症例
名古屋「入れ歯を4回作り直しても合わない」下の総入れ歯をインプラント2本で安定させた59歳男性の症例
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治療前

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治療後

患者背景と症例概要
名古屋で入れ歯にお悩みの方の中には、こんな経験をされている方が少なくありません。
- 下の入れ歯が合わず、噛むと痛い、喋ると動く
- 他院で何度も入れ歯を作り直したが、どうしても納得できるものができない
- 「もうどうしようもないのかな」と半ば諦めている
今回ご紹介するのは、まさにその状態で来院された患者様を、インプラント2本を支えにした入れ歯(インプラントオーバーデンチャー)で安定させた症例です。
10年間で4回の作り直し
患者様は59歳の男性。かれこれ10年ほど総入れ歯を使われてきました。上の入れ歯は問題ないのに、下の入れ歯だけがどうしても合わない。噛むと痛い、喋ると動く。この10年間で4回ほど入れ歯を作り直しましたが、どうしても納得できる入れ歯ができず、「もうどうしようもないのか」と当院を訪れられました。
なぜ「下の入れ歯だけ」合わないのか
これには解剖学的な理由があります。上の入れ歯は、正しく作れば口蓋(口の天井)を覆うことで圧力を受ける面積が広く、粘膜も下顎より分厚いため、顎堤の吸収があっても比較的安定します。実際この患者様も、来院時の上の入れ歯は機能的にも審美的にも全く問題ありませんでした。
問題は下顎です。House分類による分析の結果、顎堤の高度吸収により、通常の総義歯ではしっかり機能させることが困難な状態でした。つまり「作り方が悪かった」のではなく、「土台の骨が痩せすぎていて、普通の入れ歯では物理的に安定しない」状態だったのです。4回作り直しても解決しなかった理由は、ここにありました。
他院で作った入れ歯のやり直しについては、以下の記事もご参照ください。
症例まとめ
| 患者 | 59歳 男性 |
|---|---|
| 主訴 | 下の入れ歯が合わない(噛むと痛い・喋ると動く)。10年で4回作り直すも改善せず |
| 診断 | 下顎顎堤の高度吸収(House分類)。通常の総義歯では機能困難 |
| 治療方針 | 下顎前歯部にインプラント2本+ロケーター式オーバーデンチャー |
| 使用インプラント | ストローマン TLX 直径4.0mm×長さ10mm×2本 |
| 骨造成 | なし |
| 治療期間 | 約6ヶ月 |
| 費用 | 750,000円(自由診療) |
初診時の診断
現在の入れ歯の精査
まず現在お使いの入れ歯を精査しました。審美的には全く問題ありませんでしたが、辺縁の形態(入れ歯のフチの形)に問題があり、インプラントを入れる前にまず入れ歯そのものを作り直す必要があると判断しました。
House分類による顎堤評価
下顎の顎堤は高度に吸収しており、House分類でも通常の総義歯での安定獲得が困難なクラスでした。顎堤がここまで痩せている場合、どれだけ精密に入れ歯を作っても、粘膜の支持だけでは「動かない入れ歯」にすることは難しくなります。
CT所見
CTによる計測の結果、下顎前歯部にはインプラント埋入に十分な骨が残されており、骨造成なしで直径4.0mm・長さ10mmのインプラントを2本、安全に埋入できる条件が確認できました。
骨が足りない場合の対応は、以下の記事で解説しています。
治療計画と設計思想
検討した4つの治療選択肢
①個人トレーで筋圧形成を行い、入れ歯を精密に作り直す
外科処置なし・最も低費用ですが、顎堤の高度吸収がある本症例では、精密に作っても「動く」という主訴の根本解決が難しい選択肢でした。
②下顎前歯部にインプラント2本+オーバーデンチャー(本症例で採用)
入れ歯の「維持力(外れにくさ)」を2本のインプラントで獲得する方法です。
③インプラント4本+オーバーデンチャー
維持力に加えて、奥歯部分の「支持力(噛む力を受け止める力)」も同時に改善する方法です。
④下顎オールオン4(固定式)
取り外し不要の固定式です。上顎が総義歯であること、下顎であることから、オールオン6や8ではなく4本で十分という判断でした。
なぜ2本のインプラントを選んだか
患者様の主訴を丁寧に伺うと、「噛む機能」よりも「入れ歯がすぐ動いてしまうこと」がお悩みの中心でした。
