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詰め物がすぐ取れる7つの原因

「取れる」は、めずらしいことではありません

「またこの歯が取れました」。診療室でよく聞く言葉です。取れるたびに付け直して、また取れて。そのくり返しに疲れてしまう方もいらっしゃいます。じつは、取れる原因は接着材だけではありません。歯の形、治療のときの環境、噛み合わせ、そして下で静かに進んでいるむし歯。この記事では、原因を7つに分けてご説明します。どれが効いているのかが分かると、対処が変わります。

まず、どのくらいの頻度で起きているのかをお伝えします。

1,000本以上の被せ物を平均11年ほど追いかけた調査では、途中で取れたことのある歯が1割ほどありました。そして、作り直しに至った理由のうち、いちばん多かったのが「取れたこと」です。トラブルとしては、もっとも起こりやすいものだと言えます。

ですから、取れたこと自体を「自分の使い方が悪かった」と受け取っていただく必要はありません。起こりうる範囲の出来事です。

ただし、短い期間で何度も取れる場合は話が別です。そこには、まだ解決されていない理由が残っています。

ここでひとつ、知っておいていただきたいことがあります。取れたときに何が起きているかは、外からは分かりません。接着材が劣化しただけのこともあれば、その下でむし歯が広がっていて、支えを失って外れたこともあります。見た目には同じ「取れた」でも、中身がまるで違います。

身近なもので言い換えてみます。棚に貼った鏡が落ちてきたとします。両面テープが弱かったのか、それとも壁のほうが湿気でもろくなっていたのか。テープを貼り替えるだけで済む場合と、壁から直さなければならない場合があります。同じ「落ちた」でも、対処がまるで違います。歯も同じです。

だから、付け直す前に中を確かめます。そのまま戻すと、むし歯を閉じ込めることになるからです。

もうひとつ、時間の話をしておきます。取れるまでの期間が、原因を推し量る手がかりになります。

入れて数週間から数か月で取れた場合は、接着のときの環境か、歯の形が支えになっていない可能性が高くなります。くっつく力そのものが足りなかった、ということです。

一方、何年か使ってから取れた場合は、その間に何かが変わったと考えます。下でむし歯が進んだ、噛み合わせが変わった、接着材が少しずつ溶けた。時間の経過が関わる原因です。

ですから受診のときに「いつ入れて、いつ取れたか」を教えていただけると、絞り込みが早くなります。正確な日付でなくて構いません。数か月なのか、数年なのかが分かれば十分です。

同じ歯ばかりが取れるという方は、別の記事もご覧ください(→ 同じ歯ばかり取れるのはなぜ?)。この記事では、取れる原因そのものを整理します。

取れる原因を、7つに分けて見ていきます

原因はいくつかの層に分かれます。そして、それぞれ対処が違います。

下でむし歯が進んでいた

何が起きているか:支えている歯が溶けて、詰め物が浮いてくる。取れて初めて気づく

どう対処するか:むし歯を取り除いてから、あらためて設計する

歯の形が支えになっていない

何が起きているか:削った歯の側面が広がりすぎていると、抜ける方向に力が働く

どう対処するか:形を整え直す。高さが足りなければ別の方法を検討する

接着のときに唾液が入った

何が起きているか:くっつく面に唾液や血液が触れると、接着の力が落ちる

どう対処するか:ゴムのシートで隔離した状態で接着する

接着材の選び方が合っていない

何が起きているか:材料と歯の組み合わせによって、向き不向きがある

どう対処するか:装置の種類と残っている歯に合わせて選び直す

噛み合わせが当たりすぎている

何が起きているか:特定の場所に力が集中し、はがす方向に働く

どう対処するか:当たりを調整する。夜間の食いしばりも確認する

装置そのものの厚みが足りない

何が起きているか:薄い部分がたわみ、境目に隙間ができる

どう対処するか:厚みを確保できる設計に変える

抱えている面積が小さい

何が起きているか:接している面が少ないと、その分だけ外れやすい

どう対処するか:覆う範囲を見直す。ただし削る量とのバランスで考える

この表を見ていただくと分かるとおり、原因は接着材だけではありません。むしろ、接着材そのものが理由であることは、それほど多くないのです。歯の側、環境、力。この3方向から起きています。

