症例
名古屋「入れ歯を支える歯が次々ダメになる」サイナスリフト併用インプラントブリッジで連鎖を断ち切った55歳女性の症例
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治療前

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治療後

患者背景と症例概要
こんなお悩みでご相談いただいた症例
名古屋でインプラント治療を検討されている方の中には、こんなお悩みの方が少なくありません。
- 部分入れ歯を作るたびに、支えの歯が次々ダメになっていく
- 入れ歯を作り直しても、数年でまた歯を失う
今回ご紹介するのは、まさにその「欠損の連鎖」を、サイナスリフト(上顎の骨を増やす処置)を併用したインプラントブリッジで断ち切った症例です。
10年続いた「欠損の連鎖」
患者様は55歳の女性。約10年前に右上の奥歯2本(6番・7番)を失ったところから、悪循環が始まりました。
当初は2本欠損の部分入れ歯を使用されていました。しかし――
- バネをかけた1つ前の歯(5番)が負担に耐えられずダメになる
- 入れ歯を作り直すと、今度はさらに前の歯(4番)が揺れてダメになる
こうして右上4・5・6・7番を順番に失い、欠損はどんどん拡大していきました。
これは部分入れ歯の宿命ともいえる構造的な問題です。入れ歯は噛む力の一部を、バネをかけた歯に負担させます。支えの歯が倒れれば、負担は次の歯へ、また次の歯へと移っていくのです。
患者様は「このような繰り返しの治療にはもう耐えられない」と、インプラント治療を希望して当院に来院されました。
部分入れ歯・ブリッジ・インプラントの比較検討をされている方は、以下の記事もご参照ください。
ご自身に近い症例をお探しの方は、以下の症例一覧もご覧ください。
症例まとめ
| 患者 | 55歳 女性 |
|---|---|
| 主訴 | 欠損部を入れ歯以外の方法で噛めるようにしたい |
| 既往 | 部分入れ歯の負担で右上4〜7番を順次喪失(欠損の連鎖) |
| 全身状態 | 良好、服薬なし |
| 治療方針 | サイナスリフト併用、インプラント2本で3歯を支えるブリッジ |
| 使用インプラント | ストローマン BLX 2本 |
| 上部構造 | ジルコニア(スクリュー固定) |
| 治療期間 | 約10ヶ月 |
| 費用 | 1,617,000円(自由診療) |
初診時の診断
初診時に行った検査
初診時には、口腔内診査、パノラマX線、歯科用CT、歯周組織検査、咬合診査、そして過去の入れ歯の設計分析を行いました。
繰り返し歯を失ってきた患者様の場合、「なぜ失い続けたのか」の原因分析こそが、次の治療の成否を決めます。
CT所見と骨条件
CTによる計測の結果は次の通りでした。
- 4番相当部:骨の幅・高さともに問題なし
- 6番相当部:骨幅7mmに対し、垂直的な骨の高さがわずか3mm
上顎の奥歯の上方には上顎洞(サイナス)という空洞があり、歯を失って時間が経つと、骨はこの空洞側からも吸収されて薄くなっていきます。
骨の高さ3mmでは、そのままインプラントを埋入することはできません。そこで本症例では、サイナスリフト(上顎洞底挙上術)という骨を作る処置を先行して行う計画としました。
骨造成の基本については、以下の記事で詳しく解説しています。
歯周状態と全身状態
他の歯に歯周病はなく、プロービング深さはほとんどの部位で3mm以下。歯の動揺もありませんでした。服薬はなく、全身状態も良好です。
つまり、歯を失い続けた原因は歯周病ではなく、「入れ歯の力学的負担」にあったことが診査で明確になりました。
過去の入れ歯の設計分析
持参された過去の入れ歯を分析したところ、設計に重大な不備がありました。バネの位置、力の分配、支えの歯への負担設計が不適切で、これが10年にわたる欠損拡大の一因になっていたと考えられます。
入れ歯は「作ればいい」ものではなく、どの歯に・どれだけの力を・どの方向に負担させるかという設計がすべてです。
治療計画と設計思想
検討した3つの治療選択肢
検討した3つの治療選択肢
①インプラント支持の部分入れ歯
欠損の一番後ろにインプラントを1本埋入し、入れ歯の後方の支えとして使う方法です。後方に垂直的な支えができることで、残っている犬歯に余分な力がかかりにくくなります。費用を抑えられる現実的な選択肢として、有力候補にご提示しました。
②部分入れ歯の再製作(設計の見直し)
過去の入れ歯の設計不備が明らかだったため、正しい設計で作り直すことも候補でした。
ただし、残っている歯に負担をかけにくい部分入れ歯を設計するには、口蓋(口の天井)を覆う構造が必要になります。患者様はこの口蓋の被覆を明確に拒否されました。
残っている歯にいかに負担をかけずに入れ歯を機能させるか。これこそ補綴専門医の腕の見せ所です。誰が作っても、装着直後はうまくいっているように見えます。差が出るのは5年後、10年後です。しかし、正しい設計の前提となる口蓋被覆が受け入れられない以上、この選択肢では長期予後を約束できません。