ここで判断の拠り所となるのが、世界的な指針です。York consensus(ヨーク・コンセンサス)では、下顎の総入れ歯に対して、維持力を高めるために前歯部に2本のインプラントを入れることが推奨されています。下顎総義歯の第一選択として国際的な合意がある、標準的な治療法です。
費用面から③④は選択されず、「できるだけ費用を抑えつつ、今の悩みを解決したい」というご希望と、顎堤の高度吸収を考えるとインプラントなしでは希望を叶えることが難しいという判断が一致し、②に決定しました。
入れ歯とインプラントの比較は、以下の記事で整理しています。
設計の鉄則:「入れ歯が先、インプラントは後」
インプラントオーバーデンチャーで私が必ず守っている順序があります。それは、理想的な入れ歯を作るところから始めることです。
「とりあえず骨のあるところにインプラントを打って、後から入れ歯を作る」という順序で進めると、次のような問題が起こります。
- インプラントの位置が思ったより浅く、入れ歯が頻繁に壊れる
- インプラントが欲しい場所から外れ、舌の位置と干渉して治せない発音の問題が出る
だからこそ、まず患者様が受け入れられる理想的な入れ歯を作り、その入れ歯を基準にインプラントの位置を決める。この順序を崩してはいけません。
治療の流れ
- 第一段階:辺縁形態を改善した新しい下顎総義歯を製作
- 第二段階:その入れ歯を装着した状態でCBCTを撮影し、入れ歯のどの位置にインプラントが来るのが最適かを計画
- 第三段階:サージカルガイドを用いて2本を正確な位置に埋入
- 第四段階:3ヶ月の治癒期間
- 第五段階:ロケーターアバットメント(インプラントと入れ歯をつなぐ装置)を装着し、入れ歯側にハウジングを組み込んで完成
TLX(ティッシュレベル)を選んだ理由
インプラント体にはストローマン TLX(直径4.0mm×長さ10mm)を選択しました。ティッシュレベルインプラントは骨の中から歯ぐきを貫通する部分までが一体となった設計で、継ぎ目が歯ぐきの上方に位置するため清掃性に優れ、インプラント周囲炎のリスクを抑えやすいと考えています。長期の維持管理が前提のオーバーデンチャーに適した選択です。
ティッシュレベルインプラントの実例は、以下の症例をご覧ください。
写真では分からない部分にこそ、診断が要ります
歯ぐきの状態や噛み合わせは、実際に拝見してはじめて判断できます。初回無料相談(30分)で、今の状態をご説明します。
手術と治療経過
手術概要
| 埋入本数 | 2本(下顎前歯部) |
|---|---|
| インプラント体 | ストローマン TLX 4.0mm×10mm |
| 骨造成 | なし |
| 術式 | サージカルガイド使用 |
埋入と治癒期間
新しく製作した入れ歯から作ったサージカルガイドを用いて、計画通りの正確な位置に2本を埋入しました。その後3ヶ月の治癒期間を待ち、骨との結合を確認しました。
手術後の痛みの一般的な目安は、以下の記事で解説しています。
オーバーデンチャーの完成
治癒確認後、インプラントにロケーターアバットメントを装着し、入れ歯の内面にハウジング(受け側の部品)を組み込んで、インプラントオーバーデンチャーが完成しました。トータルの治療期間は約6ヶ月です。
術後評価
10年間・4回の作り直しでも解決しなかった「動く入れ歯」は、前歯部2本のインプラントによる維持力の獲得で安定しました。会話時・食事時の入れ歯の浮き上がりが抑えられ、取り外して清掃できる衛生面の利点はそのまま保たれています。
今の入れ歯を作り直すか、インプラントで支えるか迷っている方へ
「外れる」「痛い」「噛めない」のどれが一番つらいかを一言で送ってください。他院で治療中の方は、まずは治療を受けた医院にお伝えいただいたうえで、第三者の整理としてご利用ください。
LINEでは診断はできません。強い痛みや腫れがあるときは、お電話(052-265-8996)でご連絡ください。
長期管理と歯科医師の解説
定期メンテナンス
当院では3〜4ヶ月ごとの定期メンテナンスで、次の項目を確認しています。
- インプラント周囲組織のプロービング
- X線による周囲骨の確認
- 義歯の適合と咬合の再評価
- ロケーターインサート(入れ歯側のプラスチック部品)の摩耗確認・交換
長持ちさせるための管理の全体像は、以下の記事をご参照ください。
よくあるご質問
Q1. 何度作り直しても入れ歯が合わないのは、作り方が悪いからですか?
