取れた被せ物を、もう一度そのまま使えるのはどんなときでしょうか

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取れた被せ物は再利用(再装着)できる?

「洗って付ける」で済む場面は、思われているより少ないのです

「取れたので持ってきました」

「取れたので持ってきました。これ、また付けられますか」。診療室でいちばん多いご質問かもしれません。答えは「条件がそろえば付けられます」。ただ、その条件は思われているより厳しめです。この記事では、戻せる場合と戻せない場合を分けてご説明します。判断は見た目ではつきませんので、何を確かめているのかまでお伝えします。

はじめに、いちばん大切なことをお伝えします。

被せ物が取れたとき、多くの方は「接着材がはがれただけ」と考えられます。ところが実際には、その下で何かが起きていたから取れたということが少なくありません。

詰め物や被せ物を作り直すことになる理由を調べた研究では、装置の下で新しくできたむし歯がいちばん多いという結果が出ています。報告によって幅はありますが、交換理由の2割から6割ほどを占めています。

もし下でむし歯が進んでいたとして、そのまま元に戻すとどうなるか。むし歯を閉じ込めることになります。神経を取った歯であれば痛みも出ませんから、次に気づくのは、また外れたときです。そのとき、むし歯はさらに広がっています。

だから、戻す前に中を確かめます。

身近なもので言い換えてみます。棚から落ちた額縁を、また同じ場所に掛け直すとします。フックが緩んだだけなら締め直せば済みますが、壁のほうが崩れているなら、掛け直しても落ちます。壁を見ずに掛け直すことはしません。歯も同じです。

もうひとつ、時間の話をしておきます。取れた被せ物を戻せるかどうかは、取れてから何日経ったかでも変わります。歯は固定されているように見えて、少しずつ動きます。隣の歯が寄ってくることも、噛み合う相手の歯が伸びてくることもあります。

数日以内なら、まだ隙間は保たれています。数週間、数か月と経つと、同じ被せ物では入らなくなります。ですから、取れたらできるだけ早くご連絡ください。この一点だけでも、選べる道が変わります。

取れる原因そのものについては、別の記事にまとめています(→ 詰め物がすぐ取れる7つの原因)。この記事で扱うのは、その先の「戻せるかどうか」です。

もうひとつ、「戻す」と「作り直す」のあいだにある選択肢もお伝えしておきます。装置の一部だけが欠けている場合、口の中で補修できることがあります。全部を作り直さずに、欠けた部分だけを埋める方法です。詰め物について補修と作り直しを比べた研究では、その後の経過に大きな差が出なかったという報告もあります。ただし、対象になった研究が少なく、確かさは高くないとも評価されています。

それでも、選択肢として知っておいていただく意味はあります。「取れた=作り直し」とは限らない、ということです。

戻せる条件と、戻せない条件

再装着の可否は、4つの点で決まります

再装着の可否は、4つの点を見て決めます。

下の歯

戻せる状態:むし歯がなく、削られた形が保たれている

戻せない・見直しが要る状態:むし歯が進んでいる。歯が欠けている。ひびがある

被せ物そのもの

戻せる状態:変形も欠けもなく、内側がきれいに掃除できる

戻せない・見直しが要る状態:ゆがみ、欠け、内側の傷みがある。外すときに切断した

ぴったり戻るか

戻せる状態:試しに載せると、カチッと決まって動かない

戻せない・見直しが要る状態:浮く、ぐらつく、隣の歯と当たらない

取れた理由

戻せる状態:接着材の劣化など、原因がはっきりしている

戻せない・見直しが要る状態:原因が分からない。何度も繰り返している

1番目と2番目は、目で見て、器具で触って確かめます。むし歯が残っていないかは、削って確かめることもあります。ここで問題が見つかれば、その時点で戻すという選択肢は消えます。

この4つのうち、3番目が意外な落とし穴です。

取れてから時間が経つと、隣の歯が少しずつ寄ってきたり、噛み合う相手の歯が伸びてきたりします。すると、元の被せ物が入る隙間がなくなります。歯は思っているより動きます。

ですから、取れたら早めにご相談ください。数日以内であれば、そのまま戻せる可能性が高くなります。数か月経つと、同じ被せ物では入らないことがあります。

4番目についても、ひとこと添えます。原因が分からないまま戻すのは、もっとも避けたいことです。同じ条件のまま戻せば、同じ理由でまた取れます。そして取れるたびに、外して掃除して形を整える工程で、歯はわずかずつ削られます。