そして、多くの場合は一つではなく、いくつかが重なっています。ですから「これさえ直せば大丈夫」という一点はありません。逆に言えば、いくつかを少しずつ改善するだけで、次までの年数はずいぶん延びます。

この7つのうち、いちばん多いのが1番目です。

詰め物や被せ物を作り直すことになる理由を調べた研究では、二次的なむし歯、つまり装置の下で新しくできたむし歯が最多でした。報告によって幅はありますが、交換理由の2割から6割ほどを占めています。

詰め物が取れたとき、多くの方は「接着が弱かったのだろう」と考えられます。ところが実際には、支えていた歯が溶けていた、ということが少なくありません。

2番目についても、少しご説明します。被せ物は、削った歯の側面を抱えることで留まっています。この側面が、上に向かって広がりすぎていると、抜けやすくなります。円錐形の栓を思い浮かべてください。細長い栓は抜けにくく、平たく広がった栓は簡単に抜けます。それと同じです。

広がり具合には、望ましいとされる範囲があります。ただ、実際の臨床を調べた研究では、その範囲を超えているものが多く見つかっています。これは腕の問題というより、口の中で削るという作業の難しさによるものです。

3番目は、治療のときの環境です。接着は、くっつく面が乾いていることを前提にしています。唾液や血液が触れると、接着の力が落ちることが分かっています。ですから、治療する歯だけをゴムのシートで囲って隔離した状態で接着します。

5番目の噛み合わせについても補足します。噛む力は、まっすぐ下に向かってかかるとは限りません。横に滑らせる動きが加わると、装置をはがす方向に働きます。とくに、その歯だけが早く当たっていると、力が集中します。取れやすい歯では、まずここを確かめます。歯を削らずに調べられるからです。

夜間の食いしばりも同じ方向に働きます。1,000本以上を追いかけた調査でも、食いしばりのある方では被せ物がうまくいかない割合が高いという結果が出ています。ただ、食いしばりの判定は自己申告に頼る部分が大きいため、この数字は控えめに読む必要があります。

削る量そのものの考え方は、別にまとめています(→ セラミックのやり直しで歯はどれだけ削る?)。

6番目と7番目についても、ひとこと添えておきます。装置には、材料ごとに必要な厚みがあります。薄く作れば削る量は減りますが、その分たわみやすくなり、境目に隙間ができます。逆に厚みを確保しようとすれば、削る量が増えます。ここは、どちらを取るかという設計の判断になります。

抱えている面積も同じです。覆う範囲を広げれば外れにくくなりますが、削る量は増えます。狭くすれば歯は残りますが、外れやすくなります。ですから当院では、その歯にどれだけ力がかかるかを見たうえで、必要な範囲を決めています。一律に「広く覆えば安心」とは考えていません。

ご自身で見分ける手がかりと、やってはいけないこと

どの原因が効いているかは、いくつかの手がかりから推し量れます。

取れたものを、捨てずに持ってきてください。これがいちばん大切です。取れた装置の内側を見ると、何が起きたかがかなり分かります。

内側に歯の色をしたものがくっついていれば、歯の側が壊れて一緒に取れた可能性があります。接着材だけが残っていれば、接着の層ではがれたということです。内側が黒ずんでいたり、においがあったりすれば、下でむし歯が進んでいた可能性が高くなります。

この見分けは、装置がなければできません。ですから、洗わずに、そのままお持ちください。

もし装置をなくしてしまっていても、受診をためらう必要はありません。歯の側と、レントゲンからも情報は取れます。ただ、あるに越したことはない、という程度にお考えください。

次に、外れた側の歯も見てみてください。

  • 穴の底が黒ずんでいますか。白っぽいままですか
  • 舌でさわって、ざらつきや引っかかりがありますか
  • 冷たいものがしみますか
  • その歯は、これまでに何度取れていますか
  • 朝起きたときに顎がだるいことはありますか

