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人生100年時代の歯の設計|何歳からでも
名古屋で高齢期の歯科治療を考えるとき、順番が逆になっていませんか
10年後、20年後に自分がどこで噛んでいるか。高齢期の歯科治療は、その時点から逆算して組み立てるものだと私は考えています。年齢そのものが、治療できるかどうかを決めるわけではありません。名古屋で高齢期の歯科治療を考えるとき、大切なのは、これから何年、どんな体調で通えるかを見込むことです。そのうえで口全体の設計図を引き直します。この記事では、その考え方を調査の数字と治療の順序に沿って整理します。
この記事でわかること
- 年齢だけで治療の選択肢が閉じることはありません
- 設計に使う数字は、寿命ではなく自分で通える期間です
- 治す範囲を前寄りに絞る形も、根拠のある選び方です
- 相談の前にご自身で整理しておけることがわかります
多くの方は「どの歯を治すか」から相談を始められます。けれど設計から考えると、順番は逆です。先に決めるのは「これから何年、どこで噛んで暮らすか」です。個々の歯の治し方は、そのあとに決まります。
「もう歳だから」は、もう当てはまりにくい
厚生労働省の令和6年歯科疾患実態調査では、80歳で20本以上の歯が残っている方の割合は61.5%でした。令和4年の調査では51.6%です。2年で約10ポイント上がりました。過去1年間に歯科検診を受けた方の割合も、58.0%から63.8%に増えています。
つまり「歳をとれば歯を失う」は、当たり前ではなくなってきました。同じ調査では、1人平均の残っている歯が20本以上を保てている最も高い年齢層は70〜74歳でした。
ですから「この歳で治しても」という言葉は、もう成り立ちにくくなっています。長く歯科から足が遠のいていた方に、その時間を責めるつもりは一切ありません。過ぎた年数は変えられませんが、これからの設計は今日から変えられます。
もっとも、平均が上がったことと、ご自身の口がどうかは別の話です。同じ調査では、4mm以上の深い歯周ポケットがある方の割合が、60〜64歳で59.1%、80〜84歳で61.6%と報告されています。歯が残っていることと、その歯が安定していることは同じではありません。だからこそ、本数だけでなく、歯の並び方と噛む力のかかり方まで見る設計が要ります。
設計に使う数字は「寿命」ではなく「通える期間」
人生100年時代という言葉から思い浮かぶのは平均寿命ですが、設計で使うべき数字は別にあります。2022年時点で、平均寿命は男性81.05歳・女性87.09歳です。健康寿命は男性72.57歳・女性75.45歳でした。その差は男性8.49年、女性11.63年です(厚生労働省 e-ヘルスネット)。
この8年から12年が、設計でいちばん大事な期間になります。歯は残っているのに、自分では通いにくくなる。細かい歯みがきが難しくなる。そうした変化が起こりうる年数が、平均でこれだけあるという意味だからです。
ですから設計は、治した直後の出来ばえだけで評価してはいけません。通いにくくなった後でも維持できるか。壊れたときに小さく直せるか。そこまで含めて、はじめて設計と呼べます。
口の働きは、ある日ではなく少しずつ落ちる
噛む力や飲み込む力は、一気には落ちません。硬いものが食べにくい、お茶や汁物でむせる、滑舌が落ちた。こうした小さな変化が先に出て、噛めないという自覚はあとから来ます。
噛めなくなると、食べる量より中身が先に変わります。何がどれだけ入れ替わるかは数字で確かめられます。生活への影響を知りたい方はご覧ください。
令和6年の調査では、85歳以上で「噛めないものがある」と答えた方が2割を超えていました。裏を返せば、8割近くは噛めています。設計しだいで、その側に居続けられる可能性は小さくありません。
高齢 歯科治療で選べる設計の型を、30年の物差しで並べる

ここからは、どんな設計の型があるのかを比べます。1回の費用や期間ではなく、十数年から30年という物差しで見ると、評価が入れ替わることがあります。
年齢だけで治療法を外す必要はない
前提として、年齢だけで治療法を外す必要はないという報告があります。65歳以上を対象に、11の研究をまとめた調査があります。複数の研究をまとめた調査とは、同じテーマの研究を集めて全体像を見る方法のことです。インプラントが噛む力を受け始めてから、こわれずに残っている割合は5年で96.2%、10年で91.2%と報告されました。著者は、年齢だけを判断材料にする必要はないと結論しています(Srinivasan ら、2016年、Clinical Oral Implants Research)。ただし各研究の患者数は10〜31名と少なく、限られた根拠です。
