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治療が終わったあと|10年後も使うために必要なこと
治療が終わった日から、本番が始まります
全体の治療が終わった日。長い工程を終えて、いちばんほっとする日です。
ただ、こちらから見るとここからが本番です。大きな費用と時間をかけた結果を、10年、20年と使っていただくために、終わったあとの過ごし方が効いてきます。
なぜ「終わった直後」が危ないのか
- 不便がなくなるため、通う理由がなくなる。痛くもなく、噛めている。当然、足が遠のきます
- 新しい噛み合わせに、体が慣れていく途中。入れた直後と3ヶ月後では、当たり方が変わります
- 問題が起きても、自覚症状で気づけない。ここがいちばん厄介です
気づけない理由が、インプラントと被せ物で違います
全体の治療では、インプラントと被せ物(クラウン)の両方が入っていることがほとんどです。この2つは、異変の起き方も、気づけない理由も違います。
インプラントは、痛みで知らせてくれません。神経がないためです。ネジが緩んでも、周りの骨が減っても、痛みが出ないまま進みます。
被せ物は、変化がゆっくりすぎて気づけません。とくに噛む面のすり減りは、1年で見れば分かりますが、毎日使っている本人には分かりません。気づいたときには、噛み合わせ全体が変わっています。
点検では、この2つを別々に見ます。次の節で、起きうることを6つ挙げて、それぞれインプラントの場合と被せ物の場合を並べてご説明します。
メンテナンスそのものの考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
治療のあとに起きうる6つのこと|インプラントと被せ物

全体を治した口の中には、たいていインプラントと被せ物(クラウン)の両方が入っています。起きることは似ていますが、中身が違います。6つ挙げて、それぞれ両方の場合を書きます。
① 噛み合わせがずれる
どういうことか:入れたときに合わせた当たり方が、年月をかけて変わります
インプラントの場合:インプラントは骨に固定されていて、沈みません。周りの自分の歯がわずかに動いたりすり減ったりすると、相対的にインプラントだけが強く当たるようになります
被せ物の場合:噛む面がすり減って低くなり、その分の負担が別の歯に移ります
気づけるか:ほとんど気づけません。「なんとなく噛みにくい」で来られる方が多い項目です
対処:削合で調整します。当日で済むことがほとんどです
② すり減る・相手を削る
どういうことか:噛む面の形が、少しずつ変わっていきます
インプラントの場合:上に付いている被せ物がすり減ります。材料によって速さが違います
被せ物の場合:e.maxは自分がすり減り、ジルコニアは噛み合う相手の歯を削ります。どちらも噛み合わせが傾く原因になります
気づけるか:前回の記録と比べないと分かりません。その日だけを見ても判断できない項目です
対処:早ければ調整、進んでいれば作り直しです
③ ゆるむ・外れる
どういうことか:固定していたものが外れます
インプラントの場合:上部と本体をつなぐネジが緩みます。早ければ締め直すだけで済みます。放っておくとネジが折れ、対処が大がかりになります
被せ物の場合:接着が外れます。気づかずに噛んでいると、外れたすき間から中でむし歯が広がります
気づけるか:初期は気づけません。進むと、ぐらつきや違和感が出ます
対処:どちらも早ければ簡単です。遅れると作り直しになります
④ 欠ける・割れる
どういうことか:材料そのものが破損します
インプラントの場合:上の被せ物が欠けます。土台のインプラント本体は無事なことがほとんどです
被せ物の場合:セラミックが欠けるほか、神経を取った歯では、根が縦に割れることがあります。この場合は抜歯になります
気づけるか:すぐ分かります
対処:小さな欠けなら研磨で済むことがあります。歯ぎしりが背景にある場合、ナイトガードで大きく減らせます
⑤ 中でむし歯が進む
どういうことか:見えないところで、土台が悪くなります
インプラントの場合:むし歯にはなりません。人工物なので、ここは天然の歯より有利な点です
被せ物の場合:被せ物の下は自分の歯です。ふちの段差や、歯ぐきが下がった部分からむし歯が入ります。痛みが出るのは、かなり進んでからです
気づけるか:自覚症状ではまず気づけません。レントゲンで見つけます
対処:早ければ、被せ物を作り直すだけで済みます。進むと根の治療や抜歯になります
⑥ 歯ぐきが下がる・炎症が起きる
どういうことか:支えている歯ぐきと骨が減っていきます
インプラントの場合:インプラント周囲炎です。痛みが出にくく、いちばん気づきにくい問題です。出血やにおいが手がかりになります
被せ物の場合:歯周病です。加えて歯ぐきが下がると境目が見えてきて、そこからむし歯が入りやすくなります
気づけるか:どちらも痛みません。検査でポケットを測って見つけます
