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噛み合わせ治療のマウスピース|スプリントの種類と選び方
名古屋で勧められたマウスピースは、どの種類なのか
噛み合わせの治療で使うマウスピースは、歯科ではスプリントと呼びます。名古屋でこれを勧められた方に先にお伝えしたいのは、スプリントが一つの装置名ではないということです。覆う範囲、素材、作り方でいくつもの種類に分かれ、種類が違えば体の反応も、使う期間も変わります。この記事では、どんな種類があり、それぞれ何が報告されていて、どう選び分けるのかを順に整理します。勧められた装置がどれにあたるかを確かめる材料としてお使いください。
この記事でわかること
- マウスピースは一つの装置名ではなく、目的の違う種類の総称だと分かります
- 覆う範囲で3つに分かれ、それぞれ体の反応が違うことが分かります
- 硬い型と軟らかい型で、報告されている結果が違うことが分かります
- 種類ごとに、使ってよい期間と確認の間隔が変わることが分かります
マウスピースという言葉は、別々の装置をまとめて指しています
マウスピースという一語が、まったく違う目的の装置を一緒くたにしています。ここを分けないと話がかみ合いません。
歯科ではこれをスプリントと呼び、目的と形で区別します。矯正で歯を動かすマウスピース型の装置とは、目的も設計もまったく別のものです。
ですから最初に確かめていただきたいのは、値段でも硬さでもありません。その装置がどの種類で、何のために入るのかです。
患者さんから「マウスピースを作ってほしい」と言われることがあります。そのときは、どの種類のことをおっしゃっているのかを先に伺います。ご本人は歯ぎしり対策のつもりでも、実際に必要なのが高さを試す種類だった、ということが起こるためです。逆に、噛み合わせを組み直す前提で相談に来られた方に、まず守る種類だけをお出しすることもあります。
目的で分けると、大きく3つになります
一つ目は、高さを試す種類です。削る前・被せる前に噛み合わせの高さを足し、その高さで生活できるかを確かめます。
二つ目は、力を受け止める種類です。歯や被せ物に加わる力を装置の面で受け、すり減りや破折から守ることを狙います。
三つ目は、筋肉を落ち着かせる種類です。噛む筋肉の活動を下げることを目的にします。
この3つは重なることもあります。高さを試すために入れた種類が、結果として力も受け止めている、という状態はよくあります。ただ主目的が何かで、面の作り方も使う期間も変わります。主目的をはっきりさせないまま作ると、どちらの役目も中途半端になります。
同じように見えても、この3つは使い方が違います。高さを試す種類は、確認が済めば役目が終わります。守る種類は、使い続けることが前提です。
削る前に試せることが、この装置の一番の利点です
種類を問わず、スプリントに共通する強みは外せることです。歯を削れば元に戻せませんし、被せ物を外すときはまた歯を削ります。装置なら、合わなければ作り直せます。
すり減って短くなった歯を治す場面でも、この順序は同じです。
そもそも噛み合わせの高さが下がるとどうなるかは、別の記事に整理してあります。
なお、高さを足す種類を入れると、しばらく違和感が出ます。Yadfoutら(2024年、Clinical, Cosmetic and Investigational Dentistry)のレビューでは、発音のしにくさや筋肉の不快感は多くが1週間から2週間で落ち着くとされています。食いしばりや歯ぎしりのある方では、2か月ほどを要した報告も紹介されています。
覆う範囲で分ける|3つの種類と、報告されている違い
歯列全体を覆う種類
上または下の歯を全部覆う種類です。当院が基本にしているのはこの型で、面をどこにどう当てるかを細かく作り込めます。
Seilerら(2024年、Clinical Oral Investigations)は健康な10名を対象に、20の関節を解析して3つの種類を比べています。この報告では、全体を覆う種類は咬筋の活動が他の種類と同等で、関節の空隙の変化は奥歯だけの種類と同程度でした。
咬筋とは、頬のえらのあたりにある噛むための筋肉です。全体を覆う種類は、突出した作用がない代わりに、偏った変化も出にくいということになります。
前歯だけを覆う種類
前歯の数本だけに当たる小さな装置です。同じSeiler 2024では、この種類で食いしばったとき、こめかみのあたりにある前側頭筋の活動が装置なしのおよそ2分の1になりました。全体を覆う種類とも、奥歯だけの種類とも統計的に異なる結果です。
一方で、関節の空隙は装置なしと比べて減少幅がおよそ3倍大きくなりました。つまりこの種類は効かないのではなく、別の作用をしています。筋肉の活動は下がる一方で、関節にかかる変化は大きくなります。
