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糖尿病と歯周病・全顎治療

まず、ご自身の数値がどのあたりかを知る

健診でHbA1cを指摘された。あるいは通院中で、歯ぐきの腫れが引かない。糖尿病と歯周病は、片方が悪いともう片方も悪くなりやすいという関係にあります。歯科で全体の治療を考えるときも、まず数値を見ます。この記事では、ご自身の数値がどのあたりなのかを読めるように整理したうえで、その数値によって全顎治療の順序がどう変わるかをご説明します。

この記事でわかること

  • 糖尿病と判定される数値と、目標として置かれている数値が分かります
  • 歯周病と糖尿病が、どちらの向きにも影響し合うと分かります
  • 歯周治療のあとに血糖の指標が動いた報告の大きさが分かります
  • 数値によって、全顎治療の順序がどう変わるかが分かります

糖尿病型と判定される数値

健診や内科で見ている数値は、次のとおりです。いずれかが当てはまると糖尿病型と判定されます。

見ている項目 糖尿病型とされる値 正常とされる値
空腹時の血糖値 126mg/dL以上 110mg/dL未満
随時の血糖値 200mg/dL以上
ブドウ糖を飲んで2時間後の血糖値 200mg/dL以上 140mg/dL未満
HbA1c 6.5%以上

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます

空腹時が100〜109mg/dLの範囲は、正常のなかでも正常高値として区別されています。まだ糖尿病ではないものの、注意して見ていく位置づけです。

HbA1cは、その日の食事に左右されません

血糖値はその日に何を食べたかで動きますが、HbA1cは過去1〜2か月の平均を表します。ですから歯科で経過を追うときは、こちらの数値を見ます。

「今朝は食べてこなかったので大丈夫です」という方がいらっしゃいますが、HbA1cはそれでは変わりません。逆に言えば、一日だけ気をつけても動かない代わりに、数か月かけて整えれば確実に動く数値です。

目標として置かれている数値

内科では、次の三つが目標として使われています。

合併症を防ぐための目標が、HbA1c 7.0%未満です。飲み薬やインスリンを使わずに正常化を目指せる場合は6.0%未満。高齢の方や、治療を強めることが難しい事情がある場合は8.0%未満とされます。

つまり、7.0%未満ならひとまず目標の範囲、と考えていただいて構いません。

歯科の側から見た目安

歯周病との関係では、次のように整理されています。

6.5%未満であれば、歯周治療は通常どおり進められます。7.0%から9.0%の範囲では、数値が上がるにつれて歯周病が悪化しやすくなります。9.0%以上になると、治療をしても治りにくく、感染も起こりやすい状態です。

ご自身の数値がこのどこに入るかで、歯科の進め方も変わります。糖尿病以外の持病がある場合の考え方は、別の記事にまとめました。

歯周病と糖尿病は、双方向に影響します

糖尿病があると、歯周病が進みやすくなります

血糖が高い状態が続くと、細い血管の働きが落ち、感染に対する抵抗力も下がります。歯ぐきは細い血管が集まっている場所ですから、この影響を受けやすくなります。

糖尿病のある方は歯周病になる割合が高いと報告されており、ある集団の調査では2.6倍とされています。歯磨きの努力が足りないから、という話ではありません。同じ手入れをしていても、条件が違います。

歯周病があると、血糖が下がりにくくなります

こちらの向きは、あまり知られていないかもしれません。

歯周病は、歯ぐきの中で慢性的に炎症が続いている状態です。炎症が続くと、体のなかで血糖を下げるしくみの働きが鈍ります。つまり、内科で薬を調整しても数値が思うように下がらない背景に、口の中の炎症があることがあります。

