ブログ

  • TOP
  • ブログ
  • 再根管治療の成功率を上げる臨床条件

再根管治療の成功率を上げる臨床条件

成功率を分けているのは、運ではなく条件です

「やり直せば、今度は治りますか」

「やり直せば、今度は治りますか」。根の治療をもう一度受ける方が、いちばん知りたいのはここだと思います。研究をまとめると、再根管治療で根の先の影が消える割合はおよそ8割です。ではこの8割と、そうでない2割は何が違うのか。運ではありません。治療の場で選べる条件が、はっきりと結果を分けています。この記事では、その条件を一つずつご説明します。ご自身が受ける治療がどんな条件で行われるのかを知る手がかりにしていただければと思います。

まず、数字の出どころからお話しします。17の研究をまとめた解析では、再根管治療で影が消えた割合はおよそ77パーセントでした。この数字は、条件によって上下します。

いちばん分かりやすいのが、唾液を治療中の歯に触れさせないための工夫です。歯科では、治療する歯だけを薄いゴムのシートで囲って、口の中のほかの部分から隔離することがあります。ラバーダムという方法です。

台湾で51万7千本以上の歯を対象にした大規模な調査があります。このシートを使った治療のほうが、あとで抜歯に至る危険が19パーセント低いという結果でした。根の治療は、細菌をいかに入れないかがすべてです。唾液には細菌がいますから、それを遮る意味は大きいということになります。

ただし、この調査は保険の請求データを使ったものです。シートを使う歯科医師は、ほかの面でも丁寧である可能性があり、その影響を完全には取り除けていません。

この方法を、実際にどう感じるかもお伝えしておきます。ゴムのシートを口にかけると、治療する歯だけが顔を出す状態になります。慣れないうちは息苦しく感じる方もいらっしゃいますが、鼻で呼吸していただければ問題ありません。むしろ、器具や薬液が口の中に落ちないので、治療中の不快感は減ります。うがいをしたくなったら手を上げていただければ、いつでも中断できます。

もうひとつが、拡大して見ることです。上の奥歯には見落とされやすい管があり、その発見率は肉眼でおよそ18パーセント、拡大して見ると57から71パーセントまで上がるという報告があります。

紹介されてきた上の奥歯を調べた研究では、前の治療で顕微鏡が使われていなかった場合、その根の先に影がある確率がおよそ3倍でした。顕微鏡を使っていた場合は、管の見落としと影の関連が消えています。

そもそも再根管治療とは何か、どんなときに必要になるのかは(→ 再根管治療とは|定義と適応)にまとめています。先にそちらをご覧いただくと、この記事の位置づけが分かりやすくなります。

結果を左右する条件を、数字で並べて比べる

条件ごとに、何がどれだけ変わるのか

ここからは、条件ごとに何がどれだけ変わるのかを並べます。

治療する歯を隔離する

何をするのか:薄いゴムのシートで歯を囲い、唾液が入らないようにする

報告されている差:使った場合、あとで抜歯に至る危険が19パーセント低い(51万7千本以上の調査)

知っておきたいこと:日本では使用率が低いという報告がある

拡大して見る

何をするのか:顕微鏡やルーペで根の中を拡大する

報告されている差:見落とされやすい管の発見率が18パーセントから57〜71パーセントへ

知っておきたいこと:拡大するだけでは足りず、超音波の器具で入り口を探す作業が要る

詰め物をどこまで入れるか

何をするのか:根の先ぴったりまで詰める。手前すぎても出しすぎても不利

報告されている差:ぴったりで84.6パーセント、手前すぎると64.8パーセント、出しすぎると61.5パーセント

知っておきたいこと:0.1ミリ単位の話で、機器で長さを測りながら進める

洗浄液の使い分け

何をするのか:消毒液に加え、削りかすを溶かす薬液を併用する

報告されている差:やり直しの治療では86.8パーセント対77.5パーセント

知っておきたいこと:消毒液の濃度を上げても差は出ていない

被せ物までの期間

何をするのか:根の治療が終わったら、間を置かずに最終的な被せ物を入れる

報告されている差:4か月以内なら8年後の生存85パーセント、4か月超なら68パーセント

知っておきたいこと:費用も設備も要らず、いちばん差が出る

詰め物の位置について、少し補足します。根の管は、先端に向かって細くなり、いちばん先で外の組織とつながっています。詰め物は、この境目のところまで入れるのが理想です。手前で止まれば、その先に空間が残って細菌のすみかになります。逆に押し出しすぎると、外の組織を刺激します。研究では、ぴったり入っていた根の成功率が84.6パーセント、2ミリ以上手前で止まっていた根が64.8パーセント、外に出ていた根が61.5パーセントでした。

