同じ歯ばかり取れるとき、そこで何が起きているのでしょうか

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名古屋市中区の歯医者「Eden Dental Office」

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同じ歯ばかり取れるのはなぜ?

同じ歯だけが取れるのには、理由があります

他の歯は何ともないのに、この歯だけ何度も取れる。付け直して、また取れて、そのたびに時間を作って通う。「私の噛み方が悪いのでしょうか」と伺うことがありますが、多くの場合そうではありません。同じ歯ばかり取れるのは、その歯に固有の条件が残っているからです。この記事では、その条件が何なのかと、くり返しを止めるために何を変えるのかをご説明します。

まず、前提をひとつ整理させてください。

取れる原因そのものは、どの歯にも共通です。下で進んだむし歯、歯の形、接着のときの環境、噛み合わせ。この話は別の記事にまとめています(→ 詰め物がすぐ取れる7つの原因)。

まず、ご自身を責めないでいただきたいと思います。「歯磨きが下手だから」「硬いものを噛んだから」と考えられる方が多いのですが、他の歯は同じように磨いて、同じものを噛んでいます。それでも、その歯だけが取れる。だとすれば、原因は磨き方や食べ方の側にはありません。

この記事で扱うのは、その先です。なぜ、その歯だけなのか。

答えは単純です。他の歯にはない条件が、その歯にだけ残っているからです。そして、その条件は付け直しでは変わりません。だから、くり返します。

身近なもので言い換えてみます。同じ場所のねじだけが何度も緩むとします。締め直せばその場は収まりますが、ねじ穴のほうが広がっているなら、次も緩みます。締め方を変えるのではなく、穴の側をどうするかを考える必要があります。

歯の場合、この「穴の側」にあたるのが、残っている歯の量と、その歯にかかる力です。

そしてもうひとつ、時間の要素があります。取れるたびに、その歯の条件は少しずつ不利になります。取れた装置を外し、中を掃除し、形を整えて付け直す。この工程で、歯はわずかずつ削られます。削られた歯は戻りません。

この点は、診療室でもなかなか伝わりにくいところです。「また取れただけ」と受け取られるからです。ですが、こちらから見ると、取れるたびに手持ちのカードが減っています。1回目に選べた設計が、3回目には選べなくなっていることがあります。

つまり、3回目は2回目より条件が悪く、4回目はさらに悪い。同じ設計のまま付け直し続けると、この坂を下り続けることになります。

その歯にだけある条件を、4つに分けて見ていきます

「その歯だけ」を作っている条件は、大きく4つあります。

残っている歯が少ない

なぜ、その歯だけになるのか:抱える面積が足りず、支える力そのものが小さい。他の歯には十分な面積がある

変えるためにできること:覆う範囲を見直す。支えを作り出す処置を検討する

神経を取っている

なぜ、その歯だけになるのか:痛みで知らせてくれないため、下でむし歯が進んでも気づけない

変えるためにできること:境目が見える設計にする。定期的に確認する

力が集中している

なぜ、その歯だけになるのか:噛んだときや横に動かしたときに、その歯だけが早く当たっている

変えるためにできること:当たり方を調整する。夜間の装置も検討する

治療を重ねている

なぜ、その歯だけになるのか:やり直すたびに削られ、抱える面積が減っていく

変えるためにできること:同じ設計をくり返さない。設計そのものを変える

もうひとつ、この4つが重なりやすいことも申し添えます。むし歯が大きかった歯は、神経を取ることになりやすく、削る量も多くなり、その結果として抱える面積が減ります。そして取れやすくなり、やり直しを重ねることでさらに減る。ひとつの条件が、次の条件を呼び込む構造になっています。