最後の項目には理由があります。夜間の食いしばりは、装置をはがす方向に力を加え続けます。研究でも、食いしばりのある方では被せ物がうまくいかない割合が高いことが示されています。

そして、やってはいけないことをお伝えします。市販の接着剤で、ご自分で付け直さないでください。

理由は3つあります。ひとつは、下にむし歯があった場合、それを閉じ込めてしまうこと。ふたつめは、固まるときの刺激が歯に負担をかけること。みっつめは、あとから外すのが難しくなり、外すために歯を削ることになる場合があることです。

これらは、しっかりした比較研究があるわけではありません。ただ、診療室で困ることが多い順に挙げると、この3つになります。取れたまま数日待つことより、無理に付けることのほうが不利になりやすい、とお考えください。

もうひとつ、避けていただきたいことがあります。取れた側の歯を、舌や爪で何度も触ることです。気になるのは分かりますが、露出した面はもろくなっていることがあり、欠けることがあります。鋭い部分が舌に当たって痛む場合は、その旨をお伝えいただければ、優先してご案内します。

硬いものを噛むことも、しばらく避けてください。詰め物が入っていた部分は、力を受け止める形になっていません。そこに負担がかかると、歯そのものが欠けることがあります。反対側で噛んでいただくのが安全です。

取れたまま放置することにも別のリスクがあります。噛み合う相手の歯が伸びてきたり、隣の歯が寄ってきたりして、元の装置が入らなくなります。早めにご相談ください。

名古屋の診療室で、取れた歯をどう診ているか

私は米国Indiana大学大学院で補綴学を3年間学び、MSD(補綴学の修士)とCertificate in Prosthodonticsを取得しました。補綴というのは、被せ物や入れ歯で歯の形と働きを回復させる分野です。

そこで最初に教わったのは、取れた装置をすぐ戻さないということでした。戻す前に、なぜ取れたのかを調べる。原因が分からないまま戻せば、同じ理由でまた取れるからです。

私が確認している順番は、次の4つです。

  1. 取れた装置の内側:何がくっついているか、においはあるか。ここでかなり絞れます
  2. 歯の側:むし歯が残っていないか、支えになる部分がどれだけあるか
  3. :削った側面の広がり具合と高さが、支えとして成り立っているか
  4. 噛み合わせ:その装置に、はがす方向の力がかかっていないか

この4つを見てから、戻すのか、作り直すのか、設計を変えるのかを決めます。

戻せる場合もあります。むし歯がなく、形も保たれていて、装置に傷みがなければ、清掃してあらためて接着することがあります。ただ、これは条件がそろったときの話です。「洗って付けておきますね」で済む場面は、思われているほど多くありません。

接着材の選び方についても触れておきます。同じ調査の中で、種類によって取れた割合に差が出ていました。ただ、群ごとの人数に大きな偏りがあるため、この数字だけで優劣を決めることはできません。当院では、装置の材料と、残っている歯の状態に合わせて選んでいます。

この判断を支えているのが、技工の工程まで自分の手で行ってきた経験です。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになりました。取れた装置の内側を見ると、作った側の手順の痕跡が残っています。型取りの段階で歯ぐきぎわがどこまで記録できていたか、接着材がどう流れたか。ここから、次に何を変えるべきかを読み取れます。

もうひとつ、当院でお伝えしていることがあります。取れやすい歯には、そもそも設計を変える余地があるかもしれない、ということです。

たとえば、支えになる側面の高さが足りない歯であれば、覆う範囲を変えることで抱える面積を増やせることがあります。逆に、削る量を抑えたい場合は、接着に頼る設計を選ぶこともあります。どちらが良いかは、残っている歯の量と、その歯にかかる力によって決まります。

ここで大切なのは、同じ設計のまま何度も付け直さないことです。同じ条件なら、同じ結果になります。取れるたびに、歯は少しずつ削られていきます。

そして、いちばん時間をかけるのは、今回を最後にするための設計です。取れるたびに、歯は少しずつ削られます。削られた歯は戻りません。何度も取れている方ほど、次の設計を変える意味が大きくなります。