0.1ミリ単位の話に聞こえますが、実際そのとおりです。だからこそ、電気で根の長さを測る機器を使い、レントゲンで確認しながら進めます。

この表でいちばんお伝えしたいのは、最後の行です。

根の治療が終わったあと、仮の蓋のまま何か月も放置すると、そこから細菌が入ります。8年間追いかけた調査では、根の治療から4か月以内に被せ物を入れた奥歯の生存率が85パーセント、4か月を超えた場合は68パーセントでした。抜歯に至る危険はおよそ3倍です。

別の研究では、根の中の詰め物が口の中に露出してしまった歯の成功率は37.5パーセントまで落ちていました。逆に、上の修復が良好な歯では81.0パーセントです。

これは、費用も特別な機械も要りません。根の治療が終わったら被せ物まで一気に仕上げる。ただそれだけで、これだけの差がつきます。当院がスケジュールを組むときに、ここをいちばん厳しく管理しているのは、そのためです。治療のあとにどの被せ物を選ぶかは(→ 根管治療後の被せ物の選び方)にまとめています。

条件をそろえても治りにくい場合と、受診前に確認したいこと

条件を整えても、はじめから不利な状況があります

条件を整えても、はじめから不利な状況というものがあります。これは治療の腕とは別の話です。

ひとつ目は、もともと根の先に影があるかどうかです。影がある歯は、ない歯にくらべて成功のしやすさがおよそ半分になります。しかも影が大きいほど不利で、1ミリ大きくなるごとに少しずつ下がっていきます。歯ぐきにできものができている場合も同様です。

ただし、これは「治らない」という意味ではありません。影が大きい歯ほど、ほかの条件を厳しくそろえる必要がある、という読み方が正確です。なお、治った症例の9割以上は2年以内に治っています。

ふたつ目は、器具が折れて残っている場合です。細い器具が根の中で折れ、取り出せずに残ることがあります。器具が残った歯の成功率は91.8パーセント、残っていない歯は94.5パーセントでした。差はありますが、想像されるほど大きくはありません。ただし、もともと影がある歯では86.7パーセント対92.9パーセントと、差が開きます。器具が残っていること自体より、影があるかどうかのほうが効くということです。

三つ目は、歯が縦に割れている場合です。割れが根まで及んでいると、根の中からの治療では対応できません。この場合は別の選択肢を検討します(→ 再根管治療か歯根端切除か抜歯か)。

四つ目は、被せ物や土台が邪魔をする場合です。金属の土台が根の入り口をふさいでいると、それを外す作業から始めることになります。この作業自体にリスクがあり、途中で計画が変わることもあります。

これらは、治療を始める前にある程度は分かります。ですから当院では、着手の前にレントゲンをお見せしながら「この歯はこういう条件です」とご説明し、見込みを共有したうえで進めるようにしています。良い見込みだけをお伝えして始めると、途中で予定が変わったときにご納得いただけないからです。

受診の前に、次のことを整理していただけると診断が早く進みます。分かる範囲で構いません。

  • その歯の根の治療は、いつごろ、何回受けましたか
  • 治療のあと、仮の蓋のまましばらく通えなかった時期はありますか
  • いま症状はありますか。噛むと痛む、腫れる、歯ぐきにおできができる、のいずれかがありますか
  • 器具が折れて残っていると説明されたことはありますか
  • 以前のレントゲンや紹介状はお持ちですか

ご自宅でできることもあります。仮の蓋のあいだは、その歯で強く噛まないでください。仮の蓋は削れやすく、欠けたまま気づかずに過ごすと、そこから細菌が入ります。舌でさわって欠けている感じがあれば、次の予約を待たずにご連絡ください。糸ようじは、仮の蓋を引っかけて外してしまうことがあるので、その歯だけは横に抜くようにしていただくと安全です。

もうひとつ、これから治療を受ける歯科医院に確認していただいてよい質問があります。「治療のときにゴムのシートは使いますか」「拡大して見ますか」「被せ物はいつごろ入れますか」。この3つです。聞きにくいと感じられるかもしれませんが、どれもこの記事で見てきたとおり、結果に直結する条件です。答えを聞いたうえで判断していただくのが、いちばん確実です。

