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取れにくい被せ物の見分け方|適合・形・素材

見るべきは、材料の名前ではありません

被せ物を作るとき、材料の名前は説明されても、「どこを見れば良いものか分かるのか」は教わらないことが多いと思います。ただ、患者さんの側から確かめられる点は、いくつもあります。この記事では、取れにくい被せ物を見分けるための4つの視点を、専門の器具がなくても分かる形でご説明します。入れる前にも、入れたあとにも使える内容です。

はじめに、いちばん大切なことをお伝えします。

被せ物が長くもつかどうかを決めているのは、材料の名前ではありません。縁が合っているか、外れにくい形に土台が削られているか、力の受け方が適切か、そして掃除できるか。この4つです。

いまの材料は、どれもよくできています。5年の生存率で比べると、ガラス系のセラミック、陶材を盛ったジルコニア、金属に陶材を盛ったものは、いずれも97パーセントを超えています。差はごくわずかです。

ですから「どの材料がいちばん長持ちしますか」というご質問には、「材料より先に決まることがあります」とお答えしています。

身近なもので言い換えてみます。棚を壁に取り付けるとき、棚板の素材が良ければ落ちないかというと、そうではありません。落ちるかどうかを決めているのは、壁の下地と、ねじの長さと、荷物の載せ方です。棚板が高級でも、下地に届いていなければ落ちます。

被せ物も同じです。装置そのものの質より、それがどこにどう留まっているかが結果を分けます。

取れる原因の全体像は、別の記事にまとめています(→ 詰め物がすぐ取れる7つの原因)。この記事では、見分け方に絞ります。

4つの視点で見分ける

ひとつずつ、何を見るのかをご説明します。

第1|縁の段差

なぜここを見るのか:装置と歯の境目に段差があると、そこに汚れがたまり、下でむし歯が始まる

良い状態:舌でなぞっても引っかからない。糸ようじがほつれずに通る

気をつけたい状態:段差を感じる。糸ようじが毎回同じ場所で引っかかる

第2|土台の削り方

なぜここを見るのか:被せ物は、削った歯の側面に引っかかって留まっています。この面が短かったり、上に向かって広がりすぎていたりすると、外れやすくなります。どう削るかは、歯科医院の側で決まります

良い状態:被せ物の縁のすぐ下に、ご自身の歯が帯のように見える

気をつけたい状態:歯ぐきの際まで装置が来ていて、自分の歯が見えない

第3|噛み合わせ

なぜここを見るのか:横向きの力が集中すると、装置は少しずつ緩んでいく

良い状態:その歯だけ先に当たる感じがない。横に動かしても引っかからない

気をつけたい状態:噛むとその歯だけ当たる。朝起きたときに顎がだるい

第4|掃除できるか

なぜここを見るのか:道具が届かない場所は、汚れが残り続ける

良い状態:歯ブラシと糸ようじが、境目まで届く

気をつけたい状態:縁が歯ぐきの中に深く入っていて、道具が届かない

第5|材料と部位の相性

なぜここを見るのか:力の強い場所と、見た目が要る場所では、向いている材料が違う

良い状態:奥歯には強さのある材料、前歯には透け感のある材料が選ばれている

気をつけたい状態:部位に関わらず一律に決まっている

この表でとくにお伝えしたいのが、第1と第2です。

第1の縁の段差は、ご自身で確かめられます。舌先で、その歯と歯ぐきの境目をぐるりとなぞってみてください。引っかかりや段差を感じなければ、まずは良い状態です。

糸ようじも有効です。その歯だけ毎回同じ場所で引っかかる、通したあとに糸がほつれる。こうしたことがあれば、境目に段差か欠けがあります。汚れがたまる場所ができているということです。

ここでいう土台とは、被せ物をかぶせる前に削ったご自身の歯のことです。被せ物は、この土台の側面に引っかかることで留まっています。ですから、土台が円柱に近い形に削られていれば外れにくく、上に向かって末広がりに削られていれば外れやすくなります。円錐形の栓を思い浮かべてください。細長い栓は抜けにくく、平たく広がった栓は簡単に抜けます。

そして、この形を決めるのは歯科医院の側です。患者さんが選べる部分ではありません。だからこそ、外れにくい形に削ってくれるかどうかが、長くもつかどうかを分けます。削りすぎれば引っかかる面が減りますし、削り足りなければ材料の厚みが確保できません。この加減が、外から見えないところで結果を決めています。

