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骨粗鬆症の薬と歯科治療の注意点
関わるのは、どの薬なのか
骨粗鬆症の薬を飲んでいると伝えたら、抜歯を断られた。あるいは「主治医に相談して、薬を止めてから来てください」と言われた。この扱いは、いま変わってきています。2023年に出た国内の指針では、抜歯のときに薬を止めないことが提案されました。この記事では、関わるのはどの薬なのか、実際の頻度がどのくらいなのか、そして止めない前提で何をしておくのかを整理します。
この記事でわかること
- 顎の骨の問題に関わる薬の名前が分かります
- 骨粗鬆症の量と、がん治療の量では頻度の桁が違うと分かります
- 抜歯のときに薬を止めないことが提案されている理由が分かります
- 薬を使いながら、歯科で何をしておくかが分かります
名前で確かめられます
原因となりうる薬として挙げられているのは、骨を壊す働きを抑えるはたらきのある薬です。お薬手帳で名前を確かめられます。
| 薬の種類 | 主な名前(一般名) | 使い方 |
|---|---|---|
| ビスホスホネート | アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸、ゾレドロン酸 | 飲み薬、または点滴や注射 |
| デノスマブ | デノスマブ | 半年に1回の皮下注射 |
| ロモソズマブ | ロモソズマブ | 月1回の皮下注射 |
※スマートフォンでは表を横にスクロールできます
商品名で覚えている方が多いと思いますので、お薬手帳をそのままお持ちいただければ、こちらで確認します。がんの治療で使われている場合は、量が違うので別に考えます。
起きうるのは、顎の骨が治らなくなる状態です
これらの薬を使っている方で、顎の骨が露出したまま治らない状態が起きることがあります。薬剤関連顎骨壊死と呼ばれます。
骨は、壊す働きと作る働きが釣り合って入れ替わっています。これらの薬は壊す側を抑えることで骨密度を保ちますが、そのぶん古い骨が入れ替わりにくくなります。傷ができたときに治りが遅れるのは、この仕組みによると考えられています。
多いのは、抜いたあとの穴がふさがらない、歯ぐきが腫れて膿が出る、下唇のあたりがしびれる、といった現れ方です。痛みが出ないまま進むこともあります。
なぜ顎の骨だけなのか、と聞かれることがあります。顎の骨は体のなかでも入れ替わりが速く、そのぶん薬の影響を受けやすいこと。歯があるために骨と口の中が歯根膜を通じてつながっていて、細菌が届きやすいこと。この二つが重なる場所は、体のなかでほかにありません。
ほかの持病がある場合の進め方は、別の記事に整理しました。
頻度は、量によって桁が変わります
骨粗鬆症の量と、がん治療の量
同じ薬でも、骨粗鬆症で使う量とがんの骨転移などで使う量では、報告されている頻度が桁で違います。
| 使われ方 | 報告されている発生頻度 |
|---|---|
| 骨粗鬆症の量 | 0.001〜0.01%(国際的な検討委員会)/0.02〜0.05%(米国の2022年の報告) |
| 骨粗鬆症の量(日本の調査) | 10万人・年あたり22.9人 |
| がん治療の量(ゾレドロン酸) | 5%未満(米国の2022年の報告) |
| がん治療の量(デノスマブ) | 1〜2%(臨床試験をまとめた解析) |
※スマートフォンでは表を横にスクロールできます
骨粗鬆症で使っている方の場合、10万人が1年使って20人あまり、という水準です。ゼロではありませんが、「薬を飲んでいるから抜歯できない」という頻度ではありません。
一方、がんの治療で高い量を使っている場合は数%の報告があり、桁が変わります。同じ薬の名前でも、扱いが違うのはこのためです。
長く続けているほど、上がります
累積の量が増えるにつれて発生のリスクは上がると報告されています。飲み始めたばかりの方と、10年続けている方では条件が違います。
いつから使っているかを、こちらは必ず伺います。正確な年でなくて構いません。
薬以外にも、条件を重くする要因があります。喫煙、糖尿病、ステロイドの使用、そして合っていない入れ歯があたって粘膜に傷ができている状態です。薬の量が同じでも、これらが重なると条件が変わります。
逆に言えば、薬以外の部分は手を入れられます。入れ歯が当たっているなら調整できますし、歯ぐきの炎症は処置で減らせます。
研究の数値をどう受け取るかについては、別の記事でも扱っています。
