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いびき・睡眠時無呼吸と歯の治療|歯科でできること、できないこと
診断は歯科ではできません。まず、ここから
「いびきがひどいと言われます」「寝ている間に息が止まっているらしいです」。全顎治療のご相談の中で、ときどき出てくるお話です。
まず、はっきりさせておきたいことがあります。睡眠時無呼吸かどうかを判断するのは、歯科ではありません。睡眠の検査を受けて、医科で診断されるものです。歯科医院で「無呼吸ですね」と診断することはできません。
医学的には、口と鼻の気流が10秒以上止まることを1回の無呼吸と数え、これが1時間あたり平均5回以上あると、診断の対象になります。ご自身では気づけないため、ご家族の指摘で分かることがほとんどです。
そのうえで、歯科が関わる部分があります。下あごを少し前に保つ装置(口腔内装置)を作ることです。医科で診断を受けた方に対して、治療の選択肢の一つとして使われます。
そして、全顎治療を考えている方には、もう一つ大事なことがあります。この装置は、歯で支えます。支えになる歯が足りないと使えませんし、噛み合わせが変われば作り直しになります。順番を間違えると、二度手間になります。
睡眠時無呼吸とは|種類・検査・重症度

装置の話に入る前に、基本を整理しておきます。ここが分かると、なぜ医科が先なのかも見えてきます。
①3つの型があります
閉塞性:最も多い型です。眠っている間にのどの奥の筋肉がゆるみ、空気の通り道が狭くなったり、ふさがったりします。歯科の装置が関わるのは、主にこの型です
中枢性:呼吸をしようとする指令そのものが一時的に止まるタイプです。心不全や脳卒中の既往、一部の薬などが関わることが知られています
混合型:この2つが混ざったものです。型によって治療の考え方が変わるため、検査で見分ける必要があります
②検査には2種類あります
終夜睡眠検査(PSG):脳波、心電図、気流、呼吸の努力、血液中の酸素、体の向きなどを一晩かけて記録します。診断の基準となる検査です
自宅でできる簡易検査:気流と血液中の酸素を記録します。費用は数分の一で済みますが、うまく記録できないことがあり、あらためて検査が必要になる場合もあります
どちらを受けるか:医科の判断です。症状の程度や、他の病気の有無で決まります
③重症度は、回数で決まります
AHIという指標:1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数です
目安:5回以上で軽症、15回以上で中等症、30回以上で重症とされます
意味すること:数字が出て初めて、どの治療が向くかを検討できます。いびきの音の大きさでは決まりません
④放置したときのこと
指摘されていること:高血圧、心臓の病気、脳卒中、糖尿病、気分の落ち込みとの関連が報告されています
年代による違い:お子さんでは学習や発達への影響、高齢の方では筋肉量や体の機能の低下との関連も指摘されています
お伝えしたいこと:歯科の立場から詳しく述べる領域ではありませんが、「いびきくらい」と考えないほうがよい、ということはお伝えしておきます
治療の選択肢と、歯科の装置が向く場合

CPAP|最も効果が高い方法です
鼻から空気を送り込んで、気道を広げたまま保つ装置です。1980年代から使われており、無呼吸の回数、血液中の酸素の低下、いずれを見ても、最も改善する方法とされています。中等症から重症の方には、まずこれが検討されます。
ただし、課題があります。続けられるかどうかです。研究では、1ヶ月の時点で使い続けられている方が約半数、半年の時点では4割程度という報告があります。効果が高くても、使わなければ意味がありません。
口腔内装置(MAS)|歯科が作るのは、これです
マウスピースのような形で、下あごを少し前に保つことで、のどの空間を広げる装置です。CPAPが合わない方、続けられない方、あるいはご本人の希望で選ばれます。
効果はCPAPほどではありません。ただし、持ち運べて、音がせず、続けやすいという利点があります。研究では、約7割の方に何らかの効果があり、そのうち3分の1では無呼吸がほぼ解消したと報告されています。
一方で、効き方の個人差が大きいのが特徴です。重症でもよく効く方がいる一方、ほとんど変わらない方もいます。だから、装置を作って調整したあとに、もう一度睡眠検査を受けて効果を確かめることがすすめられています。作って終わりではありません。
その他の方法
体位療法。およそ半数の方は、仰向けのときだけ、あるいは仰向けで強く症状が出ます。横向きを保つ工夫(背中に物を入れる、振動で知らせる装置など)が有効なことがあります。他の方法と組み合わせられます。
減量と運動。体重を減らすと数値は改善します。ただし、正常値まで戻る方は一部です。運動については、CPAPに次ぐ効果があったという報告もあります。
手術。のどの奥の組織を広げる、扁桃を取る、鼻の通りを改善する、あごの骨を前に出すといった方法があります。CPAPほどの効果はなく、他の方法が合わない方で、形の問題がはっきりしている場合に検討されます。
いびきだけの場合
無呼吸を伴わない、いびきだけの場合もあります。この場合も、治療を希望される方には口腔内装置が選択肢になるとされています。ただし、まず検査で無呼吸の有無を確かめておくほうが安全です。
口腔内装置には歯が必要です|全顎治療との関係と、当院でしていること
支えになる歯が、各あご6〜8本は必要です
ここが、全顎治療を考えている方にとって最も重要な点です。装置は上下の歯にはめて、下あごを前に保ちます。支える歯が足りなければ、装置は固定できません。
目安として、上下それぞれに6〜8本程度の安定した歯が必要とされています。歯を多く失っている方、動いている歯が多い方では、そのままでは使えないことがあります。
逆に言えば、全顎治療で歯を安定させることが、装置を使えるようにすることにつながる場合があります。「歯を治す」ことと「無呼吸に対応する」ことが、ここでつながります。