③インプラントブリッジ(本症例で採用)
サイナスリフトで骨を作ったうえでインプラントを埋入し、固定式のブリッジで欠損部を回復する方法です。残っている歯に一切負担をかけず、「歯を失うことで次の歯を失う」連鎖を構造的に断ち切ることができます。
インプラント治療の注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
患者様と十分に相談した結果、③のインプラントブリッジを選択しました。
放置するリスク:フレアアウト
奥歯の欠損を放置した場合に起こる重要なリスクもお伝えしました。
前歯は本来、噛む力の大部分を受け止める奥歯によって守られています。奥歯にしっかりとした垂直的なストップがないと、前歯が噛む力を直接受け続け、少しずつ揺れて外へ外へと開いていきます。
これがフレアアウトで、進行すると前歯の抜歯に至ることもあります。奥歯の欠損は「奥歯だけの問題」ではなく、放置すれば前歯まで道連れにするのです。
なぜ3本の欠損に、インプラント2本なのか
本症例のブリッジは、3歯分の欠損(4・5・6番相当)に対して、インプラントを3本ではなく2本(4番部と6番部)だけ埋入し、中央の5番はダミーの歯(ポンティック)として支える設計です。
「欠損の数だけインプラントを入れる」必要はありません。この設計には3つの明確な根拠があります。
理由1:力学的な合理性
両端の2本を連結することで、ブリッジ全体が一体として機能し、噛む力は2本のインプラントに適切に分配されます。天然歯のブリッジが2本の支台で3本分を支えるのと同じ原理で、両端支持なら不利な力もかかりません。
理由2:清掃性の確保
インプラントを3本並べると、インプラント同士の間に必要な距離(一般に3mm以上)を確保しづらくなり、間の歯ぐきの血流が阻害され、清掃も困難になります。これはインプラント周囲炎のリスクを高める要因です。
周囲炎を防ぐ設計については、以下の記事で詳しく解説しています。
理由3:患者様の負担軽減
埋入本数が減れば、外科的侵襲も費用も減ります。「本数を増やすこと」ではなく「必要十分な本数で最適な力の流れを設計すること」が、私の考えるインプラント治療です。
上部構造:ジルコニア+スクリュー固定
上部構造は強度と清掃性に優れるジルコニアを選択し、スクリュー固定としました。3歯連結のブリッジでは、万一のトラブル時に外して修理できる設計が長期管理の要になります。
インプラントの基本構造については、以下の記事で図解しています。
手術と治療経過
3つの段階に分けて慎重に進めた治療
治療は3つの段階に分けて、慎重に進めました。
第一段階:サイナスリフト(骨を作る)
まず、骨の高さが3mmしかない6番相当部にサイナスリフトを行いました。上顎洞の底部の粘膜を慎重に持ち上げ、その空間に骨補填材を填入して骨の再生を待つ処置です。
その後6ヶ月の治癒期間を待ち、再度CTを撮影。インプラント埋入に十分な骨ができていることを確認しました。
骨がしっかりできたことを画像で確認してから次の段階に進む――この確認を省略しないことが、サイナスリフト併用症例の安全性を支えます。
サイナスリフト(上顎洞挙上術)の詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
第二段階:インプラント埋入
骨の治癒を確認後、ストローマン BLX を4番部と6番部に2本埋入しました。BLXは初期固定の獲得に優れた設計で、骨造成後の骨に対しても信頼性の高い埋入が可能です。
第三段階:最終補綴
埋入から3ヶ月の治癒期間を待ち、骨結合を確認したうえで、最終的なジルコニアブリッジをスクリュー固定で装着しました。
サイナスリフトから最終装着まで、トータルの治療期間は約10ヶ月です。
術後経過
サイナスリフト・埋入手術とも、術後3日ほどは多少の痛みがあり鎮痛薬を服用されましたが、それ以降は痛みは全くなく、日常生活に支障はありませんでした。
手術後の痛みの一般的な目安は、以下の記事で解説しています。
術後評価
最終装着後の評価では、次の3点を確認しました。
- 咬合接触が均等に安定し、右側の奥歯で確実に噛める垂直的ストップが回復
- 前歯・犬歯への過剰な負担が解消され、フレアアウトのリスクも構造的に抑制
- ポンティック下部の清掃性を確保し、患者様ご自身でフロスを通せることを確認
10年続いた「入れ歯を作っては支えの歯を失う」連鎖は、残っている歯に一切負担をかけない設計によって、ここで断ち切られました。
長期管理と歯科医師の解説
定期メンテナンス
定期メンテナンス
当院では3〜4ヶ月ごとの定期メンテナンスを行っています。確認するのは次の項目です。
- インプラント周囲組織のプロービング
- X線による周囲骨とサイナスリフト部の評価
- 咬合接触のチェック
- ポンティック下部の清掃状態確認
- 専門的なクリーニング
長持ちさせるための管理の全体像は、以下の記事をご参照ください。
よくあるご質問
Q1. 骨の高さが3mmでもインプラントはできますか?