一方で、取り外し式の装置にも報告があります。11の研究を集めた調査です。取り外し式の入れ歯で補う治療は、高齢の方の生活の質をいくつかの面で良くしたと報告されています。インプラントで支える入れ歯は、総入れ歯より、支えの安定・心地よさ・発音・噛む効率で良い結果でした(Brígida ら、2023年、Geriatrics, Gerontology and Aging)。追跡した期間が短く人数も少ない点は、著者自身が限界として挙げています。
| 設計の型 | もとになる報告 | 良いところ | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 壊れた所だけそのつど直す | 長く比べた報告は確認できず | 1回の費用・期間・体の負担が軽い | 次にどこで噛むかを、先に決められない |
| 全体を設計し、取り外せない形を中心に | 65歳以上で10年後も91.2%が残る(Srinivasan 2016) | 噛む面を確実に作りやすい | 手術の負担、費用、掃除の手間。体の状態と飲んでいる薬の確認が前提 |
| 全体を設計し、取り外し式を中心に | 取り外し式の入れ歯で生活の質が改善(Brígida 2023) | 修理や作り替えがしやすく、あとから変えやすい | 支える力は設計しだい。定期的な調整が要る |
| 治す範囲を前寄りに絞る | 噛む力と見た目に満足し、噛み合わせも安定(大野、2003年、日本補綴歯科学会雑誌) | 負担と手入れする場所を減らせる | 長く追った研究が少ない。向いているかの見極めが必要 |
| 定期管理を設計に組み込む | 管理中は1年に1人0.13本の喪失(Herz ら 2025) | 長い目で見て歯を失いにくい | 通い続けることが前提になる |
ゴールを「28本の復元」に置かないという選び方
表の4行目は、あまり知られていない考え方です。奥歯の最後まで並べ直すのではなく、前寄りの歯で噛む力を確保することをゴールに置きます。短縮歯列と呼ばれる考え方です。
国内のまとめでは、この方針をとった患者の多くが、噛む力にも見た目にも満足したと報告されています。噛み合わせも安定しており、治療のゴールの1つになり得ると結論されました(大野純一、2003年、日本補綴歯科学会雑誌47巻5号)。ただし、長く追った大きな研究は不足しています。
この考え方が高齢期に効くのは、手入れする場所が減るからです。場所が少ないほど、通いにくくなった後の管理は現実的になります。「全部治さないと意味がない」という思い込みを外せると、選べる道が増えます。
なお、噛み合わせの高さを回復すると口元の印象が変わることがありますが、それはおまけであって目的ではありません。
定期管理は「おまけ」ではなく設計の一部
もう一つ、数字で押さえておきたいことがあります。手術をしない方法で歯周病を治療した115名を、平均9.0年追いかけた報告です。定期管理の期間中に歯周病が原因で失われた歯は、1人あたり1.03本でした。1年あたりでは0.13本です(Herz ら、2025年、Dentistry Journal)。同じ報告では、管理を始めた時点の年齢が高いほど、歯を失いやすい傾向も示されています。
これは「早く始めなければ手遅れ」という話ではありません。始めた時点から先の年数に効く、という意味です。80歳で始めても効きます。
正直に書いておきたい、この設計の限界と向かないとき

良い面だけを並べるのは誠実ではないので、限界も書きます。
期間と通院の回数は、思っているより長い
口全体の設計をやり直す場合、検査と診断だけで数回かかります。仮歯で確かめる期間まで含めると、月単位ではなく年単位になることもあります。体力や送り迎えの都合と合わないなら、無理に選ぶものではありません。
長い計画がどうしても組めないときは、噛める場所を1か所だけ確保する短い計画に切り替えます。設計の考え方を捨てるのではなく、当てはめる範囲を小さくするだけです。
体への負担と、費用の考え方
手術を含む設計は、体の状態と飲んでいるお薬によって、選べる範囲が変わります。持病がある方の進め方は、別の記事にまとめました。骨に関わるお薬を飲んでいる方は、処置の前に確かめる点があります。血糖の管理と歯ぐきの状態が互いに影響しあう方は、治療の順序そのものが変わります。
日本歯周病学会の『高齢者の歯周治療ガイドライン2023』でも、体の病気・飲んでいる薬・物忘れの程度を確かめたうえで、一人ひとりに合わせて対応することが示されています。通える方には専門的なケアを増やし、歯ぐきの手術は積極的には行わない方針です。年齢が上がるほど、治療は足し算より引き算の判断が増えます。何をするかと同じくらい、何をしないかを決めることが、設計の中身になります。