とくに、同じ歯が何度も取れている場合は、戻すという選択肢を最初から外して考えます(→ 同じ歯ばかり取れるのはなぜ?)。

なお、歯科医院で意図的に外した被せ物を、そのまま再利用できるかというと、こちらはさらに難しくなります。しっかり接着された被せ物を壊さずに外すのは簡単ではなく、外すために切断することもあるためです。「外して、治療して、同じものを戻す」という進め方が現実的でないのは、この理由からです。

もうひとつ、被せ物そのものの傷みについて補足します。金属の被せ物は変形しにくく、外れても形が保たれていることが多いものです。一方、薄く作られた装置や、外すときに切れ目を入れたものは、戻せないことがあります。見た目には分かりにくいわずかなゆがみでも、戻すと合いません。

内側の汚れも判断に関わります。長く外れたままだった装置は、内側に汚れが入り込み、清掃しても十分に落ちないことがあります。接着は、くっつく面がきれいであることを前提にしていますので、ここが甘いと、また外れます。

そして、被せ物の縁の状態も見ます。歯ぐきと接する縁が変形していたり、もともと合っていなかったりすると、戻したところで、その隙間からまた細菌が入ります。取れる前から縁に段差があった歯では、戻すより作り直すほうが結果として長くもつことがあります。

ご自身でできることと、避けていただきたいこと

取れたときに、ご自身でしていただけること

取れたときに、ご自身でしていただけることがあります。

まず、取れたものを捨てないでください。そして、洗わずにお持ちください。

洗わないでほしい理由があります。内側に何がくっついているかが、大きな手がかりになるからです。

歯の色をしたかたまりがくっついていれば、歯の側が壊れて一緒に取れた可能性があります。接着材だけが残っていれば、接着の層ではがれたということです。内側が黒ずんでいたり、においがあったりすれば、下でむし歯が進んでいた可能性が高くなります。ゴシゴシ洗ってしまうと、この情報が消えます。

保管は、乾いた小さな容器で構いません。ティッシュに包むと、うっかり捨ててしまう方が多いので、避けたほうが安全です。

次に、避けていただきたいことです。

  • 市販の接着剤で、ご自分で付け直さないでください
  • 取れた側の歯を、舌や爪で何度も触らないでください
  • その歯で硬いものを噛まないでください
  • 取れたまま何週間も放置しないでください

もう少し詳しくご説明します。舌で何度も触らないでほしいのは、露出した面がもろくなっていることがあるためです。詰め物が入っていた部分は、力を受け止める形になっていません。そこに舌で圧をかけたり、硬いものを噛んだりすると、歯そのものが欠けることがあります。欠けてしまえば、元の装置は戻せません。

反対側で噛んでいただくのが安全です。食事のときだけ気をつければ十分で、特別な食事制限は要りません。

市販の接着剤については、しっかりした比較研究があるわけではありません。ただ、診療室で困ることが多い順に挙げると、下にむし歯があった場合に閉じ込めてしまうこと、固まるときの刺激が歯に負担をかけること、そしてあとから外すために歯を削ることになる場合があることの3つです。

数日待って受診されるほうが、結果として選べる道が広くなります。鋭い部分が舌に当たって痛む場合は、その旨をお伝えいただければ、優先してご案内します。

もうひとつ、ご自身で見ていただける点があります。取れた側の歯を鏡で見て、穴の底の色を確かめてください。白っぽいままなら、まだ大きな問題は起きていない可能性があります。黒ずんでいたり、茶色くなっていたりすれば、下でむし歯が進んでいた可能性が高くなります。

ただし、これは目安にすぎません。表面がきれいでも、その内側で進んでいることがあります。確かめるにはレントゲンと、実際に触って確認する作業が要ります。

受診の前に、次のことを整理していただけると診断が早く進みます。分かる範囲で構いません。

  • いつ取れましたか。何日経っていますか
  • 取れたものは手元にありますか
  • その歯は、これまでに何度取れていますか
  • その被せ物は、いつごろ入れましたか
  • 取れた側の歯に、しみる感じや痛みがありますか