根の先の影がなぜできるのかを知りたい方は(→ 根の先の膿(根尖病変)と再治療)を、被せ物を外さずに進められるかどうかは(→ 被せ物を外さずに根の治療はできる?)をご覧ください。

名古屋の診療室で、どの条件を優先しているか

米国の補綴教育で学んだ、成功率の読み方

私は米国Indiana大学大学院で補綴学を3年間学び、MSD(補綴学の修士)とCertificate in Prosthodonticsを取得しました。補綴というのは、被せ物や入れ歯で歯の形と働きを回復させる分野です。

補綴を専門にしてきた立場から根の治療を見ると、優先順位が少し変わります。私がいちばん重く見ているのは、根の中の作業そのものより、その前後にある工程です。

理由は、先ほどの数字にあります。根の中をどれだけ丁寧に扱っても、上から細菌が入り続ければ結果は安定しません。逆に、根の中の処置が標準的でも、隔離と封鎖がしっかりしていれば結果は伸びます。ですから当院では、根の治療に入る前に、その歯を最終的にどう覆うのかを決めてから着手します。

私が確認している順番は、次の4つです。

  1. 隔離できるか:歯が短かったり、縁が歯ぐきの中に入っていたりすると、シートで囲うのが難しくなります。難しい場合は、先に歯の形を整えてから始めます
  2. 見えるか:顕微鏡で入り口まで見通せるか。見えなければ、立体的なレントゲンで管の位置を確認してから入ります
  3. 測れるか:根の長さを機器で測り、詰め物をどこまで入れるかを決めます
  4. 覆えるか:治療のあと、どのくらいの期間で被せ物まで仕上げられるかを、最初に日程として押さえます

この4つのうち、患者さんが治療中に実感しやすいのは1番目だけかもしれません。ゴムのシートは口にかけますから、目に見えます。残りの3つは、見えないところで結果を分けています。だからこそ、先にご説明するようにしています。

4番目を最初に決めてしまうのが、私のやり方です。順番としては最後の工程ですが、日程を先に押さえておかないと、仮の蓋の期間が延びてしまうためです。

洗浄についても触れておきます。根の中をきれいにするとき、消毒液を使います。この液の濃度を上げれば結果がよくなるかというと、そうではありませんでした。低い濃度と高い濃度で成功率に差は出ていません。一方、削りかすの層を溶かす別の薬液を併用した場合は、やり直しの治療に限って86.8パーセント対77.5パーセントと差が出ています。濃くすることより、種類を使い分けることのほうが効くということです。

この使い分けが、やり直しの治療でだけ効くという点も示唆的です。初回の治療とちがって、やり直しでは前の詰め物の残りかすや、長年たまった沈着物が管の壁についています。それを溶かす工程が加わるぶん、意味が出てくるのだと考えられます。

薬を入れて何回も通う必要があるのか、というご質問もよくいただきます。国際的なガイドラインは、症状がない場合に限り、薬を入れずに1回で仕上げる方法を強く推奨しています。これは4つの臨床試験、437人分のデータに基づく、このガイドラインのなかで、もっとも強い推奨に位置づけられています。ただし、痛みや腫れがある場合は当てはまりません。回数を増やすこと自体が成功率を上げるわけではない、というのが現時点の整理です。

もうひとつ、超音波などで洗浄液をかき混ぜる方法については、同じガイドラインが「行わないことを提案する」としています。実験室では汚れが落ちるのに、患者さんの治りやすさが変わったというデータが出ていないためです。これは否定というより、臨床の比較試験が足りていないという意味です。

そして、治療が終わったあとに何を見ていくかも、はじめにお伝えします。根の先の影は、治療した翌月に消えるものではありません。骨が戻るには時間がかかります。半年後、1年後に同じ条件でレントゲンを撮り、影の大きさを並べて比べる。この段取りを共有しておくと、途中で「まだ影がある」と言われたときに、必要以上に不安を抱えずに済みます。治った症例の9割以上が2年以内に治っていた、という数字も、この見通しを立てる助けになります。

術者の経験についても触れておきます。台湾で45万本以上を調べた調査では、症例数が多い歯科医師ほど失敗しにくい傾向がありましたが、差は1割程度でした。条件をそろえることのほうが、経験年数より効くということです。ただし、経験の多い術者ほど難しい症例を引き受けているという事情もありますので、この数字は控えめに読む必要があります。