費用についても書いておきます。口全体の設計は、1本ずつの治療の合計とは別の考え方で組み立てます。総額は状態によって大きく変わるため、検査のうえで見積りを治療の前にお出しし、納得いただいてから進めます。金額を見てから考えたい、という進め方でまったく問題ありません。
そして、この設計が向かないときもあります。いま強い痛みや腫れがあるときは、設計の話より先に、応急の処置が必要です。物忘れなどの変化があり、仮歯の期間に長く確かめることが負担になる場合も、工程を短くします。ご本人が「今は入れ歯で十分だ」とお考えなら、その気持ちが最優先です。設計は押しつけるものではなく、選べる道を見えるようにする道具にすぎません。
決める前に、自分で確かめておきたいこと
相談の前に、ご自身で整理しておけること
- ☑ これから10年の通院のしかた。どれくらいの頻度なら現実的か、送り迎えが要るならその方の都合も含めて考えます
- ☑ いちばん困っていること。噛めないことか、見た目か、痛みか。1つに絞れると設計が定まります
- ☑ 手先と歯みがきの見通し。細かい掃除が難しくなりそうなら、みがきやすい設計を優先します
- ☑ 持病と飲んでいるお薬。紙に書き出せていないと、選べる道を正しく絞れません
お薬手帳の写真を撮ってきていただくだけでも十分です。すべてを覚えている必要はありませんし、ご家族に確かめてから改めて教えていただく形でも構いません。
この4点が整理できていれば、名古屋での初回の相談で話す内容を絞りやすくなります。まとまっていなくても構いません。お話を伺うカウンセリングルームは完全個室、診療室は半個室です。人目を気にせず話せる場所で、一つずつ整理していきます。
私が全体の設計で最初に決めていること
ここからは、私自身の治療の考え方をお話しします。
順序を決めるとは、噛む場所を先に決めること
全体の設計を立てるとき、私が最初に決めるのは「どこで噛んでもらうか」です。噛む場所が決まると、残す歯と置き換える歯の割り振りが自然に絞られます。逆に、噛む場所を決めないまま治し始めると、後から入れた歯の位置に前の治療が引っ張られ、全体が少しずつずれていきます。
米国で驚いたのは、診断のしかたそのものでした。お口全体の治療では、完成形の模型を先に作ります。ワックスアップといって、目標とする歯の形を蝋で再現した模型です。そのうえでゴールを患者さんと共有し、合意してから1本目に取りかかります。ゴールを決めずに走り出さない、という順番が徹底されていました。帰国後も、この順番は変えていません。
高齢期の設計では、この順序がより大事になります。途中で体調や暮らしが変わることがあるからです。だから「どこまで進んだ状態でも噛めるか」を、計画のそれぞれの段階に用意しておきます。ゴールが共有できていれば、途中で計画を縮めることも、時期をずらすことも、迷わず決められます。
ゴールを形にしておく効き目は、ご本人よりむしろご家族との相談で出ます。言葉だけで「奥歯まで作り直します」と説明しても、どこまでが土台で、どこからが省いてよい部分なのかは伝わりません。模型が目の前にあれば、この部分は今回は見送りましょう、という会話がその場で成り立ちます。名古屋の診療室で高齢期の計画を立てるとき、私がまず形を作ってお見せするのは、このためです。
決めたゴールを、暮らしのなかで確かめる
ゴールの形が決まったら、それを仮歯に写します。仮歯とは、最終的な歯を入れる前に使う仮の歯のことです。そして実際の暮らしのなかで確かめます。噛み合わせの高さ、発音、見た目を、最終的な歯にする前に試す工程です。硬いものを食べたときの感じ、話しやすさ、疲れ方。数週間使ってみて、はじめて分かることがあります。
ここで違和感が出れば、まだ設計を戻せます。最終的な歯に置き換えてからでは、直す負担が何倍にもなります。答え合わせが済んでから最終形にする。この手順を省かないことが、長く安定することにつながると感じています。
仮歯の期間に教えていただきたいのは、良し悪しの判定ではなく、違和感のある場所です。「右の奥が先に当たる気がする」「サ行が言いにくい」といった言葉が、設計を直す手がかりになります。うまく言葉にならなくても構いません。
講演でいちばん議論が長引くところ
帰国後、被せ物や入れ歯で補う治療、噛み合わせ、治療計画について、歯科医師向けのセミナーや講演を行ってきました。議論が最も長引くのは、いつも順序の話です。とくに高齢期の設計では、「どこまで作るか」ではなく「どこまで作らないでおくか」で意見が分かれます。