第2の土台の削り方も、鏡である程度は見当がつきます。被せ物の縁のすぐ下に、ご自身の歯の色が帯のように見えていれば、支えになる部分が残っている可能性があります。歯ぐきの際まで装置が来ていて、ご自身の歯がまったく見えない場合は、帯が歯ぐきの中に隠れているか、もともと少ない可能性があります。

ただし、これは目安にすぎません。確かめるにはレントゲンが要ります。この帯については、別に詳しくまとめています(→ フェルールとは|歯を残せるかの分かれ目)。

第4の掃除できるかは、見落とされやすい視点です。装置と歯の境目を歯ぐきの中に深く入れると、外から見えなくなるので見た目はきれいになります。ただ、その位置には歯ブラシも糸ようじも届きません。汚れが残り、歯ぐきの炎症が続き、やがてそこからむし歯が進みます。

見た目と清掃性は、しばしば逆を向きます。どちらを取るかは部位によって変わりますので、そこを説明されているかどうかも、判断の材料になります。

第3の噛み合わせについても補足します。噛む力は、まっすぐ下に向かってかかるとは限りません。横に滑らせる動きが加わると、装置をはがす方向に働きます。とくに、その歯だけが早く当たっていると、力が集中します。

ご自身で気づける手がかりがあります。朝起きたときに顎がだるい。頬の内側に、噛み合わせの高さのところで白い線のような盛り上がりがある。舌の縁に、歯の形に沿った波打つ跡がついている。どれも、力がかかっている痕跡です。

第5の材料と部位の相性についても、ひとこと添えます。透明感を出した材料ほど、強さの面では不利になる傾向があります。ですから、前歯で透け感を取るか、奥歯で強さを取るかで、選び分けます。部位に関わらず一律に決まっているようであれば、その理由を聞いてみる価値があります。

入れる前と、入れたあとに確かめること

確かめる機会は、治療のなかで何度かあります。どの場面で何を見るのかを並べます。

削り終わったとき

ここで何が決まるか:外れにくい形になるかどうかと、材料に必要な厚みが決まる

確かめてよいこと:どこまで覆う設計になったのかを聞く

逃すとどうなるか:削られた形は戻せません。次の工程はこの形が前提になります

仮歯で過ごすあいだ

ここで何が決まるか:噛み心地と見た目の方向が決まる

確かめてよいこと:噛みにくさ、食べ物の挟まり方、見た目の希望を伝える

逃すとどうなるか:本番に同じ問題が持ち越されます

接着する直前

ここで何が決まるか:縁の合い方、隣との接触、当たり方が確定する

確かめてよいこと:鏡で見せてもらう。段差や当たりの強さを伝える

逃すとどうなるか:接着後に直すには、削る必要が出てきます

入れた当日から1週間

ここで何が決まるか:慣れるかどうかが分かれる

確かめてよいこと:当たりの強さ、糸ようじの通り具合を確かめる

逃すとどうなるか:その歯に力が集中したまま過ごすことになります

数年後の定期検診

ここで何が決まるか:縁の段差と、下の状態が分かる

確かめてよいこと:段差はないか、影はないかを聞く

逃すとどうなるか:境目から進むむし歯を、外れるまで見逃します

この表でいちばん重いのが、上から3番目です。接着する前と後では、直すためのコストがまったく違います。前なら外して調整するだけですが、後なら削ることになります。

ですから、仮に載せた状態で鏡を見せてもらったら、遠慮なくお伝えください。「なんとなく気になる」で構いません。言語化できていなくても、こちらで具体的に確かめられます。

見分ける機会は、2回あります。入れる前と、入れたあとです。

入れる前に、していただけることがあります。

まず、接着する前に仮に載せた状態で、鏡を見せてもらってください。多くの医院では、この工程があります。ここで気になる点があれば、接着する前に調整できます。いったん接着すると、外すには削る必要が出てきます。

そのときに確かめる点は3つです。噛んだときにその歯だけ当たる感じがしないか。舌でなぞって段差がないか。そして、見た目が想像と違わないか。遠慮なくお伝えください。

次に、聞いてよい質問もあります。「縁はどのあたりに置きますか」「掃除は届きますか」「この材料をこの歯に選んだ理由は何ですか」。どれも、この記事で見てきた4つの視点に対応しています。

入れたあとにも、確かめる機会があります。

入れて数日は、違和感が出ることがあります。ただ、1週間ほどで慣れるのが普通です。それを過ぎても噛みにくさが残る、その歯だけ当たる感じがする、といった場合はご連絡ください。早い段階の調整は、簡単に済みます。