選ぶときに問うのは、どちらが優れているかではありません。症状が筋肉側にあるのか関節側にあるのかで、選ぶ種類が変わります。なおこの研究は健康な10名の実験ですので、症状のある方にそのまま当てはめることはできません。
奥歯だけを覆う種類と、部分的に覆う種類に共通する注意
奥歯だけに当たる種類もあります。Seiler 2024では、関節の空隙の変化は全体を覆う種類と同程度でした。奥歯で高さを支えるため、前歯側が浮いた状態になるのが形の特徴です。
ただし前歯だけ・奥歯だけの種類は、どちらも部分的に覆う設計にあたります。ここに一つ、知っておいていただきたい報告があります。
Bereznicki、Barry、Wilson(2018年、British Dental Journal)は、装置を使った後に噛み合わせが変わってしまった4つの症例を報告しています。前歯が当たらなくなる、前歯が沈み込む、奥歯が伸び出す、前方への誘導が失われる、奥歯が当たらなくなるといった変化です。
| 種類 | 報告されている作用 | 注意点・限界 |
|---|---|---|
| 歯列全体を覆う | 咬筋の活動は他の種類と同等。関節の空隙の変化は奥歯だけの種類と同程度 | 適切に作られた場合、意図しない噛み合わせの変化は記録されていない。厚みの分だけ慣れが要る |
| 前歯だけを覆う | 前側頭筋の活動が装置なしの約2分の1 | 関節の空隙の減少幅が約3倍大きい。前歯が当たらなくなるなどの報告あり |
| 奥歯だけを覆う | 関節の空隙の変化は全体を覆う種類と同程度 | 部分的に覆う設計にあたるため、噛み合わせが変わる報告の対象に含まれる |
| 市販の軟らかいもの | 24時間の時点では筋肉の活動が低下したという報告 | 4週から8週では活動が上昇したという報告。自分で削って使った症例で変化の報告あり |
※スマートフォンでは表を横にスクロールできます
この4例で共通していたのは、いずれも部分的に覆う種類だったという点です。変化が起きたのは、軟らかいナイトガードを自分で削って使った場合、硬い樹脂で前歯だけを離す装置、接触が不均一な装置、期間を超えて使われたホワイトニング用のトレーでした。全体を覆う設計で適切に作られたものでは、有害な変化は記録されていません。変化までの期間は2年、18か月、数年と幅があり、夜だけの装着で生じた例も含まれます。
すでに一部の歯だけ強く当たる感じがある方は、入れる前に確認しておくことがあります。
素材と作り方で分ける|硬さの違いと、種類選びの限界
硬い種類と、軟らかい種類
素材でも種類が分かれます。硬いレジンで作るものと、軟らかいシートで作るものです。市販品の多くは軟らかい種類にあたります。
Goelら(2023年)は、中等度から重度のすり減りがある方を対象に、この2つを比べた小規模な試験を報告しています。24時間の時点では、どちらも筋肉の活動を下げていました。ところが4週から8週の時点では、硬い種類で低下が続いた一方、軟らかい種類では活動が上がっていました。
参加者は24名と少なく、これだけで結論は出せません。ただ、軟らかい種類を長く使い続けることが良い方向に働くとは限らない可能性は示しています。高さを試す目的なら、面の形を正確に作れる硬い種類を選ぶことが多くなります。
作り方でも、耐久性が変わります
同じ硬い種類でも、作り方でさらに分かれます。ブロックから削り出す方法と、3Dプリンターで積み上げる方法です。
削り出しで作った装置は破折に強く、すり減りにも強いと報告されています。3Dプリントの装置は作るのが速い一方、曲げ強さや表面の硬さが低い傾向にあるとされています。
ですから同じ設計でも、作り方によって確認の間隔を変えます。装置は消耗品ですので、作り直しの時期も含めて最初にお話しします。
厚みも種類を分ける要素です。厚くすれば高さを大きく足せますが、そのぶん慣れるまでに時間がかかります。薄くすれば違和感は減る一方、割れやすくなります。どちらを取るかは、その装置に何をさせたいかで決まります。
種類を選ぶ前に、評価が割れている話も知っておいてください
顎の痛みに効くのかについては、正直に両論を書いておきます。Rileyら(2020年、British Dental Journal)は37件のランダム化比較試験を検討し、痛みについては13試験・1,076名を統合しました。装置が痛みを減らすという結果は得られず、標準化平均差はマイナス0.18で有意ではありません。確実性は非常に低いと評価されています。
一方Guptaら(2025年、The Saudi Dental Journal)は、中心位で安定させる種類に絞って8件を統合しています。参加者は400名を超え、他の保存療法と比べて痛みが減るという結果でした。標準化平均差は0.75で有意、確実性は中程度です。
