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やり直したあと、同じことを繰り返さないために
作り替えて終わりにすると、同じ場所がまた壊れます
治療が終わって、新しい被せ物が入る。ほっとする瞬間です。ただ、そこで気を抜くと、数年後に同じ場所でまた同じ話をすることになります。作り替えるたびに歯は減っていきますから、繰り返した回数だけ、次に選べる道が狭くなります。この記事は、やり直したあと同じことを繰り返さないために、何が効いて、何が効くとまでは言い切れないのかを整理したものです。難しい話ではありません。やることは、そう多くないのです。
はじめに、いちばん大切なことをお伝えします。
被せ物や詰め物は、壊れたから壊れるのではありません。壊れる理由がその口の中に残っているから、また壊れます。むし歯になりやすい環境、強い力のかかり方、掃除しにくい形。こうした条件が変わらないまま新しいものを入れれば、同じことが起こります。
そして、繰り返すたびに歯は減ります。詰め物で足りていたところが、次は被せ物になり、その次は神経の処置を含む話になり、やがて抜歯の検討に入る。この段階は、一方向にしか進みません。戻ることはありません。
身近なもので言い換えてみます。雨漏りしている天井を、何度も張り替えているようなものです。張り替えれば見た目はきれいになりますが、屋根に空いた穴をふさがなければ、次の雨でまた濡れます。しかも張り替えるたびに、下地は少しずつ傷んでいきます。歯の場合、この下地にあたるのがご自身の歯です。
もうひとつ、順番の話をしておきます。壊れる理由は、たいてい一つではありません。むし歯になりやすい環境と、力の集中と、掃除しにくい形が、重なって効いていることがほとんどです。ですから「これさえ直せば大丈夫」という一点はありません。逆に言えば、いくつかの条件を少しずつ改善するだけで、次までの年数はずいぶん延びます。
ここを、私はクリニックで率直にお伝えしています。今回のやり直しで直るのは、いま壊れているものです。壊れた理由までは、被せ物を替えても直りません。
ですから、治療の終わりは「終わり」ではなく「次の始まり」だとお考えください。ここからの過ごし方で、その歯があと何年もつかが変わります。
削るたびに何が失われるのかを具体的に知りたい方は、(→ セラミックのやり直しで歯はどれだけ削る?)をご覧ください。
繰り返さないために効く5つのこと

やることは多くありません。効き目がはっきりしているものから順に、5つだけご説明します。
定期的に見る
なぜ効くのか:壊れかけを、壊れる前に見つけられる。痛くなってからでは、選べる手が減っている
どうするか:間隔はその方の状態で決める。全員が同じ間隔である必要はない
むし歯のリスクそのものを下げる
なぜ効くのか:被せ物の下が再びむし歯になることが、やり直しのいちばん多い理由
どうするか:フッ素の使い方、間食のとり方、だ液の量を見直す
力の配り方を変える
なぜ効くのか:欠けや割れの背景には、力の集中がある。一か所に負担が寄っていると、そこが壊れる
どうするか:噛み合わせの調整。夜間の食いしばりがある方には装置も検討する
神経のない歯は覆う
なぜ効くのか:神経を取った歯は痛みで教えてくれない。割れてから気づくことになる
どうするか:とくに奥歯では、噛む面を覆う設計を検討する
掃除できる形にする
なぜ効くのか:被せ物の縁が歯ぐきの中に深く入っていると、汚れが取れず炎症が続く
どうするか:見た目と清掃性のどちらを優先するかを、部位ごとに決める
この5つのうち、患者さんご自身に関わっていただくのは1番目と2番目です。3番目から5番目は、治療の設計側の話になります。
この分担が大切です。ご自身が頑張っても設計が変わらなければ、力の集中も、縁の位置も、そのまま残ります。逆に、こちらがどれだけ丁寧に設計しても、むし歯になりやすい環境が変わらなければ、また下から侵されます。片方だけでは足りない、ということです。
順番にご説明します。
定期的に見ることが、なぜそこまで効くのか。理由は単純で、被せ物の不具合は静かに進むからです。縁にわずかな隙間ができても、痛みは出ません。その下でむし歯が進んでも、神経を取った歯なら気づきません。気づいたときには、被せ物を外して、その下も大きく削り直すことになっています。定期的に見ていれば、隙間の段階で手を打てます。
