を先に特定します。そこを1本で受けさせない、というのが範囲を決める基準です。前後に力を逃がせる歯があるか、その歯自体は力を受けられる状態かを1本ずつ確かめます。受けられない歯まで含めると、弱い輪をつないだだけになります。逆に、力があまり来ない場所まで巻き込んでつなぐと、清掃の負担だけが増えます。判断の材料になるのは、噛み合わせの検査と、日々の使い方のお話です。どちら側で噛んでいるか、硬いものを避けているかといった情報が、力の向きを教えてくれます。
帰国後、補綴設計や噛み合わせについて歯科医師向けの講演を行ってきました。そこでよく議論になるのが、この範囲の切り方です。広く取れば安心という考え方と、切れる場所で切るという考え方が、いまも並んでいます。私は後者を選んでいますが、正解が確定した論点ではありません。
歯とインプラントをつなぐかどうか
歯とインプラントを一体でつなぐ設計については、意見が分かれます。O’Sullivanら(2016年)のレビューでは、装置の生存率は94.5%と報告される一方、連結した天然歯が骨の中へ沈んでいく現象が73件ありました。ゆるい連結を使った場合に多かったとされています。
Waldeckerら(2025年)の434床の研究では、10年生存率は歯とインプラントの併用で89.6%、インプラントのみで90.7%で、有意な差はありませんでした。ですから、つないではいけないとまでは言えません。ただ、私は安易にはつなぎません。歯は歯根膜という薄い層に支えられてわずかに沈み、インプラントは骨と直接くっついているため沈みません。この性質の違いは、つないでも消えないためです。
この判断は、画像だけでは決められません。実際に噛んでいただき、どこで先に当たるかを確かめてから決めます。私は通常なら歯科技工士に委ねる製作の工程まで自分の手で行ってきました。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになります。作る側から見ると、連結範囲を広げるほど、適合の精度と修理のしやすさが両立しにくくなります。長い経過を見てきて感じるのも同じで、壊れた場所は結果であって、原因は力の流れのほうにあることが多いということです。
まとめ|名古屋で歯の連結と補綴を考えるために
連結は、歯を抜けにくくする処置ではありません。1本で受けきれない力を隣に分け、噛める状態を作るための設計です。研究では生存率の改善は示されておらず、装置そのものは10年で7割近くが破折すると報告されています。名古屋で歯の連結を含む補綴をご検討の方は、まず炎症を落ち着かせ、そのうえで動きをもう一度測るという順番をご検討ください。つながずに済む場合もあります。判断を急がないことが、結果的に選択肢を残します。当院では無料相談を行っています。
多数歯欠損の治療選択には、取り外し式・固定式・併用という方向があり、連結はそのどれにも関わります。全体の見取り図から確認したい方は、ハブ記事をご覧ください。
あわせて読みたい記事として、固定式を中心に考えたい方向けの記事。
と、期間を短くしたい場合の考え方。
を挙げておきます。
よくあるご質問
Q1. 何年も歯科に行っていません。今から相談しても怒られませんか。
怒ることはありません。経緯をうかがうのは、これまでを評価するためではなく、これから何をどの順番で行うかを決めるためです。当院のカウンセリングルームは完全個室で、診療室は半個室です。話したくないことは、話さなくて構いません。今の状態を一緒に確認するところから始めます。まず無料相談だけで構いません。
Q2. ぐらついている歯は、つなげば抜かずに済みますか。
つないだ歯の生存率が上がるという結果は、現時点の研究では示されていません。連結でぐらつきによる噛みにくさが軽くなることはありますし、被せ物や入れ歯の土台としても働きます。ただ、歯の寿命が延びるとは申し上げられません。まず炎症を落ち着かせ、そのうえで動きがどう変わるかを見てから判断します。研究でも、歯周治療のあとに動揺が減り、連結が不要になった方がいたと報告されています。
Q3. 連結すると、歯磨きはどうなりますか。
歯と歯の間に糸を通すことができなくなるため、装置の下を通せる道具に切り替えていただきます。範囲が広いほど手間は増えます。ですから私は、清掃を続けられる範囲とあわせて連結の範囲を決めます。使い方は、その場でお伝えします。道具に慣れるまでは時間がかかりますので、定期管理のときに一緒に確認します。
Q4. 連結した装置が壊れたら、どうなりますか。
修理して使い続けられる場合が多くあります。研究でも、10年のあいだに7割近くが一度は破折し、その大半が3年以内に起きたと報告されています。壊れることを前提に、直しやすい範囲で設計します。外して作り直す場合でも、範囲を区切ってあれば手間は小さくなります。定期的に確認し、緩みや外れの兆候を早めに見つけます。早く見つかるほど、直す範囲は小さくて済みます。
※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。無料相談は無料、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。当院は名古屋市中区栄、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分にあります。完全予約制で、CTと口腔内スキャナーを備え、Zoomでのご相談にも対応しています。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン
インプラントをはじめ、審美補綴や義歯などの外科的治療に関するご相談を承っております。その他の治療内容についてもお気軽にお問い合わせ下さい。