そのままでは埋入できませんが、本症例のようにサイナスリフトで骨を作れば可能になる場合があります。CTによる正確な診断と、骨の治癒を確認してから埋入する段階的なアプローチが前提です。
Q2. 歯を3本失ったら、インプラントも3本必要ですか?
必ずしも必要ありません。本症例では両端の2本で3歯分のブリッジを支える設計とし、力学的な安定・清掃のしやすさ・費用と侵襲の軽減を同時に実現しました。
Q3. 部分入れ歯で支えの歯がダメになるのはなぜですか?
入れ歯は噛む力の一部をバネをかけた歯に負担させるためです。特に奥歯側の欠損では支えの歯にテコのような力がかかり続け、「欠損の連鎖」が起こりやすくなります。
Q4. 奥歯がなくても前歯で噛めるので放置してよいですか?
おすすめできません。奥歯の支えを失うと前歯が揺れて外側へ開いていくフレアアウトが起こり、最悪の場合は前歯の抜歯に至ります。
Q5. サイナスリフトをすると治療期間はどれくらい延びますか?
本症例では骨の治癒に6ヶ月の期間を設けました。サイナスリフト併用症例ではトータル10ヶ月前後を見込んでいただくことが多いです。
歯科医師からのコメント
今回の症例で私が最も重要だと考えたのは、「10年続いた欠損の連鎖を、どの設計なら確実に断ち切れるか」という視点です。
この患者様が歯を失い続けた原因は、歯周病でも虫歯でもなく、入れ歯の力学的負担でした。だからこそ、同じ構造の治療を繰り返せば、同じ結果が待っています。
補綴治療は、装着した直後は誰がやってもうまくいっているように見えます。差が出るのは5年後、10年後です。2本で3歯を支える本数設計も、サイナスリフト後に6ヶ月待って骨を確認してから埋入する慎重な手順も、すべてはその「10年後の差」のための判断です。
治療のリスク・副作用・費用・期間
| 治療内容 | サイナスリフト+インプラント2本埋入(ストローマン BLX)+3歯分のジルコニアブリッジ |
|---|---|
| 治療期間 | 約10ヶ月(骨の治癒期間6ヶ月+埋入後の治癒3ヶ月を含む) |
| 費用 | 1,617,000円(自由診療) |
主なリスク・副作用は次の通りです。
- 外科処置を伴い、術後に腫れや痛みが生じることがあります
- サイナスリフトに伴い、上顎洞炎や上顎洞粘膜の損傷が起こる可能性があります
- 造成した骨が十分に成熟しない場合、追加処置が必要になることがあります
- インプラントが骨と結合しない可能性があります
- インプラント周囲炎のリスクがあるため、定期的なメンテナンスが重要です
- スクリュー緩みや上部構造の破損により修理・調整が必要になる場合があります
- 治療結果には個人差があります
名古屋でインプラント治療を検討されている方へ
インプラント治療では、骨の状態・噛み合わせ・補綴設計を総合的に診断することが重要です。当院のインプラント治療の考え方や治療の流れについては、以下のページで詳しく解説しています。
関連する内容は以下のページでご説明しています。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン
インプラントをはじめ、審美補綴や義歯などの外科的治療に関するご相談を承っております。その他の治療内容についてもお気軽にお問い合わせ下さい。



