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酸蝕症(飲食習慣)で溶けた歯の再建

酸蝕症とは、酸で歯が溶けていく状態です

前歯の先が透けてきた、歯の裏側が薄くなった、奥歯の噛む面がへこんできた。虫歯ではないのに歯が減っていく状態を、酸蝕症といいます。日本の成人の4人に1人ほどに見られると報告されている、珍しくない状態です。この記事では、まず酸蝕症がどういうものかを虫歯との違いから順にご説明し、そのうえで溶けた歯をどう直すかを整理します。直すときに最初に決まるのは、材料ではなく範囲です。名古屋で酸蝕症の治療を考えている方に、判断の順序をお伝えします。

この記事でわかること

  • 酸蝕症が虫歯とどう違うのか、どこから現れるのかが分かります
  • 特定の飲み物を避ければ済む話ではない理由が分かります
  • 溶けた分を足すだけでは足りない場面があると分かります
  • 相談の前に、ご自身で整理しておけることが決まります

虫歯とは、溶け方がまるで違います

歯が溶けるという点では同じですが、酸蝕症と虫歯は別のものです。

虫歯は、歯に付いた細菌が糖を分解して出す酸で溶けます。細菌のいる場所、つまり歯と歯のあいだや溝の中から、穴として深く進みます。

酸蝕症は、飲食物などに含まれる酸が直接歯に触れて溶けます。細菌が関わらないため、酸が触れた面が広くなだらかに失われます。穴が開くのではなく、全体が薄くなっていく。この違いが、見つかりにくさにもつながっています。

もう一つの違いは、歯みがきで防げるかどうかです。虫歯は細菌の管理で減らせますが、酸蝕症は酸そのものが原因ですので、みがき方を変えても止まりません。しっかり手入れをしてきた方に起こることもあります。

  虫歯 酸蝕症
溶かすもの 歯に付いた細菌が出す酸 飲食物や胃液に含まれる酸
出る場所 歯と歯のあいだ、溝の中 酸が触れる面全体
進み方 1か所が穴として深くなる 広い面がなだらかに薄くなる
気づき方 穴や黒い点として見える 形の変化として、ゆっくり現れる

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます

どこから現れるかは、決まっています

酸蝕症は、酸が触れやすい場所から出ます。よく見られるのは次のような変化です。

前歯の先が透けてくる。エナメル質が薄くなると、内側の色が透けて先端が灰色がかって見えます。「歯の先だけ色が違う」「先が欠けやすくなった」と気づかれることが多い変化です。

前歯の裏側が薄くなる。ここは飲み物が流れる場所です。表からは見えないため、ご自身では気づきにくいところです。

胃液が原因の場合は、上の奥歯の内側から出ることが多くなります。

奥歯の噛む面が、丸くくぼむ。山と谷の形がなだらかになり、平たくなっていきます。

詰め物が島のように浮いて見える。金属やレジンは酸で溶けませんから、周りの歯だけが減ると、詰め物だけが高く残ります。これはかなり分かりやすいサインです。

しみるようになる、という変化もあります。エナメル質が薄くなって内側の象牙質が近づくと、冷たいものや風がしみやすくなります。ただ、しみない方も多くいらっしゃいますので、症状の有無だけでは判断できません。

どれも、鏡を見て「昨日と違う」と気づけるような変化ではありません。数年かけて少しずつ進むため、ご家族に言われて初めて気づく方や、別の治療で来られたときに見つかる方が多くなります。

酸は、外からも内からも来ます

酸の出どころは飲食物だけではありません。

外からのものとしては、柑橘類、酢、炭酸飲料、スポーツドリンク、果実酒などがあります。健康のために毎日続けているものが該当することもあります。

内からのものとしては、胃液があります。逆流のある方では酸蝕が多く見られるという報告があり、この場合は歯科だけで完結しません。原因の切り分けは検査のうえで行います。

なお、歯ぎしりや食いしばりによるすり減りは、原因も進み方も別のものです。酸で軟らかくなったところに力が加わると進みが早くなりますので、両方が重なっている方もいらっしゃいます。この記事では、飲食習慣に関わる溶け方を中心にご説明します。