対処:早ければ清掃と処置で止められます。これが定期点検をする最大の理由です
並べてみると、①②③⑥は両方に起きます。違うのは④⑤で、むし歯になるかどうかがいちばん大きな差です。
インプラントを長持ちさせるための頻度と基準は、以下の記事で詳しく解説しています。
被せ物の下で進むむし歯については、以下の記事もご参照ください。
歯ぎしりがある方は、以下の記事をご覧ください。
被せ物のすり減りは、材料で違います|e.maxとジルコニア

前の節で、被せ物はすり減ると書きました。その減り方は、材料によってまったく違います。ご自身の口に何が入っているかで、見るところが変わります。
なぜ、すり減りがそれほど問題なのか
全体を治した場合、噛み合わせの高さを決めて入れています。その高さは、噛む面がすり減れば下がります。下がった分は、他の歯や顎の関節が引き受けることになります。
厄介なのは、これが数年かけてゆっくり進むことです。毎日使っている本人には分かりません。痛くもありません。気づくのは「なんとなく噛みにくい」と感じたときで、そのときにはもう全体がずれています。
e.max(イーマックス)
特徴:天然の歯に近い硬さで、透明感を出しやすい材料です。前歯や、目立つ部分に向いています
起きること:少しずつすり減ります。とくに歯ぎしりや食いしばりのある方では、数年かけて噛む面が平らになっていきます
何が問題か:設計したときの高さと当たり方が変わります。理想的な噛み合わせで入れたはずが、そこから外れていきます
見つけ方:咬合紙での当たり方に加えて、前回のスキャンや写真と比べます。その日だけを見ても、減ったかどうかは分かりません
対処:早い段階なら調整や部分的な作り直しで済みます。全体的に進んでいれば、高さから作り直すことになります
ジルコニア
特徴:硬く、すり減りにくい材料です。奥歯や、力のかかる部分に向いています
起きること:自分はすり減りませんが、噛み合う相手の歯を削ることがあります。対する歯が天然の歯だと、そちらが減っていきます
何が問題か:片方だけが減るため、噛み合わせが傾いていきます。減った側の歯がしみることもあります
見つけ方:噛み合う側の歯のすり減り方を見ます。しみる症状が手がかりになることもあります
対処:噛む面を磨いて滑らかにする、ナイトガードで力を逃がす、といった方法があります
メタルボンド・前装冠
特徴:金属の上にセラミックを焼き付けたものです。以前から広く使われてきました
起きること:表面のセラミックが欠けることがあります。歯ぐきが下がると、ふちの金属が黒い線として見えてきます
何が問題か:見た目に出やすく、欠けた場合は作り直しになることが多い部分です
見つけ方:見た目で分かります。境目の変化は、写真で比べると確実です
対処:小さな欠けなら研磨で済むことがあります。範囲が広ければ作り直しです
材料が混ざっていると、減り方も混ざります
上下や前後で違う材料が入っている場合、すり減る速さが場所によって違ってきます。数年経つと、当初そろえた高さがばらつきます。
とくに注意が要るのは、ジルコニアとe.maxが噛み合っている場合です。ジルコニア側は減らず、e.max側だけが減っていきます。片減りが進むと、そこだけ当たらなくなります。
これは設計の失敗というより、材料の性質です。だからこそ、どこに何が入っているかを記録しておき、それに合わせて見るところを変える必要があります。
材料ごとの違いは、以下の記事で詳しく解説しています。
破損の背景を整理した記事は、以下をご覧ください。
噛み合わせの調整が結果を左右する理由は、以下の記事で解説しています。
メンテナンスと保証で確認しておきたいこと|名古屋の臨床から
「メンテナンス=歯のクリーニング」と思われがちですが、全体の治療を受けたあとは、見る項目が増えます。
毎回すること
- 噛み合わせの確認:咬合紙で当たり方を見ます。ずれていれば、その場で調整します
- すり減りの確認:噛む面の形を見ます。前回の記録と比べます
- 歯ぐきの検査:インプラントの周りと、被せ物のふちのポケットを測ります
- ぐらつきの確認:インプラントはネジの緩み、被せ物は接着の外れを見ます
- 清掃:インプラントとセラミックでは器具を変えます。表面を傷つけない材質のものを使います
定期的にすること
- レントゲン:1年に1回ほど。骨の高さと、被せ物のふちの状態を前回と比べます
- 口腔内スキャン:噛む面の形を記録します。すり減りは、これを重ねて初めて数字で見えます
- 写真:見た目の変化を記録します。1年ごとに比べると、歯ぐきの下がり方が分かります
- ナイトガードの点検:使っている方は、すり減り具合を見ます
「前回と比べる」ができるかどうかが、点検の質を分けます。その日だけを見ても、進んでいるのか止まっているのかが分かりません。記録を残しておく意味はここにあります。
どこに何が入っているかの記録
全体を治した場合、部位ごとに材料が違うことがあります。当院ではどの歯に何が入っているかを図で残し、それに合わせて見るところを変えています。e.maxの部位はすり減りを、ジルコニアの部位は噛み合う相手の歯を、被せ物のふちはむし歯を。