成功率という数字をどう受け止めればよいかは(→ 根管治療の成功率|セカンドオピニオンで知る)に、神経を残せるかどうかで迷っている方には(→ 根管治療と神経保存のセカンドオピニオン)が参考になります。

まとめ|名古屋で再根管治療の成功率が気になる方へ + よくあるご質問

まとめ|再根管治療の成功率はおよそ8割です

再根管治療の成功率はおよそ8割です。この数字を上下させているのは、治療する歯を唾液から隔離できているか、拡大して見ているか、詰め物を根の先ぴったりまで入れられているか、そして根の治療が終わってから被せ物までどのくらいで仕上げるか、という条件です。

なかでも差が大きいのが最後の項目です。4か月以内に被せ物まで入れた歯と、それを超えた歯とでは、8年後に残っている割合が85パーセントと68パーセントでした。費用も特別な機械も要らないのに、いちばん大きな差になります。

ご自身で確認していただけるのは、治療の時期と回数、仮の蓋のままの期間、いまの症状、この3つです。名古屋・伏見の当院では無料相談を行っており、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。検査と診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。Zoomでのご相談も承っています。

費用と期間についても一言だけ。条件をそろえた治療は、工程が増えるぶん時間がかかります。1回の治療時間が長くなることもあります。ただ、やり直しを重ねる回数が減れば、結果として失う歯質も、かかる総額も抑えられます。当院では、検査と診断のうえで、通院の回数と費用の見込みを治療の前にお示ししています。金額だけで判断せずに済むよう、何にどれだけ手をかけるのかを先にご説明します。

根の治療のやり直し全体を先に見渡したい方は、ハブとなる記事から入っていただくと、ご自身の状況を位置づけやすくなります(→ 根管治療のやり直し(再根管治療)【完全ガイド】)。

治療のあいだ、ご自身にできることもあります。予約を間隔どおりに守っていただくこと、仮の蓋が欠けたら早めにご連絡いただくこと、そして治療中の歯で硬いものを噛まないこと。この3つだけでも、結果はずいぶん変わります。

診療室でお伝えしているのは、迷っている段階でこそ相談していただきたい、ということです。方針が決まってから来られると、すでに削られていたり、外されていたりして、選べる幅が狭くなっていることがあります。歯は減る方向にしか動きません。まだ何もしていない段階でご相談いただければ、選択肢はいちばん多く残っています。

あわせて読みたい

よくあるご質問

Q1. ゴムのシートを使わない歯科医院もあるようですが、使わないと治らないのでしょうか。

使わなければ治らない、ということではありません。ただ、51万7千本以上を調べた調査では、使った治療のほうがあとで抜歯に至る危険が19パーセント低いという結果が出ています。根の治療は細菌をいかに入れないかがすべてですので、唾液を遮る意味は大きいと考えています。気になる場合は、治療の前に確認していただいて構いません。

Q2. 治療は1回で終わりますか。何回も通うほうが確実ではないのですか。

回数を増やすこと自体が成功率を上げるわけではありません。国際的なガイドラインは、症状がなく適切な処置ができている場合に限り、薬を入れずに1回で仕上げる方法を推奨しています。ただし、痛みや腫れがある場合は当てはまりません。実際の回数は、管の数、曲がり方、前の治療の状態によって変わりますので、初回の診査のあとに見通しをお伝えしています。

Q3. 器具が折れて残っていると言われました。取れなければ治りませんか。

そうとは限りません。器具が残った歯の成功率は91.8パーセント、残っていない歯は94.5パーセントでした。差はありますが、大きくはありません。ただし、根の先に影がある歯では差が開きますので、影の有無とあわせて判断します。無理に取り出そうとすると根を傷めることもあるため、残したまま進めるほうがよい場合もあります。

Q4. 被せ物はいつ入れればよいですか。少し様子を見たほうがよいのでしょうか。

間を置かないほうが有利です。8年間追いかけた調査では、4か月以内に入れた場合の生存率が85パーセント、4か月を超えると68パーセントでした。仮の蓋は、あくまで一時的なものです。ただし、症状が落ち着いているかを確認する期間は必要ですので、当院では治療の終了時に次の日程まで決めて、間があかないようにしています。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。被せ物や土台を外した際に、むし歯や歯の割れが見つかり、治療計画が変更になる可能性があります。自由診療の場合は保険適用外となります。

関連する内容は以下のページでご説明しています。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン

インプラントをはじめ、審美補綴や義歯などの外科的治療に関するご相談を承っております。その他の治療内容についてもお気軽にお問い合わせ下さい。