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歯科技工士との連携で、仕上がりは変わります

歯を作っているのは、診療室にいる人だけではありません

お口に入る歯は、診療室で作られているわけではありません。歯科技工士という国家資格を持った専門職が、1本ずつ手で作っています。

ここで大事になるのが、歯科医師と技工士のあいだで、どれだけ情報が渡っているかです。技工士は、患者さんのお口を直接見ているわけではありません。渡された情報だけをたよりに、その方の歯を作ります。

だから、同じ材料を使い、同じ技工所に頼んでも、仕上がりに差が出ます。差を生むのは、材料でも値段でもなく、渡している情報の量と正確さです。

この記事では、何が渡っていると仕上がりが変わるのか、逆に渡っていないと何が起きるのかを説明します。医院を選ぶときの見方としても、使っていただける内容です。

この記事は、次のような方に向けて書いています。前歯のやり直しを考えていて医院選びに迷っている、以前に入れた歯の色や形が合わなかった経験がある、あるいは同じ費用でも仕上がりに差が出る理由を知りたい。差がどこで生まれているのかが分かると、医院に何を聞けばよいかも決まります。

技工士に渡すべき5つの情報と、渡らないと起きること

技工士に渡すべき情報は、大きく5つあります。それぞれ、渡らなかったときに何が起きるかも一緒に見ていきます。

①お口の中の写真

何が伝わるか:歯ぐきの色、隣の歯の質感、光がどう入るか。数値や言葉では表せない情報です

渡らないとどうなるか:色は合っても、質感が合いません。「白いけれど、そこだけ作り物に見える」という状態になります

とくに大事な場面:前歯。1枚の写真があるかないかで、結果が変わります

②噛み合わせの記録

何が伝わるか:まっすぐ噛んだときだけでなく、顎を前や横に動かしたときの当たり方

渡らないとどうなるか:技工士は形を推測で作るしかありません。できあがった歯を、お口の中で削って合わせることになります

なぜ問題か:削って合わせた歯は、設計どおりの形ではなくなります。表面のつやも耐久性も落ちます

③色の情報

何が伝わるか:明るさ、透明感、内側の色。天然の歯は1色ではなく、根元と先端で色が違います

渡らないとどうなるか:色見本の番号だけで作られます。番号は目安であって、その方の歯の色ではありません

起きやすいこと:入れてみたら明るすぎた、暗すぎた。作り直しになります

④顔と口元の情報

何が伝わるか:正面から見たときの傾き、笑ったときにどこまで見えるか、唇との関係

渡らないとどうなるか:模型の上では整っているのに、実際に笑うと違和感が出ます

理由:歯は、口の中だけで完結するものではありません。顔の一部として見られます

⑤設計の意図

何が伝わるか:なぜこの形にするのか。どこに力を逃がしたいのか。どこを優先したいのか

渡らないとどうなるか:指示どおりの形にはなりますが、それ以上にはなりません。技工士側の判断が働きません

連携の本質:意図が伝わっていると、技工士のほうから「この形のほうが安全です」と提案が返ってきます

この5つのうち、①③④は見た目に、②⑤はもちの良さに効きます。どちらも、技術ではなく情報の問題です。

技工士は、お口を見ずに作っています

これは強調しておきたい点です。技工士が受け取るのは、模型と、渡された記録だけです。患者さんの顔も、笑ったときの見え方も、話し方の癖も、渡されなければ分かりません。

つまり、技工士の仕事の質は、渡す側の仕事の質に上限を決められています。どれだけ優れた技工士でも、情報がなければ推測で作るしかありません。連携が大切だというのは、精神論ではなく、この構造の話です。

連携が効いていると、提案が返ってきます

情報がそろっていて、設計の意図まで伝わっていると、技工士側から返ってくるものが変わります。「この長さだと欠けやすいので、1ミリ短くしてよいか」「この方の噛み方なら、こちらの形のほうが安全です」。

指示を実行するだけの関係と、判断が返ってくる関係とでは、結果に差が出ます。とくに、本数の多い全顎治療では、この差が大きく出ます。

全顎治療では、連携の重要性がさらに上がります

1本の被せ物なら、隣の歯に合わせて作れば済みます。しかし全顎治療では、合わせる相手そのものを新しく作ります。基準になる歯がない状態から、上下すべての形と高さを決めていきます。

このとき、仮歯の情報が決定的になります。仮歯で使っていただいた形、当たり方、患者さんが感じた違和感。これらを記録として渡せるかどうかで、最終的な歯の完成度が変わります。

連携が取れているかどうかを、どう見るか

やり直しが多いときは、情報が足りていません

できあがった歯が合わない原因は、技工士の腕より情報にあることが多いです。境目が写っていない型、噛み合わせの記録がない模型、写真が1枚もない色の指示。これらは、どれだけ腕のいい技工士でも埋められません。