通う間隔
3ヶ月に1回が基本です。歯ぐきの状態が安定している方は4〜6ヶ月に延ばすこともあります。逆に、歯周病が進んでいた方、喫煙される方、歯ぎしりが強い方は、2ヶ月ごとにお願いすることもあります。
歯ぎしりのある方の材料選びについては、以下の記事もご参照ください。
保証で確認しておきたい5点
保証は医院ごとに条件が違います。治療を決める前に、次の5点は確認しておいてください。
- 期間:インプラント本体と、上の被せ物で期間が違うことがあります
- 対象:欠けた/外れた/すり減った/インプラントが抜けた。それぞれ扱いが違います
- 自己負担:全額無償か一部負担か。年数で割合が変わる形式もあります
- 対象外の条件:ここがいちばん大事です
- 書面でもらえるか:口頭だけの説明は、あとで食い違います
とくに「すり減り」が保証の対象になるかどうかは、確認しておく価値があります。欠けた・割れたは分かりやすいのですが、すり減りは判断が分かれる部分です。
対象外になりやすいのは、定期点検に来ていない場合、他院で手を加えた場合、事故による破損、指示されたナイトガードを使っていない場合です。1つめは裏を返せば「通っていれば保証される」ということで、保証を維持することと長く使うことが同じ方向を向いています。
保証の考え方は、以下の記事で詳しく解説しています。
やり直しにかかる費用と保証の関係は、以下の記事にまとめています。
名古屋・伏見駅から徒歩2分の当院は完全予約制・半個室で、無料相談とZoom相談をご用意しています。治療を受けることを前提にしないセカンドオピニオン外来(5,500円・税込)もあります。
まとめ|10年後も使うために|よくあるご質問
要点は3つです。
第一に、気づけない理由が2つあります。インプラントは神経がないため痛みで知らせません。被せ物は変化がゆっくりすぎて本人には分かりません。どちらも、症状を待っていては手遅れになります。
第二に、材料によって見るところが違います。e.maxはすり減り、ジルコニアは噛み合う相手の歯、メタルボンドは境目の見た目。そして被せ物の下は自分の歯なので、むし歯になります。
第三に、点検は「前回と比べる」ことが本体です。その日だけを見ても、進んでいるのか止まっているのかは分かりません。スキャン、レントゲン、写真を残しておく意味はここにあります。
名古屋・伏見駅から徒歩2分の当院は完全予約制・半個室で、無料相談とZoom相談をご用意しています。治療を受けることを前提にしないセカンドオピニオン外来(5,500円・税込)もあります。
治療中の過ごし方については、以下の記事にまとめています。
素材選びで迷われている方は、以下の記事をご覧ください。
入れたあとの違和感については、以下の記事にまとめています。
よくあるご質問
Q1. メンテナンスにはどれくらいの頻度で通うのですか。
3ヶ月に1回が基本です。状態が安定していれば4〜6ヶ月に延ばすこともありますし、歯周病が進んでいた方、喫煙される方、歯ぎしりが強い方は2ヶ月ごとになることもあります。一律ではありません。
Q2. 痛くもかゆくもないのですが、行く必要がありますか。
あります。インプラントには神経がないため、骨が減っていても痛みが出ません。被せ物のすり減りも痛みません。症状で判断できないからこそ、間隔を決めて見る必要があります。
Q3. セラミックはすり減らないのではないですか。
材料によります。e.maxのように天然の歯に近い硬さのものは、少しずつすり減ります。ジルコニアは減りにくいかわりに、噛み合う相手の歯を削ることがあります。どちらが良い悪いではなく、見るところが変わります。
Q4. すり減っていると言われました。すぐ作り直しですか。
程度によります。早い段階なら調整で済むことが多く、部分的な作り直しで収まることもあります。全体の高さが変わってしまっている場合は、大きな作り直しになります。早く見つかるほど、小さく済みます。
Q5. どれくらいもちますか。
正直に申し上げると、通われ方と、力の強さで変わります。同じ治療をしても、定期的に来られる方と来られない方では差が出ます。年数を言い切る説明には慎重になってください。
Q6. しばらく通えていませんでした。今さら行っても遅いですか。
遅くありません。空いてしまったことを責めることはしません。まず現状を見せてください。早く見れば、対処できる範囲が広がります。
Q7. 他院で入れたものの点検だけ、お願いできますか。
できます。ただし他院で手を加えると、元の医院の保証が切れることがあります。まずは入れた医院に確認していただくのが、順番としては損が少ないです。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
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