ですから「どれか一つが悪い」という見方より、「連鎖のどこで止めるか」という見方のほうが、実際に近いと思います。

この4つのうち、上の2つはその歯がもともと抱えている条件です。下の2つは、これまでの経過で積み上がってきた条件です。前者は変えにくく、後者は変えられます。

ですから、まず下の2つから手をつけます。力の配り方を変えることと、同じ設計をくり返さないこと。この2つは、今日からでも取りかかれます。

順番にご説明します。

ひとつ目の、残っている歯の量。これがいちばん大きく効きます。

被せ物は、削った歯の側面を抱えることで留まっています。抱える面が広く、高さがあるほど、外れにくくなります。逆に、むし歯で大きく失われていたり、何度も削られていたりすると、抱える相手が足りません。

この「抱える相手」については、別に詳しくまとめています(→ フェルールとは|歯を残せるかの分かれ目)。

ふたつ目の、神経の有無。これは見落とされやすい条件です。

1,000本以上を追いかけた調査では、神経が生きている歯のほうが、神経を取った歯より成績が良いという結果が出ています。理由のひとつは、痛みという合図がなくなることです。

神経を取った歯では、装置の下で新しくむし歯ができても、しみることも痛むこともありません。気づくのは、支えを失って装置が外れたときです。そのとき、むし歯はかなり広がっています。

三つ目の、力の集中。噛む力は、歯列全体に均等に分かれているわけではありません。1本だけが早く当たっていたり、横に動かしたときにその歯だけが擦れていたりすることがあります。

この当たり方は、鏡では見えません。紙を噛んでいただいて確かめます。歯を削らずに調べられるので、まずここから確認します。

夜間の食いしばりも同じ方向に働きます。調査でも、食いしばりのある方では被せ物がうまくいかない割合が高いという結果が出ています。ただし、食いしばりの判定は自己申告に頼る部分が大きいため、この数字は控えめに読む必要があります。

四つ目が、この記事でいちばんお伝えしたい条件です。やり直すたびに、削る範囲が広がっていきます。

臼歯の再治療の判断を集めた古い研究では、作り直しの7割で、修復する面の数が増えていました。小さな詰め物が大きな詰め物になり、やがて被せ物になる。この方向にしか進みません。

ただし、この研究は接着の技術が普及する前のものです。いまは、壊れた部分だけを補修する方法もあります。ですから、この連鎖が同じ速さで進むとは限りません。それでも、方向としては変わっていないと考えています。

もうひとつ、位置の話をしておきます。奥歯には、前歯よりはるかに大きな力がかかります。噛み砕く役割を担っているからです。同じだけの歯が残っていても、奥歯のほうが条件は厳しくなります。

ただし、前歯が有利かというと、そうとも言い切れません。前歯には横方向の力がかかりますし、神経を取って土台が入っていることも多い。1,000本以上を追いかけた調査では、前歯のほうが成績が悪いという結果も出ています。ただ、この研究は施術者の条件に偏りがあるため、「奥歯のほうが取れやすい」とも「前歯のほうが取れやすい」とも断定はできません。

ですから、位置だけで見通しを決めることはしません。その歯にどれだけ残っていて、どの向きの力がかかるか。この2つで判断します。

くり返しを止めるために、何を変えるか

ここまでお読みいただいて、お気づきかもしれません。同じ設計で付け直す限り、条件は変わりません。

ですから、くり返しを止めるには、何かを変える必要があります。変えられるものは、次の4つです。

覆う範囲を変える。抱える面積が足りないなら、覆う範囲を広げることで面積を増やせます。逆に、削る量を抑えたいなら、接着に頼る設計を選ぶこともあります。どちらが良いかは、残っている歯の量で決まります。

支えを作り出す。歯ぐきの位置を整えたり、矯正の力で歯を引き上げたりすることで、隠れていた歯の側面を使えるようにする方法があります。時間はかかりますが、抱える相手そのものを増やせます。

力の配り方を変える。その歯だけが早く当たっているなら、当たり方を調整します。夜間の食いしばりがあるなら、装置も検討します。ただし、装置さえ入れれば取れなくなる、という説明はしていません。そこまで示した研究がないためです。