「歯の治療と血糖に関係があるのですか」とよく聞かれますが、この向きの影響があるために、内科から歯科へ紹介されることがあります。

歯周治療のあとに、数値が動いた報告があります

歯周治療を行ったあとにHbA1cがどう変わったかを調べた研究をまとめると、およそ0.36%の低下が報告されています。多くは3〜4か月後の時点での比較です。

この0.36%をどう受け取るかです。飲み薬一剤分に相当するという見方もありますが、薬の代わりになるという意味ではありません。内科の治療を続けたうえで、そこに上乗せされる分、と考えるのが正確です。

歯科の治療が全身に及ぼす影響については、確かめられていることと、まだ言えないことを分けて考える必要があります。

数値によって、全顎治療の順序が変わります

炎症が残ったままでは、形が決まりません

ここが、糖尿病のある方の全顎治療でいちばん効いてくる点です。

歯ぐきが腫れている状態で型を取ると、その形は腫れが引いたあとの形とは違います。被せ物を作っても、数か月後には縁が合わなくなります。ですから、炎症を落ち着かせることが先になります。

血糖が高い方は、この炎症が引くまでに時間がかかります。同じ処置をしても治りが遅く、腫れが戻ることもあります。全顎治療の期間が延びやすいのは、主にこの部分です。

段階ごとに、見ている数値が変わります

治療の段階 この段階で見ていること 数値が高いときに起きること
歯周の炎症を止める 歯ぐきの出血、腫れの引き方 引くまでの期間が延びる。戻ることもある
抜歯や歯ぐきの処置 HbA1c、直近の血糖の記録 傷の治りが遅れる。感染が起きやすい
仮歯で形を確かめる 噛み合わせ、歯ぐきの落ち着き 仮歯の期間が長くなる
最終の歯を入れる 歯ぐきの縁が安定しているか 安定を待てず、あとで作り直しになる

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます

三行目の「仮歯の期間が長くなる」は、負担として先にお伝えしています。ただし、これは遅れではなく、形が決まるのを待っている時間です。

抜歯や外科は、時期を選びます

数値が高い時期に抜歯や歯ぐきの手術を行うと、傷の治りが遅れ、感染も起きやすくなります。ですから、急ぐ必要のない処置は、数値が落ち着く時期に合わせます。

一方で、腫れて膿が出ている、痛みが強い。こうした状態は待てません。処置をしないほうが感染が広がり、血糖にも影響します。待てるものと待てないものを分けるのは、このためです。

インプラントのような外科を含む処置については、判断の材料がさらに増えます。骨との結合に血糖が関わるため、別に整理が要ります。

骨粗鬆症の薬を使っている場合は、抜歯の判断がもう一段変わります。

相談の前に、ご自身で整理しておけること

  • ☑ 直近のHbA1cの値。健診結果やお薬手帳、糖尿病連携手帳があればお持ちください
  • ☑ いつから指摘されているか。年数が分かると、進み方の見当がつきます
  • ☑ 飲んでいる薬。種類によって、処置の前に確認することが変わります
  • ☑ 内科の次の受診予定。歯科の計画と重ねられます
  • ☑ 歯ぐきの状態。出血するか、腫れるか、口臭が気になるか。どれが先に出たかも手がかりです

私が、糖尿病のある方の全顎治療で決めていること

数値の記録を、経過として見せていただきます

一回の数値だけでは判断しません。この半年でどう動いてきたかを見ます。下がってきている途中なのか、上がり始めたところなのかで、処置の時期の決め方が変わります。

糖尿病連携手帳をお持ちの方は、そのままお見せいただければ十分です。お持ちでなければ、健診の結果でも構いません。

完成形を先に作ってから、最初の一本に触れます

米国インディアナ大学大学院の補綴科で学んだとき、治療計画の授業で繰り返し扱われたのは、何をどの順序で決めるかでした。完成形を先に決めて合意してから着手する、という順番です。

糖尿病のある方では、この順番がとくに効きます。途中で数値が動いて予定を組み替えることがあるためです。ゴールが決まっていれば、順序を入れ替えても行き先は変わりません。逆に、行き当たりばったりに直していくと、組み替えのたびに作り直しが出ます。