もうひとつ、周りの方から聞いた話との食い違いについても触れておきます。「知り合いは付け直してもらえたのに、私はだめだと言われた」というご相談をいただくことがあります。

これは、判断が人によって違うのではなく、歯の状態が違うからです。下にむし歯がなく、形も保たれていて、載せて決まる歯なら戻せます。どれか一つでも欠ければ戻せません。同じ「取れた」でも、中身がまるで違うのです。

ですから、他院で「作り直しましょう」と言われた場合でも、その判断が間違っているとは限りません。ただ、なぜそう判断したのかを聞いておくと、納得の度合いが変わります。下にむし歯があったのか、形が足りなかったのか。理由を伺っておいていただければ、こちらで見るときの手がかりにもなります。

そして、戻せなかった場合でも、その装置には使い道があります。作り直すときの参考になるからです。前回どんな形で、どんな厚みで作られていたか。それが分かると、次に何を変えるべきかが見えてきます。ですから、戻せないとお伝えしたあとも、しばらくお預かりすることがあります。

名古屋の診療室で、戻すかどうかをどう決めているか

米国の補綴教育で学んだ、再利用の判断

私は米国Indiana大学大学院で補綴学を3年間学び、MSD(補綴学の修士)とCertificate in Prosthodonticsを取得しました。補綴というのは、被せ物や入れ歯で歯の形と働きを回復させる分野です。

作る側を専門にしてきた立場から申し上げると、再装着の判断でいちばん重いのは、下の歯の状態です。被せ物がどれだけきれいでも、支える側が変わっていれば戻せません。

私が確認している順番は、次の4つです。

  1. 取れた装置の内側:何がくっついているか、においはあるか。ここでかなり絞れます
  2. 下の歯:むし歯が残っていないか、削られた形が保たれているか
  3. 試しに載せる:接着せずに載せてみて、決まるかどうかを見ます
  4. 噛み合わせ:載せた状態で噛んでいただき、当たり方が変わっていないかを確かめます

この4つは、どれも数分で終わります。ですから、まず確かめさせてください、とお願いしています。持ってきていただいた装置を見ずに「作り直しましょう」と申し上げることはありません。逆に、見ずに「戻しましょう」と申し上げることもありません。

3番目は、実際にやってみないと分かりません。見た目には問題がなくても、載せると浮くことがあります。逆に、少し不安があっても、載せてみるとしっかり決まることもあります。

戻せると判断した場合は、内側を清掃してから接着します。このとき、前回と同じ接着材を使うとは限りません。取れた理由が接着材にありそうなら、種類を変えます。接着材の選び方については、別に整理しています(→ 接着(セメント)の種類と外れやすさ)。

そして、戻すと決めた場合でも、お伝えしていることがあります。これは応急ではなく、条件がそろったから戻しているということです。とりあえず付けておきましょう、という戻し方はしていません。とりあえずで戻すと、次に取れたときに、また同じ判断を繰り返すことになるからです。

戻したあとに、何を見ていくかもお伝えします。同じ装置を戻した場合、前回と同じ場所に負担がかかる可能性があります。ですから、数か月後にもう一度確認する予約をお取りします。そのときに緩みや隙間がなければ、間隔を延ばしていきます。戻して終わり、にはしません。

戻せないと判断した場合は、その理由を具体的にお伝えします。下にむし歯があった、形が保たれていなかった、載せても決まらなかった。どれなのかによって、次に作る装置の設計が変わります。

費用についても触れておきます。戻せる場合は、装置を作り直さないぶん費用は小さく済みます。ただ、安く済ませるために原因を確かめずに戻すことはしません。そのまま戻して数か月後にまた取れれば、結果として費用も時間も余計にかかります。当院では、戻す場合と作り直す場合の両方の見込みをお示ししたうえで、決めていただいています。

この判断を支えているのが、技工の工程まで自分の手で行ってきた経験です。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになりました。装置の内側を見れば、作った側の手順の痕跡が残っています。型取りの段階でどこまで記録できていたか、接着材がどう流れたか。ここから、次に何を変えるべきかを読み取れます。

噛み合わせが取れる原因になっている場合の考え方は、別にまとめています(→ 噛み合わせが原因で取れるメカニズム)。支えになる歯がどれだけ残っているかという話は(→ フェルールとは|歯を残せるかの分かれ目)をご覧ください。