「薬を止めてから」は、勧められなくなりました
2023年の指針は、止めないことを提案しています
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。
2023年に改訂された国内の指針では、抜歯のときに骨吸収抑制薬を休薬しないことが提案されています。弱い推奨という形ですが、方向としてははっきりしています。
理由は、休薬した場合としなかった場合を比べた研究をまとめても、休薬によって発症率が下がるという結果が得られなかったためです。効果が確かめられていないのに止める、という判断の根拠が薄くなりました。
この話が当てはまるのは、抜歯についてです
一つ、はっきりさせておきたい点があります。
止めないことが提案されているのは、抜歯の場合です。指針には「抜歯以外の歯科口腔外科手術に際しての予防的休薬の是非に関しては不明である」と書かれています。
つまり、インプラントを埋める処置や、歯ぐきを開いて骨を触る歯周外科は、この話の外側にあります。抜歯と同じ扱いにはできません。骨を削る範囲も、傷の治り方も違いますし、これらについて休薬の是非を調べた研究がまだないためです。
ですから当院では、抜歯とそれ以外の外科処置を分けて考えます。抜歯であれば薬を続けたまま進められますが、インプラントや歯周外科を検討する場合は、そもそも行うかどうかから、別に判断の材料を集めます。
抜歯が原因ではない、という見方
もう一つ、考え方が変わった点があります。
以前は、抜歯が引き金になって顎の骨の問題が起きる、と考えられていました。いまは、抜歯の前からすでに始まっていたものが、抜歯をきっかけに表に出ている場合が多い、という見方が示されています。
そうであれば、抜くのをやめても問題は消えません。膿がたまったまま、炎症が続いたまま残ります。歯を悪い状態のまま置いておくことのほうが、かえって条件を悪くします。
見方が変わった話は、歯科にはほかにもあります。
ご自身の判断で止めることは、避けてください
薬を止めると、骨折の危険が上がります。とくにデノスマブは、中断すると背骨の骨折が起きやすくなることが知られています。
歯科の治療のために止めるかどうかは、処方している医師が判断することです。歯科から「止めてください」とお願いすることも、いまは基本的にありません。確認が必要な点があれば、こちらから文書でお尋ねします。
では、何をするのか
止めない前提で、口の中の感染源を減らしておくことになります。歯ぐきの炎症を抑え、膿がたまっている歯を整理し、合っていない被せ物や入れ歯を直す。地味な作業ですが、これが実際に効く部分です。
糖尿病がある場合は、治りにくさが加わるため、順序の組み方が変わります。
相談の前に、ご自身で整理しておけること
- ☑ お薬手帳。薬の名前と、いつから使っているかが分かります。これがいちばん早いです
- ☑ 注射か、飲み薬か。半年に1回の注射なのか、毎日や週1回の飲み薬なのかで、確認する内容が変わります
- ☑ これから始まる予定があるか。まだ始まっていないなら、順序の組み方が変わります
- ☑ 歯ぐきの状態。腫れる、膿が出る、口臭が気になる。感染源を先に把握します
- ☑ 内科や整形外科の次の受診予定。歯科の計画と重ねられます
私が、薬を使っている方の治療計画で考えていること
始まる前なら、始まる前に片づけます
これから薬を始める予定がある方は、順番がはっきりしています。抜歯が必要な歯や、膿がたまっている歯を先に処置し、治ってから薬を始めていただくのが理想です。
内科や整形外科から「歯科を先に受診してください」と言われて来られる方は、この段取りに乗っています。開始予定日が決まっているなら、そこから逆算して組みます。
ただし、間に合わない場合もあります。骨折の危険が高くて薬を急ぐときは、薬が優先です。その場合は、始まってからできることに切り替えます。
すでに始まっていても、放置よりはよほど安全です
「もう飲んでいるので手遅れですか」と聞かれることがあります。そうではありません。
すでに使っている方でも、歯科治療ができなくなるわけではありません。頻度の桁を見れば分かるとおり、骨粗鬆症の量での発生はまれです。むしろ、悪い歯を放置して感染が続くほうが、条件としては悪くなります。
抜かずに済む設計を、先に検討します
とはいえ、抜く回数は少ないほうがよいのも確かです。ですから、抜歯を前提にする前に、残せる可能性を先に検討します。