特定の飲み物のせいではありません

pHの数字だけでは決まりません

「あの飲み物のせいですね」と言われて落ち込んだ、というお話をうかがうことがあります。ただ、実際の研究が示していることは、もう少し複雑です。

酸の強さを表すpHという数字があります。数字が小さいほど酸が強い、という指標です。ところが、酸に歯を浸した実験では、硬さの変わり方はpHの数字だけでは決まりませんでした。酸の種類によって違い、触れている時間によっても変わることが示されています。

つまり、「pHがいくつ以下の飲み物は危ない」という単純な線引きはできません。同じpHでも、酸の種類が違えば結果が違います。

インターネットで飲み物のpH一覧を見てこられる方がいらっしゃいますが、その表だけで自分の口に何が起きているかは分かりません。同じものを毎日飲んでいても、溶ける方と溶けない方がいます。

効いているのは、回数より「触れている時間」です

もう一つ大事なのは、量や回数より、口の中に酸がとどまっている時間だということです。

コップ1杯を一気に飲むのと、同じ量を1時間かけて少しずつ飲むのとでは、歯が酸に触れている時間がまるで違います。デスクにペットボトルを置いて、ちびちびと飲み続ける。この飲み方がいちばん時間が長くなります。

ですから相談のとき、私は「何を飲んでいますか」より先に「どういう飲み方をしていますか」をうかがいます。控えていただくためではなく、原因の見当をつけるためです。

寝る前に口にするかどうかも見ます。眠っているあいだは唾液が減りますので、そのまま休むと酸が長くとどまります。

運動中の水分補給も同じ見方をします。スポーツドリンクを少量ずつ長時間かけて飲むうえに、運動中は口が乾いて唾液が減ります。条件としては重なりやすい場面です。やめる必要があるという意味ではなく、飲み方を変える余地があるという意味です。

うがいをすればよいのかというご質問もいただきますが、これも単純ではありません。酸に触れた直後は歯の表面が軟らかくなっているため、その状態で強く磨くと減りが進むという指摘があります。何をどうするかは、状態を見てからご説明します。

溶ける側だけでなく、戻す側の条件もあります

歯の表面では、酸で溶ける動きと、唾液の成分で戻る動きが常に起きています。溶ける量が戻る量を上回った分だけ、少しずつ減っていきます。

唾液には、酸を薄めて流す働きと、酸を中和する働きと、溶けた成分を歯に戻す働きがあります。この力には個人差があり、口の中の場所によっても差があります。同じものを口にしていても、溶ける場所と溶けない場所が出るのはそのためです。

唾液が届きにくい場所、たとえば前歯の裏側や、口を開けて呼吸する方の前歯の表側は、戻す力が働きにくくなります。薬の影響や加齢で唾液が減っている方も、同じ条件で不利になります。

ですから、飲食物だけを見ても答えは出ません。溶ける側の条件と戻す側の条件、その両方を見ることになります。これは、ご本人の生活を責める話ではありません。

1本ずつ直すか、範囲を決めてまとめて設計するかという分かれ道は、この手前にあります。

一度に全部を治すかどうかの選択肢を並べて確認したい方は、別の記事があります。

溶けた分を足すだけでは足りない場面があります

減ると、上下の当たり方が変わります

酸蝕症で失われるのは、多くの場合、上下の歯が触れ合う面や前歯の裏側です。ここが減ると、上下の歯が当たる位置が少しずつ変わります。

変わり方は三つあります。下顎の位置がずれること。失われた分を補うように歯が伸びてくること。そして、噛み合わせの高さそのものが下がることです。

溶けた場所だけを見て材料を足すと、この三つが置き去りになります。形は戻っても、当たり方は戻りません。

高さを扱うかどうかで、範囲が決まります

一度に直す範囲は、噛み合わせの高さが下がっているかどうかで決まります。ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。

噛み合わせの高さ 一度に直す範囲 理由
保たれている 欠けている場所だけ。削る量を抑えた修復でおさまることがある 上下の関係が変わっていないため、その場所の形だけ戻せばよい
下がっている 上下の広い範囲。全体を覆う形が前提になる 一部の歯だけで高さを上げると、顎や筋肉に影響が出るとされている

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます

高さを上げる場合、前歯のところで5mmを超えない範囲であれば安全と考えてよいとされています。一方で、一部の歯だけで上げる方法は勧められていません。ですから、高さを扱うと決めた時点で範囲は広がります。逆に、高さを扱わなくてよいなら範囲は狭くて済みます。