仮歯は、体の状態を見ながら進むための時間です

仮歯は間に合わせの歯ではありません。噛み合わせと歯ぐきの落ち着きを確かめる期間であり、同時に、血糖の状態を見ながら次に進む時期を選ぶための時間でもあります。

この期間にしっかり噛めるようにしておくと、食事の内容も変わります。噛めるかどうかで日常がどう変わるかは、別の記事に整理しました。

治し終わったあとの通院間隔を、先に決めます

治療が終わってからのほうが長い期間です。糖尿病のある方では、歯周病が再発しやすい条件が残ります。ですから、通院の間隔を通常より短めに設定することが多くなります。

何歳からでも設計はできますし、始める時期に遅すぎるということもありません。

まとめ|名古屋で糖尿病がある方の全顎治療を考えるとき

糖尿病と歯周病は、どちらの向きにも影響し合います。血糖が高いと歯ぐきの炎症が治りにくく、炎症が続くと血糖も下がりにくい。この二つは別々の問題ではありません。

ご自身の位置を知る目安は、HbA1cです。6.5%以上で糖尿病型、7.0%未満が合併症を防ぐための目標、9.0%以上はかなり不良。この線を知っておくと、歯科での説明も受け取りやすくなります。

歯周治療のあとにHbA1cがおよそ0.36%下がったという報告はありますが、薬の代わりにはなりません。内科の治療に上乗せされる分、という受け取り方が正確です。

全顎治療の側では、炎症を止めることが先に来ます。ここで形が決まらないと、あとの被せ物が合いません。仮歯の期間が長くなりやすいのは、そのためです。

噛む力と全身の関わりを全体で見ておきたい方は、まとめ役の記事をご覧ください。

名古屋で糖尿病がある方の歯科治療を検討されている方は、まず無料相談で構いません。健診の結果か糖尿病連携手帳をお持ちいただけると、話が早く進みます。

よくあるご質問

Q1. HbA1cがいくつなら、歯科治療を受けられますか。

一つの線で決まるものではありません。6.5%未満なら通常どおり進められますし、7.0%から9.0%の範囲では、処置の内容によって時期を選びます。9.0%以上では、急ぐ必要のない処置は内科の治療が進むのを待つことが多くなります。ただし、腫れや痛みがある場合は数値にかかわらず対応します。

Q2. 歯周病を治せば、糖尿病が良くなりますか。

歯周治療のあとにHbA1cがおよそ0.36%下がったという報告があります。ただし、内科の治療をやめてよいという意味ではありません。炎症が減ることで血糖が下がりやすい状態になる、という位置づけです。内科の治療を続けたうえで、そこに加わる分とお考えください。

Q3. 主治医に相談してから受診したほうがいいですか。

先に来ていただいて構いません。お話をうかがったうえで、内科に確認が必要な点があれば、こちらから文書でお尋ねします。逆に、内科の受診が近い場合は、そのときに歯科の計画を伝えていただくと進めやすくなります。どちらが先でも構いません。

Q4. 何年も歯医者に行っていません。今からでも間に合いますか。

始める時期に遅すぎるということはありません。ただ、歯周病が進んでいる場合は、残せる歯と残せない歯の仕分けが先に来ます。その判断に血糖の状態も関わりますので、まず今の状態を確かめるところからになります。何年空いていても、うかがうのはこれからのことです。

※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。無料相談は無料、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。当院は名古屋市中区栄、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分にあります。完全予約制で、Zoomでのご相談にも対応しています。

監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)

院長 村井亮介

名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。

経歴

  • 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
  • 大手歯科医療法人勤務
  • インディアナ大学歯学部補綴科卒業

資格

  • 米国補綴専門医

所属学会

  • 日本補綴歯科学会
  • ACP american academy of prosthodontics member
  • ITI international team
    for implantology 会員
  • AO academy of
    osseointegration 会員

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