むし歯のリスクを下げるとは、何をすることか。歯みがきを頑張ることだけではありません。だ液の量、間食の回数と時間帯、フッ素の使い方、そして服用中のお薬。この4つが、その方のむし歯のなりやすさを決めています。だ液が少ない方は、どれだけ丁寧に磨いてもむし歯になりやすい。この場合は、みがき方より先に、だ液を増やす工夫やフッ素の濃度を見直します。
力の配り方は、ご自身では気づけません。噛んだときにどこが最初に当たるか、横に動かしたときにどこが擦れるか。これは鏡では見えません。ただ、手がかりはあります。朝起きたときに顎がだるい、歯の先端が平らにすり減っている、頬の内側に噛んだ跡の線がある。こうした所見があれば、力が過剰にかかっている可能性があります。
力への対処には、いくつか段階があります。まず、噛み合わせを見て、当たりが強すぎるところがないかを確かめます。次に、その歯の形そのものを見直します。噛む面の傾きを少し変えるだけで、力の向きは変わります。それでも足りない場合に、夜間の装置を検討します。装置から入るのではなく、装置は最後の手段です。
ご自身でできることもあります。日中、ふとしたときに上下の歯が触れていないかを意識してみてください。本来、口を閉じていても上下の歯は触れていないのが自然な状態です。パソコンに向かっているとき、運転しているときに歯が当たっていると気づいたら、そのつど力を抜く。これだけでも、日中の負担はずいぶん減ります。
欠けや割れがすでに起きている方は、(→ セラミックが欠けた・割れたときの対処)をご覧ください。
神経のない歯を覆う理由も、痛みの話に戻ります。神経を取った歯は、ひびが入っても、むし歯が進んでも、痛みで知らせてくれません。だから、力から守る仕組みを外側に用意しておく必要があります。とくに奥歯では、覆わなかった歯のほうが失われやすいことが分かっています。
掃除できる形にする、というのは設計の話です。被せ物と歯の境目を、歯ぐきの中に深く入れると、外から見えなくなるので見た目はきれいになります。ただ、その位置は歯ブラシも糸ようじも届きません。汚れが残り、歯ぐきの炎症が続き、やがてそこからむし歯が進みます。ですから当院では、見た目を優先する必要がある前歯以外では、縁を歯ぐきより上に置くことを基本にしています。
この判断には、その方の歯みがきの届き方も関わります。器用に磨ける方と、そうでない方とでは、許容できる形が変わります。ですから、治療の前に一度、いまどこが磨けていないかを一緒に確認します。設計は、その方が実際に管理できる範囲に合わせて決めるものだと考えています。
どこまで覆うかの考え方は、(→ 根管治療後の被せ物の選び方)をご覧ください。
正直にお伝えしておきます|効くと言い切れないこと
最後に、5つのうちどれから手をつけるかについて。すべてを同時に変える必要はありません。いちばん効くのは、その方にとってのいちばん弱いところです。だ液が少ない方なら、まずそこから。力が強い方なら、まず噛み合わせから。全部を一度に頑張ろうとすると続きませんので、当院ではひとつかふたつに絞ってお伝えするようにしています。
ここまで5つ挙げましたが、すべてが同じ強さの根拠を持っているわけではありません。誠実にお伝えしておきます。
ひとつ目。定期的に通うことの効果は、比べ方が難しい領域です。定期的に通っている方のほうが歯が残っているという調査はあります。ただ、定期的に通う方は、そもそも健康への関心が高く、生活習慣も違う傾向があります。ですから「通ったから残った」のか「もともと残りやすい方が通っていた」のかを、きれいに分けられていません。それでも、壊れかけを早く見つけられるという理屈は成り立ちます。
ふたつ目。夜間の装置についても、言い切れません。食いしばりの力を分散させる目的で使われますが、被せ物が欠ける割合をどれだけ下げるかを、しっかり調べた研究は限られています。理屈としては通っているので当院でもおすすめすることはありますが、「これを使えばもう欠けません」という説明はしていません。
三つ目。定期検診の間隔に、全員に当てはまる正解はありません。3か月ごと、半年ごとといった数字が語られますが、その方のむし歯のなりやすさ、歯ぐきの状態、被せ物の本数によって、適切な間隔は変わります。当院では、はじめは短めに設定して、状態が安定してきたら間隔を延ばしていく方針を取っています。
四つ目。「これをすれば二度と繰り返さない」という方法は、ありません。お口の中の条件は年齢とともに変わります。だ液の量は減りますし、歯ぐきは下がりますし、噛む力の配分も変わります。いまの設計が10年後の口に合っているとは限りません。ですから、一度決めて終わりにせず、途中で見直せるようにしておくことが大切だと考えています。
ご自身の状況を整理するために、次の点を思い出してみてください。