院内か院外かは、あまり関係ありません

「技工士が院内にいます」と聞くと安心されるかもしれませんが、大事なのは場所ではありません。外部の技工所でも、情報がきちんと渡っていれば結果は変わりません。逆に、院内にいても情報を渡さなければ同じです。

難しいケースでは、直接見てもらうという方法があります

前歯の色や形が結果を大きく左右する場合、技工士が実際にお口の中を見たほうが早いことがあります。写真では伝わりきらない情報があるためです。すべてのケースで必要なわけではありません。必要と判断したときだけの方法です。

患者さんが確認してよいこと

「前歯を作るとき、写真は撮りますか」「噛み合わせの記録はどう取りますか」。こうした質問は、失礼にあたりません。連携の中身を知るための、具体的な質問です。

仮歯は、技工士への「設計図」でもあります

仮歯は、その場しのぎの歯ではありません。数ヶ月使っていただいて問題が出なかった形は、そのまま最終的な歯の設計図になります。

仮歯の形をきちんと記録して技工士に渡せば、完成した歯を入れたときの違和感が小さくなります。逆に、仮歯と関係なく最終的な歯を作ると、また一から慣れ直すことになります。

「仮歯の調子がよかったので、この形で作ってください」。これが渡せる医院かどうかは、確認してよい点です。

当院でしていること|名古屋の臨床から

写真・模型・噛み合わせの記録を、そろえて渡します

色の指示を紙に書くだけでは伝わりません。当院では、口の中の写真、顔の写真、模型、顎を動かしたときの記録をそろえて渡しています。情報が多いほど、作り直しは減ります。

設計の意図を、言葉にして伝えます

「この形にしてください」ではなく、「この方は右で噛む癖があるので、こちらに力を逃がしたい」まで伝えます。理由が伝われば、技工士側で判断が効きます。

難しいケースでは、技工士に直接見てもらうこともあります

ご希望とご都合が合えば、その場を設けています。毎回ではありません。写真では足りないと判断したときだけです。

作り直しの費用は、原則いただきません

設計や製作の側で合わなかった場合、作り直しの費用はいただいていません。装着前に見つけたほうが、双方にとって早いためです。気になる点は、遠慮なくおっしゃってください。

名古屋・伏見駅から徒歩2分の当院は完全予約制・半個室で、無料相談とZoom相談をご用意しています。治療を受けることを前提にしないセカンドオピニオン外来(5,500円・税込)もあります。

仮歯の形を記録して、そのまま渡します

調整した仮歯は、記録を取ってから最終的な歯の設計に使います。使っていただいた期間の情報を、捨てないためです。

まとめ|差を生むのは、材料ではなく情報です

歯を作っているのは、歯科医師と歯科技工士です。技工士は、患者さんのお口を直接見ているわけではありません。渡された情報だけをたよりに作ります。

写真、噛み合わせの記録、色の情報、顔と口元の情報、そして設計の意図。この5つが渡っているかどうかで、同じ材料でも仕上がりが変わります。

大事なのは、技工士が院内にいるかどうかではなく、情報がどれだけ正確に渡っているかです。やり直しの多さは、たいていここに原因があります。

よくあるご質問

Q. 技工士は院内にいたほうがよいのですか。

A. 場所より、情報の渡り方です。外部の技工所でも、写真と記録がそろっていれば結果は変わりません。

Q. 安い被せ物と高い被せ物は、何が違うのですか。

A. 材料の違いもありますが、大きいのは工程にかかる人の手の量です。色を層ごとに重ねるか、削り出したまま仕上げるかで時間が変わります。見える場所かどうかで選び分けるのが現実的です。

Q. 色が思っていたのと違いました。作り直せますか。

A. 装着前であれば作り直せます。接着後は、外す際に歯を削ることになるため判断が変わります。装着前の確認で、遠慮なくおっしゃってください。

Q. 技工士さんに直接会うことはできますか。

A. 必要と判断したケースでは、その場を設けています。すべての治療で必要になるわけではありません。

Q. 前歯を作るときに、写真を撮られませんでした。大丈夫でしょうか。

A. 今と同じ色・形で作る場合は、番号の指定だけで足りることもあります。色や形を変えるご希望があるときは、写真があったほうが確実です。聞いてみてよい部分です。

Q. 連携が取れているかどうか、患者側から分かりますか。

A. やり直しの回数と、説明の具体性で見当がつきます。「技工士と相談します」だけでなく、何を相談するのかまで説明があるかどうかです。

Q. 仮歯の形が気に入っています。そのまま作ってもらえますか。

A. できます。むしろ、それが最も確実な作り方です。使ってみて問題が出なかった形には、根拠があります。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

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