私がその場でお話ししているのは、装置は作った瞬間ではなく、直すときにこそ設計の良し悪しが出るということです。人工の歯が1本欠けたとき、数分で足せる設計と、作り直しに近い手間がかかる設計があります。将来ご自身で通いにくくなり、訪問での対応に切り替わることまで考えるなら、この差は小さくありません。
ゴールの形を先に決めておく利点は、ここにもあります。完成形が共有できていれば、その形のどこを後から足せるようにしておくかを、最初から織り込めます。逆に、行き当たりで積み上げた形は、どこを直しても全体のつじつまを取り直す作業がついてきます。人生100年時代の設計とは、この「直しやすさ」を設計図の段階から入れておくことだと私は考えています。
ちなみに噛み合わせと肩こりや姿勢の関係は、俗説と事実が混ざりやすいところです。分けて整理した記事を用意しています。
まとめ|名古屋で高齢期の歯科治療を始めるあなたへ
名古屋で高齢 歯科治療を考えている方に、この記事でお伝えしたかったことは3つです。第一に、年齢だけで治療の選択肢が閉じることはありません。第二に、設計に入れるべき数字は寿命ではなく、自分で通える期間です。健康寿命との差は男性8.49年、女性11.63年ありました。第三に、ゴールは28本の復元だけではありません。治す範囲を絞り、直しやすさを織り込む設計も、根拠のある選び方です。
次の一歩は簡単です。前の章の4つの確認ポイントを、紙に書き出してみてください。答えが埋まらない項目があっても構いません。埋まらなかったところこそ、一緒に考えるべき点だからです。なお、何歳まで個々の治療法が向いているかという線引きは、この記事の範囲を超えます。設計の考え方と、年齢の線引きは分けて考えるほうが整理しやすいはずです。噛む力と体全体の関わりをまとめて知りたい方は、ハブ記事もあわせてご覧ください。栄養や頭の働き、体の病気との関係を横断的に整理しています。
よくあるご質問
Q1. 80歳を過ぎていますが、今から口全体を治す意味はありますか。
意味はあります。歯周病の治療のあと、定期管理を平均9.0年追いかけた報告では、失われた歯は1年に1人0.13本でした(Herz ら 2025)。この効き目は、始めた時点から先の年数に働きます。同じ報告では、始めたときの年齢が高いほど歯を失いやすい傾向も示されています。それは「始めない理由」ではなく「今日から始める理由」だと私は考えています。80歳の方にとっての10年は、40歳の方にとっての10年と同じ長さです。
Q2. 何年も歯科に行っていません。怒られませんか。
責めることはありません。私が知りたいのは、行けなかった期間ではなく、これから何を優先したいかです。放っておいた期間の長さで治療の方針が変わることはあっても、こちらの態度が変わることはありません。カウンセリングルームは完全個室ですので、他の方の目を気にせずお話しいただけます。
Q3. 途中で通えなくなったらどうなりますか。
その可能性を、最初から設計に入れておきます。区切りのよい段階を計画の中に複数つくり、どこで止まっても噛める状態を保てるようにします。たとえば片側の奥歯を整えた時点、上あごの設計が終わった時点というように、途中で止まっても食事が成り立つ区切りを置きます。取り外せる装置を軸にした設計は、この点で融通が利きます。予定が変わったときにご連絡いただければ、その時点の状態から計画を組み直します。
Q4. 噛むことは認知症の予防になりますか。
今の時点で、はっきりそうだとは言えません。噛むことと頭の働きの関係は研究が積み重ねられていますが、分かっていることと分かっていないことを分ける必要がある分野です。研究がどこまで進んでいるかは別の記事にまとめていますので、そちらをご覧ください。
まずは無料相談で構いません。当院は伏見駅7番出口から徒歩2分、完全予約制です。遠方の方や、まず話だけ聞きたい方には、Zoomでのご相談もお受けしています。
※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。
検査・診断のうえで、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明し、ご納得いただいてから治療を始めます。ご不明な点は、どの段階でもお尋ねください。
噛む力と全身の健康の関係を、分かっていることの範囲を示しながらハブ記事に整理しています。あわせてご覧ください。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
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