範囲が広がれば、検査、設計、仮の状態での確認、最終の装着と段階が増えます。

「全部きれいにかぶせたほうがいいのでしょうか」と聞かれますが、答えはこの分かれ目次第です。

前歯の側だけが薄くなっている場合の考え方は、別の記事にまとめました。

奥歯の側で高さが下がっている場合は、扱う課題がさらに変わります。

直したあとも、原因は残ります

ここが酸蝕症の難しいところです。虫歯なら削って詰めれば原因の細菌ごと取り除けますが、酸に触れる状況は治療では消えません。

前歯を接着で再建した方を数年追った報告では、境目の変色や表面の摩耗が一定の割合で見られています。手直しを前提に考える必要はある、ということです。

ですから、直したあとにどう確認していくかまで含めて計画します。口腔内スキャナーで形を記録しておけば、次に来られたときに重ねて比べられます。

先に手をつけるべきことがある場合

酸蝕症の再建より、順番が先に来るものがあります。

虫歯と歯周病が同時に進んでいる場合は、そちらの処置が先です。

歯を支える骨が減っている場合も同じです。

古い被せ物が多く入っている口では、そちらの更新期と重なることがあります。

事故のあとに形が変わった場合は、原因も設計も別のものになります。

相談の前に、ご自身で整理しておけること

  • ☑ いつ頃から気になり始めたか。しみる感じ、歯の先が透ける、前歯が薄くなった。どれが先だったかが手がかりになります
  • ☑ 気になる場所を分けて書く。前歯の裏か、奥歯の噛む面か。場所によって設計の範囲が変わります
  • ☑ 口に何かが入っている時間。回数や量ではなく、触れている時間の合計です。控えるための質問ではありません
  • ☑ 胃の調子や逆流の心当たり。酸は体の内側から来ることもあり、原因の切り分けに必要です
  • ☑ 噛みにくさがあるか。噛み合わせの高さを扱うかどうかで、範囲が大きく変わります

私が溶けた歯の再建で、最初に確かめていること

溶けた本数ではなく、当たっている場所から見ます

初診で拝見するとき、私が最初に見るのは、上下の歯がどこで当たっているかです。溶けた歯を数えるより先に、この確認をします。

さきほど挙げた三つの変化、つまり下顎の位置のずれ、歯が伸びてくる変化、高さの低下は、どれも「溶けた場所」を見ているだけでは分かりません。上下の関係として見て、初めて判断できます。

米国インディアナ大学大学院の補綴科で3年間学んだとき、治療計画の授業で繰り返し扱われたのは、個々の歯の治し方ではなく、何をどの順序で決めるかでした。溶けた歯の再建でも、最初に決めるのは材料ではありません。

具体的には、紙を噛んでいただいて当たる場所を記録し、口腔内スキャナーで上下の形を取り込み、模型の上で顎を動かしたときにどこが先に当たるかを見ます。ここまで確かめてから、範囲の話に入ります。

厚みを、作る側の目で見ています

私は通常であれば歯科技工士に委ねられる製作の工程まで自分の手で行ってきました。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになります。この経験は、溶けた歯の再建でも効いてきます。

歯が溶けているということは、材料を置くための厚みが減っているということです。エナメル質が薄くなっているところに厚みのある材料を置こうとすれば、健全な部分まで削ることになります。逆に、高さを上げて空間を作れば、削らずに厚みを確保できる場合があります。

どちらを選ぶかで、その後の削る量がまったく変わります。この見極めを後回しにすると、あとから削る量が増えます。

作る側の目で見るというのは、この判断を最初にできるということです。材料を決めてから厚みが足りないと分かると、その時点で削るしかなくなります。厚みから逆算して材料を決めれば、その事態を避けられます。

神経を取った歯が混ざっている場合は、支えとして使えるかどうかの判断が別に要ります。

高さを扱うなら、戻せる方法で先に試します

噛み合わせの高さを上げる判断は、慎重に扱っています。

重度の酸蝕症で高さが下がった方に、歯を削らずに装着できる装置と仮の被せ物で経過を見てから、最終の被せ物に進んだ報告があります。元に戻せる方法で顎の位置を確かめたことが、良好な結果につながったという考察でした。