そして、戻すか作り直すかを決めるときに、もうひとつ考えていただきたいことがあります。その被せ物を、この先どのくらい使うつもりかです。

入れてから何年も経っていて、縁に段差が出てきている装置なら、いま戻しても数年で同じことになります。その場合は、この機会に作り直すほうが、結果として回数も費用も抑えられます。逆に、入れて間もない装置で、原因もはっきりしているなら、戻して長く使える可能性があります。

この見通しを、レントゲンと口の中の状態からご説明します。今日をしのぐ判断か、この先を見た判断か。どちらを取るかは、ご本人に選んでいただいています。

まとめ|名古屋で取れた被せ物の再利用をお考えの方へ + よくあるご質問

まとめ|下の歯の状態で決まります

取れた被せ物の再利用ができるかどうかは、下の歯にむし歯がないか、削られた形が保たれているか、被せ物そのものが傷んでいないか、そして試しに載せて決まるかで決まります。

いちばん多い落とし穴は、下でむし歯が進んでいた場合です。そのまま戻すと、むし歯を閉じ込めることになります。ですから、戻す前に中を確かめます。

取れたものは、洗わずにお持ちください。内側を見れば、何が起きたかがかなり分かります。そして、数日以内にご相談ください。時間が経つと隣の歯が動いて、同じ被せ物が入らなくなります。

名古屋・伏見の当院では無料相談を行っており、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。検査と診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。Zoomでのご相談も承っています。完全予約制・完全個室で、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分です。

最後にひとつ。取れたことを「またか」と落ち込まれる必要はありません。取れるという形で表に出てきたおかげで、下で進んでいたむし歯に気づけることもあります。痛みが出るまで気づかないより、ずっと良い形です。原因を確かめて、次の設計に生かしましょう。

被せ物や詰め物が何度も取れることについて全体を見渡したい方は、ハブとなる記事から入っていただくと、ご自身の状況を位置づけやすくなります(→ 被せ物・詰め物が何度も取れる原因と治し方【完全ガイド】)。

あわせて読みたい

ご自身で整理していただけるのは、取れてから何日経ったか、装置が手元にあるか、これまでに何度取れているか、この3つです。とくに1つ目は、こちらでは調べようがありませんので、覚えている範囲でお伝えください。

名古屋・栄と伏見の周辺からお越しの方も多くいらっしゃいます。取れた装置を持って、まずは無料相談だけでも構いません。戻せるかどうかを確かめるところまでは、費用をいただかずにご説明します。

よくあるご質問

Q1. 取れたその日に持っていけば、その日に付けてもらえますか。

条件がそろえば可能です。下にむし歯がなく、形も保たれていて、載せて決まれば、清掃してその日に接着できます。ただ、下にむし歯が見つかった場合は、それを取り除く処置から始まります。その場合、当日には仕上がりません。まず確かめさせていただく、とお考えください。

Q2. 洗ってから持っていったほうが親切ではありませんか。

洗わないでください。内側に何がくっついているかが、原因を知る手がかりになります。歯の色をしたものがくっついていれば歯の側が壊れた可能性があり、黒ずみやにおいがあれば下でむし歯が進んでいた可能性が高くなります。ゴシゴシ洗うと、この情報が消えてしまいます。そのままお持ちいただくのがいちばん助かります。

Q3. しばらく忙しくて行けません。1か月くらい置いても大丈夫ですか。

おすすめしません。隣の歯が寄ってきたり、噛み合う相手の歯が伸びてきたりして、元の被せ物が入らなくなることがあります。そうなると作り直しになり、費用も期間も増えます。また、露出した面からむし歯が進むこともあります。数日以内が難しい場合でも、まずお電話でご相談ください。

Q4. 何度も取れているのですが、そのたびに付け直してもらってよいのでしょうか。

付け直しを重ねることは、おすすめしていません。同じ条件のまま戻せば、同じ理由でまた取れます。そして取れるたびに、外して掃除して形を整える工程で歯が少しずつ削られます。何度も取れている場合は、戻すのではなく、なぜその歯だけなのかを調べて設計を変える段階です。回数と、前回からの間隔を教えていただければ、どのくらい急ぐべきかをご説明できます。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。装置を外した際に、むし歯や歯の割れが見つかり、治療計画が変更になる可能性があります。自由診療の場合は保険適用外となります。

関連する内容は以下のページでご説明しています。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

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