糸ようじも、入れた直後に確かめてください。通るけれど少し抵抗がある、という程度が理想です。すかすか通るなら隣との接触が足りず、まったく通らないなら詰まりすぎです。どちらも、あとで食べ物が挟まる原因になります。

もうひとつ、時間が経ってからの確認もお伝えしておきます。入れた直後に問題がなくても、数年後に段差が出てくることがあります。接着材の層が少しずつ溶けたり、歯ぐきの位置が下がって縁が見えてきたりするからです。

ですから、入れて終わりにせず、定期的に同じ4点を確かめます。舌でなぞる、糸ようじを通す、当たり方を見る、掃除が届くかを確かめる。ご自宅でも、月に一度くらい意識していただけると、変化に早く気づけます。

受診の前に、次のことを整理していただけると診断が早く進みます。分かる範囲で構いません。

  • その装置は、いつごろ入れましたか
  • 舌でなぞって、段差を感じますか
  • 糸ようじが、その歯だけ引っかかりますか
  • 食べ物が挟まりやすくなりましたか
  • 噛んだときに、その歯だけ当たる感じがありますか

4番目には理由があります。以前は挟まらなかったのに最近挟まる、というのは、隣との接触が変わった合図です。装置が動いているか、隣の歯が動いているかのどちらかです。

もうひとつ、材料の選び方について補足します。透明感を出した材料ほど、強さの面では不利になる傾向があります。ですから、前歯で透け感を取るか、奥歯で強さを取るかで選び分けます。部位に関わらず一律に決まっているようであれば、その理由を聞いてみる価値があります。

そして、金額と長持ちは直接は結びつきません。5年の生存率で比べると、いまの材料はどれも高い水準にあり、差はごくわずかです。差が出るのは、この記事で見てきた4つの視点のほうです。高い材料を選べば安心、という考え方は、判断を単純にしてくれますが、実際とは違います。

名古屋の診療室で、何を確かめてから入れるか

私は米国Indiana大学大学院で補綴学を3年間学び、MSD(補綴学の修士)とCertificate in Prosthodonticsを取得しました。補綴というのは、まさにこの被せ物や入れ歯で歯の形と働きを回復させる分野です。

そこで繰り返し教わったのは、接着する前がすべてということでした。接着してしまえば、確かめる機会は失われます。ですから、載せた状態で確かめる工程に時間をかけます。

私が接着の前に確かめている順番は、次の4つです。

  1. :細い器具で境目を一周させ、段差や隙間がないかを確かめます
  2. 隣との接触:糸ようじを通し、抵抗の具合を見ます
  3. 噛み合わせ:紙を噛んでいただき、当たり方を確かめます。横に動かしたときの擦れも見ます
  4. ご本人の確認:鏡でご覧いただき、気になる点がないかを伺います

4番目を工程に入れているのが、私のやり方です。技術的に問題がなくても、ご本人が気になる点はあります。接着する前なら、変えられます。

そして、その前の段階、つまり歯を削る段階でも決まることがあります。外れにくい土台の形をどう作るかは、削るときに決まります。削りすぎれば引っかかる面が減りますし、削り足りなければ材料の厚みが確保できません。

実際の臨床がどれだけ規格から外れているかを示した調査もあります。歯科技工所に提出された奥歯の形成データを調べたところ、必要な厚みが確保できていなかったものが、部位によっては大半を占めていました。削りすぎも、削り足りないことも、日常的に起きているということです。

ですから私は、目分量で削りません。先に完成形をワックスで作り、そこからシリコンの型を起こして口の中に戻します。その型の上から、必要な厚みの分だけを削る。完成形が決まっていれば、削る量は完成形から逆算されます。

材料の選び方についても、ひとこと添えます。当院ではセラミックインレーが99,000円、セラミックアンレーが132,000円、e.maxクラウンとジルコニアクラウンが187,000円です。いずれも自費診療・税込です。金額は同じでも、選ぶ理由は部位によって変わります。前歯で透け感が要る場所か、奥歯で強さが要る場所か。ここを説明せずに材料だけをお示しすることはしていません。

そして、患者さんにお伝えしているのは、確かめる権利があるということです。載せた状態で鏡を見せてもらう、気になる点を言う、なぜその材料なのかを聞く。どれも遠慮の要ることではありません。むしろ、こちらとしては、接着する前に言っていただくほうが助かります。