必ずしもそうではありません。本症例のように顎堤(土台の骨)が高度に痩せている場合、どれだけ精密に作っても粘膜の支持だけでは安定しないことがあります。まず原因の診断が必要です。
Q2. インプラントは2本で足りるのですか?
「外れにくくする」目的であれば、下顎前歯部の2本で大きな改善が期待できます。国際的な指針(York consensus)でも下顎総義歯への2本のインプラントが推奨されています。奥歯でしっかり噛む支持力まで求める場合は4本以上を検討します。
Q3. なぜ先に入れ歯を作り直すのですか?
インプラントの位置は「理想的な入れ歯」から逆算して決めるためです。順序を逆にすると、入れ歯の破損や発音障害など、後から治せない問題につながります。
Q4. 上の入れ歯はそのままで大丈夫ですか?
本症例では上の入れ歯は機能・審美ともに問題がなかったため、そのまま使用を継続しています。上下で条件は別々に評価します。
Q5. 費用はいくらかかりましたか?
本症例はインプラント2本を含めて750,000円(自由診療)です。骨造成が不要だったことも費用を抑えられた要因です。
歯科医師からのコメント
今回の症例で私が最も伝えたいのは、「入れ歯が合わない」には必ず理由がある、ということです。10年間で4回作り直しても解決しなかったのは、腕の問題ではなく、顎堤の高度吸収という土台の問題でした。原因が土台にあるなら、対策も土台に打つ。それが前歯部2本のインプラントです。
そして順序の話。オーバーデンチャーは「インプラントの手術」ではなく「入れ歯の治療」です。主役はあくまで入れ歯であり、インプラントはそれを支える脇役。だからこそ、理想の入れ歯を先に作り、そこから逆算してインプラントの位置を決める。この原則を守ることが、長期に安定する結果につながります。
治療のリスク・副作用・費用・期間
| 治療内容 | 下顎総義歯の新製+下顎前歯部インプラント2本(ストローマン TLX 4.0×10mm)+ロケーター式オーバーデンチャー |
|---|---|
| 治療期間 | 約6ヶ月 |
| 費用 | 750,000円(自由診療) |
主なリスク・副作用は次の通りです。
- 外科処置を伴い、術後に腫れや痛みが生じることがあります
- インプラントが骨と結合しない可能性があります
- インプラント周囲炎のリスクがあるため、定期的なメンテナンスが重要です
- ロケーターインサートは消耗品であり、定期的な交換が必要です
- 義歯の破損・調整、経年的な顎堤変化によるリライン(裏打ち)が必要になる場合があります
- 治療結果には個人差があります
名古屋でインプラント治療を検討されている方へ
インプラント治療では、骨の状態・噛み合わせ・補綴設計を総合的に診断することが重要です。当院のインプラント治療の考え方や治療の流れについては、以下のページで詳しく解説しています。
ご自身に近い症例をお探しの方は、以下の症例一覧もご覧ください。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
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