逆の結論が出た理由は、対象の絞り方にあると考えられます。Guptaらは種類を限定し、比較の相手も揃えています。Rileyらは幅広い装置と条件をまとめています。あごの症状そのものが主な悩みである方は、そちらを扱った記事が本題になります。
またRiley 2020は、37件の中に歯の摩耗を測定した試験がひとつもなかったと指摘しています。歯を守るために入れるという説明は広く行われていますが、その効果自体はまだ十分に検証されていません。
相談の前に、ご自身で整理しておけること
- ☑ 何のために勧められたか。高さを試すためか、守るためか、筋肉のためかで種類が変わります。
- ☑ いま使っている装置の種類。市販か歯科で作ったものか、覆う範囲はどこまでかを見ておいてください。
- ☑ 自分で削ったことがあるか。削って使っている場合はお伝えください。責めることはありません。
- ☑ 前歯が当たらなくなっていないか。軽く噛んで、前歯が触れるかを確かめてみてください。
- ☑ いつから使っているか。年単位で使っている場合は、確認の間隔を見直す材料になります。
私が種類をどう選び、いつやめると決めているか
目的とやめる条件を、渡す前に決めます
私は米国インディアナ大学大学院で補綴学を3年間専攻し、MSDとCertificate in Prosthodonticsを取得しました。そこで受けた治療計画の授業は、個々の治し方より、治療の順序をどう決めるかに大半の時間が割かれていました。
装置も、その順序の中の1工程です。ですから種類を決めるのと同時に、2つを決めます。何を確かめるために入れるのか、そして何が確認できたら次に進むのか、です。
順序を先に決めておくと、装置が合わなかったときの判断も速くなります。合わないと分かった時点で、種類を変えるのか、そもそも装置では扱えない問題なのかを切り分けられるためです。合わないまま使い続けて時間だけが過ぎる、という展開を避けられます。
これを決めずに渡すと、装置を使うこと自体が目的になります。何年も使い続けているが何が変わったか分からない、という状態がこれです。
高さを試す種類なら、期間を決めて使っていただき、食事・発音・朝の筋肉の状態を確認します。問題がなければ、その高さで次の工程に進みます。引っかかる項目があれば調整してもう一度試します。ここで時間をかけるほど、作り直す可能性は下がります。
守る種類なら、やめる条件の代わりに続ける条件を決めます。何か月ごとに面を見るか、どうなったら作り直すか、どの症状が出たら予約を待たずに連絡していただくかです。使い続ける種類ほど、この取り決めがないまま何年も経ってしまいます。
筋肉を落ち着かせる目的の場合は、期間を区切って様子を見ます。変化がなければ、装置以外の原因を探す方向に切り替えます。効かない装置を使い続けるより、見立てを立て直すほうが早いためです。
全体を覆う種類を基本にしています
覆う範囲については、歯列全体を覆う種類を基本にしています。理由はBereznicki 2018の報告にあります。部分的にしか覆わない種類では噛み合わせが変わった症例が報告されている一方、全体を覆う適切なものでは有害な変化が記録されていません。
前歯だけの種類に筋肉を休ませる作用があることは、Seiler 2024のとおりです。ただし関節の空隙の変化が大きくなる以上、使うなら期間と確認の間隔を厳しく決める必要があります。
全体を覆う種類にも弱点はあります。厚みの分だけ慣れに時間がかかり、作るのにも手間がかかります。それでも基本に据えているのは、意図しない変化が出にくいという一点を重く見ているためです。元に戻せることが装置の利点である以上、その利点を損なう設計は避けたいと考えています。
指導医からは、1本の歯を診る前に顔と噛み合わせの全体を診ろ、と繰り返し言われました。装置も同じで、当たっている場所だけを見て種類を決めることはしません。部分的に覆う種類を選ぶ場面もありますが、その場合は使う時間と確認の間隔を先に決めて、書面でお渡しします。
削れ方を、次の設計の記録として読みます
使っていただいた装置は、次の来院で表面を見ます。面が一箇所だけ深く削れていれば、力がそこに集中しています。全体が均等に曇っていれば、力は分散しています。この違いを次の設計に反映します。
私自身、通常は歯科技工士に委ねられる製作の工程まで自分の手で行ってきました。設計から製作まで一人で仕上げた入れ歯は100床近くになります。自分で作ると、面の形をどう作れば力が散るかが手の感覚として残ります。
削れ方が想定と違っていれば、種類そのものを変えることもあります。全体を覆う種類で偏りが取れないなら、面の形を作り直すか、当て方を変えるかの判断になります。装置は一度作って終わりの道具ではありません。