1例の報告ですので、標準的な手順として確立しているとは言えません。それでも考え方には賛同できます。削ってしまえば戻せません。戻せるうちに確かめる工程を挟むほうが、患者さんにとって安全です。

実際の進め方としては、まず取り外せる装置か仮の被せ物でその高さにして、数週間過ごしていただきます。顎が疲れないか、噛みにくくないか、発音に支障がないかを確かめてから、最終の形に移ります。

見た目の希望についても、言葉だけでは合いません。実際の形を入れて、鏡で見て、日常の中で過ごしていただいてから直します。

溶けた場所は結果であって、原因ではありません

長く経過を追ってきて感じるのは、壊れた場所は結果であって、原因は別のところにあることが多いということです。酸蝕症の場合、原因は酸に触れている時間と、それを戻す側の条件、そして力のかかり方の組み合わせです。

前歯だけを直しても、奥歯の側で高さが下がっていれば、直した前歯に力が集まります。逆に、奥歯の側を整えれば前歯の負担が減ることもあります。だから、範囲を決める作業に時間をかけます。

診断に時間をいただくのは、そのためです。

まとめ|名古屋で酸蝕症の治療を考えるとき

酸蝕症は、飲食物や胃液の酸で歯が広く薄くなっていく状態です。虫歯のように穴が開くのではなく、形がゆっくり変わるため、気づいたときには進んでいることがあります。特定の飲み物のせいだと決めつけられる話ではなく、酸に触れている時間と、それを戻す側の条件の組み合わせで決まります。

直すときに最初に決めるのは、材料ではありません。噛み合わせの高さが下がっているかどうかです。保たれていれば範囲を絞れますし、下がっていれば上下の広い範囲を扱うことになります。この分かれ目が、期間にも負担にも直結します。

そして、直したあとも原因は残ります。どう確認していくかまでを含めて計画を立てておくと、進んでいるのか止まっているのかを形で見られるようになります。

ご自身の口がどのパターンかを整理したい方は、状態別の設計をまとめたガイドから読み始めていただくと、話の位置関係が分かりやすいと思います。

名古屋で酸蝕症の治療を検討されている方は、まず無料相談で構いません。

よくあるご質問

Q1. 好きな飲み物のせいだと言われました。責められそうで相談しづらいのですが。

責めることはありません。酸蝕症は、飲食物の酸だけで決まるものではなく、唾液の働きや力のかかり方も関わります。何をやめるかより、どこがどれだけ減っていて、この先どう守るかを決めるほうが実際的です。飲み方をうかがうのは、原因の見当をつけるためであって、生活を評価するためではありません。当院のカウンセリングルームは完全個室です。

Q2. 酸蝕症は放っておくと、どんどん進んでしまいますか。

酸に触れる状況が続いていれば進みます。ただし進む速さには個人差があり、必ず短期間で悪化するとは限りません。症状がなく形の変化も限られている場合は、すぐに削らず、予防と経過観察を選ぶこともあります。口腔内スキャナーで形を記録しておけば、進んでいるのか止まっているのかを次回に重ねて確認できます。まず記録を取って様子を見る、という選択もあるということです。

Q3. レジンとセラミック、どちらがよいのでしょうか。

どの材料が一番かという問いには、まだ答えが出ていません。溶けた歯やすり減った歯の治療について複数の材料を比べた研究をまとめたものがありますが、最も成績のよい方法が他より優れているという根拠は示されていません。ですから材料名から決めるのではなく、どこにどれだけの力がかかっているか、厚みをどれだけ確保できるかから決めます。削る量を抑えたい場合はレジン系が候補になりますし、力が強くかかる場所では別の材料を選びます。ご希望があればうかがったうえで、その材料が今の厚みで成り立つかをお答えします。

Q4. 全部かぶせないと直らないと言われました。本当でしょうか。

噛み合わせの高さが下がっているかどうかで変わります。高さが保たれていて欠けが限られた場所なら、削る量を抑えた修復でおさまることがあります。高さを上げる判断をする場合は、一部の歯だけで上げると顎や筋肉に影響が出るとされているため、全体を覆う形が前提になります。どちらに当たるかは検査で分かりますので、範囲の根拠をお聞きになってよいと思います。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。無料相談は無料、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。当院は名古屋市中区栄、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分にあります。完全予約制で、Zoomでのご相談にも対応しています。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン

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