むし歯のなりやすさを下げる。だ液の量、間食のとり方、フッ素の使い方。神経を取った歯は痛みで知らせてくれませんから、環境の側を変えておく意味が大きくなります。

この4つのうち、どれから手をつけるかは、その歯の状態で決まります。抱える面積が明らかに足りないなら、覆う範囲か支えを作る処置から。面積はあるのに取れているなら、力の配り方から。神経を取っていて、下でむし歯ができていた形跡があるなら、環境の側から。

すべてを一度に変える必要はありません。むしろ、一つずつ変えて、経過を見るほうが、何が効いたのかが分かります。

もうひとつ、記録の話をしておきます。当院では、取れた歯について、何が原因と考えられるか、どんな設計に変えたか、次に何を見ていくかを書き残しています。次に何かあったときに、ゼロから調べ直さずに済むからです。何度も取れている歯ほど、この記録が効きます。

受診の前に、次のことを整理していただけると診断が早く進みます。分かる範囲で構いません。

  • その歯は、これまでに何度取れていますか
  • 前回取れてから、今回まで何か月ほどでしたか
  • 神経は残っていますか。土台が入っていると聞いていますか
  • 取れた装置は手元にありますか
  • 朝起きたときに顎がだるいことはありますか

2番目には理由があります。取れるまでの期間が回を追うごとに短くなっているなら、条件が悪くなっている証拠です。この場合、付け直しではなく設計の変更を検討します。

やり直したあとに繰り返さないための考え方は、別にまとめています(→ やり直したあと、同じことを繰り返さないために)。

名古屋の診療室で、くり返す歯をどう診ているか

私は米国Indiana大学大学院で補綴学を3年間学び、MSD(補綴学の修士)とCertificate in Prosthodonticsを取得しました。補綴というのは、被せ物や入れ歯で歯の形と働きを回復させる分野です。

そこで繰り返し言われたのは、同じことを2回してはいけない、ということでした。1回目は分からなかったで済みます。2回目に同じ設計を選ぶなら、それは選択です。

ですから当院では、何度も取れている歯について、付け直すという選択肢を最初から外して考えます。かわりに、何を変えられるかを探します。

私が確認している順番は、次の4つです。

  1. 回数と間隔:何度取れているか、間隔が短くなっていないか。ここで深刻さが分かります
  2. 残っている歯:抱える面積と高さが、支えとして成り立っているか
  3. 神経と土台:神経の有無、土台が入っているか。気づけない条件がそろっていないか
  4. :その歯だけに力が寄っていないか

1番目を最初に置いているのが、私のやり方です。回数と間隔は、患者さんに伺えば分かります。レントゲンを撮る前に、どのくらい深刻な状態かが見えてきます。

そして、正直にお伝えすることがあります。条件によっては、その歯を残す方向での計画が立たないこともあります。抱える面積が確保できず、作り出すこともできない場合です。この場合、何度付け直しても同じ結果になります。

そういうときは、抜歯を含めた選択肢もお示しします。ただ、その前に、残す方向で成り立つかを先に検討します。歯は戻せませんので、順番を間違えないようにしています。

もうひとつ、患者さんによくお伝えすることがあります。取れやすい歯を抱えているのは、その方の落ち度ではありません。もともとむし歯が大きかった、神経を取らざるを得なかった、その歯が力のかかる位置にある。どれも、選べたことではありません。

ですから私は、原因の分析だけをお話しします。誰の責任かという話には意味がないと考えているからです。大切なのは、次に何を変えるかです。

この判断を支えているのが、技工の工程まで自分の手で行ってきた経験です。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになりました。どれだけの面積があれば装置が留まるのか、どの向きの力に弱いのかを、作る側の感覚として持っています。だから、ぎりぎりの症例でも「ここまでなら成り立つ」という線を引けます。