- その歯は、これまでに何度治療していますか
- 前回のやり直しから、どのくらい経ちましたか
- 朝起きたときに顎がだるいことはありますか
- その歯だけ食べ物が挟まりやすい、糸ようじが引っかかる、といったことはありますか
- 最後に歯科で見てもらったのはいつですか
2番目の質問には理由があります。前回から短い期間で壊れているなら、壊れた理由がまだ残っている可能性が高いということです。この場合は、同じ設計で作り直しても、また同じ期間で壊れます。
もうひとつ、こちらから伺うようにしていることがあります。前回の治療のとき、どんな説明を受けたかです。「むし歯が深かった」と言われたのか、「噛む力が強い」と言われたのか、それとも特に説明がなかったのか。前の担当医が何を見ていたかが分かると、こちらが見るべき場所が絞れます。覚えている範囲で構いませんので、お聞かせください。
あと何回やり直せるのかが気になる方は、(→ 差し歯のやり直しは何回までできるのか)をご覧ください。
私が「次に見る日」をその場で決める理由
私は米国Indiana大学大学院で補綴学を3年間学び、MSD(補綴学の修士)とCertificate in Prosthodonticsを取得しました。補綴というのは、被せ物や入れ歯で歯の形と働きを回復させる分野です。
そこで教わったことで、いまも変えていない習慣があります。それは、治療が終わった日に、次に見る日を決めてしまうことです。
「また何かあったら来てください」では、次に来られるのは何かあったときになります。何かあった時点で、選べる手はすでに減っています。ですから、症状がないうちに見る日を、その場で決めます。
間隔の決め方についても、少しお話しします。当院では、被せ物の本数、むし歯のなりやすさ、歯ぐきの状態、そして力の強さの4つを見て決めています。被せ物が多い方は、見る場所が多いぶん短めに。だ液が少ない方も短めに。逆に、条件が整っていて何年も安定している方は、間隔を延ばします。同じ方でも、生活が変わればまた変わります。
そして、来ていただいたときに何を見ているかも、お伝えするようにしています。被せ物の縁を器具でなぞって段差がないか、糸ようじが引っかからないか、噛み合わせの当たり方が変わっていないか、歯ぐきから出血しないか。この4点です。「今日は何もありませんでした」だけで終わると、何を見たのかが伝わりません。
もうひとつ、治療が終わった日にお渡ししているものがあります。その歯の記録です。何が原因で壊れたのか、どんな設計で作り直したのか、どこに注意して見ていくのか。この3点を書き残しておくと、数年後に何かあったときの出発点になります。ゼロから調べ直すのと、前回の記録から始めるのとでは、たどり着く速さが違います。
私が原因を書き残すようにしているのは、技工の工程まで自分の手で通ってきた経験からです。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになりました。外した被せ物の内側には、壊れ方の痕跡が残っています。力で割れたのか、縁から漏れたのか、そもそも厚みが足りなかったのか。作る側の工程を知っていると、この見分けがつきます。そして見分けがつけば、次の設計を変えられます。
帰国後は、被せ物の設計や噛み合わせについて、歯科医師向けの講演の機会をいただいてきました。この話題を扱うと、決まって議論になるのが、どこまでを設計側の責任とみなすかという線引きです。同じ壊れ方を見ても、力の問題と見る先生と、清掃性の問題と見る先生がいます。正解が一つに決まらないからこそ、私は判断の材料を先に並べ、患者さんにも同じ材料を見ていただいたうえで方針を決めるようにしています。
やり直しの相談で私がいちばん時間をかけるのは、じつはここです。目の前の1本をどう作るかと同じくらい、なぜ前回そうなったのかを調べます。原因が分からないまま作り直せば、同じ結果に近づくからです。
そして、その原因が設計にあるとは限りません。生活のなかにあることもあります。夜間の食いしばり、間食のとり方、だ液を減らすお薬。この場合は、被せ物をどれだけ丁寧に作っても足りません。ですから、原因が口の外にありそうなときは、そちらの話に時間を使います。
もうひとつ、患者さんに知っておいていただきたいことがあります。壊れる前には、たいてい前ぶれがあります。糸ようじが同じ場所で引っかかるようになった、その歯だけ食べ物が挟まる、冷たいものが少ししみる、噛んだときに一瞬だけ違和感がある。どれも痛みと呼ぶほどではありません。だから見過ごされます。この段階でご連絡いただければ、被せ物を外さずに済むことがあります。