歯の根だけが残っている場合でも、上をきれいに整えて残すという判断ができることがあります。動いている歯を、隣の歯とつないで支えることもあります。抜くかどうかを決める前に、この検討を一度挟みます。
噛めるかどうかで日常がどう変わるかは、別の記事に整理しました。
治療後の管理を、通常より短い間隔にします
定期的な管理を受けている方では、発生が少ないと報告されています。薬を使っている方では、通院の間隔を通常より短めに設定することが多くなります。
薬とつきあいながら、何歳からでも設計はできます。
まとめ|名古屋で骨粗鬆症の薬と歯科の進め方を考えるとき
関わるのは、骨を壊す働きを抑える薬です。ビスホスホネート、デノスマブ、ロモソズマブ。お薬手帳で名前を確かめられます。
頻度は量によって桁が変わります。骨粗鬆症で使う量では10万人・年あたり22.9人という報告があり、がん治療の量では数%の報告があります。同じ薬の名前でも、扱いが違います。
2023年の指針では、抜歯のときに薬を止めないことが提案されました。休薬によって発症率が下がるという結果が得られていないためです。あわせて、抜歯が引き金になるというより、抜歯の前からすでに始まっていたものが表に出る場合が多い、という見方が示されています。ただし、これが当てはまるのは抜歯の場合です。インプラントを埋める処置や歯周外科については、休薬の是非が分かっていないと明記されており、別に判断します。
ですから、することは薬を止めることではなく、口の中の感染源を減らしておくことになります。これから薬が始まる方は、始まる前に。すでに始まっている方は、放置しないこと。
噛む力と全身の関わりを全体で見ておきたい方は、まとめ役の記事をご覧ください。
名古屋で骨粗鬆症の薬を使いながら歯科治療を考えている方は、まず無料相談で構いません。お薬手帳をお持ちいただけると、その場で確認できます。
よくあるご質問
Q1. 骨粗鬆症の薬を飲んでいると言うと、抜歯を断られますか。
断る理由にはなりません。骨粗鬆症で使う量での発生は、10万人・年あたり22.9人という水準の報告です。ただし、いつから使っているか、ほかに持病があるかで条件は変わりますので、お薬手帳を拝見したうえで判断します。抜かずに済む方法があれば、そちらを先に検討します。
Q2. 歯科の治療のあいだ、薬を止めたほうがいいですか。
ご自身の判断で止めることは避けてください。2023年の指針では、抜歯のときに休薬しないことが提案されています。休薬しても発症率が下がるという結果が得られていない一方、止めれば骨折の危険が上がります。止めるかどうかは処方している医師が判断することで、歯科からお願いすることは基本的にありません。なお、この提案は抜歯についてのものです。インプラントや歯周外科は同じ扱いにできません。
Q3. 顎の骨が溶けると聞いて怖いのですが、どのくらいの頻度ですか。
骨粗鬆症で使う量では、国際的な検討委員会の報告で0.001〜0.01%、米国の2022年の報告で0.02〜0.05%とされています。日本の調査では10万人・年あたり22.9人でした。がんの治療で高い量を使う場合は数%の報告があり、こちらは桁が変わります。ご自身がどちらに当たるかは、薬の名前と量で分かります。
Q4. これから薬を始めると言われました。歯科は先に行ったほうがいいですか。
そのほうが望ましいです。抜歯が必要な歯や膿がたまっている歯があれば、先に処置して治ってから薬を始めるのが理想的な順序です。開始予定日が決まっていれば、そこから逆算して組みます。ただし骨折の危険が高い場合は薬が優先ですので、間に合わなければ始まってからできることに切り替えます。
※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえ、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明します。無料相談は無料、セカンドオピニオン外来は5,500円(税込)です。当院は名古屋市中区栄、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分にあります。完全予約制で、Zoomでのご相談にも対応しています。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
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