装置を外した後にどう安定させるかは、別の記事で扱っています。
まとめ|名古屋でマウスピースの種類を選ぶために
噛み合わせのマウスピースは一つの装置名ではありません。覆う範囲で3つ、素材と作り方でさらに分かれ、種類が違えば体の反応も使う期間も変わります。全体を覆う硬い種類が基本で、部分的に覆う種類は目的を限って期間を決めて使います。
名古屋でマウスピースを勧められたなら、確かめたいのは3つです。どの種類か、何のために入れるのか、いつ確認に行くのか。この3つが決まっていれば、使うこと自体が目的になることはありません。
噛み合わせを組み直す治療の全体像は、まとめ役の記事に整理してあります。
装置の前の検査は別記事にあります。
前歯の重なりが深い方は、選ぶ種類が変わります。
迷う方には別の見方を聞く選択肢もあります。
まずは無料相談で構いません。いま使っている装置を持ってきていただくだけでも結構です。
いま使っている装置をお持ちいただくだけで、合っているか確かめられます。
よくあるご質問
Q1. 市販のマウスピースを何年も自分で削って使っています。怒られませんか。
怒りません。市販の種類は自分に合わせにくいものですので、削って使う方は珍しくありません。ただし、自分で削った装置で噛み合わせが変わった症例が報告されています。いまどうなっているかを一度確認させてください。名古屋市中区栄の当院は、カウンセリングルームが完全個室で、診療室は半個室です。完全予約制ですので、装置を持って相談だけに来ていただけます。
Q2. 種類はどうやって決まるのですか。自分で選べますか。
決め方の順序は、症状と目的が先で、種類は後です。高さを試したいのか、力を受け止めたいのか、筋肉を休ませたいのかで候補が絞られます。そのうえで、症状が筋肉側にあるのか関節側にあるのかを検査で見て、覆う範囲を決めます。ご希望は伺いますが、希望だけで種類を決めることはしません。合わない種類を選ぶと、噛み合わせが変わる報告の対象に入ってしまうためです。
Q3. 硬い種類と軟らかい種類、どちらがよいですか。
目的によります。中等度から重度のすり減りがある方を対象とした小規模な試験では、24時間の時点ではどちらも筋肉の活動を下げていました。しかし4週から8週の時点では、硬い種類で低下が続き、軟らかい種類では活動が上がっていました。参加者は24名と少なく、これだけで結論は出せません。高さを試す目的で使う場合は、面の形を正確に作れる硬い種類を選ぶことが多くなります。
Q4. いつまで使い続ければよいですか。
種類によって変わります。高さを試すために入れたものなら、確認が済んだ時点で次の工程に進みますので、使い続けることはありません。力を受け止める種類なら、定期的な確認を前提に続けていただきます。いずれの場合も装置は消耗しますので、作り直しの時期が来ます。前歯が当たらなくなったと感じたときは、次の予約を待たずにご連絡ください。
名古屋市中区栄、地下鉄「伏見駅」7番出口から徒歩2分がEden Dental Officeです。CTと口腔内スキャナーを備え、完全予約制で診療しています。保険と自費のどちらにも対応しています。
※お口の状態には個人差があり、適した治療や結果は人によって異なります。検査・診断のうえで、費用・期間・主なリスクをまとめてご説明し、書面でお渡ししたうえで進めます。装置は消耗しますので定期的な確認と作り直しが要ります。使用中に噛み合わせが変わる可能性がありますので、決められた間隔での確認をお願いしています。
監修者情報

EDEN DENTAL OFFICE (エデン デンタル オフィス)
院長 村井亮介
名古屋中区の伏見駅から徒歩2分の「エデンデンタルオフィス」では、米国補綴専門医の資格を持つ院長が、10年、20年先を見据えた精密な治療を提供します。歯科医院特有の緊張感を和らげるため、家族のように寄り添う丁寧な対話を重視。患者様の背景や「どうなりたいか」という想いを深く汲み取り、できる限りの最高の治療クオリティーを常に心掛けております。
経歴
- 愛知学院大学歯学部歯学科卒業
- 大手歯科医療法人勤務
- インディアナ大学歯学部補綴科卒業
資格
- 米国補綴専門医
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- ACP american academy of prosthodontics member
- ITI international team
for implantology 会員 - AO academy of
osseointegration 会員
CONSULTATION 無料相談・セカンドオピニオン
インプラントをはじめ、審美補綴や義歯などの外科的治療に関するご相談を承っております。その他の治療内容についてもお気軽にお問い合わせ下さい。