帰国後は、被せ物の設計や噛み合わせについて歯科医師向けの講演の機会をいただいてきました。この話題を扱うと、決まって議論になるのが、何回目で設計を変えるべきかという線引きです。同じ症例を見ても、判断が割れます。正解が一つに決まらないからこそ、私は判断の材料を先に並べ、患者さんにも同じ材料を見ていただいたうえで決めるようにしています。

あと何回やり直せるのかという見通しは、別にまとめています(→ 差し歯のやり直しは何回までできるのか)。神経を取った歯の被せ物の選び方は(→ 根管治療後の被せ物の選び方)をご覧ください。

まとめ|名古屋で同じ歯ばかり取れてお困りの方へ + よくあるご質問

同じ歯ばかり取れるのは、その歯に固有の条件が残っているからです。残っている歯の量、神経を取っていること、力の集中、そして治療を重ねてきたこと。この4つが、その歯だけを作っています。

そして、付け直すたびに歯は少しずつ削られ、条件は不利になっていきます。同じ設計で付け直す限り、この坂を下り続けることになります。

止めるには、何かを変える必要があります。覆う範囲、支えを作り出す処置、力の配り方、むし歯のなりやすさ。この4つのどれかです。

ご自身で整理していただけるのは、取れた回数、前回からの間隔、神経の有無、この3つです。とくに間隔が短くなっているかどうかが、判断の分かれ目になります。名古屋・伏見の当院では無料相談を行っており、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。検査と診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。Zoomでのご相談も承っています。完全予約制・完全個室で、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分です。

費用と回数についても触れておきます。設計を変える場合、その場で付け直すより費用も期間もかかります。ただ、同じ設計で付け直し続けると、通う回数は減りません。そして、そのたびに歯が削られます。どちらが結果として少ない負担で済むかを、検査と診断のうえで見積もり、治療の前にご説明します。

被せ物や詰め物が何度も取れることについて全体を見渡したい方は、ハブとなる記事から入っていただくと、ご自身の状況を位置づけやすくなります(→ 被せ物・詰め物が何度も取れる原因と治し方【完全ガイド】)。

あわせて読みたい

最後にひとつ。何度も取れている歯は、諦める対象ではなく、設計を見直す対象です。同じことをくり返してきた歯ほど、変えられる余地が残っていることがあります。何度目かを気にせず、まずいまの状態を見せていただければと思います。

よくあるご質問

Q1. 何度も取れるのは、私の噛み方が悪いからでしょうか。

そうとは限りません。取れやすさを決めているのは、残っている歯の量、神経の有無、その歯にかかる力の配分、そしてこれまでの治療の回数です。噛み方そのものより、力がその歯に集中しているかどうかのほうが効きます。そして、力の配り方は調整できます。ご自身を責める前に、条件の切り分けからご相談ください。

Q2. 3回目です。もう抜くしかないのでしょうか。

回数だけでは決まりません。大切なのは、装置を抱えるだけの歯が残っているかどうかです。3回目でも十分に残っていれば、設計を変えることで続けられます。逆に、1回目でも残っていなければ難しくなります。いまどれだけ残っているかは、レントゲンをお見せしながらご説明します。

Q3. 前より早く取れるようになった気がします。気のせいでしょうか。

気のせいではない可能性があります。取れるたびに、外して掃除して形を整える工程で歯がわずかに削られます。抱える面積が減れば、次はより早く取れます。間隔が短くなっているなら、それは条件が悪くなっている合図です。この段階では、付け直しではなく設計の変更を検討します。

Q4. 強い接着剤で付けてもらえば、解決しませんか。

接着材だけでは解決しないことが多いです。抱える面積が足りない歯では、どんな接着材を使っても、力がかかれば同じところではがれます。もちろん材料の選び方は結果に関わりますが、それは他の条件が整っていることが前提です。当院では、まず歯の形と力の配分を確かめ、そのうえで材料を選んでいます。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。装置を外した際に、むし歯や歯の割れが見つかり、治療計画が変更になる可能性があります。自由診療の場合は保険適用外となります。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

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