ですから当院では、「痛くなったら来てください」ではなく、「引っかかるようになったら来てください」とお伝えしています。この言い方に変えるだけで、来ていただくタイミングがずいぶん早くなります。
治療の質そのものが結果を左右する部分については、(→ 再根管治療の成功率を上げる臨床条件)をご覧ください。
交換すべき時期かどうかを見分ける目安を知りたい方は、(→ セラミック交換を検討すべきサイン)をご覧ください。
まとめ|名古屋で同じことを繰り返さないためにできること + よくあるご質問

やり直したあと同じことを繰り返さないために効くのは、定期的に見ること、むし歯のリスクそのものを下げること、力の配り方を変えること、神経のない歯を覆うこと、そして掃除できる形にすることです。
被せ物は壊れたから壊れるのではなく、壊れる理由がその口の中に残っているから、また壊れます。今回のやり直しで直るのはいま壊れているものであって、壊れた理由までは替えられません。だからこそ、作り替えると同時に、理由のほうに手を入れる必要があります。
ご自身で整理していただけるのは、その歯の治療回数、前回からの期間、朝起きたときの顎の感じ、この3つです。名古屋・伏見の当院では無料相談を行っており、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。検査と診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。Zoomでのご相談も承っています。完全予約制・完全個室で、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分です。
やり直しを繰り返さないための設計を全体から見渡したい方は、ハブとなる記事から入っていただくと、ご自身の状況を位置づけやすくなります(→ 再治療を繰り返さないための設計【完全ガイド】)。
費用の考え方を先に把握しておきたい方は、(→ セラミックやり直しの費用|単価と本数の考え方)をご覧ください。
他院で受けた治療のやり直しを広くお考えの方は、(→ 名古屋で他院治療のやり直し・再治療をお考えの方へ)をご覧ください。
よくあるご質問
Q1. 定期検診は、どのくらいの間隔で通えばよいですか。
全員に当てはまる正解はありません。むし歯のなりやすさ、歯ぐきの状態、被せ物の本数によって変わります。当院でははじめ短めに設定し、状態が安定してきたら間隔を延ばしていきます。逆に、被せ物が多い方や、だ液が少ない方は短めのままにすることもあります。ご自身の間隔がなぜその長さなのかは、そのつどご説明します。
Q2. ナイトガードを作れば、もう欠けませんか。
そこまでは申し上げられません。夜間の力を分散させる目的で使われますが、被せ物が欠ける割合をどれだけ下げるかを調べた質の高い研究は限られています。理屈としては通っているのでおすすめすることはありますが、装置さえ入れれば安心という説明はしていません。噛み合わせの調整や、被せ物の厚みの設計とあわせて考えるものだとご理解ください。
Q3. 前回から3年でまた壊れました。私の磨き方が悪いのでしょうか。
磨き方だけの問題とは限りません。短い期間で同じ場所が壊れているなら、壊れた理由がまだ残っている可能性が高いということです。力の集中、だ液の少なさ、縁の位置、噛み合わせ。どれが効いているのかを調べずに作り直せば、また同じ期間で壊れます。ご自身を責める前に、原因の切り分けからご相談ください。
Q4. 治療が終わったあと、家で気をつけることはありますか。
3つあります。ひとつは、その歯の周りを毎日確実に掃除すること。糸ようじが同じ場所で引っかかるようになったら、そのタイミングでご連絡ください。ふたつめは、氷や硬いものを前歯で噛まないこと。みっつめは、朝起きたときに顎がだるい日が続くなら、それをお伝えいただくことです。どれも特別なことではありませんが、この3つで拾える変化はかなりあります。
※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。被せ物を外した際に、むし歯や歯の割れが見つかり、治療計画が変更になる可能性があります。自由診療の場合は保険適用外となります。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン
インプラントをはじめ、審美補綴や義歯などの外科的治療に関するご相談を承っております。その他の治療内容についてもお気軽にお問い合わせ下さい。