同じ歯が繰り返し取れる背景については、別に整理しています(→ 同じ歯ばかり取れるのはなぜ?)。支えになる歯がどれだけ残っているかという話は(→ フェルールとは|歯を残せるかの分かれ目)をご覧ください。

まとめ|名古屋で詰め物がすぐ取れてお困りの方へ + よくあるご質問

詰め物や被せ物が取れる原因は、7つに分かれます。下で進んでいたむし歯、歯の形、接着のときの環境、接着材の選び方、噛み合わせ、装置の厚み、そして抱えている面積です。

いちばん多いのは、下で進んでいたむし歯です。ですから、付け直す前に中を確かめます。そのまま戻すと、むし歯を閉じ込めることになります。

取れたものは、洗わずにお持ちください。内側を見れば、何が起きたかがかなり分かります。そして、市販の接着剤でご自分で付け直すことは避けてください。

そして、短い期間で何度も取れている場合は、付け直しではなく設計そのものを見直す段階です。同じ条件のまま戻せば、同じ結果になります。取れるたびに歯は削られ、次に選べる道が狭くなっていきます。

費用についても一言だけ。取れたものを清掃して付け直すだけなら、費用は小さく済みます。作り直す場合は、装置の費用がかかります。ただ、安く済ませるために原因を確かめずに戻すと、また取れて、その分だけ歯が減ります。当院では、確かめたうえで、戻す場合と作り直す場合の両方の見込みをお示しします。

名古屋・伏見の当院では無料相談を行っており、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。検査と診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。Zoomでのご相談も承っています。完全予約制・完全個室で、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分です。

被せ物や詰め物が何度も取れることについて全体を見渡したい方は、ハブとなる記事から入っていただくと、ご自身の状況を位置づけやすくなります(→ 被せ物・詰め物が何度も取れる原因と治し方【完全ガイド】)。

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最後にひとつ。取れたことを「またか」と落ち込まれる必要はありません。取れるという形で表に出てきたおかげで、下で進んでいたむし歯に気づけることもあります。痛みが出るまで気づかないより、ずっと良い形です。原因を確かめて、次の設計に生かしましょう。

よくあるご質問

Q1. 取れた詰め物を持っていけば、そのまま付けてもらえますか。

条件がそろえば可能です。下にむし歯がなく、歯の形も保たれていて、装置に傷みがなければ、清掃してあらためて接着することがあります。ただ、取れた原因が下のむし歯だった場合、そのまま戻すとむし歯を閉じ込めることになります。ですから、まず中を確かめます。持ってきていただくこと自体には大きな意味がありますので、洗わずにお持ちください。

Q2. 市販の接着剤で応急処置をしてもよいですか。

おすすめしていません。下にむし歯があった場合に閉じ込めてしまうこと、固まるときの刺激が歯に負担をかけること、そしてあとから外すために歯を削ることになる場合があることが理由です。取れたまま数日待って受診されるほうが、結果として選べる道が広くなります。鋭い部分が舌に当たって痛む場合は、その旨をお伝えいただければ、優先してご案内します。

Q3. すぐ取れるのは、歯医者さんの腕の問題でしょうか。

一概には言えません。取れやすさは、残っている歯の量、削った形、噛み合わせ、そしてむし歯のなりやすさが重なって決まります。1,000本以上を追いかけた調査でも、脱離はもっとも起こりやすいトラブルでした。ただ、短い期間で何度も取れている場合は、まだ解決されていない理由が残っています。私がお話しするのは、その理由の分析だけです。

Q4. 取れたまま、しばらく様子を見てもよいですか。

おすすめしません。噛み合う相手の歯が伸びてきたり、隣の歯が寄ってきたりして、元の装置が入らなくなることがあります。そうなると、作り直す範囲が広がります。また、露出した面からむし歯が進むこともあります。数日以内にご相談いただくのが安全です。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。装置を外した際に、むし歯や歯の割れが見つかり、治療計画が変更になる可能性があります。自由診療の場合は保険適用外となります。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

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