接着したあとに「なんとなく違う」と言われると、外すために削ることになります。前に言っていただければ、削らずに直せます。

この判断を支えているのが、技工の工程まで自分の手で行ってきた経験です。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになりました。どこまで薄くできて、どこからは割れるのかを作る側の感覚として持っていると、削る量の下限を安全なところまで攻められます。

噛み合わせが取れる原因になっている場合の考え方は(→ 噛み合わせが原因で取れるメカニズム)に、境目から始まるむし歯については(→ 二次カリエス(被せ物の下の虫歯)とは)にまとめています。

もうひとつ、時間が経ってからの確認についても申し添えます。入れた直後に問題がなくても、数年後に段差が出てくることがあります。接着材の層が少しずつ溶けたり、歯ぐきの位置が下がって縁が見えてきたりするからです。入れて終わりにせず、同じ4点を定期的に確かめます。

ご自宅でも、月に一度くらい意識していただけると、変化に早く気づけます。舌でなぞる、糸ようじを通す。この2つだけで、かなり拾えます。

まとめ|名古屋で取れにくい被せ物をお考えの方へ + よくあるご質問

取れにくい被せ物かどうかを決めているのは、材料の名前ではありません。縁に段差がないか、外れにくい形に土台が削られているか、力の受け方が適切か、掃除できるか。この4つです。

そして、この4つのうち3つは、ご自身で確かめられます。舌でなぞって段差を感じないか、糸ようじが引っかからないか、その歯だけ当たる感じがないか。特別な器具は要りません。

確かめる機会は、接着する前がいちばん大きくなります。載せた状態で気になる点があれば、その場でお伝えください。接着してしまうと、外すには削る必要が出てきます。

名古屋・伏見の当院では無料相談を行っており、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。検査と診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。Zoomでのご相談も承っています。完全予約制・完全個室で、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分です。

被せ物や詰め物が何度も取れることについて全体を見渡したい方は、ハブとなる記事から入っていただくと、ご自身の状況を位置づけやすくなります(→ 被せ物・詰め物が何度も取れる原因と治し方【完全ガイド】)。

あわせて読みたい

そして、いちばんお伝えしたいのはここです。歯は削るたびに減り、減った分は戻りません。ですから、動くかどうかを決めるときは、いま動く理由があるのかを先に確かめます。理由がないうちは、削らないほうが選べる道は広いままです。

名古屋・栄と伏見の周辺からお越しの方も多くいらっしゃいます。まずは無料相談だけでも構いません。CTと口腔内スキャナーで現状を記録し、画像をお見せしながらご説明しますので、ご自身の目で確かめたうえで判断していただけます。

よくあるご質問

Q1. 見た目がきれいなら、良い被せ物ということですか。

見た目は判断材料のひとつですが、それだけでは決まりません。長くもつかどうかを決めているのは、縁が合っているか、外れにくい形に土台が削られているか、力の受け方が適切か、掃除できるかです。むしろ、見た目を優先して縁を歯ぐきの中に深く入れると、清掃性が犠牲になることがあります。見た目と清掃性は、しばしば逆を向きます。

Q2. 入れたあとに違和感がありますが、慣れるものでしょうか。

数日は違和感が出ることがあり、1週間ほどで慣れるのが普通です。それを過ぎても噛みにくさが残る、その歯だけ当たる感じがする、といった場合はご連絡ください。早い段階の調整は簡単に済みます。我慢して過ごすと、その歯に力が集中し続けることになります。

Q3. 高い材料を選べば、取れにくくなりますか。

材料の値段と取れにくさは、直接は結びつきません。5年の生存率で比べると、いまの材料はどれも97パーセントを超えていて、差はごくわずかです。差が出るのは、縁の合い方、外れにくい土台の形、力の受け方、清掃性です。ですから当院では、材料は最後に決めています。部位に合った材料を選ぶことには意味がありますが、高いから安心ということではありません。

Q4. いま入っている被せ物が良いものかどうか、確かめてもらえますか。

できます。縁を器具で一周させ、糸ようじを通し、噛み合わせを確かめます。どれも数分で終わります。レントゲンで下の状態も見ます。そのうえで、いま手を入れるべきか、経過をみてよいかをご説明します。何もなければ「何もありません」とお伝えします。作り直しを前提にした診査ではありません。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。装置を外した際に、むし歯や歯の割れが見つかり、治療計画が変更になる可能性があります。自由診療の場合は保険適用外となります。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

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