強い歯ぎしりがあると、使いにくくなります
強い歯ぎしりは、装置を使ううえで不利にはたらきます。寝ている間に横方向へ強く動かすため、装置が外れたり、壊れたりしやすくなります。歯ぎしり用の装置とは目的も形も違うため、どちらを優先するか、あるいは両立できる形にするかを決める必要があります。
顎関節に痛みがある場合は、使えません
すでに顎関節に痛みが続いている場合、下あごを前に保つ装置は適しません。また、問題のなかった方でも、使い始めてから顎に違和感や痛みが出ることがあります。報告では、3割前後の方に何らかの症状が出るとされています。
だから、前に出す量は少しずつ調整します。週に2回、0.5ミリずつといった進め方が推奨されています。痛みが出たら、そこで止めて数ミリ戻します。急いで前に出すほど効くわけではありません。
また、軽症から中等症の方では、最初から最大まで前に出すのではなく、5割程度の前進から始めるほうがよいという研究もあります。
噛み合わせが変わることがあります
長く使っていると、噛み合わせがわずかに変わることがあります。ガイドラインでも、歯科医師が定期的に確認して、歯や噛み合わせへの影響を早く見つけることがすすめられています。装置を作った歯科医院に、通い続ける必要があるということです。
全顎治療をすると、装置は作り直しになります
装置は、今の歯の形に合わせて作られています。被せ物が新しくなれば、合わなくなります。治療の直前に装置を作ってしまい、数ヶ月後に作り直しになる。これは避けたいところです。
順番を整理すると、①気になる症状がある → ②医科で検査 → ③診断と方針 → ④全顎治療の予定があれば、装置を作る時期を調整 → ⑤治療後の歯に合わせて装置を作る。この形が無駄になりません。
当院でしていること|名古屋の臨床から
診断はしません。検査をおすすめします
お話を伺って可能性が考えられる場合は、医科の受診をおすすめします。歯科の範囲で「無呼吸です」と判断することはしません。
既製品ではなく、その方に合わせて作ります
市販の簡易的なマウスピースもありますが、ガイドラインでは歯科医師が個別に作った装置を使うことがすすめられています。歯を支えにする以上、合っていないものは歯にも顎にも負担になります。
前に出す量は、少しずつ調整します
一度に大きく前に出すことはしません。顎の様子を見ながら、少しずつ進めます。痛みが出たら止めて戻します。
作ったあとの効果確認と、噛み合わせの確認をします
装置が効いているかどうかは、あらためて睡眠検査を受けていただくのが確実です。そのご案内をします。また、長く使うことによる噛み合わせの変化がないかを、定期的に確認します。
全顎治療の予定があれば、時期を調整します
装置を先に作るか、治療が終わってから作るか。二度手間にならない順番をご相談します。
名古屋・伏見駅から徒歩2分の当院は完全予約制・半個室で、無料相談とZoom相談をご用意しています。治療を受けることを前提にしないセカンドオピニオン外来(5,500円・税込)もあります。
まとめ|検査が先、装置はそのあとです
睡眠時無呼吸かどうかを判断するのは、歯科ではありません。検査と診断は医科、装置を作るのは歯科という役割分担です。
治療の中心はCPAPですが、続けられないという課題があります。口腔内装置は効果ではCPAPに及ばないものの、続けやすさで補える方法です。約7割の方に効果があり、そのうち3分の1では無呼吸がほぼ解消したという報告があります。
ただし、この装置は歯で支えます。各あご6〜8本の安定した歯が必要で、強い歯ぎしりや顎関節の痛みがあると使いにくくなります。そして、全顎治療で噛み合わせが変われば、装置は作り直しです。
だから、順番が大事になります。気になる症状があるなら、まず検査。そこから先の道筋は、結果を見てから決められます。
よくあるご質問
Q. 歯科でマウスピースを作れば、いびきは治りますか。
A. 軽くなる方はいらっしゃいますが、全員ではありません。効き方の個人差が大きいのが、この装置の特徴です。作って調整したあとに、あらためて睡眠検査で効果を確かめるのが確実です。
Q. 保険で作れますか。
A. 医科で診断を受け、紹介を経ている場合は保険適用となることがあります。順番が決まっているため、先に医科を受診してください。
Q. 市販のいびき用マウスピースではだめですか。
A. ガイドラインでは、歯科医師が個別に作った装置を使うことがすすめられています。歯を支えにする装置なので、合っていないものは歯や顎に負担をかけます。
Q. 歯ぎしり用のマウスピースと同じものですか。
A. 違います。歯ぎしり用は歯を守るためのもの、無呼吸用は下あごを前に保つためのものです。目的も形も異なり、両方が必要な場合は設計を考える必要があります。
Q. 歯が少ないのですが、装置は作れますか。
A. 支えになる歯が各あご6〜8本程度必要とされています。足りない場合、まず歯を安定させることが先になります。全顎治療がその役割を果たすこともあります。
Q. 装置を使うと、噛み合わせが変わりますか。
A. 長期間使うと、わずかに変わることがあります。定期的な確認と調整が必要です。作った歯科医院に通い続けることが前提の治療とお考えください。
Q. CPAPを使っていますが、続きません。
A. よくあることです。研究でも、半年後に使い続けている方は4割程度と報告されています。続かない場合の選択肢として口腔内装置があります。まず主治医にご相談ください。
Q. 全顎治療をすれば、無呼吸は改善しますか。
A. 改善を目的に全顎治療をおすすめすることはしません。ただし、装置を使えるようにするために歯を安定させる、という意味では関係します。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
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